さんさ亭
2020年03月06日
【取り分けた料理】
これが解り辛い配置の料理台を巡って取り分けた朝食の料理。
先ずは朝食に欠かせない生野菜にミニトマトを添えたサラダ。
大皿はハムと卵焼きと塩焼鮭に豚肉生姜焼き、明太子、焼売を少しづつ。
麻婆豆腐も少量に抑えて定番の温泉玉子と納豆、焼海苔に牛乳を添えて朝食を完成した。
取り分けた料理は期待違わぬ味で具沢山の好ましい味噌汁を喉の潤滑剤として新米のご飯をお替りしたがカレーやハヤシの類に手を伸ばす余裕が無い儘で食事を終えた。
朝食後に一旦部屋に戻りチェックアウト前の入浴に向かう途中に通り過ぎたフロントロビーで終了間際の朝食会場の様子を垣間見ることができた。1時間程前には山の様に積まれていたトレーや皿が消え去り
陳列台上の料理皿も少なめに見える。
コンベンションホールの朝食会場に出入りする客足が途絶え一時の喧騒が過ぎ去った空間に満たされた安堵の空気を感じた。
【朝食後の入浴】
フロントロビーからBFに降り清掃時間直前の浴場で名残を惜しんだ。
何処に限らず朝の浴場は窓越しに多量の陽光が降り注ぐので室内の写真撮影は画面に見る通り逆光の暗い景色となるが体感は逆で明るい浴場風景に恵まれた幸せな入浴である。
昨夜は露天風呂に降り落ちていた雨があがり褐色の湯にゆったり浸かることができた。
入浴後に朝食会場の役目を終えたフロントロビーに立ち寄ると大窓の外に1FとBF浴場通路の2階層に渡って立体的に造成された庭園の景観を望むことができた。
【チェックアウト】
10:00のチェックアウトに先立ってフロント業務が始まっていた朝食後に宿泊費の清算を済ませていた。事前の会計は宿泊客の清算が集中するチェックアウト時の渋滞を回避し部屋の鍵を返却するだけで速やかに出立できる有効な手段である。
宿泊に要した費用は先にも述べたウィークエンドスペシャルプランの2食付単価¥9,504が2名で¥19,008(税サービス料込)に入湯税¥300と冷酒2本¥1,869(税込)が加わり¥21,177であったが事前に予約サイトに蓄積されたポイント割引きを利用していたので¥19,000程の清算となった。
【終章】
さんさ亭は宮城蔵王の遠刈田温泉では数少ない大規模旅館の一つであり温泉大浴場はそれに相応しい規模と設備を備えているが浴槽は大規模故に塩素滅菌剤を使用する循環濾過装置の稼働が不可欠で循環濾過併用の源泉掛流しとされているのは残念だが衛生管理の観点から止むを得ない方式ではある。
9月の連休期間に割安な宿泊プランの提供は有難いが集客に腐心していると受け取ることもできる。旬樹庵の一員になる等経営改善に取り組んでいる様子が窺える。
割安なプランであったが食事内容は不足を感じない十分なものであった。敢えて難を挙げるならば食事会場の接客要因が少なめでサービスが遅れがちなことであろうか。
完
(00:00)
2020年02月28日
【朝食】
翌朝の食事は7:00~9:00の時間帯で昨夜とは異なりフロントロビーに接するコンベンションホール青麻でバイキング方式で供される。最終入場は終了30分前の8:30とされ各自が先に紹介した朝食券を持参して入場することになる。
開始時間から40分程後に1Fに降りるとフロントロビーの部分も朝食会場の一部で機能しているのに少々驚いた。
そういえば昨夜浴場からの帰り道で撮影した夜間のロビーにはチェックイン時には無かった白布を掛けたテーブルが幾つも配置されておりぼんぼり風の照明を配したソファーはテーブル状の板で塞がれて着席不能となっていた。
このテーブルやソファーを塞ぐ天板が朝になると食器や料理の陳列台の機能を発揮している。
【バイキング料理】
トレーを積み上げた処が受付らしいが無人で朝食券受けが置かれていたのでこの箱に券を投入しトレーに箸やお絞り、大小の皿を載せて料理台の陳列に向かう。
取っ付きは生野菜のコーナーでミニトマトや輪切りの生胡瓜もあり
