2023年06月30日
【宿泊の手続き】
フロント前の広いロビーは2階部分まで吹き抜け構造の開放的な空間に多数の来館者の姿があったが多くは日帰り入浴客であるらしい。先に見た玄関内の多数の下足箱もこうした需要に応える備えと思われる。
とにかく携えた荷物と共にフロントで宿泊予約の旨を伝えると宿帳に記入し
食事会場と希望時間を記載した館内案内が手交されチェックインが完了する。
加えて全国旅行支援の対象という事で新型コロナワクチンの接種証明と本人確認の免許証を提示し利用書類に署名すると岩手旅応援クーポンが発行された。
【岩手旅応援クーポン第4弾】
以前から幾度か紹介してきた岩手旅応援クーポンは金券形式の券片綴りであったが今回は第4弾とかで全く形式が異なりA4版の紙に白黒印刷で紙クーポンのQRコードと電子クーポンをチャージするアプリである「region PAY」をダウンロードするURLのQRコードとクーポン金額¥2000(平日限定額で週末は¥1000)に有効期限が記載された1枚紙である。
更にフロント係から紙クーポンは利用できる店が少ないので電子クーポンをお勧めすると助言を戴いたがそもそも紙と電子で利用手続きの違いを理解しておらず紙クーポンとは云っても従来の金券形式とは使い勝手も全く異なる様に見えたので取り敢えず受け取り後の検討課題に先送ることにした。
【宿泊プラン】
今回は常用している大手の予約サイトから手配した一人旅で「2食付スタンダードプラン ベッド付和洋室」である。GW前閑散期の料金は¥11400(税サ込、別途¥入湯税¥150)の設定であるがこれに全国旅行支援クーポン岩手県版で¥2280の補助に依って¥9120となる。更に先に述べた¥2000のクーポンが加わるので実質的な負担額は¥7120と極めてお得なプランとなった。
又同じ料金でベッドのない和室プランもあり何れのプランでも2名の利用なら基本料金も単純に2倍となる分り易い設定である。
但しこの様な料金設定は閑散期故に享受できるものでGWになれば宿泊単価は¥15000程度かそれ以上に引き上げられるであろうし全国旅行支援も適用外となる心得は必須である。
【館内の構造】
「ひめかゆ」の館内は極めて複雑な構造を呈しており先に見た胆沢町時代の初期施設に少なからぬ建物群が後付けされた様子が感じられる。
以下に3種の館内図を提示する。
先ずはフロントロビーへ通じる玄関通路壁面内に掲示されている大型の案内図(館内図①)。
こちらはフロントロビーのパンフレット棚で見つけたA4版の案内図(館内図②)である。
既に紹介したがチェックインで受領した館内の案内図(館内図③)も再掲するので3者を見較べて戴きたい。
館内図①と②はどちらも共通の原図に基づいている様に
見えるが細部に相違を認める
先ず両方の図面の共通点はエントランスから玄関内部を結ぶ上下軸の左側は「ゆうゆプラザひめかゆ」の表示で逆の右側は「ひめかゆほっと館」となっており自ずと目的とする機能の相違を感じる。
館内図②では「ゆうゆプラザひめかゆ」側に日帰りセンター入口、「ひめかゆほっと館」側は宴会·宿泊専用入口の表示が明確な役割分担を示しているが館内図①では宴会·宿泊専用入口の表示が貼紙で隠されてその存在が秘匿され日帰りセンター側の入口に集約されている。従って先に紹介した送迎バスが発着する屋根付きのエントランスから多数の下足箱を備えた玄関通路の奥に置かれた受付(フロント)は元々日帰りセンターに属する施設で宿泊や宴会用の客を迎える玄関は別の構えであったと思われるその痕跡は建物施設の外観や館内の構造でも明確である。
