2020年03月

2020年03月27日

【静山荘の温泉浴場】
 Part.1で既述の通り静山荘の温泉は宴会棟の山側に向き合って建つ浴場棟にあるので
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  浴場入口
客室棟別館の部屋から向かう2F通路は大宴会場を左に見て進んだ右奥に入口が配置されている。
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  男湯暖簾
突当りに見える紺色の暖簾が男湯で
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  女湯暖簾
通路方向に振り返ると対称位置に懸かる朱色暖簾が女湯の入口である。

【脱衣室】
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  脱衣室
 紺暖簾の奥は小振りな脱衣室の空間で
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  脱衣棚
左壁面は脱衣棚が設置され
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  洗面台
右奥の壁面に2基の洗面台が置かれている。
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  浴室とのガラス隔壁
更に洗面台の右奥に浴室が配置されているが脱衣室との隔壁は全面ガラス張りで浴室内を見通せる開放的な構造となっている。

【浴室】
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  浴室から見る脱衣室内
 ガラス戸を引き開けて入った浴室側からも脱衣室の主要な部分を視認できる。
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  浴室内部
タイル張りの浴室内は手前に計5基のシャワー栓を左右に振り分けて配置した洗い場で
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  内湯の浴槽
外壁に接する右奥に長方形の隅切を施した5角形の浴槽が配置されている。
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  湯口
浴槽右奥隅の湯口の塩ビパイプから湯が注がれているが
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  蛇口の湯栓
手前の洗い場側にある湯水独立の錆付いた蛇口の湯栓からも注入されている。
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  透明湯
二つの湯口から注がれる浴槽は底面迄視認できる透明な湯で満たされ縁から越流した温泉の成分が蓄積して変色した床面の痕跡があるが
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  二箇所の開口
槽内にある二箇所の開口を認めて源泉掛け流しに疑義を感じた。その一つは底面にあり清掃用の湯抜きに見えるが目皿を被せた大口径で密栓されておらず循環用の汲湯口にも見える。更に湯口直下の壁面にある小さな穴は循環湯の給湯口ではないだろうか。
翌朝に女将から聞いた話では露天風呂は源泉掛け流しの為手動で給湯量を調製する温度調整は極めて難しいとのことであった。翻れば内湯浴槽は源泉掛流しではなく自動加水に依る温度制御や循環濾過再加熱制御等の装備を想像できる。

【露天風呂】
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  内湯の窓外
 内湯浴室と屋外を仕切る全面ガラス窓の外には露天風呂の景色が見えている。
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  露天への通路
内湯浴槽の左側通路の奥に設けられたガラス引き戸が露天風呂の出入口で
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  露天の浴槽
内湯浴室の外壁ガラス窓に沿って露天の浴槽が配置されている。浴槽は3~4名程で満杯となる小振りな空間だが外景を望む山側の石組みが野趣を添えた造りが好ましい。
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  謎の蛇口
この浴槽では奥の竹垣から突出し鮮やかな青色の保温材を纏った蛇口が目に付くがこの蛇口を捻っても湯も水も注がれることがない謎の存在であった。
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  給湯口
その変わりにが同じ竹垣から浴槽底部に伸び細い塩ビ配管が浴槽に給湯する唯一の存在でその末端部に手を添えると熱い湯の流れが確認できた。これが源泉掛け流しの湯源と思われる。
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  露天風呂全景
露天風呂の全景は石組みの山側からが唯一の視点で窓越しに内湯の浴室内も見える見通しに優れた明るい行動となっている。
 男湯は内湯浴槽と露天共に適温で入浴できたが同行者に依ると女湯の露天風呂は熱すぎて入浴を断念したとのことであった。翌日の朝食時にこれを女将に告げると先に紹介した通り露天風呂は源泉掛流しで温度調整が難しいとの話になったが朝食後には女湯の露天浴槽も入浴可能な温度に調整されたとか。短時間に少なからぬ冷水が注入されたのではないだろうか。

