構造
2021年11月12日
【岩松旅館の館内構造】
先に紹介た通り国道R48側から見える岩松旅館は青葉館と広瀬館の2棟に見えるがこの建物の背後には源流に近い広瀬川の峡谷に沿って温泉施設が配置されている。
但し館内には建物形状や設備の配置を正確に表した図面はなく
1Fフロントロビーに掲出される内照式の案内図や
部屋に備える案内資料の一角に各階の設備を案内する立面的な概念図が提供されている。
更にチェックイン時に部屋番号や食事時間等を記載して手交される案内帳の裏面には
フロントロビーの周辺や食事宴会会場、温泉施設等のパブリック部分のみを対象としたイラスト風の案内図も用意されておりこれら3種の案内図を突き合わせると館内全体の概要は理解できるが各施設の正確な位置関係を把握することは困難である。
【立面的な構造】
先ず館内の全体的な配置を知るには立面的な概念図が有効である。
明らかに低質なカラーコピーの案内図でお世辞にも画質が良いとは言えないが館内の全容が表された唯一の資料である。
この図から既に紹介した通りB1Fから聳える6階建ての青葉館と4階建ての広瀬館が主要な構造物であるが図面の左端には1FからB2Fを結ぶ専用のエレベーターがあり地階以下の温泉浴場施設へ下る連絡路が用意されている。
この立面構造から主に2Fから下の地下階迄はパブリックな施設で3F以上(と広瀬館2Fの一部)が宿泊客室に充てられていることが理解できる。
【1Fと2Fの配置】
フロントロビーを構える1Fは青葉館の領域でフロントカウンターや売店と青葉館内のエレベーターがあることは既に述べたが加えての玄関左脇のラウンジひろせとエレベーターの奥にはコンベンションホール「折鶴」の配置がありフロントの右脇からは広瀬館へ続く連絡路が確認できる。
広瀬館内のエレベータに
ラウンジひろせは玄関を挟んでフロントカウンターと正対する位置にある。
本来のラウンジは喫茶や軽食を供する機能を有しており大概はロビー空間と一体化された休息施設であるが密接回避のソーシャルディスタンスを意識したテーブル配置が為されており
コーヒー類やソフトドリンクのベンディング機が無人、無償で提供されており各室内に持ち帰ることも可能とされている。但しこのサービスは宿泊者限定と明記されているので日帰り入浴客は対象外であろう。
広瀬館は後に詳しく述べるが公式HPの予約にも選択肢がなく閉館状態である。これも感染症対策で宿泊者を制限しているのであろう。
コンベンションホール折鶴は夕食と朝食のバイキング会場となっているので後に紹介する。
更に折鶴の奥には広瀬川に沿う岩風呂へ連絡する通路も設けられている。
2Fは1Fのロビー部分が吹抜け構造でその周囲に宴会場と食事処の作並ダイニング「喜惣」が配置されている。更に広瀬館内の宴会場に向かう連絡路もある様だが基本的に広瀬館は閉館状態なのでこちらは未踏で詳細は不明である。
【BF1の配置】
青葉館内のエレベーターが直通するB1Fは大小の宴会場と男女別の大浴場「不二の湯」が主要な施設で連絡路で繋がる広瀬館には室内温泉プール施設で7:00~22:00の利用時間が案内されているがこれは未踏。
青葉館の1Fから広瀬川の峡谷に沿う岩風呂へ下るエレベーターはこの階からも利用できB2Fで降りた先は徒歩で階段を下る。詳しくは温泉浴場の項で。
【宿泊プラン】
長年の想いが叶った岩松旅館の宿泊予約はいつも利用している大手の予約サイトからではなく岩松旅館公式HPでの手配となった。
その訳は3箇月以上も前に購入した宮城県民限定で募集された「みやぎ宿泊割キャンペーン 「買って応援!宿泊前売券プラン」」という地域振興策で1セット5,000円分の宿泊前売券を2,500円で最大4セットまで購入できるもの。有効期間は2021年10月~2022年3月となっているが購入段階で宿の特定が必須である。今回は予め岩松旅館に4セットの購入を申込み1万円で2万円分の宿泊前売券を確保していた。
