せいろそば
2020年07月10日
【品書】
各座卓には割箸立てと爪楊枝、七味の小瓶を載せたトレーの配置があり品書が添えられている。
B4版サイズのカードケースに収められた品書は表裏両面がありそばの写真を配した面はそばと一品料理、飲み物の3部構成となっている。
そばの項ではせいろ(板そば)、太打ち田舎そば、合い盛りそばの3品がいずれも\800でトップに並んでいる。従ってこの店ではせいろと太打ち田舎の2種のそばが提供されており合い盛りは両者を同時に味わえる品と理解が容易な構成となっている。写真の掲載もある合い盛りそばは一枚の板に盛られた白黒2種のそばの対比が分かり易い。
せいろそばに天ぷらを添えたげそ天そば\950、天せいろそば\1350に加えてせいろ料理付き\1300が板そば系のつけそばでかけそば系の冷したぬきそば\850、冷たい肉そば¥850は丼入だが冷たいそばに分類される品となる。
そばの項の後半は温かいそばで基本のかけそば\650で温かい肉そばと山菜そばの\850に天ぷらそばとにしんそば\1050がある。
かいもち(そばがき)\950はそばの本拠地ならではの品揃えと感じる。
一品料理の項にはげそ天\250、あなご天\300、にしん\400、天ぷら盛り合わせ\650等が並ぶ。げそ天やにしんの甘露煮は山形県のそば店に欠かせない一品である。
品書裏面はおみやげ項目があり生そば(つゆ付)、乾麺、そばつゆ、そば茶の他に自家製なんばんみそとゆず胡椒の販売も紹介されている。
【合い盛りそば】
品書に目を通した結果迷うことなく合い盛りそばを注文した。
暫くして運ばれたそばは品書の写真にあった通り1枚の板に2種のそばが盛られており徳利入りのつゆ漬物の角皿と薬味の小皿、小鉢の料理の4点セットで供される。
漬物は季節に依って変わる様だが大根と茄子が材料で薬味は刻み葱と下し山葵の標準的な2種。
小鉢の料理は寒天寄せの様な固まりでつるんとした食感に加わる甘味は杏仁豆腐に近いが蕎麦プリンであろうか。
合い盛りのそばは黒と白の鮮やかな色彩の対比に目を引かれる。
せいろの白いそばは透明感があり黒や茶色の細かなホシを含んだ上質な仕上げが見て取れる。
麺の太さは割箸の先端部と比較すれば解る通り2mm程の細打ち仕様で口当たりの良さを感じる。
一方田舎そばは見た目が黒い表面に水分を多く含む透明な部分がと黒いホシの存在が確認できる。
黒い麺を箸で掬うと5mm程もある剛直な太麺で口腔で噛み砕きながら戴く。
一般的に細打ちのそばは喉越しを楽しみ太打ちでは良く噛んで風味を味わうものと言われているがこの合い盛りそばでは両者の食べ較べが経験できる。
細打ちのせいろでは山葵の風味も楽しみながら
最後に残った太打ちそばを戴いて合い盛りそばを完食した。
【あさ沼の玄蕎麦】
会計時の短時間で店員と交わした会話からあさ沼では県内大蔵村肘折高原産の玄蕎麦を自家製粉しているとの情報を得た。細打ちせいろと太打ち田舎そば共に二八配合の手打ちそばとか。
白みが強いせいろそばは丸抜きの上番粉を製麺していると思われる。一方の太打ち田舎そばは玄蕎麦の挽きぐるみ(蕎麦の実の黒い表皮ごと砕いて製粉する)であろうが強い黒色は色彩的に鮮烈な印象を受ける。
【そば湯】
そば食中に運ばれたそば湯は
多くの店に広く普及している塗り桶とは異なり把手を付けた広口徳利型の独特な陶製容器に収められている。
何時もの通り猪口に残ったつゆに薬味葱を加えてそば湯で割り
そば食を締め括るスープに仕立てて余韻を楽しんだ。
【終章】
あさ沼の店舗は新庄市内の住宅地にあって住居を兼ねた大きな和風建築に手入れが行き届いた和風庭園を備え落ち着いた空間を提供している。
近隣の肘折産玄蕎麦を自家製粉し手打ちのそばを提供する職人技は確かで趣の異なる細打ちせいろと太打ち田舎そばの2種を味わうことができる。
新庄を訪問する機会があるなら一度の経験をお勧めしたい店である。
完
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