その先にはスライス玉葱やブロッコリー、コーン、ヤングコーン等が控え
フレンチ、黒コショウ、中華のドレッシング3種も用意されている。
次の台はミニサイズの笹蒲鉾にキムチ、お浸しのしらす和え、岩のり
漬物、厚焼き玉子、明太子が並ぶ。後列のガラス容器は梅干に岩のりやなめ味噌等所謂ご飯のお伴で売店で販売中とのメッセージカードの添付が怠りない。
次は保温料理のコーナーで肉じゃが、
豚肉の生姜焼きに
四川風麻婆豆腐や
点心蒸篭(焼売)の中華の品が並び
続いてカセットコンロで保温された2種の鍋は山形風の玉こんにゃく煮と牛すじ湯豆腐の煮込み料理である。
ロビーの外回りから内部に入るとソファーを塞いだテーブルの一つはパン食愛好者の為のクロワッサンとスプレッドが配置され
他のテーブルには肉団子と
酢豚の中華の皿に
3種の焼魚が控えている。角皿に載る魚は左からメバルの西京焼き、鮭の塩焼き、鯖の幽庵焼きと案内されている。朝食の品揃えには不可欠な焼魚だが異なる魚種が3種も並ぶのは余りお目にかからない光景である。
別のテーブルは朝食定番の納豆と焼海苔に温泉卵のコーナーで画面では見辛いが奥には生玉子も用意されている。温泉玉子と生玉子の両者の同時提供はありそうだが実例は稀で温泉場では大概温玉のみである。生玉の提供は玉子かけご飯(TKG)の愛好者に対応した措置かと思う。
更にヨーグルトやフルーツポンチにグラノーラ、コーンフレークを揃えたデザートコーナーと
牛乳にアップルとオレンジのジュースを供する飲料のコーナーが配置されている。
ロビーから食事会場のコンベンションホールに入る通路の両脇にも料理台が並び
うどんや
ご飯に
味噌汁と
お粥も加わったご飯類のコーナーで
カレーとハヤシのルーも控えておりあらゆる要望に対処する姿勢を窺うことができる。
通路の両脇でご飯や味噌汁等を取り揃えて入ったホール内にも
お浸しや焼き茄子、秋刀魚の醤油煮に
山形風の芋煮鍋、
薩摩芋の蒸篭蒸しを配した料理台が並び
お茶や
水が配置されている。
中華と地域の特徴を採り込んだ和食主体の多彩な料理が供されるバイキングは好ましいがロビー空間を臨時に利用する料理配置が解り辛く焼海苔や温玉、牛乳やデザートを求めて右往左往してしまった。
分かり易い位置に料理配置の大まかな案内掲示があれば混乱解消の一助になるのではないだろうか。
Part.8は朝食からチェックアウト迄
(00:00)
2020年02月21日
【さんさ亭の食事】
さんさ亭の夕食と朝食は会場食の設定で1Fの異なる施設で供される。
夕食は本館上棟1Fの大宴会場「蔵王」に用意され朝食は1Fフロントロビーに接し本館中棟に属するコンベンションホール「青麻」でのバイイング方式となっている。朝食に限って朝食券が人数分発行されておりこれを持参する必要がある。
【夕食】
チェックイン時に夕食時間は18:00と19:00の選択肢から19:00を指定すると飲み物の希望も問われた。事前に伝えておけば会場でスムーズに提供できると説明されたので冷酒を選んで予約したがその顛末は後程。
指定時刻に1Fに降りると本館上棟の下流側へ繋がる通路の奥にある宴会場へメインダイニングの暖簾が誘導している。上の画面は時間外の撮影となったので準備中の掲示板が会場への進路を遮っている。
通路の左手はガラス窓越しに浴場があるBF階に達する立体的な庭園の景観が望める。
通路の奥の会場は左奥に伸びており畳敷きの上がり框で館内履きのスリッパを脱ぎ裸足で入場する。
場内は奥に見える緞帳を下げた舞台の造りは宴会場らしい備えだが床面は鮮やかな色彩の装飾シート貼りで洋風に仕上げられており配置されたテーブル天面も類似の彩色が施された独特な空間を醸している。
部屋番号で指定された席に着くと既に多くの料理が並び料理を紹介する会席献立が添付されている。
この品書には「旬の○○」の様な抽象的な表現が多用されており使用した食材の具体的な記載が無いのは料理長の嗜好に依るものであろうが客にとっては不親切と感じる。
