そばまつり

2023年12月29日

【序章】
 10月下旬に開催された大石田町の新そばまつりに続いて11月に入ると戸沢村で新そばの提供も行う旬の市や新庄市の新庄そばまつりが週毎に連続して開催された。
大石田町→戸沢村→新庄市の順で新そばを振る舞う催しの日程は以前から定着していたが2019年からの新型コロナ感染症の蔓延により途絶えていたが2023年の秋になって復活を確認し参加を検討したが日程の都合で今回は先に掲載した大石田町と新庄市の2会場限定での参加となった。

【新庄そばまつりの概要】
 新庄そばまつりは2023年の開催が第14回とされており以前の掲載記事でも触れているが新そばまつりではなく敢えて「新」を省いたそばまつりの表記が採用されている。
 11月12日に開催されたそばまつりの会場は例年通り新庄市東部の金沢山屋地区の山屋セミナーハウスである。この施設は旧山屋小学校の建物を再利用しており鉄筋RC2層構造の校舎棟と鉄骨平屋の体育館棟が屋根続きで連結された構造に加え建物前の南向きの広い旧校庭に多数の車両駐車が可能で大人数を集める催事会場には好適な条件が整っている。
 参加費用はそば前売り券2食分の\1,000と当日券1食分\600の販売がある。前売券は市内の観光協会や農協、そばまつり事務局を担当する市農林課の窓口に加えて市内そば店の6店舗でも事前に購入できるがいずれも仙台からは遠隔地である。従って新庄市農林課へ直接メールで前売券の予約を申込むと前売券予約の葉書が送付され当日持参して事前予約が確認されることになる。
実際にメールの申し込みから3日後には予約葉書が配達された。

【新庄への道筋】
 事前の天気予報で当日の日本海側は寒気が発達する荒れ模様で山間部では降雪の可能性も指摘されていた。11月半ばで冬タイヤに換装していない車で山形県へ向かう峠越えには不安を感じ最悪の場合は訪問断念も覚悟したが当日になると幸いなことに午後からの降雨は避けられないものの県境に降雪の可能性はなく訪問を決断した。
山形県境越え③ルートyahoo
 山形へ県境越えの3ルート

自宅から新庄へ向かう県境越えの道筋は
 ①国道R48関山峠 仙台市青葉区作並→関山トンネル→東根市
 ②国道R347鍋越峠 加美町小野田→鍋越トンネル→尾花沢市
 ③国道R47堺田峠 大崎市鳴子温泉→堺田峠→最上町
の選択肢がある中で冬期でも道路状況の安定性が期待できる①の関山ルートに決定した。
飽くまでも個人の判断ではあるが嘗て冬期閉鎖が常態であった3桁国道の鍋越峠よりもR48とR47は古くから物流幹線の機能もあり手厚い道路管理が期待できる。但し宮城県内で寒冷地の代表格である川渡と鳴子、中山平温泉を経由する③のR47は路面凍結の恐れから避けることにした。
天候に恵まれるなら11月中旬は②の尾花沢市に抜ける鍋越峠手前の山肌に拡がる見応えのある紅葉がお勧めである。
 午前中は予報通りで降雨もないR48を進むと国土交通省施設前の気温は7℃と表示されており降雪はないと確信して関山トンネルを通り抜け東根市に下る。東根で北隣の村山市へ進路を変え交差する幹線道路のR13を新庄市迄北上するのが基本だが今回は村山ICから東北中央道E13に乗り
新庄鮭川ICから山屋へ
 新庄鮭川ICから山屋へ

新庄ICより一つ先の新庄鮭川ICで降りて右折し東へ進むと道なりで奥羽本線を跨ぎR13との交差点を直進すると僅かな距離で山屋セミナーハウスに達する。
この経路での所要時間は途中尾花沢北ICに接する道の駅尾花沢でのトイレ休憩を含めて130分程であった。東北中央道は70km/h制限の部分もあるが信号なしのノンストップ走行に依り下道のR13を走るより時間短縮が可能である。

【山屋セミナーハウス】
 新庄そばまつり会場の山屋セミナーハウスは既に述べた通り嘗ては小学校の建物であった。
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 山屋セミナーハウス

鉄筋構造の2階建校舎棟に連なる
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 校舎棟と体育館棟

体育館構造の建物がそばを振舞う会場となっているが
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 会場入口

校舎側の玄関前に受付の掲示が設けられている。

【受付と前売券の購入】
 玄関内には券売所と受付があり先ず券売所で予約葉書と引換えに前売券を購入し
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 前売券と整理券

受付にこの券を提示すると入場順の番号を記したオレンジ色の整理券が渡される。
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 前売券裏面と整理券

この整理券の番号に従って会場への入場が可能となるが下半分は市内のそばまつり協力そば店5店舗で11月30日迄有効の\200割引券となっている。又前売券の裏面にも協力そば店の記載があるがこちらは6店舗で割引券と異なっているのは何らかの事情があるのだろう。
440番台の入場迄は時間があり校舎棟内の待合室へ誘導されたが屋外の出店の探検に向かった。

【屋外の出店】
 校舎棟の前には例年多数の出店が並んで賑わいを増していたが今回は僅かに5店舗のみと寂しい限りで
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 出店

12:00を過ぎると閉店する店も現れた。
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 店頭の蕪や大根

しかし野菜類を扱う店は活気がありか蕪や大根に山菜を売る店と
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 野菜と漬物、花の店

野菜と漬物に花を売る店から
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 地蕪

大根の様に細長く葉元が紫の地蕪と
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 球形の大根と普通の大根

蕪の様な球形で表面は白いが内部は紫の大根等仙台では珍しい根菜を買い求めた。
新庄市を中心とする最上地方ではアントシアニン由来の紫色を纏う根菜類が多い様に感じるがこれは気候に依るものかあるいは土壌成分に起因するものなのであろうか。残念だが知識の持ち合わせがない。

【そばまつりの会場】
 440番台の入場案内放送があり校舎棟から屋根続きの通路経由で
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 会場入口

体育館棟の会場に向かう。
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 会場内

場内の配置は以前と変わらず右手の壁面に沿ってかけそば(温そば)ともりそば(冷そば)を受取る2列の通路が設けられている。
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 そばの提供口

お渡しの掲示上部の窓外に見えるブルーシートは屋外に仮設されたそばを茹でる釜場も従来と変わらぬ配置である。
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 お盆と割箸