又館内図①と②で玄関通路の右手に位置する食堂は「グルメハウス」との表示がある。そう、「グルメハウス」は先にエントランス外壁のプレートで見た平成6·7年度当時の農林水産省山村振興等対策事業で胆沢町が建設した広場緑地等利用施設(グルメハウス)鉄骨2階建に符合し建設当初からの主要な施設であったことが窺える。食堂の右に接する空白の部分は云うまでもなく厨房の空間である。
館内図③は①や②より簡略化されており「ひめかゆほっと館」側の宴会·宿泊専用入口の部分が極端に矮小化されて非常口の表示が残されている。更に「ゆうゆプラザひめかゆ」の温泉大浴場より奥に位置する打たせ湯、気泡浴、寝湯、プール、歩行浴等の部分が大胆に省略されている。因みに省略された部分は水着着用で男女共用の屋内プールの領域である。
結論を先に述べると館内図③で省略された二箇所は施設建物の空間は現存はしているもののその機能を果たしていない部分となっている。詳細は後の温泉施設の項に譲るが館内図③が館内の現状を示す最新版であろう。
【フロントから宿泊棟への経路】
チェックインを済ませた「ゆうゆプラザひめかゆ」のフロントから「ひめかゆほっと館」の最奥に位置する宿泊棟の客室に向かう道中は想像を超える遠距離で温泉宿の訪問で常用している3種のバッグ(手回り品用の小型ショルダーとA4ファイルサイズのPCバッグ、宿泊用品のボストンバッグ)を携え撮影用のカメラも手放せないハードな行程であった。
この画面はフロントから客室棟に至る経路を示したもので
先ずは宴会場の個室と広間を備える棟(農村ふれあいセンター)に向かう通路を進む。
宴会場の棟内は左手に個室が並び右手は広間が配置されている。
宴会場棟内の廊下は突当りが右に折れた先は左側の和室宴会場の先に外光が見えている。
この外光はガラス窓で仕切られた中庭の設えから注がれており中庭に沿って右に曲がると温泉浴場と現在閉鎖されている宴会宿泊専用入口に繋がっている。
従って客室に向かうには斜め左に伸びる通路からL字構造の宿泊棟内の廊下を進む。⑤の位置までは日帰り入浴客や宴会場利用客の立入りが可能だがここから先は宿泊客専用の領域とされている。
宿泊棟内の廊下を進むとL字のコーナー部にロビーの空間があり
囲炉裏を模したテーブルの周囲に縁台風の長椅子が配置された休み処となっている。
又このコーナー部には各種のサイズを揃えた浴衣の棚と
羽織の用意に加えて客室に持ち込める冷水ポットの提供が有難い。
コーナー部からも廊下の先に見えていた外光が射す非常口が宿泊棟の最奥で長い道中が終わる。
Part.3はベッド付和洋室の客室
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2023年06月23日
【序章】
2023年のゴールデンウィーク直前の4月下旬に一人旅が可能な機会に恵まれたが一人で宿泊できる温泉宿は決して多くない。
嘗ての温泉宿や観光地は大人数の社員旅行や団体ツアーの受け入れを主流としていたが近年団体客の旅行需要は新型コロナ感染症の影響もあり影をひそめている。
従って最近は少人数の家族旅行に加えて筆者の様な高齢者の単独旅の需要が増加している筈だが未だに一部屋2名が大原則の宿泊プランに固執する施設が圧倒的で個々を優先する柔軟な受容れ態勢に欠ける現状は極めて残念である。
今回は偶々一人旅の宿泊が可能な宿が見つかり事前の予約を確保した。
その宿は岩手県奥州市胆沢の地にある「焼石岳温泉 焼石クアパークひめかゆ」である。
既に紹介した「薬師堂温泉」や「永岡温泉」は岩手県南部地域の奥州市と金ケ崎町にある一人旅を経験した宿で奥州市胆沢の地にある今回の「焼石クアパークひめかゆ」も加えて岩手県南地域は一人旅に優しい施設が集まる地域と感じる。
【焼石クアパークひめかゆの位置】
「焼石クアパークひめかゆ」は岩手県でも南部地域となる奥州市胆沢地区で太平洋側の大船渡市から秋田県内陸部の横手市を結ぶ国道R397の沿線に位置している。