奥の列には固形燃料で加熱するコンロが三つ並ぶ。左は一人分の釜飯を炊く小さな羽釜で松茸の釜飯と紹介されている。
中央は旬魚のつみれ鍋と
右端は和豚のすき焼き陶板である。
このつみれ鍋と豚すき焼きは献立の品書には主菜と記されている。
前列右寄りに見える朱塗りの枡は食前酒の器で
中段手前の青い小鉢が前菜、左隣りの黄色の容器はジャージャー風海藻麺。奥の角皿は旬魚の焼物で副采とされるがこれも食材の記載がなく脂の乗った赤魚の照り焼きである。焼魚では定番となっているはじかみの他にプラカップで添えられた薄切り生姜の煮物の甘辛味が珍しい
前菜は旬の小鉢とされ食材に関する記載はないが蕎麦の実とモロッコインゲンかピーマンに見える緑野菜のごま和えである。
ジャージャー風海藻麺は海藻を練り込んだ緑色の麺に辛味の味噌を乗せ玉葱スライスを配った品で麺と味噌を絡めて食することからジャージャー風の名を冠したのであろう。麺はプルプルした蒟蒻麺の食感であった。献立でこの料理が食事に分類されているのは凌ぎの位置付けと思われる。
海藻麺の左隣りには蓋を載せた茶碗蒸しの容器が配置されているが実はこれには茶碗蒸しではなく豆腐のあんかけが収められている。献立に記載された正式名は遠刈田名物寄せ豆腐の野菜あんかけで焼魚と同じく副采の位置付けとなっている。地元産の豆腐であればあんかけよりも湯豆腐や奴等素(す)の味が分かり易い手法で提供して欲しかったと思うのは私だけだろうか。
旬魚二点盛りと記された刺身は鮪の赤身とサーモンの2種で小菊の黄と大葉の緑が華やかな色彩を添えている。
三つ並んだコンロの燃料に点火されて食事の準備は整い暫く待ったがチェックイン時に予約した筈の冷酒が運ばれる気配が無く忙し気に立ち働く数少ない配膳担当者に確認を要請する羽目となってしまった。
こうした事態に立ち至ると事前指定の利点は全く感じられず何の為の予約であったのかと疑問が湧くばかりである。本来は速やかな飲料提供の為の方策であるべきだが人手不足が大きな障害となって予約システムが有効に機能していない様に見える。
やっと運ばれた一ノ蔵の冷酒を嗜みながら
火が通ったつみれ鍋や
蔵王和豚の陶板すき焼きに箸を伸ばす。
献立の品書には旬魚のつみれ鍋との記載のみで魚種に言及していないがつみれの色彩から青魚の秋刀魚や鯖の類であろう。食味だけで魚種を特定する感性を持ち合わせていない我が身が残念である。
すき焼きの豚肉は献立の品書に蔵王和豚ジャパンと表記されており地域特産のブランド品と思われる。鉄板にも見える陶板上のブランド豚にはシメジやミニトマトと共に割り下で煮込み小鉢の生卵に絡めて戴くすき焼きの正当な作法が用意されている。
多様な料理を堪能していると冷酒が空になり追加することになった。今度は地元ブランドの蔵王生貯蔵酒で先程とは異なり速やかに供された。
料理を粗方平らげたところで食事に取り掛かる。
炊きたての釜飯を茶碗に装っていると
練り物と三つ葉を浮かべたお吸い物が運ばれ
程なく季節のデザートも供される。小鉢のデザートはクリーム添えの白玉餡とフルーツヨーグルトのコンビネーションで季節感には疑問を感じたがこれで夕食を締め括った。
Part.7は朝食バイキング
(00:00)
2020年02月14日
【大浴場の浴室】
二重のガラス戸を通って浴室に入ると
正面の奥にサウナ室の扉が見えるが当日は改修準備で使用停止との掲示があった。施錠の無い内部を覗くと木製ベンチを備えた普通の造りだが川側の外壁に窓が開口し外景を採り込んでいるのが構造的な特徴となっている。
浴室は入口から右奥に拡がり外壁のガラス窓側に二つの浴槽がありガラス越しの窓外には露天風呂の浴槽も見えている。
ガラス窓の対面となる脱衣室側の壁面は浴槽が続く奥の壁面まで総数20基の混合シャワー栓を備えた洗い場が並んでいる。混合栓の数は多いが故障中のものや何箇所かは家庭用のシャワー栓に置き換えられて湯水の吐出量が極端に少ないものも見受けられた。