但しそばの提供口の手前のテーブルに配置された月形盆と割箸はセルフで渡し口にへ参する方式に変更されている。
折からの雨模様で気温も低く会場内には大型の暖房機が稼働していたが会場入口と釜場の開口部を吹き抜ける強風が吹き抜ける環境でもりそばよりも温かいかけそばに長い列が生じていた。

【1杯目のもりそば】
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 もりそば1杯目
 それでもそばの風味は冷そばに限ると信じて受取った1杯目のもりそばはつゆと共に使い捨てのポリ容器で供され
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 薬味と漬物のパック

薬味の刻み葱とわさびに漬物夫々のプラカップを詰合わせたパックが添えられる。
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 もりそば

月形盆以外の全ての食器が使い捨てで揃えられているのはコロナ渦後の感染予防に備えたものとは思うがプラスチック廃棄物増の加は如何なものかとの疑問も湧く。
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 細麺

丼型のポリ容器に収まるそばは3mm程の細さに切り揃えられしなやかな柔軟性を備えて口当たりが良く啜り込み易い細麺が好ましい。
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 色白のそば

接写でズームアップしたそばは薄い褐色を纏う色白で蕎麦の実の黒色表皮に由来するホシが僅かで丸抜き製粉に繋ぎの小麦粉を加えた二八製麺であろう。
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 1杯目のそば湯

喉越しの良い細打そばを食した後は何時もと変わらず残りのつゆにそば湯を加えてそば風味のスープを楽しみ1食目を終えた。

【2杯目のもりそば】
 1杯目を食した会場内は先にも述べた通り大型の暖房機の温風を凌駕する冷風の外気が吹き抜け寒さが勝る環境であったが
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 2杯目のもりそば

そば好きの矜持で2杯目も冷たいそばの列に並びもりそばを受取り客席に戻った。
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 太めのそば

2杯目は1杯目と較べて明らかに太めの仕上で割箸の先端と同程度の5mm前後の麺に加えて
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 太いそば

容器の中には素人の作にしか見えない更に極太麺が混在している。
この太さになるとしなやかさより麺の剛直さが勝って口当たりや喉越しの良さが失われ田舎そば風に口腔内でしっかり噛み砕いてその風味を味わうことになる。
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 ぶつ切れの太麺

太麺は柔軟さを欠く剛直性から終盤になると容器内はぶつ切れ太麺の溜り場に変貌してしまった。
 短時間で1000食以上のそばを提供する催しではそば打ちにも多くの職人が携わる故に各々の打ち手によって仕上がりにばらつきが生じるのはやむを得ない。
しかし個人的にはしなやかな腰で口当たりに優れる細麺を好むので1杯目と2杯目が逆であればより良かったと思う。
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 そば湯の薬缶

2杯目の食後もそば湯の薬缶を調達してそばつゆのお湯割りを調整した。
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 そば湯

1杯目では確認しなかったが薬缶の中は多量の白濁沈殿物が確認できた。これは普通の釜湯とは異なりそばの成分を意図的に添加している様に見える。
2杯目のそば湯も楽しみ満腹状態で新庄そばまつりの体験を終えた。

【終章】
 新庄そばまつりは前報の大石田新そばまつりと同じく新型コロナ感染症の蔓延対策で2019年から3年間の空白を挟んだ久し振りの訪問となった。
コロナ渦後の開催は以前に比較すると規模の抑制感を禁じ得ないがこれは大石田町の催しにも共通する認識でもある。
 何はともあれ大勢が一堂に会して秋の収穫を祝う催しは貴重な体験の場であると再認識する機会となった。
 ん? 今回は触れていなかったかな?
新庄市を中心とする山形県北部最上地方で栽培されている主要な蕎麦の品種は「最上早生(もがみわせ)」である。




(00:00)

2023年12月22日

【新そばまつり会場の内部】
 12:00からの時間帯を選択していたが会場運営がスムーズに進んだらしく定刻前に青色整理券の番号が順次案内されて80番迄の入場が可能となった。
会場内は4年前迄とは入場者の動線が大きく変更されていたがそれ以外のそば打ち場や屋外にテントを張り出した釜場とその手前のそば渡し口、つゆの提供台、そば湯の提供台、そばがきのコーナー、お代りそば券販売カウンター、釜場とは逆側にテントを掛けた回収食器の洗い場等々は以前から変わらぬ配置である。

【入場客の動線の変更】
 4年前までは番号案内に従って入場すると先ず入口で入場券の部分と引換えにお椀が手渡されそのまま会場内の中央通路を直進して奥のそば渡し口でお椀にそばを受取る方式でそばを食する客席は中央通路の両側に2分割されていた。
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 そば打ち場

 今回はお椀を受取ると左に進む様に案内されて突き当ったそば打ち場を左に見ながら奥迄進んでそば渡し口の手前の受付に至りそば1杯目の引換券をもぎ取られて渡し口に進むのだが
釜場の都合でそばの供給が滞ると渡し口の手前で待機することになる。
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 釜場

待機中に撮影した釜場は毎度お馴染みの造りで会場外壁の仕切りを解放した屋外部に雨除けの仮屋根となる黄色のテントを張りプロパンガスで炊く移動式の大型茹で釜が稼働している。
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 そば渡し口

待機が解かれてそば渡し口に進むと手持のお椀にそばを受け取る。以前そばの量は計量用のお椀に満たした一定容量を客のお椀に投入する方式であったが近年は電子秤で計量する重量方式に改められている。
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 つゆと漬物

そばを受取った先にのテーブルに並ぶ漬物小皿を載せたそばつゆの猪口も受け取りそば椀とつゆ猪口を両手に持って客席に向かい空席を見つけて着席する。
 ここまで述べて気付いたが以前の中央通路方式より会場を時計回りに迂回する今回の通路はそばを受取る迄の待機人数容量の増加が見込めると伴に中央通路の廃止で左右に分断されていた客席が一体化され空席の見通しが向上して混雑緩和の改善に寄与しているのではないだろうか。

【来迎寺在来の新そば】
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 新そば1杯目

 これは取敢えず客席に着き両手で運んだそば椀とつゆ猪口から解放された直後の撮影。
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 手打そばと漬物

以前の会場で漬物は客席の卓上で随時補給される食べ放題であったが今回はつゆとセットの小皿で提供される方式に変更されたのがちょっと残念であるが
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 手打の二八そば

昨今の物価高の情勢では致し方ない措置なのかと思う。
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 手打二八そば