【源泉の泉質】
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  泉質の表示
 脱衣室の壁面に掲げられている温泉の成分表示は2011年(平成23年)11月25日の日付が付されており
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  源泉名と泉質
泉温76.4℃(採取時の気温は14.8℃)の源泉は巣郷温泉混合泉(巣郷温泉3号泉と秀衡の湯)の名称でナトリウム-塩化物·硫酸塩温泉(低張性アルカリ性高温泉)の泉質の使用位置温度は70.8℃と表示されている。複数の源泉井戸を混合した源泉であろうが施設名の表示が見当らないので混合源泉と使用位置の温度測定位置が不明である。源泉名から想像すると巣郷温泉郷の各宿が共有していると思われそのいずれかの浴場が使用位置とされているのではないだろうか。
固有の施設名表示が無い協同組合管理の様な源泉の成分測定点の所在は常に謎である。
 組成の分析値欄に依ると温泉1kg中にナトリウムイオン(Na+)464mg、カルシウムイオン(Ca++)54mg、塩化物イオン(Cl-)425mg、硫酸イオン(SO4--)507mg、炭酸水素イオン(HCO3-)36mgが主要な成分となっており塩化ナトリウム(食塩)や硫酸ナトリウムが溶存する比較的単純な泉質だがpH値8.6のアルカリ泉質は肌に纏わるヌルヌル感の源である。

Part.4は静山荘の宿泊プランと夕食


(00:00)

2020年03月20日

【客室へ】
 先に述べた客室へ誘導された長めの経路を平面図で辿れば

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  本館棟から宴会棟への連絡通路
本館棟の西端から直角に向きを変える連絡通路を進んで入った
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  宴会棟内の階段
宴会棟内の階段で2Fに上がり客室棟別館に至るものであった。
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  宴会棟内の階段
因みにこの階段には車椅子の動力昇降装置が設置されバリアフリー対応となっている。
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  連絡通路と宴会棟
本館棟から宴会棟へ繋がる連絡通路は画面の右端に見える簡易的なプレハブ外観で後付けも構造に見える。
フロントから客室棟別館へ向かうには本館棟内の階段を上がり直接2Fの別館へ至る別経路もあるのだが宴会棟1Fの朝食会場や2Fの浴場の館内施設を案内する為には宴会棟側の経路が好都合なのであろう。

【客室内】
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  客室棟別館の廊下
 案内された部屋は客室棟別館内のゆりの間で
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  百合の間の入口
入口には「ゆり」の平仮名文字を配した行燈灯と「百合之間」と記された銘板が掲げられている。
先に紹介した館内図にもある通り本館棟を含む全9室の客室には紅葉、桜、梅、松、藤、あやめ、桔梗、百合、萩と花木の呼称が与えられている。
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  室内
百合の間は踏込みと襖で仕切られた畳敷きの10畳間で外壁窓の山側は広縁の板床が配置されている。
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  洗面台
踏込みの右手は洗面台の空間となっており
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  トイレ
その奥は洗浄機能を装備したトイレが控えている。
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  冷蔵庫
踏込み左の狭い空間には空の小型冷蔵庫の上にグラス棚の備えがある。
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  踏込み
この画面は室内から踏込みを振り返って見た光景。
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  床の間
室内の右壁面には窓側からクローゼット、床の間、押入れが順に並んでいる。
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  クローゼット
腰高のクローゼットの下に設置された暖房機は雪深い地の必需品である。
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  乱れ箱
クローゼット内に置かれた乱れ箱は歯ブラシやタオル類に浴衣と丹前が用意されている。
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  床の間の備品
隣りあう床の間には違い棚の意匠を凝らした台の上下にテレビと貴重品金庫が収まり館内電話やティッシュ箱等が配置されている。
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  座卓周り
座卓上の茶菓子に茶櫃と保温ポットを載せた木製ワゴンは温泉宿に不可欠な装備で
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  茶菓子
パックの緑茶を淹れて牛乳まんじゅうを賞味し部屋に落ち着いた。
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  窓外
改めて山側の窓外を見ると階段を上ってきた2Fの部屋にも関わらず斜面の擁壁の間に床面レベルの敷地が見えているのは先に紹介した山肌の階段地形に依る景色である。

Part.3は静山荘の温泉


(00:00)