内湯の浴場は手前に円形に成形された浴槽が置かれ窓ガラスには「ぬるめ」の青文字が掲示されている。
奥は中央に湯口の四角い構造物を配した長方形の大浴槽でガラス窓の掲示は赤文字で「あつめ」となっている。
この大浴槽と円形浴槽は一見各々が独立した浴槽に見えるが
仔細に見ると窓側の切り欠き部分から大浴槽の越流が円形槽への流入路があり加えて両者の浴槽底部が開口で繋がる構造となっている。従って現状の円形浴槽は大浴槽に付随する温めの湯と位置づけられるが嘗ては異なる機能を発揮していた様子が窺える。そのヒントは先に掲載したBF階の案内図に隠されている。
内湯の部分に描かれた円形の浴槽には「泡風呂」の文字を黒塗りで抹消した痕跡が見えている。即ち円形の浴槽は嘗て泡風呂の機能を備えていたと思われるが何らかの理由でその機能が除かれて現在は「ぬるめ」の浴槽に甘んじているのではないだろうか。
大浴槽に満たされる湯は中央の湯口から注がれ
タイル張りの底面が見通せる程度の透明度を備えているがその底面には円形の排湯口らしき設備が幾つも見えている。
また浴槽最奥の窓側で露天風呂への出入口の脇の位置には茶色の細い耐熱塩ビ管が浴槽内部に引き込まれておりその端部に手を添えるとここからも湯が注入されている。
内湯の円形槽には独自の湯口が存在せず大浴槽とは底部と表面の越流路で繋がっているので温泉の給湯に関しては一体構造で大浴槽には二つの異なる給湯口と底面排湯口の存在から循環ろ過装置の稼働が窺える。
後に紹介する泉質表示には源泉掛流しと循環の併用と明記されているのでこの判断に間違いはない。
それでは二つある湯口のどちらが源泉の掛け流し口かと新たな疑問が生じるが目立たない存在の耐熱塩ビ配管の方ではないだろうか。判断理由は次の露天風呂の項に譲る。
【露天風呂】
露天風呂は内湯浴室窓側の浴槽の縁沿いに最も奥まで進んだ外壁のガラス戸が出入口である。
出入口の扉から外に出ると岩風呂の露天浴槽に迎えられる。浴槽の一部は建物の軒先の保護範囲にあるがベランダ風の腰高壁で仕切られた川側は直接降雨降雪に晒される空間となっている。壁上の装飾高欄の変形が景色的には残念な存在に見える。庇の奥に見える白壁の部分は改修準備で使用中止中の窓付きサウナ室である。
露天の浴槽に目立った湯口は認めないが
出入口からガラス窓の外壁を這う耐熱塩ビ管が石組の隙間に沈んでおり湯が注がれている。
この配管を辿ると先に紹介した内湯大浴槽の塩ビ管給湯口の配管から分岐しており内湯と露天の両者へ共通の配湯システムとなっている。
従って源泉は塩ビ配管から給湯されているのではないだろうかと思う。さもなければ露天浴槽は専ら循環ろ過湯で満たされ源泉の恩恵に恵まれない残念な浴槽となってしまう。
露天風呂の外壁越しには松川が流れる広い河原の上流架かるこけし橋が見えている。
【泉質】
脱衣室内に掲げられた温泉泉質の表示を見ると
左上の源泉名は「遠刈田7号泉」で
泉質はナトリウム·カルシウム-硫酸塩·塩化物泉 低張性中性高温泉に小さな文字で旧泉質名の含塩化土類-芒硝泉が併記されている。
右上の施設名は「遠刈田ホテルさんさ亭」と旧施設の名称を留めている。
更に下段に記載された利用形態の項目を見ると温度管理の為に高温時の加水と低温時の加熱に掛け流しと循環を併用し衛生管理上塩素系薬剤の使用が明記されている。
源泉の給湯量を大幅に超過する大容量の浴槽では温泉湯を有効活用する為に循環再利用が行われているが衛生管理の観点から湯中の微細物を除去する濾過と滅菌作用を有する塩素剤の添加が必須となるので循環濾過と塩素剤使用は一体化したシステムとして運用されている。源泉の湧出量に依るので大量の湧出に恵まれる温泉の少なからぬ例外はあるが大規模な温泉浴槽では先ず循環濾過の稼働を疑って良いであろう。浴室内で塩素臭(プールのカルキ臭と同じ)を感じる場合は塩素剤滅菌が行われていると思って間違いはない。