来迎寺在来種新そばの手打二八そばは3mm程の中細麺で多数のホシ(蕎麦の実の黒色外皮)が鏤められて香り高く仕上げられている。
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 客席の薬味

客席の卓上には多量の刻み葱を収めたタッパーとチューブわさびの薬味は見慣れた配置である。
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 そば湯の供給台

 そば食後に味わいたいそば湯は釜場側でそば渡し口とつゆ猪口のテーブルに並ぶ位置に配置されているので一旦客席を離れて取りに出向く必要がある。以前は客席を巡回するフロア要員が卓上で残り少なくなった漬物皿へ漬物の供給やそば湯配布のサービスを行っていたが今回はフロア要員の姿はなくセルフサービスが原則となっている。
そば湯の容れ物は通常のそば店で見られる塗物の桶ではなく従来からステンレス製の頑丈な薬缶が採用されている。これは大人数が集う会場で機能を優先した措置であろう。
因みにこの形状の薬缶は新庄そばまつりでも採用されている。

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 そばつゆ

1杯目のそば食中に感じていたが今回のそばつゆは出汁の力に甘い香りを纏った上質なもので大量生産が必須の行事で供されるつゆでは極上の品質である。
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 そば湯割り

実際つゆをそば湯で割り込んでも出汁の風味が残り続け良質な飲物を味わうことができた。
そば湯の後味を残しながら直ちに2杯目のそばの調達に向かった。
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 そば渡し口

席を立つとそば渡し口と
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 つゆと漬物供給テーブル

つゆ猪口と漬物の供給台を間近に観ることができた。この光景は先に述べた入場者の動線変更で実現したもので以前はこの位置に中央通路がありでそばを受取る入場者の行列があった。
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 2杯目のそば

 空になったお椀を携えて再びそば渡し口から運んだ2杯目のそばとそばつゆに漬物がこちら。
嘗ての食べ放題から小さな皿盛に変わった漬物だが大石田独特の茄子のぺそら漬の他に青菜や根菜類が満載されている。
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 2杯目のそば

そばは1杯目と変わらず透明感がある表面に沢山のホシが見える
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 二八そば

中太の二八そばだが箸を進めると
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 太麺

イレギュラーな太麺が出現した。平打ちに見える太麺は明らかに通常のそば切り作業から外れた規格外でクレーム対象かも知れないが珍しい経験として受容の範囲である。
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 そば湯割り

2杯目のそばも美味しく戴きそば湯で割った上質なつゆスープの風味も堪能し満腹状態でそば食を終えた。
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 食器返却口

 食後のそば椀やつゆ猪口に加えて割箸や漬物皿の廃棄物等使用した全てのものは出口近くの食器返却口迄持参し食器類は返却口に廃棄物は分別してゴミ箱へ投入して後片付けも済ませ出口に向かうがその前に
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 抽選会

最後の楽しみのくじ引きが待ち構えている。
2杯分のそば引換券を使った後の残券と引換えに三角くじを引くことができ地元の産品や日本酒等の景品が用意されているがくじ運に恵まれぬ身で今回も参加賞的なポケットティッシュを頂戴して会場を後にした。

【終章】
 新型コロナウィルスの爆発的な感染発生に依り3年の空白を挟んだ久し振りの訪問となった新そばまつりで会場前の出店の賑わいや会場内の雰囲気は従来と変わらず来迎寺在来種の蕎麦収穫期の熱気を感じることができた。
但し12:00前後の入場時にそば打ち場には職人の姿がなく作業を終えていた状況から以前より参加者が減少している様に感じたのが少し残念である。現在も県外からの訪問者が二の足を踏んでいるのではないだろうか。
 2023年の大石田新そばまつりはそばだけでなく極上に仕上げられたそばつゆが印象に残った。




(20:00)

2023年12月15日

【序章】
 2023年の夏は杜の都仙台に於いても連日の真夏日にエアコンのフル稼働が不可欠であった。一方で降雨量は少なく秋の収穫期になると稲作の品質が下がり野菜類の収量も大幅に減少し販売店頭での異常な値上がりが連日報道されている。
 この様な時季に2019年以来久しぶりであったが山形県に数あるそば処の一つである大石田町で開催される新そばまつりの報に接した。
山形県各地の新そばまつりは新型コロナウィルスのパンデミック以降開催自粛や規模縮小の傾向にあり県外の仙台からの訪問を控えていたが今回は従来からの通常規模で開催されるとのことで早速事前予約を行った。
以前はEメールで申込むと折り返しで予約確認の葉書が郵送され当日はこの葉書と引換えで前売券を購入する方式であったが今回はGoogle Formsのweb画面に住所や氏名、電話番号等の個人情報を入力して予約が完了した。後は当日会場で予約の旨を申告すれば前売券を購入できるとのこと。

【大石田町新そばまつりの概要】
 2023年(令和5年)の大石田町新そばまつりは10月末の28~29日の土、日曜二日間に渡り従来と変わらず町役場の向いに位置するクロスカルチャープラザ「桂桜会館(けいおうかいかん)」の会場で開催される。以前に何度も紹介しているが桂桜会館は広い板貼床の体育館機能を備える町民の福利施設である。
前売券はそば2杯分で\1,500とされ2019年の\1,200より値上げされているが昨今の物価事情からはやむを得ない措置であろう。
また今回は3通りの入場時間帯(①10:30~12:00,②12:00~13:00,1③3:00~14:30)が設定されており予約時に希望時間を選択する方式となっていた。これは恐らく昨年の開催時から訪問者を分散する目的で採用されたものかと思う。因みに昨年は訪問を自粛したので個人的な想像に過ぎず真偽の程は不明である。

【大石田町の会場へ】
 当日は宮城山形県境をR48の関山トンネルで越え東根、村山両市を経由して大石田町に入った。
大石田町中心部拡大図付byYahoo
 大石田町中心部の道路網

町役場がある大石田町中心部の街並みは町域を南北に縦貫する山形新幹線(奥羽本線)と北西に流れ下る最上川に挟まれた扇形の形状に加えて川側の低地に下る急傾斜の河岸段丘地形故か一見直線路に見える主要な道路も緩やかに屈曲していて方向感覚を失い易く迷宮の感が強い。
 事前の天気予報で当日は日本海側の降雨域が東に移動し午後には宮城県も雨と報じられていたが宮城県側の峠路で僅かな降雨に遭遇したのみで大石田町役場の駐車場に達しその後の滞在中も帽子で凌げる程度の雨と日差しが入り交じる目まぐるしい天候ではあったが幸い大雨に見舞われることはなかった。