奥州市内のR397は平坦地の水沢地区から概ね北上川支流である胆沢川を遡り胆沢地区を横断して西進し秋田県境へ向かうが
「ひめかゆ」の温泉施設は胆沢川が刻んだ山地の渓谷を遮断してに築かれた大規模なロックフィルの胆沢ダムより少しだけ下流側に展開されている。
因みに「ひめかゆ」の名前は胆沢地区の山岳地焼石連峰の高山に咲く植物の「ヒメカユウ」が由来とのことである。
【ひめかゆへの道筋】
宮城県側から岩手県に北上し「ひめかゆ」向かう道筋は幾つかあるが最短はR4で奥州市前沢地区に入った直後に北西方向に分岐する県道r37を辿るルートであろう。但し今回は水沢地区の中心部迄R4を進み既に走行経験があるR397から西進する国道優先ルートを選択した。
最短ルートと比較すれば三角形の二辺の和となる遠回りで県境の山間部を目指す3桁国道は水沢の市街地を抜けると辛うじてセンターラインの痕跡が見えるものの路側帯の余地がない狭路となるが通行する車両が少なくスムーズな走行が可能で時間的な不利益は感じられず葉桜の並木が延々と続く旧街道の景観が印象的であった。
南から合流するr37を併せて更に進むと国道から左折を促すひめかゆの案内看板が現れこれに従って左に分岐する細道に入る。
この分岐点は道端に残る舗装部分をガードレールで通行止めにしてT字路に改造した痕跡から嘗ては分岐側が国道で直進する道は後補のバイパスと思われる。
実はこの先のR397は先に触れた胆沢ダムの建設に拠って出現する奥州湖の湖底に沈むことになり焼石連峰南東面の山を穿つ四つのトンネルと尿前渓谷の大きな沢を跨ぐ橋梁を架けて湖岸に新道を開削した経緯がありダムより下流部に位置するひめかゆの周辺部でもダム建設の時期にあわせて道路事情が大きく変更されたと思われる。詳細は後に紹介する。
旧国道と思われる分岐道を進んで行くと道端に立つ大看板の左手がひめかゆの敷地である。
【ひめかゆの施設外観】
敷地の手前は広い駐車場が用意されているが既に多数の車が集まっておりその奥に大きな建物が見えている。
2基の搭を従えた中央の建物が玄関らしいがその左右に大きな建物が連なっており一見で大規模な施設と理解できる。
玄関の左側はピンクの外柱に支えられた総2階の大屋根が続き
右側は平屋を介して和風の切妻屋根を載せる幾つかの建物群が見えている。
これらの建物は複雑な構造を呈しているので次項の館内の様子で紹介する。
駐車場からの入館は現在このエントランスを利用することになる。アルミ骨格を半透明の樹脂板で葺いたガレージ風の雨除けは送迎のマイクロバスの発着場でもある。
エントランス脇の外壁に施設の由来を示すプレートが目に止まり撮影したがこれに依ると平成6·7年度の農林水産省の山村振興等の対策事業で当時の胆沢町が建設した延べ床面積546平方メートル程の鉄骨2階建てで広場緑地を利用したグルメ施設と読み取れるが温泉施設の記載は見当たらない。従って奥州市となる以前の胆沢町が国策の振興補助金を活用して建設した町営施設が原点となっていると思われる。
鉄骨2階建ての施設とは先に述べたエントランス左手にあるピンクの外柱に支えられた総2階の部分であろうか。
既に何度か触れているが現在の奥州市は水沢市、江刺市、前沢町、胆沢町、衣川村の5市町村が平成18年2月20日に平成の大合併で誕生しており嘗ての町営施設は合併に伴う何らかの経緯を経て公営施設から現在の企業運営に変更されたと想像できる。
【ひめかゆの館内】
エントランスからガラス戸の自動扉を開けた内部は
雪国では標準装備である二重扉の風除室の構造で
