R347
2019年10月25日
【序章】
この店は2014年9月に掲載した「宮城県央北部R457そば街道」の記事中で多数の蕎麦店と共に紹介しておりR457を通行する際の昼食処として度々利用していたが2019年の春は予定していた大崎市のそば店の休業に遭遇した末に久し振りの訪問となった。
【店舗外観】
店主の軽自動車が停まる店舗前駐車場の雰囲気は見慣た光景だが竜聖の屋号を掲げる青色の電照看板の上部が欠損している。
嘗てはこの部分に同じ青地で手打そばの文字看板が嵌め込まれていたのは以前の写真で確認できる。
【店内】
店内の様子は相変わらずで玄関を入った先の左手に拡がる土間には大きなテーブルが置かれ右側の仕切りは畳敷きの座敷席である。客席の奥は厨房の空間に充てられており座敷に近い位置にはそば打ち室が配置されている。更に言えば座敷と通路を挟んだ打ち場の右奥には小さな和室の設えもあり混雑時にはこの部屋に案内された経験もあり店内の様子の大部分は記憶の範囲にある。
【品書】
空席があった座敷に席を定めて座卓上に用意された品書に目を通す。
従来と変わらぬ写真入りの分かり易い構成だがカラー写真の色褪せ具合から長年使い込まれた年季を感じる。
因みに嘗ての品書の写真は色彩が鮮明であった。
ご飯ものや飲料に×印が付けられているのは以前と異なっているが温と冷の天ぷらそばとかもせいろ\1000にもりそば\700、ざるそば\500は少なくとも10年前と変わらぬ価格のままで提供されている。
竜聖の品揃えは以前にも言及しているがもりそばとざるそばにこの店独自の特徴がある。
そば店の品揃えの一般的な概念ではもりそばよりも刻み海苔が添付されることが多いざるそばは僅かではあるが高額に設定されている。
しかし竜聖ではざるそばが低額でもりそばとは\200の価格差を設けている。その訳は品書の写真で見る通り漬物皿を添えただけのざるそばに対してもりそばではざるに加えて3種の小鉢料理が供される故の価格差である。ざる、もりと天ぷらそばのいずれも刻み海苔の添付は無い。
【もりそば】
¥1000の天ぷらそばは手頃な設定だがこの店の天ぷらは端部が焦げ気味で揚げ過ぎ感が強くあまりお勧めできない。従ってこの店では3種の小鉢料理が添付される¥700のもりそばを注文することが多く今回も迷うことなくもりを発注した。
暫くして運ばれたもりそばはいつも通りの蒸籠盛りで徳利のつゆに薬味の小皿が添えられる。
薬味は刻み葱ともみじ下しで胡瓜の浅漬けが加わる。
3種の小鉢料理は季節の素材が主体で今回は青菜のお浸しに
木耳と南瓜の煮物であった。木耳の煮物は訪問する度毎に欠かさず供されてる竜聖の定番料理である。
手打ちのそばは白味を帯びた表面に疎らなホシが見えているが内部に透き通る様な透明感はない。
割箸で掬い上げると3~4mm程の中細麺で食し易いしなやかな腰を備えている。
【店主の雑談 閉店?】
そば食中に土間のテーブル席に着いた常連客と厨房作業が一段落した亭主夫妻の雑談が漏れ聞こえてきた。
亭主が述べるには「歳も歳だしそろそろ店を閉じて引退しようと考えている」と。常連客が留意の発言をすると奥様は「まだ決めた事ではないし勝手なことを言ってるのよ」と応じていた。
老夫婦で切り盛りする店に後継ぎの姿は確認できないので今後の竜聖はどうなるのだろうかと思いながらそば食を終えた。
因みに亭主は嘗て役場勤務の公務員であったらしいが一念発起して同じ加美町内小野田の薬莱山に店を構える「宗右衛門」でそば打ちを修行した後に現在の中新田で竜聖の店を開いたと聞き及んでいる。
【そば湯】
食後の楽しみは何時もの通り
つゆの残りにそば湯を加えて
そばつゆのそば湯割りの飲料を調製してそばの香りを満喫した。
【終章】
加美町中新田のそば専門店「竜聖」は国道に近い立地で10年程前から通り縋りで気軽に立ち寄ることができる店であった。
老夫婦が営む店は2019年の春迄従来と変わらず営業を続けていたが今後の動向が気掛かりである。
完
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