【受付】
 町役場の周囲に設置された臨時の駐車場に車を停めて通りを挟んだ向い側の桂桜会館に向うと
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 受付

ほぼいつも通りの位置にテント張りの受付が設置されている。
この受付は既に前売券購入者に入場順の番号を記した整理券を発券する機能の他に筆者の様に予め予約した者に前売券の販売や当日券(\1,700)の販売も行っている。
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 当日券完売

 この画面は受付を済ませて入場までの待機時間の11:30頃に撮影したものだが既に当日券完売が掲示されており人気の程が窺える。
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 予約済の前売券と整理券

 受付でweb予約の時間帯を告げて購入した前売券と入場順の整理券がこれ。
入場券と2杯分のそば引換券の構成は以前から見慣れた構成だが3通りの希望時間のチェック欄が目新しい。
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 前売券の裏面

そば引換券部分の裏面は\500の割引券となっており引換券を使い残した場合は大石田そば街道加盟店で11月末日迄利用できる救済措置も用意されているが大方は2杯の新そばか2杯目はそばがきを選択して会場内で使い切るのではないだろうか。
 入場順序の整理券は3通りの時間帯で色が異なり①の10:30~は赤色、②の12:00~は青色、③の⑬:00~はクリーム色に識別して発券されている。
希望時間より1時間程前の受付で受領した青色の整理券番号は70番台の末尾で比較的早い時間の入場案内が期待されたが十分過ぎる待ち時間がある。
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 会場入口

 先ず会場入口の様子を窺うと玄関に懸る小さな青暖簾と入場可能な整理番号を掲示するホワイトボードは4年前迄にも見慣れた景色が展開されていた。
奥に見える白いテントも何時もの配置で使用済の食器を回収し洗浄を行う作業場である。

【会場周辺の出店】
 会場の桂桜会館周囲にはテント掛けの出店が並ぶのも以前と変わらぬ光景で出店団体も見覚えがあるあるいつもの面々が揃っていた。先ず会場入口至近の位置には
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 大石田町商工会女性部

町の商工会女性部の出店は玉こんにゃくと山菜汁の他にオリジナルのポロシャツ等を販売し
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 鮮魚ふじや

隣の鮮魚店は鮮魚ではなく佃煮類を並べている。
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 母ちゃん市場

母ちゃん市場の幟を掲げる店はパック詰めのおこわ類を扱いその奥に見える
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 うろこや総本店

うろこや総本店は和菓子の店で隣に日本酒を売る店が続いている。
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 福祉ボランティアの店

更に会場の外壁に沿って並ぶ手作りのエプロンやキャップ、ティッシュケース等を売る店は福祉ボランティアいこいの会が出店。
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 大石田漬物組合

隣は大石田漬物組合の店で町の産物として知られるぺそら漬等の漬物類が並ぶ。
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 大石田町新作物開発研究会

 その奥は自然薯と大書した幟を掲げて大石田産の自然薯を販売しているが出店団体の大石田町新作物開発研究会は自然薯を栽培生産する農家の組合かと思う。近年自然薯は畑で生産される農作物が主流となっており曲りくねって掘り起すのも大変な自生の天然ものより直線的な外形は山芋と変わらず家庭での料理にも扱い易い。
大石田産の漬物と自然薯は新そばまつりの出店には不可欠な存在である。
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 マルイチ西條水産

 自然薯を売る店の先は通路を挟んでマルイチ西條水産の看板を掲げる県外の宮城県石巻市北上町からの出店でこれも毎回見慣れた光景である。
因みに石巻市北上町は北上川河口の太平洋岸地域で平成の大合併前は桃生(ものお)郡北上町であった。神割崎や十三浜の海岸と受験の神様で知られる釣石神社の所在地でもある。
この店は海産物の加工食品に加えて
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 貝汁

貝汁や焼き牡蠣の販売もありテントの奥には資材を満載して十三浜から駆けつけたであろうトラックが横付けされている。
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 焼き牡蠣販売

バーベキューよろしく炭火で網焼きする焼き牡蠣は以前から好評で焼き上がりを待つ客が列を成す光景も珍しくない。画面は敢えて客足が空いた時間帯に撮影している。
食後の貝殻を回収するプラスチック篭はこの画面だけで4篭が確認でき焼台の嵩上げに流用されている2篭は前日販売分の殻であろうか。
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 焼き牡蠣

この焼き牡蠣はそば食前の小腹を満たす格好の軽食で毎回調達してきたが今回も例に漏れず入場待ち時間に購入し屋外の入場待合テントで賞味した。見るからに強めの醤油味がちょっと残念だが山形県の大石田町で宮城県産の焼き牡蠣を食するのは個人的に恒例行事となっている。
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 商工会青年部

 西條水産のにもテントが並んでおり右端は大石田町商工会青年部が子供向けのヨーヨー釣りと町内産の乾麺そばを販売しておりその奥は大石田のにぎりばっとの店がすいとん汁を商っている。はっとはすいとんの別名であり江戸時代に贅沢な食文化を禁止した法度に由来するのはご存じの通り。
通常すいとん(はっと)は小麦粉に加水して練った生地を薄く伸ばして千切り肉や野菜の煮込み汁で風味を加えた鍋物の一種であるがにぎりばっとは小麦粉生地を掌で握った団子状で煮込んだものであるらしい。一度は経験しても良いと思いながら未だに未経験の訳はたかがすいとんとの意識が勝っているからではなくこの後に対面する2杯の新そばを収める胃袋の空きを確保する為である。
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 砂金採り体験

 会場の建物から少し離れた位置にもテントの列があり右端は
宮城県遠田郡涌谷町(とおだぐんわくやちょう)が出店。小さな地方都市同士とは云え地方自治体が町名を掲げて店を出すのは珍しいと思うが涌谷町と大石田町は2013年に友好交流協定を締結し相互の発展を目指した交流が行われ最近は涌谷町内で蕎麦の栽培が試みられているとの情報もあり交流が進められている様である。
涌谷といえば国内で初めて金を産出した地であり中尊寺金色堂に象徴される豊かな奥州藤原文化の礎の地でもある。因みに奈良の大仏(東大寺盧舎那仏)造立にも涌谷産の黄金が勧進されたとのことである。
従って涌谷町の売りは金の産地であり新そばまつりの出店でも毎回有料の砂金採り体験と町内産品の販売を行っている。
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 野菜の店