二重ガラス戸の先は奥に伸びる通路の両側に並ぶ下足箱は百を優に超えておりここに外靴を預けるが下足に代わるスリッパ等履物の用意はなく館内は裸足での移動を余儀なくされる。入館当初は裸足の移動に違和感があったが複雑な構造の館内の移動経路は全てカーペット敷きで板張りの廊下やコンクリート打ちの通路は皆無で足元の冷感はなく館内の移動に慣れると歩き易さを感じる程であった。後に延べるが宿泊棟に向かう館内構造は多数の建物の複雑な集合体となっており裸足移動の快適性維持の為に床暖房を採用する部分があるのかも知れない。
下足箱に靴を預けて奥へ向かうと右手に営業終了の札を掲げる食堂と更に奥のフロントに誘導する矢印に誘導される。
誘導された先のガラス戸の奥は広いロビーがあり
左手前に配置されたフロントで入館手続きを行う。
画面に見える通りフロントカウンターと並ぶ奥の売店は陳列台がロビー空間を侵食している。
Part.2はチェックインと館内の複雑な構造
(00:00)
2023年06月16日
【序章】
一関市は岩手県南部の主要な都市であり複雑な経緯を経て周囲の町村と合併を繰返し最終的に2011年の東磐井郡藤沢町との合併で現在の広大な市域を擁している。因みに市域の東端は宮城県北端の港町気仙沼市に接し西端は栗駒山の高原地で秋田県境に至っている。
既に紹介した山のそば屋須川や山王山温泉瑞泉郷が在る岩手県一関市西部の厳美町地域は秋田県境の須川高原温泉に至る迄国道R342が横断する道路交通で支えられているが磐井川の岩礁が造形する厳美渓の景勝地でもあり観光施設や温泉宿が集まる一大観光地となっている。
今回はこの観光地の中心部に店を構える「そば処まるきや」の再訪記である。初めての訪問(20150417掲載)から既に11年を経ているが諸般の成行きで偶々再訪の機会に恵まれたものである。
【まるきやの位置】
「そば処まるきや」の店は厳美渓の中心部となる磐井川右岸の厳美公園から徒歩数分の圏内にある。
まるきやは厳美公園に近い位置に白暖簾を掲げそば屋の雰囲気を色濃く漂わせているが
その奥には2階建ての大きな建物が続いていて
先程と同じ白暖簾を掲げた第二の玄関がある。
こちらは玄関前の空間に赤毛氈を敷いた縁台の設えと春色の幟で料亭や旅館の趣きを感じるが軒下に掲げられた木製看板の文字は紛れもなく蕎麦やである。
この2階建ての奥に立つ案内板がまるきや専用駐車場の存在を告げている。
【店内】
店内はフロア席と畳敷きの座敷に分れており第一の玄関はフロア席に直結している。
上の画面は座敷からフロア席越しに第一の玄関方向を望んだものでフロアには3脚のテーブルに12席が配置されている。
こちらは逆方向で中央の引き戸のガラス越しに第二の玄関が見えている。駐車場に近い第二の玄関は内部が広く土間で靴を脱いで板床に上りガラス戸を引き開けて座敷に入室することになる。
仕切戸がないフロア席側からの利用可能であることは言うまでもないが退出時は入店時と同じ玄関に戻らないと靴が履けないのでご注意。
座敷はL字型で第二の玄関側は細長く奥行がある。但しL字の屈曲部分には敷居と鴨居の備えがあるのでここに引き戸や襖を立て込めば二間に仕切ることも可能な構造となっている。仕切った場合はフロア席側の4畳は小上りに第二の玄関側は縦長(鰻の寝床状)10畳半の和室に変貌する筈だが11年前の訪問時も開放状態であった。
座敷内は第二の玄関側に3台、フロア側に少し小振りな2台で計5台の座卓が用意されている。
【品書き】
客席の風景から既に察している方が少なくないと思うが卓上に品書の類はなく品揃えは全て壁面に掲出されている。
この掲示を眺めて所望の品を選択するのだがそばかうどんの5品にご飯ものの天丼が加わる簡潔な品揃えが分り易い。