Part.6はさんさ亭の食事
(00:00)
2020年02月07日
【さんさ亭の温泉浴場】
前にも記した通り温泉浴場は本館上棟のBF階に配置されている。
男女別の大浴場はそれぞれ川側に露天風呂を備えている。BFの図面で見る男女の脱衣室や内湯部分の配置は線対象となっているが露天風呂の部分は浴槽の形等に差異が認められる。
大浴場は深夜も利用可能で温泉好きには嬉しい措置だが翌朝9:30からは清掃時間に設定されているので朝食後の入浴は早めに切り上げる必要がある。また火曜日に限って清掃時間は9:00からとなっている。宿泊客が少ないであろう月曜日の翌朝に週一回の時間をかけた清掃を設定しているのであろう。
BF階に連絡する本館上棟のエレベーターで降りた
ホール空間は右手が庭園の景観を望む全面ガラス張りで
隅のカウンターには湯上りの水分補給の為の冷水が用意されている。
壁面の案内にある矢印に従って180°向きを変えガラス窓に沿って進むと
ガラス越しに池に泳ぐ鯉の姿が見え
暖簾を提げた大浴場の入口に行き当たる。
男湯は「喜楽々(きらら)の湯」、女湯は「浮楽々(うらら)の湯」と館内案内に紹介されているが浴場入口は鶯色の暖簾に殿方と柿色暖簾のご婦人と小さな文字で識別されているがより目立つ行燈型の電照看板が男女の別を明示している。
肉眼では目立つ電照看板だが写真撮影では輝度が高過ぎて白飛びしてしまうのはいつものことである。
【男湯の内部】
鶯色の暖簾を潜ると右手は
館内履きのスリッパを脱ぐ板張りの上がり框があり履物収納棚の上には施錠できる貴重品用のロッカーが設置されているがスチールの塊は周囲の造りとは調和せず場違いな印象を受ける。
【脱衣室】
上がり框から90度左に向きを変えた正面は木製のベンチを備えた脱衣室内の休憩所の設えで右手奥に脱衣棚が見えている。
正面左の奥は浴室に繋がるガラス戸の出入口があり
その手前に仕切られた空間は洗面所の充てられおり湯水栓を備えた6基の洗面台が並んでいる。
休憩所から見える右奥の脱衣所は
3段の棚木製に籐製の脱衣籠を配した開放型となっている。
籠の総数は数えていないが80程であろう。
Part.5は浴室の内部
(00:00)
2020年01月31日
【さんさ亭の宿泊プラン】
今回大手予約サイトで確保したのは休前日が絶対お得と謳うウィークエンドスペシャルプランである。このプランはさんさ亭本館中の部屋の2食付単価が¥9504(税サービス料込)とされ紅葉前の閑散期ではあるが9月の連休中に一万円を切る設定は確かにお得と感じる。
更に今回は予約サイトに貯まったポイントの割引措置も活用したが詳細は後のチェックアウトの項で。
【チェックイン】
フロントのチェックイン手続きで夕食の希望時間を問われ19:00を選択した。
この宿では客室迄係員に誘導される方式でその途中に食事会場や温泉浴場の位置が案内され部屋の鍵と食事案内に朝食券が渡される。
朝食はバイキングとのことで人数分の食事券がある。
【本館の4F】
通された客室は本館中の最上階4Fの412室であった。
部屋の目の前の山側には本館中のエレベーターが設置されているがこれは1Fのフロントロビー階と4Fの連絡に限られBFの温泉浴場に降りることはできない。
先にも掲載した配置図に依ると4Fには川側に410~416の6室(414は欠番)の客室があり416室は広い空間を占めている様に見えるがその他の5室は面積的に類似の構造と思われる。
因みに本館中から本館上へ連絡する通路の山側に417と418の小さな部屋が控えているがこれは客室には狭過ぎるので添乗員か或いは従業員用の設えではないだろうか。
本館上への連絡通路の山側左手壁面の奥に並んで見える2枚のドアがこの小部屋の入口である。
小部屋の入口近くに設けられた川側の窓外景色は明らかに2棟の建物を連結する通路部分であることを物語っている。画面の右側が本館中、左が本館上の建物である。