涌谷町の店の隣は町内産の野菜を売る店で
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 野菜の店

いろいろな野菜が並ぶ中で
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 野菜の販売

近年高値を付けていた大根や特価のラフランス等を購入した。
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 天ぷらの店

テント列の左端は大石田では初遭遇の天ぷら店で
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 天ぷらの店

個人経営と思われる夫婦が立ち働き揚げたてのかき揚げや天ぷらセットをパックに詰めて販売している。
大石田の会場では初めて目撃したが新庄そばまつりでは会場前の出店で購入した天ぷらを会場に持ち込みもりそばやかけそばを天ぷらそばに仕立てて味わうことが普通に行われているので違和感は感じない。

Part.2は新そばまつりの会場内



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2020年08月14日

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  水産物の販売
果物の出店から道路を隔てた農協があるブロックには宮城県南三陸町の業者が例年出店している水産物販売があり若布や昆布等の水産加工品に加えて
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  網焼き
生のガキやホタテ等を網焼きで提供するのも恒例となっており
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  網焼きを待つ行列
焼き上がりを待つ客が行列を成している。
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  焼ガキ
 多岐に渡る出店を一通り探索したが740番台の入場には更に時間があったので網焼きの行列に加わってカキ焼を調達し待合テントのパイプ椅子に落ち着いた。

【入場】
 暫く待合所に待機した後12:50頃になって入場が可能となった。
玄関から会場内に入ると整理券が回収され前売券下端の入場券が切り取られた後にそばを受け取るお椀が渡されるのは例年通りの運営方式でその儘会場内を進んだ奥のカウンターに並んでそばを受け取る。受け取りカウンターは一杯目と二杯目が左右に分かれており二杯目の供給が優先されている様に見える。その理由は簡単で二杯目が滞ると入場者の会場内滞在時間が長引くので連動して新規の入場者の待ち時間も増えるという人間移動の社会原理に基づくものであろう。11:00~13:30の僅か2時間半の短時間に1500人を超える来訪者をスムーズに捌く工夫の一端が垣間見える。
 そばを受けたカウンターの左右にはつゆ猪口を並べるテーブルがありそば椀とつゆ猪口を両手に携えて会場内の空席に着席すれば新そばを味わう体制が整う。
 今回は入場からそばカウンターに至る会場内光景を一切撮影しなかったが以前の記事で何度も紹介してきた風景と大きな相違がない故とご理解願えれば幸いである。

【新そば】
 大石田の新そばまつりは冷そばの範疇にあるもりそばのみに限定されている。先に紹介した新庄そばまつりを始めとする多くの会場では冷たいもりそばと温かいつゆ掛けのかけそばから選択する方式が主流となっている。新そばまつりが開催される秋季は天候変動が大きな時季でもあり寒冷な日には確実に温そばの需要が増す筈だが大石田では冷たいもりそばに徹しておりそば切りの本質を無言で主張する頑なな姿勢にそば好きの小気味良さを感じる。
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  新そば一杯目
 客席に落ち着いて卓上にそば椀とつゆ猪口を配置すれば大石田産の新そばを味わう段取りが整う。
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  食べ放題の漬物
同じ卓上には刻み葱やチューブ入わさびの薬味とステンレス薬缶に収めたそば湯に漬物皿が用意されており漬物やそば湯は場内の担当者が巡回して随時補給されている。漬物は会場内に限り食べ放題となっており薬味と共に必要分を用意された紙皿に取り分けて戴く。
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  新そばのホシ
大石田産来迎寺在来の新そばは例年二八そばで供される。白味が強いそば切り麺には細かい粒子となった多数のホシが内部まで鏤められた透明感も備えている。
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  麺の太さ
割箸で掬ったそばは3mmh度に程に切り分けられた標準的な中細麺で適度な腰の強さとつゆの絡みが相俟って口当たりの良さを感じる。
嘗ては麺の太さに極端なばらつきがあり極太そばに苦言を呈した経緯もあったが最近の二八新そばは均等な品質が確保されていると感じる。
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  そば湯
食後のそば湯はそば食の礼儀作法で残ったつゆに薬味を加えそば成分のルチンが溶け込んだそば湯を加えて飲み物に仕立て余韻を楽む。
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  二杯目のそば
 暫しの余韻に浸った後は空になったそば椀と二杯目の引換券を携えて再びそば受けカウンターに向かう。
二杯目のそばはの外見は一杯目と変わらぬ印象で
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  二杯目のそばのホシ
透明感を感じるそばに内包するホシや
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  二杯目の麺
中細麺の切り寸法も一杯目との相違を感じない仕上がりに見える。
 10数名を下らない数多くの打ち手の手作業で前夜から用意されるそばは多少なりとも品質的なばらつきが在り得る筈だが3000食を下らないそばの提供で均等な品質を維持する職人集団の技は秀逸の評価に値すると思う。そば打ち職人の熱い想いを感じる。
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  そば湯
 二杯目も完食して二度目のそば湯を嗜み2019年の大石田新そばまつりの締め括りとした。

【終章】
 山形県内の蕎麦品種は大きく最上川上流の南部地域と下流側の北部地域に分かれており山形市や村山市などの南部では「でわかおり」、尾花沢市や新庄市などの北部は「最上早生」の栽培が主流となっている。
大石田町は北部地域に属しているが独自品種である「来迎寺在来」種を生産し11月下旬には20年以上も前から町の主催で盛大に新そばまつりを催す歴史を重ね「来迎寺在来」は大石田町産とのブランドを確立して来た。この様な実績からそば産業の振興に並々ならぬ想いを感じる町である。



(00:00)

2020年08月07日

【序章】
 山形県では秋そばの収穫を迎える10月中旬から11月になると各地で収穫祭として新そばまつりが盛大に催される様子を幾度となく紹介してきた。
2011年3月11日に発生した東北大震災から取り敢えず日常生活を得た浴年からこの時季には例年2~4箇所の会場を訪問してきたが2019年の秋は諸般の事情から10月最終の土、日曜二日間に亘って開催される北村山郡大石田町の新そばまつりと本記事の直前に掲載した新庄市そばまつりの二会場を訪れるに留まった。
 今回は2019年大石田町新そばまつりの訪問記である。尚新庄の記事を先に掲載したが開催日は大石田の方が先行している。