そば又はうどんの麺類はもりそば(又はうどん 以下同様)¥650、カレー南蛮そば¥900、冷しとろろそば¥950、春待そば¥950、天ざるそば¥1300の5種で唯一の丼ものは野菜と海老の天丼が¥1000と観光地の店ではあるが何れの品も安価な設定が嬉しい。
女将の風格を纏い接客を取り仕切っている年配女性のお薦めに従って春の息吹と香りがひろがりますと注釈された春待そばを注文した。彼女の端的な説明はそばに春の山菜や野菜天ぷらを載せた一皿でつゆのぶっかけも良いし普通につけ汁でも食せるそばと。
【春待そば】
注文を通し暫くして運ばれたこれがまるきや特製の春待そば。皿盛りの天ぷらそばと猪口入りのつゆに刻み葱の薬味と箸休めの漬物小皿が付く。
白い皿盛りのそばが見えない程に大型の山菜天ぷらが大胆に重なる盛付けは圧巻の光景で
山菜天ぷらの山を片隅に避けて掘り起こしやっとそばに面会することができた。
色白な褐色麺の中には細かく砕かれた多数のホシが鏤められている。
割箸で掬い上げたそばは4mm程に見える太麺だが
柔軟な腰を備える二八系統の配合かと思う。
【山野菜の天ぷら】
山菜生憎なことに山菜に造詣がないので盛大に盛られた天ぷらは何が何やら状態で説明に困るが
そばを覆って鎮座していた大型の天ぷらを食するとニンニクの香りが感じられたのでこれは行者ニンニクかと思う。
その他名を知らない山菜類に加えてパプリカと
レンコンの野菜天ぷらもある。
更に皿の片隅には天ぷら仕立てではなく甘味噌を絡めるこごみ(シダの一種であるクサソテツの若芽)も配置されており正に待ち焦がれた春の山野菜をふんだんに味わえる一品である。春待そばの命名も秀逸であるが何よりも財布に優しい¥950の値付けが嬉しい。
先にも触れたがこの春待そばはそばと天ぷらにつゆをぶっかけて食しても良いし普通のつけぞばでも楽しめる様に盛付けが工夫されており今回は猪口のつゆにそばを浸すつけそば方式で戴いた。機会に恵まれれば次回はぶっかけそばとして春の山野菜とそばの饗宴を体験したいと思うが春先に限定される季節の品であることは云うに及ばない。
【そば湯】
大胆な形状を呈する山菜天ぷらとの格闘中に運ばれたそば湯は
朱塗りの円形湯桶に収まる極普通の釜湯で
食後はそば猪口の残りつゆをそば湯で割り残った薬味葱も加えて調整したそば汁の飲み物を味わう何時もと変わらぬ作法で締め括った。
【終章】
十年一昔とは昔から言い伝えられている諺であるが11年振りに再訪した厳美渓の観光地の「そば処まるきや」は一昔前から変わらぬ佇まいを維持しながら営業を続けている店である。
特に今回体験できた「春待そば」は季節限定ではあるが春の山野菜の息吹を直接感じることができコストパフォーマンスにも優れたお勧めの一品である。
完
(00:00)
2023年06月09日
【序章】
今回は岩手県西磐井郡平泉町の観光地のそば店「芭蕉館」を紹介する。
芭蕉館は平泉の地に2店舗を構えており一方はJR平泉駅前のロータリーに面する「駅前芭蕉館」であるが今回訪問した店は観光地の中心部を縦断する県道r300沿いに20台程の駐車場を擁し本店の風格を備える大型店である。駅前店は出店的な支店の位置付けであろうか。
【芭蕉館の位置】
平泉中心部の道路事情は折に触れて述べているので継続的に閲覧されている方は良くご存じかと思うので道案内は国道R4の平泉バイパスと現在r300の旧国道(奥州街道、陸羽街道)の分岐点平泉バイパス南口の交点から開始する。
信号機が設置されたバイパス南口はY字型の交叉点で道なりに直進すると北上川の沿うバイパス路を北上するが左折レーンに進路を移すと世界遺産の毛越寺や中尊寺へ誘う奥州街道に進む。国道側は車の流れはスムーズだが殺風景なバイパス路の景観のみであり個人的には常に好んでr300の旧街道を辿っている。5月の連休中に開催される藤原まつりには観光の最盛期を迎え中尊寺の駐車場が集まる旧街道は駐車場を探す遠来の車が溢れ大混雑を呈するがオフシーズンは車通りが少ない走り易い道筋である。