既に小部屋のの手前から見えていたが連絡通路を進むと本館上のエレベーターホールに行き当たる。このエレベーターは近接する階段と共にBFに移動できる限られた手段となっている。
エレベーターホール右手の奥は下流側に本館上の廊下が伸び右の川側に420~428の8室(824は欠番)の客室が並んでいる。
【本館 中の客室】
本館中412室の客室は踏込みの先に畳敷きの通路が川側に大窓を開けた和室に導いている。
通路の右は寝具を収める押入れで左側の引き戸の奥は
2基の洗面台を備える広めの洗面室でその奥のサッシ戸の先は
バスルームとなっている。
洗面台の背面のトイレの装備は暖房便座のみで最近では主流のシャワー洗浄機能の備えがないのはちょっと残念である。
畳の通路から部屋に入ると奥の窓側は障子の仕切りを挟んだ広縁の設えで
窓外には松川の景観が控えている。
この窓から松川の上流方向に目を向けると遠刈田温泉街を象徴するこけし橋の景色があるが何よりも橋の下流にコンクリートで何段にも固めた大規模な砂防施設の存在に強烈な印象を受ける。
因みにここからは見えないがこけし橋の上流側にも同じ目的の土石流緩和施設が築かれており蔵王山塊から急傾斜を下る濁川と澄川の2筋が遠刈田温泉地区で合した松川の水流を抑制している。
また画面左奥の対岸に茂る緑の中には「バーデン家壮鳳」の建物が見え隠れしている。
この412屋から望んだ時間と伴に変貌するこけし橋の景色は後に別項で紹介する。
広縁部分左壁面の棚にはグラスケースと飲料の料金表が並んでおり棚下は冷蔵庫が配置されている。
広縁の右側壁面は姿見が設置され予備の座椅子や座布団が控えている。
広縁を除いた畳敷き部分の室内は二間半四方の12.5畳余裕十分の広さである。
広縁に向かって右手の壁面は手前の入口側に腰高のクローゼットが嵌め込まれ板敷きの床面は荷物置き場となっている。広縁側の奥は広い間口の床の間に充てられているが不安定な位置に懸かる額装が唯一の装飾の殺風景な空間となっている。
額は地元遠刈田系こけしの伝統的な彩色模様を墨書の濃淡で現したもので作者の刻印も認められる。
因みに遠刈田のこけしは細身で寸胴な胴体が外見上の大きな特徴で頭部の髪形や目鼻立ちを象る黒色に加えて胴体に描く何段もの菊花模様の緑や赤色の色彩が鮮やかである。
クローゼットの両引き襖戸の中には
浴衣や丹前を収めた乱れ箱にタオル類と歯ブラシも用意されている。浴衣は各種のサイズが用意され有り難い。画面ではフェイスタオルの下の黄色がバスタオルで右の紫色は濡れタオルを持ち運ぶポリ袋である
床の間に対峙する左側は何の設えもない単純な壁面で
振り返った入口側壁面の右隅にはテレビの収納空間があり
棚の上下に金庫や館内電話等が集中配置されている。
一通りの室内観察を終えて座卓に落ち着き
お茶と茶菓子を戴く。
【こけし橋の景色】
ここで時間と伴に変貌するこけし橋の景色を紹介したい。
当日は台風の影響が残る気象状況で入室直後は明るさがありながら時々小雨が混じり視界が利かない曇り空であった。橋の袂の両側に橋名の由来である4基のこけしのモニュメントが見えている。
18:00頃になると空の明るさは残っているが橋にはナトリウム灯の照明が点灯する。橋上には明かりが五つ見えている。照明灯は計6基設置されており左から二番目と三番目の間に照明灯がもう1基ある筈だが故障している様子。
更に1時間経つと外景は闇に閉ざされオレンジの明かりが一際輝きを増し橋脚や川面の陰影が立体感を映し出している。
松川に架かるこけし橋は遠刈田温泉街を代表する建造物である。
こちらは翌朝のチェックアウト前にB1地階の露天風呂の外景に視座を変えたこけし橋。赤い塗装の橋桁はどこにでもある景色だが両側の袂に抱える4基のこけしモニュメントが遠刈田温泉街にあるこの橋の矜持である。
Part.4はさんさ亭の温泉浴場
(00:00)
2020年01月24日
【さんさ亭の館内】