【大石田町の位置】
 大石田町については以前から幾度も紹介してきたので詳細は次項で触れる過去の記事に譲るが町界の南側は村山市が接し西は舟形町、東と北は尾花沢市に囲まれた山間地で北から南に流れ下る最上川が町域を東西に分けている。
最上川は北上川と並び称される東北地方の大河で山形県南端の米沢市吾妻連山の源流から北に下り南陽市、長井市、白鷹町、朝日町、寒河江市を経由する複雑な流路を辿り村山市から大石田町を縦断して舟形町から大蔵村、戸沢村に下り酒田市で日本海に注いでいる。従って山間の小さな町でありながら舟運の便に恵まれ古くから周辺地域の農産物を日本海周りの物流廻船に送り込む中継地であったことが容易に想像できる。現在の物流はトラックに依る陸上輸送が圧倒的だが近世迄は自然の地形を生かした水運が広域物流の主流であったと歴史が教えている。
今年になって7月末に東北地方を襲った豪雨に依り最上川中流域の大石田町内で浸水被害が発生したと報じられている。

【大石田町のそばに関する過去の記事】
 大石田町のそばに関して過去にyaplogサイトに掲載した記事は既に閉鎖されてしまったがこちらの「芋男爵のブログアーカイブ」で再構築している。降雪の中で町内を彷徨った蕎麦処若佐や新そばまつりの訪問記(2017年21回2016年20回2015年19回2014年18回)の参照にご利用戴ければ幸いである。

【新そばまつり会場】
 2019年の新そばまつりの会場は例年と変わらず町役場と道路を隔てた向い側のクロスカルチャープラザ「桂桜会館」で開催される。

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  大石田町役場
役場構内のあらゆる平地空間は訪問客を迎える駐車場に開放されており道路を渡って会場に向かう経路には多数の誘導員が配置されている。
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  会場屋外の仮設テント
道路を渡る前に役場側から見える桂桜会館の会場裏には大きな仮設テントが張出している。
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  仮設テント
この大型テントは大石田町新そばまつりの文字が浮かぶまつり専用の仕様となっている。
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  テントの内部
テントの隙間に廻り込んで内部を覗くと会場建物の外部空間に釜場が設置され多数の人員がそば茹で作業に勤しむ姿が見える。
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  釜場と会場の連絡口
更にカメラの角度を変えるとそばやつゆを提供する会場内の一部も窺える。

【受付】
 会場入口がある表側に戻ると建物手前の舗装された駐車場に
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  受付
小振りのテントを張った受付があるのはいつもと変わらぬ配置である。因みに数年前までこの場所は未舗装であった記憶がある。
受付では当日券も販売されているが予め前売券の予約を手配していたので受付では予約の旨と氏名を告げて前売り券を購入する。
 前回までは前売券を予約すると予約確認のはがきが送付されこれを受付に提示する方式であったが今回このはがき送付が省略されたのは経費削減の一環であろう。

【前売券と整理券】
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  7520t前売券と整理券
 前売券は1枚\1200で入場券とそば引換券2枚が含まれている。2枚のそば引換券の裏面は\400の割引券の印刷があり未使用で持ち帰った場合は11月末の期限付きで大石田そば街道加盟の町内14店舗で利用できる便宜も図られている。
前売券を受け取った直後に受付の左隣りで入場順の一連番号が印刷された整理券が発行される。事前に前売券を入手していれば整理券を受け取るだけで受け付けは完了する。
 整理券は9:30から発行されるが受付を済ませた10:30頃には740番台となっていた。今回は確認していないが以前の経験では1日に1600番程もあったと記憶している。因みに先に紹介した新庄そばまつりでは最大でも800番前後であった。従って二日間開催される大石田新そばまつりは延人員で3000人程度の集客能力があり6000食程のそばが消費される規模の大きさを窺い知ることができる。

【会場前屋外の出店】
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  会場入口
 新そばまつりは11:00開始となっているので10:30頃の入口は人気が疎らで閑散としていたが
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  会場前の出店
会場前の屋外に並ぶテント掛けの出店には700名を下らぬ開場を待つ訪問者で賑わっていた。
大石田では例年どの新そばまつりより多くの多彩な出店が設営されている。
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  おこわと山菜汁の店
会場建物の玄関脇はおこわと山菜汁、玉こんにゃくに天ぷらセットを揃える店で
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  衣類の販売
その隣にオリジナルポロシャツや
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  漬物店
漬物を売る店に
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  手作り小物
手作り小物の展示販売等が並ぶ。
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  野菜販売
更に地元産の野菜を売る店があり
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  米の販売
大石田産のつや姫新米を扱う店では白米の2kgと5kg袋に加えて30kgの玄米も販売されている。
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  待合所側の出店
これらの出店と道路を挟んだ向い側の駐車場には例年と変わらずパイプ椅子を並べたテント張りの待合所が設置されておりその道路側は出店が配置されている。画面手前で牛タン焼を提供する店は初めて見たがその先の砂金採り体験の幟は大石田町との姉妹都市宮城県涌谷町の企画で次に控える緑の幟を掲げる地元産の自然薯販売と共に恒例の出店。
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  そば打ち道具
 会場側に戻り役場に近い位置に並ぶそば打ち道具を取り揃える店と大石田ぎりばっと部の看板を掲げてはっと汁(=すいとん)を売る店も恒例の出店である。
そば打ち道具は漆塗りの捏ね鉢やそば打ち台、延し棒、、駒板、そば切り包丁等普段あまり見掛けない道具が販売され新そばまつりの雰囲気醸成にも一役買っている。
にぎりばっと汁の店頭には何故か西瓜の被り物が用意され訪れる子供達の記念撮影用に提供されている。隣町の尾花沢市は東北地方の西瓜の名産地となっているので大石田町内での栽培も行われているのであろうか。
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  果物の販売
隣は果物を揃える店でシャインマスカットや庄内柿、ミカン、ラフランスに梨、りんご等が販売されている。