更に細かい話になるが前売券の購入金額は宿泊先の銀行口座振込とされており振込手数料(\550程)は購入者の負担に加えて岩松旅館では自宅への前売券郵送料\520(簡易書留料金)も請求されていた。因みに同時に手配した他の宿ではこの手の請求はされていないので交渉の結果郵送不要のフロント預かりとし無駄な出費は御免被ることになった。
写真はフロントに預けいてチェックイン時に受領した宿泊前売券である。
このみやぎ宿泊割キャンペーン前売券の利用は当該の宿に直接連絡する方式となっているので大手予約サイトの利用はできず岩松旅館の公式HPから直接予約を入れざるを得なかったのである。
予約サイトのポイントが増えずちょっと残念。
さて肝心の宿泊プランであるが予約を手配した10月時点では客室の全てが青葉館に限定されており(即ち広瀬館利用のプランは設定されていない)夕食の形式で2種の宿泊料金が設定されていた。
両者の相違はコンベンションホール「折鶴」が会場となるバイキング料理か或いは作並ダイニング「喜惣」で供される会席料理かである。2名1室の料金単価はバイキングの¥16,500に対して会席では¥18,700(いずれも平日料金)と割高になるがいずれのプランも朝食は折鶴でのバイキングに設定されているので不特定多数と接触機会の減少を最優先と考えて高額な会席プランを選択した。
主要なテーマが格安宿の紹介にある本ブログにとって高額プランは遺憾に極まる選択であるが感染症に抗って感染の機会を増やす冒険を試みる勇気は湧なかった。
従って@18,700×2名=¥37,400が額面2万円のみやぎ宿泊割キャンペーンで1万円引きとなる筈だが収支決算は後述するチェックアウトの項で。
Part.3 は青葉館の客室
(00:00)
2021年04月30日
【序章】
2020年(令和2年)の10月末から11月に至ると国内でも新型コロナウィルス感染症発症者の増加が続き第三波の襲来を懸念する事態に至った。
この様な状況ではGoToトラベルの実施期間ではあるが訪問する温泉宿は移動距離を抑えた県内に限られる。そこで今回選んだ宿は秋保(あきう)温泉郷の「伝承千年の宿 佐勘」である。
秋保温泉は仙台市南部の太白区にあり同市北部に構えた自宅からは40分程で到達可能な位置にある。
「佐勘」は自ら「伝承千年」を冠する宿で秋保温泉の中でも歴史と格式を誇る高級旅館とされているがGoToトラベルの35%補助の適用で実質的な費用負担は日頃から標榜している手頃な価格範囲に落ち着いた。
【秋保温泉の宿泊施設】
名取川に沿って展開する秋保温泉は古くから広瀬川支流の新川(にっかわ)に沿う作並温泉と共に仙台の奥座敷と称される温泉郷である。秋保温泉は現在仙台市太白区に作並温泉は仙台市青葉区の行政下にあるが仙台市の中心部からは距離的に秋保温泉の利便が勝っており宿泊施設の数も作並を凌駕している。
因みに温泉旅館組合の加盟数を見ると秋保は13の施設を数えるが作並は僅か4館である。但し秋保温泉の「岩沼屋」と作並の「かたくりの宿」(2020年8月にコロナ関連で倒産)は各々の温泉旅館組合にその名を連ねておらず非加盟と思われる。
【佐勘の位置と外観】
佐勘は秋保温泉街の中心部に位置しており
周囲には「佐藤屋旅館」、「岩沼屋」、「ホテルニュー水戸屋」の老舗旅館が軒を連ねている。更に秋保温泉共同浴場やおはぎの売り上げ数で全国にその名を轟かせている地域スーパー「主婦の店さいち」も至近の徒歩圏にある。
仙台中心部から国道R286と県道r62を西進して秋保の温泉街に入り名取川の名所磊々峡を跨ぐ覗橋(のぞきばし)を渡ってr131を上流方向に進むと右手に「主婦の店さいち」の店舗建物とその周囲に用意された駐車場の光景がある。
この駐車場からは佐勘の大きな建物の東側を望むことができる。話が前後するが上の写真は帰途に「さいち」で名物のおはぎや野菜等の買い物で立ち寄った際に撮影したものである。
更に進んで佐勘の敷地に至ると入母屋屋根を載せた二階建ての玄関棟に迎えられる。
玄関棟奥の左右には佐勘の本体と思われる鉄筋構造の高層建物が見えている。
玄関前に車を乗り入れると専用の駐車場は更に県道を進んだ離れた位置にあると案内され狭い道を進んで駐車する。駐車場からは絶え間なく運行されている送迎車で玄関前に戻ることができる。