既に紹介した通りさんさ亭の外観は上流側からげんぶ館、本館中、本館上の3棟が連なる比較的単純な造りに見えるがそれは客室が集まる2F以上の階層でフロントやロビーを始め種々の共有施設が配置された1Fはなかなか複雑な形となっている。
客室に用意された館内配置図には1FとBF階の平面図が描かれている。
2F以上は立面図の表示でげんぶ館は1F~3Fの全館と本館中2Fの小宴会場を除き中と上の本館では各階が客室とされているが平面図は掲載されていない。
【1Fの構造】
1Fにはフロントとロビーや売店、ラウンジにコンベンションホール、大宴会場、中宴会場の施設が集中している。
この図は上流側のげんぶ館と本館中の部分で右端は本館上に連続している。
図面左側のげんぶ館は立面図には客室のみと表示されているが平面図ではクラブや会議室らしい空間の部分は明らかにげんぶ館の領域である。
右側の本館中は川側に置かれたラウンジと売店に通路を挟んだエレベータ迄が上階に伸びる客室棟の部分で玄関からフロントロビーにコンベンションホールを含む部分は別棟の拡張付加構造である。
本館上の4Fの窓越しに見下すフロントロビーの建物は切妻屋根を載せた2層構造で右下の庭園に開口する大窓の意匠が大きな特徴的な存在である。
窓外には庭園に下りる緑色の手摺りが特徴的な階段の設えも見えている。
更に屋根続きで連絡する奥の別棟の1Fはコンベンションホールの位置である。この棟は立面図の案内に客室のみの本館中2Fで唯一の例外に見えた小宴会場の施設と思われる。
これらの建物に敢えて呼称を付けるならフロント部分はフロントロビー棟、2Fに小宴会場を戴せるコンベンションホール部分はコンベンション棟とすべきであろうか。
これだけでも1Fは結構複雑な構造となっているが更に本館上の領域にも拡張構造がある。
画面の左端は本館中のフロントロビーへ繋がっているが
連結部分の床面は6段程の高低差がある。本館上と称する建物だが川沿い傾斜地下流側に立地する故の事情と思われる。
本館上の1Fは基本的に宴会場が配置されBF~6Fを結ぶエレベーターが垂直移動の有力な手段となっているが大宴会場「蔵王」は本館上の建物より山側に大きく逸脱している。
大宴会場と宴会場に接する川側で説明のない空白部分は厨房であろうか。
この逸脱部を本館の上階から眺めると本館の外部に拡張された平屋の建物が確認できる。これは大宴会場棟とでもすべきであろうか。こちらもテラスから庭園に下りる階段の緑の手摺りが見えている。
以上を総合すると1Fの構造は基本となる3棟(げんぶ館、本館中、本館上)の客室棟にフロントロビー棟とコンベンション棟、大宴会場棟が加わる大規模な施設で本館から張出したフロントロビー棟と大宴会場棟が庭園を囲む形となっている。
【BFの構造】
館内配置図には地下階の平面図も掲載されている。
この図から本館上の建物に限られたBF階の公共部分は全て男女別の大浴場となっていることが見て取れる。
右半分の川下側で説明がない空白部は何らかの管理施設の空間でありその位置から浴場への温泉給湯の関連設備が配置されているのではないだろうか。
詳細は後に述べるがさんさ亭の温泉は循環方式を併用しているのでこれらの設備機器を設置する場所の確保は必須である。
但しこのBF階は先に触れた様に実質的には地上階でもあるので資材搬入口の役割もある筈で一部は上階の厨房に連続的な機能を担っているのかも知れない。
【上層階の構造】
館内配置図に2F~6F各階図面の掲載はなく客室階の配置の詳細は不明である。
しかし客室ドアの内側に掲出された避難経路図から本館4Fの概要の把握が可能である。
先に紹介した1Fとの位置関係はフロントの裏側にある本館中のエレベーターと宴会場の入口に構える本館上のエレベーターを照らし合わせれば良い。
この図からもフロントとロビーや大宴会場は1Fや2Fに限定された別棟と理解できる。