Part.2は出店の続きと会場内



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2020年07月31日

【もりそば1杯目】
 供されたそばの盆とカメラを両手に携えて会場内の空席に落ち着く。
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  会場の舞台
 会場奥の舞台上では以前から最上早生種のそばを喧伝するそば音頭に合わせてモンペ姿のそばガールズの踊りが披露されるなどアトラクションが用意されており第8回の2017年にはアトラクションを屋外に駐車したウィング開閉式のコンテナトラックの荷台に移し舞台上には畳敷きの小上り席を設営する試みもあった。
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  功労者表彰
しかし今回の第10回はアトラクションの告知が見当らず娯楽的な要素を廃してそばガールズが立会いまつりに関係する功労者を市長が表彰する式典が執り行われており例年とは異なる様子を感じた。
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  薬味とそば湯
 着席した客席のテーブル上の随所にそば食に不可欠な刻み葱と七味小瓶の薬味に薬缶入りのそば湯が配置されている。
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  もりそば
塗り物皿に盛られたそばは最上地方の主力品種である新庄産の最上早生種で
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  もりそば
色白な中細麺の表面には
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  ホシ
蕎麦の実の黒い表皮に起因する多数のホシが鏤められており丸抜き製粉の二八そばに見える。
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  中細麺
割箸で掬い上げた麺は見た目に違わず3mm程の細打ちで滑らかな口当たりが心地良い。
そばに風味を加えるつゆは特筆する主張は感じないがそばとの均衡を備えた無難な存在である。
 一度に多数のそばを供する嘗ての新そばまつりではつゆの仕上がりに疑問を感じたこともあったが最近は各地で開催される新そばまつりでもつゆの品質に怠りがない印象を受ける。
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  天ぷら
そばを食しながら出店で調達した揚げたて天ぷらも併せて楽しんだ。
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  そば湯
 一食目を終えて残ったつゆにそば湯を注ぎ
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  そばつゆのスープ
そばの風味が残るつゆをスープに仕立てるのはいつもと変わらぬそば食の嗜みである。

【もりそば2杯目】
 一杯目の食器を返却口に戻した後に二食目のカウンターで2杯目のもりそばを受け取り席に戻る。
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  2杯目のもりそば
二食目のもりそばは一食目と全く同じ構成で割箸も新品が添付されている。従って同一の客が新品の割箸を2本使い捨てることになるがこれは如何なものかと思う。例えば大石田町の新そばまつりで採用している様に客席の卓上に備えておけば1膳の割箸を2食で共通使用し易いのではないだろうか。
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  もりそば2杯目
2食目に受け取ったそばも見た目は一食目と変わらず
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  中細麺
白味が強く多数のホシが鏤められた透明感のある中細麺で食感も好ましい。
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  そば湯2杯目
二食目の完食後もそば湯を調製してそばつゆのスープを味わって最上早生新そばの賞味を終えた。

【終章】
 新庄市は山形県北部最上地方の中核を成し山形新幹線が達する一大都市である。最上地方の代表品種である「最上早生」種の新そばを振舞う催しは僅か10年と歴史は浅いが祭り当日には市長自らそば打ちを披露し農作業の衣装を纏うそばガールズの結成に加えてまつりのテーマ曲としてそば音頭を普及させる等そば食文化の浸透に力を入れている様子が感じられる。




(00:00)

2020年07月24日

【新庄そばまつりの歴史】
 玄関から左手に奥に位置する会場の体育館へ進む館内廊下の壁面にはそばまつりを告知する歴代のポスター掲示があった。これは今回初めて見るもので10回目に至った足跡を辿る貴重な資料である。
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  初陣と第二回のポスター
初陣の文字が躍る初回の開催日は12月5日(日)とあるのみで年の記載はないが日付と曜日からカレンダーを辿ると2010年(平成22年)に該当し新庄そばまつりの起源が明らかとなる。
会場については小さな文字で旧山屋小学校とのみ記載されている。左隣りの第二回を見ると山屋セミナーハウス(旧山屋小学校)と変更されているので山屋セミナーハウスの運営開始は2010年12月から2011年11月の間であったと推察できる。
更に初回は12月初めの開催であったが二回目以降は期日が11月初旬に改められて第十回に至る迄継続されている。
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  第三回と第4回
第三回のポスターには姉様被りの和装で踊る女性のイラストが描かれおり第4回に至って初めて2013年11月3日と開催年の表示が始まり前年の第三回から第4回へと数字表記が変更されると共にモンペ姿のそばガールズの写真が登場している。手元の記録に依ると第4回の2013年は新庄そばまつりの存在を知って初めて参加した年でそれ以前の訪問経験はないが新庄そばガールズの発祥はこの回と思われる。
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  第5回と第6回
第5回以降は初回から続いた黒地基調のポスターが白地の明るいデザインに変わりそばガールズの写真も不可欠な要素として掲載され続けている。
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  第7回と第8回
2016年の第7回には料金の改定が行われた。即ち初回以降第6回迄は2食分の前売券が\900、1食分の当日券は¥500に設定されていたが第7回以降は前売券\1000、当日券\600に変更されている。
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  第9回と第10回
第9回と第10回のポスターに大きな変化は認めないが開催日が11月の第一日曜日から第二日曜日に移る細かい変更がある。
また歴代のポスターの比較作業で気付いたのだが最近のポスターに定着している「新庄はなかなかそばである 新庄はかなりそばである 新庄のそばはうまい」のキャッチコピーは第4回以降のもので初回は大きな文字で「新庄は、かなりそばである。」とある。第二回は左下に控えめな文字で「新庄はかなり"そば"ですよ。」と遠慮気味な表記で第三回にはトップに「新庄のそばはうまい!」と言い切る大胆な書き込に変わっている。第4回以降継続して採用されている先の文言は初回から第三回迄の試行的な経過を踏まえて確立したものと見受けられる。

【まつり会場】
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  会場入口
 入場直前に屋外の出店で購入したえび天のパックを携えて会場に向かい整理券番号を提示して入場する。
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  会場の内部
高屋根に吊り下げ式のバスケットゴールと舞台を備えた旧小学校の体育館の床面は板貼り仕様と思われるが全面にシートが敷かれて土足の出入が可能となっている。
長テーブルにパイプ椅子を配した客席は例年通りの光景で
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  そばの渡し口
 入場すると右側の壁面に設置された1杯目のそばを受け取るカウンターの行列に誘導される。この位置は駐車時に見た会場建物外部に仮設されたテント掛けの釜場に直結しており茹でたてのそばを受け渡しカウンターに迅速に供給できる効率的な配置となっている。
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  実演コーナー
会場内反対側の左手には例年通りそば打ちの実演コーナーが設けられており
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  市長のそば打ち
新庄市長自らがそば打ちを披露する姿は最近恒例となっている。
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  天ぷら販売
また会場内には先に紹介した通り出店で揚げた天ぷらパックを持ち込んだ販売コーナーも設置されて会場内の需要に応じている。
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  冷そばと温そば
 一般的な新そばまつりでは冷たいもりそばに限定されていることが多いが新庄のそばまつりでは初回から一貫して冷もりそばと温けそばの2種が提供されている。従ってそばの受領カウンターに並ぶ列は右が温かけそば左は冷もりそばと分離されており希望の列で順番を待つ方式となってる。
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  冷たいそば
 冷そばの列で受け取ったもりそばはつゆ猪口に漬物トレーと割箸を添えた半月型の盆で供される。
このショットは左手で盆を受け取る瞬間を右手のみの不安定なカメラ保持での撮影となったので焦点深度が浅い手前部分のそばの輪郭は不明瞭だが臨場感が伝われば幸いである。