玄関前には左右に連なる屋根付き通路が設置され名入りの提灯が入口を誘導しているが
その左奥に車が出入りする露天の空間に大きな瓦屋根を構える重厚な造りは車寄せ以外の何もでもない筈だが建物側は目隠しを設置して遮断されている。嘗てはここが正面玄関であったろうとの推察は容易である。これだけ立派な構造物と比較すると現在の玄関に続く屋根は提灯の飾りがあってもやや貧弱に見える。
伝統を誇る温泉旅館が客を迎え入れる顔である玄関口を態々変更したのは如何なる理由に依るものか気に掛る。画面左端に見える緑のネットも気になるがは
これは落ち葉飛散の防止策で玄関の変更に繋がる要因とは無関係と思える。
車から降ろした荷物を携えて玄関に向かい独特な形状の注連縄(しめなわ)を見上げて自動ドアを開けると
直ちに右に折れる方向へ誘導されて
短い距離を進むと突き当たった生花装飾の左手に配置された自動扉の格子戸に迎えられる。
【佐勘の館内】
格子戸の奥は
ロビーの空間が拡がっており
奥の窓側は吹き抜構造の高い天井に
中庭を望む窓外風景がある。
吹き抜けから外れたロビーの玄関側はフロントが設置されており入館後は先ずここでチェックインの手続きを行う。
【館内の構造】
佐勘の施設は大規模で構造も複雑を極めているが大まかに見ると以下の4棟に区分され各々の棟は1Fと2Fがロビーやラウンジ、レストラン、宴会場等が配置され各棟は回廊構造で連結されている。
①玄関棟…1Fにフロントロビーを備え入母屋屋根を載せる2F構造の内部はロビー部分が吹き抜けで2Fの一部は宴会場
②花月館(B1F~10F)…1FとB1Fに温泉大浴場があり2Fは宴会場で3F~10Fは客室に充てられている
③山翠館(1F~6F)…3F~6Fは客室
④飛天館(B3F~13F)…B1FとB2Fは宴会場でB3Fは温泉浴場に加えて名取川沿いの露天風呂へ下る連絡通路があり3F~13Fは客室
この様な構造は立面図で見ると明解だが垂直移動に欠かせないエレベーターは花月館、山翠館、飛天館で独立した存在となっており3棟を跨いだ移動は複雑な経路が強いられる。
例えば花月館の客室から同じ花月館1FやBFの浴場に向かう場合は花月館内のエレベーターで直行できるが飛天館B3Fの浴場を目指すなら1Fか2Fで花月館のエレベーターから飛天館のエレベーターに乗り換えなければならない。
立面図では省略されているが平面図を見ると日本庭園を設えた中庭の周囲に配置された大小各棟を連絡する複雑な構造が明らかとなる。
この平面図では青色のEVが花月館のエレベーター位置で橙色は飛天館、緑色は山翠館のエレベーターである。
因みに花月館と飛天館のエレベーターは
中庭側の壁面がガラス張りのシースルー構造が採用されており垂直移動中に高度が変わる庭園の景観を楽しむことができる。
詳細な平面図から建物の外観で湧いた車寄せの疑問に一定の答えを想起することができた。
それは車寄せの大屋根を構えた旧玄関は玄関内のロビー空間を介して山翠館のエレベーターに直結する位置関係にあり売店(図面ではショッピングプラザ)や中庭の一角に見える石造りの酒くらも周囲を固めている。
従って嘗ては点線枠で囲った範囲の山翠館が佐勘の中核を成す施設群であったと思われる。後に花月館や飛天館の増築に伴って玄関棟や回遊式の連絡通路を増設拡張して現在の姿に至ったものではないだろうか。
山翠館と飛天館の建設時期は不明だが先に見たシースルーエレベーターの構造類似性から同時期或いは余り年月を置かずに開業したものであろう。
館内の複雑な構造に加えて客室棟である山翠館、花月館、飛天館の3F以上(客室部分)の平面図が公表されていない為各館相互の詳細な位置関係の把握は困難だが2F案内図から大まかな配置が推察できる。2Fは各館の結節連絡床となっているので多数の宴会場やレストランが配置されているがエレベーター位置から想定した概略の位置を記入してある。
Part.2はチェックインと花月館の客室
(00:00)
2020年01月24日
【さんさ亭の館内】
既に紹介した通りさんさ亭の外観は上流側からげんぶ館、本館中、本館上の3棟が連なる比較的単純な造りに見えるがそれは客室が集まる2F以上の階層でフロントやロビーを始め種々の共有施設が配置された1Fはなかなか複雑な形となっている。