本館の中と上の建物自体は松川の川側に客室を配し山側に通路とエレベーターを置く極めて分かり易い構造である。
2Fと3Fではこの図の左端に3階建てのげんぶ館の配置も描かれているのであろう。
Part.3は宿泊プランと客室
(00:00)
2020年01月17日
【序章】
2019年の夏は猛暑日が続く一方で列島各地で頻繁に豪雨や台風に見舞われ公共交通網にも大きな被害が生じた季節であった。
東北地方の仙台では9月に入ると暑さが一段落し紅葉の時季はまだまだ先だが夏場は旅に出ず家に籠っていたこともあって旅心をそそられ同行者との日程を調整した結果連休中の割安宿泊プランの温泉宿を見つけた。予約した宿は蔵王町遠刈田温泉の「旬樹庵さんさ亭」である。
【遠刈田温泉のさんさ亭】
さんさ亭は遠刈田温泉街の中心部で松川に架かるこけし橋下流の川沿いに立地している。
ここは20数年以上前に一度宿泊した経験があり当時は新館の増築が竣工した直後であったと記憶している。以前の屋号は「遠刈田ホテルさんさ亭」であったがいつの間にか表題の「旬樹庵さんさ亭」に変わっていた。本文中では簡易に「さんさ亭」と表記する。
近年は冬のスキーシーズンに遠刈田温泉地域の温泉付きペンションや民宿を利用しており既にコットンくらぶ、湯宿飛鳥にペンションどんぐりは2回(1報と2報)に渡って宿泊記を紹介しているが本格的な温泉宿は久し振りの訪問となった。
【旬樹庵とは】
屋号に旬樹庵を冠する理由はネット情報で簡単に判明した。
旬樹庵は公式HPに依ると東京都港区芝に本社を置き旅館施設の経営に参画し再生を支援するブランド名で現在国内15館のグループ(執筆時点)とされている。
【宿泊施設のグループ化】
この種の温泉旅館等の経営集団としては大江戸温泉物語グループ(全国34施設)や伊東園グループ(全国49施設)が高名な存在で東北地域では太平洋岸の宮城県女川から山形県鶴岡市の日本海側に跨る5施設を王将街道と自称する王将グループ、山形県内で蔵王温泉を中心に13施設を擁する高見屋グループも良く知られている。
因みに高見屋グループの一員となった「名湯舎創」の宿泊体験は既報の通りである。
【さんさ亭の外観と構造】
さんさ亭は松川左岸にあり山側の広い駐車場から見ると
上流側に黄色い外壁を纏う3層構造のげんぶ館の建物の下流側に
大きな玄関ホールが張出している4層の本館中(なか)とその奥に7層(B1~6F)の本館上(うえ)の白壁の2棟が連なっている。
げんぶ館に本館中と本館上の3棟の館内は各階が連結されていて自由に往来できるが各々建設時期は異なる。げんぶ館は旧館の位置付けの古めの建物で本館上が3棟の中では最新と思われ宿泊プランにもそれなりの料金差が認められる。
3棟の建物が並ぶ松川の対岸にこれを望むビューポイントは見当たらず写真の撮影は叶わなかったが部屋に配置された館内案内に建築パースと思われる想像図が含まれていた。
これを見ると3棟の構造や位置関係が明瞭で下流側の下り傾斜に建つ本館上はBF1~6Fとされているが実質的にBF1は地上階である。
駐車場から玄関に進むと玄関の手前に車の乗り入れも可能な独立した大屋根が雨除けの機能を備えている
大屋根を潜り抜けた先が本館中の建物に繋がる玄関部分で入口のガラス戸が奥に見える懐深い造りとなっている。入口扉の内部は右手90度の位置にもう1枚のガラス戸が控える二重戸構造。
【玄関の内側】
玄関の二重扉を潜って入場すると正面のフロントカウンターに迎えられる。
フロントの左手はロビーの空間で全面ガラス張りの外壁面は外光を採り入れると共に外部に設えらた庭園の景観も提供している。
ロビーの左手でフロント背面の位置にはコンベンションホールが控えておりその入口の装飾にはダイニングレストラン青麻(あおそ)の文字がある。
ロビーの右奥には売店も見えている。
Part.2はさんさ亭の館内
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