2020年03月13日

【序章】
 東北は例年10月下旬になると南から北へ向かって紅葉が始まる時季を迎えるが2019年は直前まで暑い日々が続き紅葉は先送りの予感があった。
紅葉狩りの観光客が多数訪れる書入れ時には少し早い10月中旬迄は温泉宿の料金も手頃に設定されている。
 この時期は消費税が10%に増税された直後であったが宿泊費が税込\8000程の温泉宿に予約を入れた。
向かった先は岩手県西和賀町の巣郷温泉「静山荘」である。

【西和賀町と湯田温泉郷】
 西和賀町は岩手県中部の北上市の西部に位置し奥羽山脈と背中合わせに秋田県横手市に接している。町域の地勢や交通状況に関しては以前に掲載した湯川温泉「本館春山荘」の記事で触れているので参照戴きたい。
 西和賀町の南部地域にはJR北上線のほっとゆだ駅を中心に湯元温泉、湯川温泉、巣郷温泉から成る湯田温泉郷が点在している。

巣郷温泉位置図

因みに「本館春山荘」が属する湯川温泉は3温泉の中では町の中心部にあるJR北上線のほっとゆだ駅が最寄り駅となっている。

【静山荘の所在地】
 「静山荘」は秋田県境直前の国道R107沿いに3軒の宿が集まる巣郷温泉の施設で北上線の最寄り駅はほっとゆだ駅から横手方向へ一つ進んだゆだ高原駅となる。

巣郷温泉静山荘位置図

 北上市側から車で向かうには国道R107を横手方面へ西進する。左手の景観続く湯田ダムの錦秋湖を見ながら進むと湖尻付近にある鉄橋の川尻橋で和賀川を渡り湯田の中心部に達する。橋を渡らずに進む道は主要地方道r1でこれを北上すると湯元温泉に至る。中心部で国道から左に折れたほっとゆだ駅から南に向かう県道r215の先は多数の宿が並ぶ湯川温泉である。
一方巣郷温泉は湯田の中心部を通過して向山トンネルを潜り右手に現れる秋田道の湯田ICとゆだ高原駅を過ぎた先の直線路を快走する。
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  看板
左側に「高原旅館大扇」が見えその僅か先の右に立つ「静山荘」の看板に従って
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  静山荘外観
敷地の中に車を乗り入れる。

【静山荘の外観】
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  駐車場
建物の前が駐車場となっておりここに車を停めて
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  玄関
積んできた荷物を携えて玄関に向かう。
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  玄関ドアのシール
建物本体から張出した玄関部分は後付けに見える風除室を備えた二重扉の構造となっている。外側のガラス戸には充電バイク旅のテレビ番組で見慣れた西瓜がモチーフの丸いシールが貼り付けられている。このシールの経緯は後に紹介する。

【静山荘の館内】
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  玄関内部
 内側のドアの先はタイル敷きの土間より一段高い板張り床の左手にフロントカウンターがあり土間の右奥履物を収納する下足棚が控えている。館内履きのスリッパに履き替えて上がったフロントの奥は
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  フロントロビー
色とりどりのソファーや天然木のテーブルが並ぶ
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  ロビー
ロビーの空間となっている。
 無人のフロントで案内を請いチェックインの記帳を済ませると階段を上る長めの経路を導かれて客室に落ち着く。
この長めの経路は館内の複雑な構造に依るもので国道と駐車場に面して玄関を構える建物背後の山側の階段形状の敷地に3棟の建物が連なっている。
 4棟それぞれに仮の呼称を付して以下にその概要を紹介する。
① 本館棟: 既に紹介した国道に面する2階建てに玄関とフロントを備え2Fは5室の客室が並んでいる
1Fのフロントロビーより右手は訪問客に開放されないプライベートな居住空間と思われる
② 宴会棟: 本館棟の玄関に向かって左手の奥まった位置に建つ2層建築で1Fは厨房と食事会場があり2F部分はステージ付きの大宴会場が置かれている
③ 浴場棟: 宴会棟の2Fと廊下を隔てて向かい合う山側に位置し男女別で露天風呂も備える温泉浴場となっている
④ 客室棟別館: 本館棟より山側の奥に建ち本館棟や宴会棟の2F部分と水平に繋がる平屋構造に4部屋の客室を擁する