今回は連休前の閑散期を狙った旅路で混雑に巻き込まれることはなかった。
直線的な道形で北上する旧街道を進むと樋渡の交叉点を過ぎた二つ目の信号交差点の毛越寺口に達する。ここを左折してr31に進むと毛越寺に至り右折すると僅かな距離で「駅前芭蕉館」も立地する平泉駅前広場のロータリーに乗り入れるが「芭蕉館」は直進で
更に100m程進んだ右手にありそば処芭蕉館の大きな誘客看板を目印に
敷地内に乗り入れ駐車場に車を止める。
【芭蕉館の外観】
芭蕉館の県道側に建つ屋根付きの看板は大型で
その奥に続く細長い敷地の左手(北側)が駐車場となっている。右側は奥に構える2階建ての建物から手前に平屋が張出した構造に見える。
店の入り口は敷地の奥に進んだ2階建ての部分に紫の暖簾を掲げている。2階の窓には目隠し格子が廻らされており建物はL字に折れて北側に平屋が伸びる手の込んだ構造となっている。
建物の複雑な形状はGoogleの空撮画面で確認できる。画面で玄関の矢印を付したのが2階建て大きな建物でこれを中心に県道側と駐車場の奥に入母屋の屋根を載せる方形の平屋が幾つも連接された建物群となっている。
【店舗の内部】
玄関の引き戸を開けた館内は
タイル貼りの広い床の正面に天井に届く飾り窓を設える余裕を持たせた空間で右奥のカウンターの手前に
2階に上る階段が設置されている。この様な構造から2階には宴会用の広間の存在が窺われ店の造りそのものが単なるそば店ではなく料亭か割烹宿を意識している様に見える。
出迎えた従業員に誘導された店内は駐車場に面するフロアに7脚のテーブル席が並び
通路を隔てた反対側は座卓を配した
畳敷きの小上りの空間である。
通路の突当りは畳を敷いた和室に椅子とテーブルの配置が見えている。この和室は少人数の団体客を意識した造りにも見えるが予約なしでも利用できそうである。客席では一番奥の部分だが外観上は大看板が立つ県道に面した建物である。
【品書】
フロアのテーブル席に着き卓上に配置された品書きを開くと
先ずは盛り出し式わんこそばの紹介から始まる。
曰くわんこそばは地域によって食べ方が異なり芭蕉館では予め多数のお椀に少量盛り付けたそばを初めから提供し客の独自ペースでゆっくり味わってもらうのだとか。
品書きの説明に依ると始めは1段に12椀を載せた2段膳が供される。これで不足があれば3段目をサービスするが4段目以降は1段¥400が加算されるという方式。
写真も掲載されている盛り出し式わんこそばは天ぷらとミニデザートセットの特¥2700とわんこそばのみ(並?)¥2200の2種に小学生限定のお子様わんこそば¥1600の用意もあるがこちらは写真がなく詳細は不明。
因みに先客が退店した後のテーブルには3段膳が残されており盛り出し式わんこそばに挑んだらしい。
わんこそばの下段には冷そばの天ざると三代そば何れも¥1200が写真付きで紹介されているが
その他の冷そばと温そばやご飯もの飲料等は2頁目に纏められている。
冷そばと温そばを見ると基本のもりそばとかけそばは共に¥600、ざるそば¥630になめこそば(冷温共)¥750、とろろそば(温そばはやまかけそば)¥780に山菜そば(冷温共)と天ぷらそば(温)が¥850と観光地でありながら良心的な価格設定が嬉しい。もりそばとざるそばに価格差があり明確に区別されているのでもりは海苔なし、ざるは海苔がトッピングされる店である。
ご飯ものも同様で天ぷら定食¥1200以外は天丼¥950、かつ丼¥900、豚丼¥850、親子丼と牛丼は¥800等¥1000以下での食事が可能である。