客室に用意された館内配置図には1FとBF階の平面図が描かれている。
2F以上は立面図の表示でげんぶ館は1F~3Fの全館と本館中2Fの小宴会場を除き中と上の本館では各階が客室とされているが平面図は掲載されていない。
【1Fの構造】
1Fにはフロントとロビーや売店、ラウンジにコンベンションホール、大宴会場、中宴会場の施設が集中している。
この図は上流側のげんぶ館と本館中の部分で右端は本館上に連続している。
図面左側のげんぶ館は立面図には客室のみと表示されているが平面図ではクラブや会議室らしい空間の部分は明らかにげんぶ館の領域である。
右側の本館中は川側に置かれたラウンジと売店に通路を挟んだエレベータ迄が上階に伸びる客室棟の部分で玄関からフロントロビーにコンベンションホールを含む部分は別棟の拡張付加構造である。
本館上の4Fの窓越しに見下すフロントロビーの建物は切妻屋根を載せた2層構造で右下の庭園に開口する大窓の意匠が大きな特徴的な存在である。
窓外には庭園に下りる緑色の手摺りが特徴的な階段の設えも見えている。
更に屋根続きで連絡する奥の別棟の1Fはコンベンションホールの位置である。この棟は立面図の案内に客室のみの本館中2Fで唯一の例外に見えた小宴会場の施設と思われる。
これらの建物に敢えて呼称を付けるならフロント部分はフロントロビー棟、2Fに小宴会場を戴せるコンベンションホール部分はコンベンション棟とすべきであろうか。
これだけでも1Fは結構複雑な構造となっているが更に本館上の領域にも拡張構造がある。
画面の左端は本館中のフロントロビーへ繋がっているが
連結部分の床面は6段程の高低差がある。本館上と称する建物だが川沿い傾斜地下流側に立地する故の事情と思われる。
本館上の1Fは基本的に宴会場が配置されBF~6Fを結ぶエレベーターが垂直移動の有力な手段となっているが大宴会場「蔵王」は本館上の建物より山側に大きく逸脱している。
大宴会場と宴会場に接する川側で説明のない空白部分は厨房であろうか。
この逸脱部を本館の上階から眺めると本館の外部に拡張された平屋の建物が確認できる。これは大宴会場棟とでもすべきであろうか。こちらもテラスから庭園に下りる階段の緑の手摺りが見えている。
以上を総合すると1Fの構造は基本となる3棟(げんぶ館、本館中、本館上)の客室棟にフロントロビー棟とコンベンション棟、大宴会場棟が加わる大規模な施設で本館から張出したフロントロビー棟と大宴会場棟が庭園を囲む形となっている。
【BFの構造】
館内配置図には地下階の平面図も掲載されている。
この図から本館上の建物に限られたBF階の公共部分は全て男女別の大浴場となっていることが見て取れる。
右半分の川下側で説明がない空白部は何らかの管理施設の空間でありその位置から浴場への温泉給湯の関連設備が配置されているのではないだろうか。
詳細は後に述べるがさんさ亭の温泉は循環方式を併用しているのでこれらの設備機器を設置する場所の確保は必須である。
但しこのBF階は先に触れた様に実質的には地上階でもあるので資材搬入口の役割もある筈で一部は上階の厨房に連続的な機能を担っているのかも知れない。
【上層階の構造】
館内配置図に2F~6F各階図面の掲載はなく客室階の配置の詳細は不明である。
しかし客室ドアの内側に掲出された避難経路図から本館4Fの概要の把握が可能である。
先に紹介した1Fとの位置関係はフロントの裏側にある本館中のエレベーターと宴会場の入口に構える本館上のエレベーターを照らし合わせれば良い。
この図からもフロントとロビーや大宴会場は1Fや2Fに限定された別棟と理解できる。
本館の中と上の建物自体は松川の川側に客室を配し山側に通路とエレベーターを置く極めて分かり易い構造である。
2Fと3Fではこの図の左端に3階建てのげんぶ館の配置も描かれているのであろう。
Part.3は宿泊プランと客室
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