Part.3は二杯のもりそば



(00:00)

2020年07月17日

【序章】
 例年秋そばの収穫期に山形県の蕎麦産地で催される新そばまつりには極力足を運ぶ様にしており大石田町の新そばまつりと新庄市のそばまつり(なぜか新庄市に限ってそばまつりに"新"を冠していない)は2014年以降欠かさず参加してきた。
 2019年の新庄そばまつりは10回目という節目の開催であった。

【新庄市への経路】
 宮城県仙台市から山形県北部の新庄市へ向かうルートは今まで何度となく言及しているので詳細は省くが紅葉が盛りとなる秋の行楽時季と重なるので渋滞の確率が低いR347の鍋越峠経由で県境を越え尾花沢市からR13の高規格バイパスを一気に北上して新庄市中心部に向かう経路を採ることが多い。

【そばまつりの会場へ】
 新庄そばまつりは初回から一貫して旧山屋小学校の敷地建物を再利用した山屋セミナーハウスで開催されている。
新庄そばまつり会場への経路
R13バイパスの新庄道路は今のところ(2019年10月時点)市内の西北部で途切れており強制的に突き当たる県道r308に降ろされるのでこれに右折して道なりに東進するとR458が合流して国道に変わる。奥羽本線の鉄路を立体交差で乗り越えた先で市内を南北に縦断するR13と交わる新庄市五日町交差点に達して国道は短い区間で終了する。交差点の先は県道r312に変わるが直進を続けるとすぐ右手に現れる農協のライスセンターの敷地はそばまつりの臨時駐車場に設定されている。係員が配置された臨時駐車場からまつり会場へシャトルバスが頻繁に運行されているのでここに車を停めてマイクロバスの送迎に身を委ねる選択もある。しかし小学校跡地の会場にもグランドを活用した駐車場が設定されるので上り基調の県道を辿って会場へ直行することにした。

【山屋セミナーハウス】
 臨時駐車場のライスセンターからr312を5~6分程進んだ先に設置されたそばまつり会場へ誘導する看板に従って左折し丘の上の山屋セミナーハウスに達する。
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  北側の駐車場
例年はセミナーハウス建物前の南向きに拡がるグランドが駐車場として開放されてきたが今回は前日の降雨に依る泥濘で閉鎖されておりハウス北側に廻り込んだ狭い空間に誘導されたたが何とか隙間を見つけて駐車することができた。
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  テント設営の釜場
駐車場の奥には体育館の北側に臨時設営されたテント掛けの釜場が間近に見えている。テントの外に置かれたプロパンガスボンベがそばを茹で上げる湯を沸かす火力源である。
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  釜場
テントの内部には長靴を履いてそば茹でを担当する複数の作業者が認められた。会場にそばを届ける連絡部分は雨除けのブルーシートの屋根も設営されている。
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  玄関
駐車場から山屋セミナーハウス建物の正面に向かうといつもと変わらずそばまつりの幟を掲げた玄関に迎えられる。

【出店】
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  出店
 玄関の左右はに並ぶテントの出店も例年と変わらない光景で
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  野菜の販売
地物の野菜販売は定番で
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  焼菓子
地元の焼菓子やプリン等を並べる店に
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  漬物と天ぷら
漬物と店頭で揚げる天ぷらを扱う店も例年と変わらず展開されている。
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  天ぷらの種類
毎年好評の揚げたて天ぷらはいかげそ天にかき揚げ、げそ、ちくわ3種のパックに今回は海老天2本のパックも加わり\200で販売されており会場内に持ち込んでそばのお伴に味わう事ができる。また後に紹介するが出店で調理された天ぷらのパックは会場内に設置された販売コーナーで購入することも可能だが入場直前に出店で調達すれば揚げたてが入手できる。

【受付】
 玄関から入るセミナーハウス内は通常上履きに履き替えて入場する様だがそばまつりでは床面にシートが敷き詰められて土足での出入が可能となっている。玄関内の右手には当日券をや予約済みの前売券を購入する受付が置かれ
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  整理券の発行
相対する左はまつり会場入場の順番を決める整理券発行のカウンターが配置されている。

【前売券の調達】
 新庄市内の協賛そば店で事前に販売される前売券の入手は困難なので従来は新庄市役所農林課へ前売券確保のメールを入れておき当日受付で清算受領していた。
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  前売券
しかし今回は既報の「そば処あさ沼」訪問時に前売り券の販売が開始されていたので既に入手を済ませていた。
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  そばまつり開催のはがき
その後自宅に開催を知らせるはがきも届いた。前年に会場内のアンケートで通知を希望して住所を記入すれば配達される仕組みとなっている。
因みに前売券は2食分で\1000、当日券の1食\600は例年と変わらぬ価格に設定されている。
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  前売券裏面
前売券の裏面には市内7店舗の協賛店名が記載されており当日未使用の券はこれらの店で11月末迄の期限付きで\300の食事券として使用できる。

【整理券】

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  整理券
 整理券カウンターで発行された番号は370番台で
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  待ち時間表示
玄関奥に掲示された待ち時間は僅かであった。
なお整理券は入場時に改修されることはなく裏面には翌日から使用できる市内店舗のクーポン券が印刷されているのも例年と変わらぬサービスである。

【そば打ち場】
 玄関の右手の部屋は打ち台を並べたそば打ち場に充てられており多くの打ち手が作業に勤しんでいるのも例年と変わらぬ光景。
ここで打ったそばは専用のプラスティックトレーで先に見た会場裏側の釜場に運び茹でられる。

Part.2は新庄そばまつりの歴史と会場内の様子



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