【館内の配置図】
 先に述べた通り静山荘の敷地は背後の山側が国道に接する入口の部分より建物1階層分高い階段状の地形となっている。浴場棟と客室棟別館はこの階段地形上に建つ平屋の建築物でこの2棟に向かうには本館棟か宴会棟の階段を上る経路を辿ることになる。
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  1F平面図
客室に配置された避難経路図を見ると1Fは本館棟と宴会棟に両者を繋ぐ直角に折れた連絡通路があるのみだが
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  2F平面図
2Fでは山側に客室棟別館と浴場棟が加わり宴会棟2Fの大宴会場と一体化された棟続きの構造となっている。

Part.2は客室の様子



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2020年03月06日

【取り分けた料理】
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  朝食
 これが解り辛い配置の料理台を巡って取り分けた朝食の料理。
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  生野菜
先ずは朝食に欠かせない生野菜にミニトマトを添えたサラダ。
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  大皿
大皿はハムと卵焼きと塩焼鮭に豚肉生姜焼き、明太子、焼売を少しづつ。
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  麻婆豆腐
麻婆豆腐も少量に抑えて定番の温泉玉子と納豆、焼海苔に牛乳を添えて朝食を完成した。
取り分けた料理は期待違わぬ味で具沢山の好ましい味噌汁を喉の潤滑剤として新米のご飯をお替りしたがカレーやハヤシの類に手を伸ばす余裕が無い儘で食事を終えた。
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  終了間際の受付
 朝食後に一旦部屋に戻りチェックアウト前の入浴に向かう途中に通り過ぎたフロントロビーで終了間際の朝食会場の様子を垣間見ることができた。1時間程前には山の様に積まれていたトレーや皿が消え去り
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  料理台
陳列台上の料理皿も少なめに見える。
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  会場入口
コンベンションホールの朝食会場に出入りする客足が途絶え一時の喧騒が過ぎ去った空間に満たされた安堵の空気を感じた。

【朝食後の入浴】
 フロントロビーからBFに降り清掃時間直前の浴場で名残を惜しんだ。
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  内湯浴槽
何処に限らず朝の浴場は窓越しに多量の陽光が降り注ぐので室内の写真撮影は画面に見る通り逆光の暗い景色となるが体感は逆で明るい浴場風景に恵まれた幸せな入浴である。
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  露天風呂
昨夜は露天風呂に降り落ちていた雨があがり褐色の湯にゆったり浸かることができた。
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  1Fロビーから中庭の景観
 入浴後に朝食会場の役目を終えたフロントロビーに立ち寄ると大窓の外に1FとBF浴場通路の2階層に渡って立体的に造成された庭園の景観を望むことができた。

【チェックアウト】
 10:00のチェックアウトに先立ってフロント業務が始まっていた朝食後に宿泊費の清算を済ませていた。事前の会計は宿泊客の清算が集中するチェックアウト時の渋滞を回避し部屋の鍵を返却するだけで速やかに出立できる有効な手段である。
 宿泊に要した費用は先にも述べたウィークエンドスペシャルプランの2食付単価¥9,504が2名で¥19,008(税サービス料込)に入湯税¥300と冷酒2本¥1,869(税込)が加わり¥21,177であったが事前に予約サイトに蓄積されたポイント割引きを利用していたので¥19,000程の清算となった。

【終章】
 さんさ亭は宮城蔵王の遠刈田温泉では数少ない大規模旅館の一つであり温泉大浴場はそれに相応しい規模と設備を備えているが浴槽は大規模故に塩素滅菌剤を使用する循環濾過装置の稼働が不可欠で循環濾過併用の源泉掛流しとされているのは残念だが衛生管理の観点から止むを得ない方式ではある。
 9月の連休期間に割安な宿泊プランの提供は有難いが集客に腐心していると受け取ることもできる。旬樹庵の一員になる等経営改善に取り組んでいる様子が窺える。
 割安なプランであったが食事内容は不足を感じない十分なものであった。敢えて難を挙げるならば食事会場の接客要因が少なめでサービスが遅れがちなことであろうか。




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