品書きの3頁目はの煮込みハンバーグと鶏肉クリーム煮の日替りランチ¥900やケーキ等甘味デザートの他に予約を要するテイクアウトオードブル受注の告知もありそば屋の域を超える多彩な品揃えが特徴である。
【天ざる】
ドライブ途中の昼食が目当てで立ち寄った店でわんこそばを食する積りは全くなかったので注文する品は天ざるか三代そば或いは鴨せいろの3品に絞られた。
三代そばの三代とは藤原三代に因む芭蕉館独自の命名と思われるが接客担当者に内容を問うとなめこおろし、山菜とろろ、天ぷらの3種椀もりそば各々に冷たいつゆを掛けて戴くぶっかけ系のそばとのこと。
夫々に惹かれる要素があったが初訪の店ではそばの素顔が見える品の選択を原則としているので悩んだ末に天ざるを発注した。あ、ざるそばの海苔抜き指定を忘れていた!ま、いいか。
暫くして運ばれた天ざるは竹細工を装った塗り物の蒸籠に載り案の定刻み海苔がしっかりトッピングされている。
丸皿に盛られた天ぷらは海老の他
山菜や多種の野菜種に薬味の下し大根が添えられており
そばつゆとは別に用意される専用の天つゆの添付が有り難い。
天つゆは云うまでもなくそばつゆより甘めの薄味仕立てが理想で下し大根の風味を加えたつゆに揚げたてカリカリの天ぷらを浸して部分的に柔らかみを増した天種を食する瞬間は至上の時である。
つゆはそば猪口で供され小皿の薬味は刻み葱と山葵の標準的な組合せ。
一見で明らかに色白なそばはズームアップして見ても黒いホシの散在を認めず
割箸で掬い上げた麺の太さは4mm弱のやや太めの仕上げだが
柔軟で口当たりが良く食し易い。
但し更科程の純白さはないので玄蕎麦丸抜き製粉の1番粉から2番粉が主体の二八そばではないだろうか。又麺の太さは均質でばらつきがなく打ち上げたそば生地は機械切りの工程が想像できる。
そば食の後半になって供されるそば湯は良く見る丸形の湯桶で運ばれた。底部に白濁の沈殿物を認めるそば湯は濃い目の釜湯の印象で
そばを食べ終えた猪口のつゆにそば湯と薬味葱を加えた飲み物を調製してそば食の余韻を楽しんだ。
【終章】
世界遺産が集結する平泉の中心部は幾度となく通過しており県道に面して構える芭蕉館の存在も承知していたが観光地で営業するレストランの印象が強く訪問を控えていた店である。最近になってそばの提供が主体の店と知り初訪を果たすことになった。
特にこの店独特の盛り出し式わんこそばに興味があれば一度の体験をお勧めしたい。
完
(00:00)
2023年06月02日
【序章】
4月下旬に掲載した以前のそば店の近況で紹介した十割そば会泉中央本店は2022年に鳥中華の店に改装されていたが2023年4月の下旬になって噂に違わず十割そばの店に再改装されて開店したので早速訪問した。
【店舗外観】
2年前迄は頻繁に通っていたので勝手知ったる道筋から店舗敷地内の駐車場に乗り入れると道端に踊るOPENの文字を染めた赤い幟旗に迎えられ十割そば会の復活を感じる。
しかし店頭の看板を観ると十割の文字を丸く囲った緑色のロゴマークは健在だが昭和のそば処武蔵亭の表記のみで十割そば会の文字が見当たらない。
因みに鳥中華の店に改装される前に掲げられていた看板はご覧の通りロゴマークと十割そば会の文字に泉中央本店の店名が添えられていた。
あれ! 訪問時には全く気が付かなかったが2年前の写真と見較べると以前にはなかった駐車場側へ建物が拡張されてお持ち帰りの窓口が配置されていた。
この窓口は訪問時には準備中で機能していなかったが開店早々でありいずれ従業員の陣容が整えばテイクアウトの需要にも応えるのであろう。玄関前に掲出されたスタッフ募集の看板からその辺りの事情が汲み取れる。
【入店待ち】
店内に入ると既に入店待ちが生じており見慣れた予約票に名前と人数に席(テーブルorカウンター)の希望を記載するのは2年前と変わらぬ手続きである。
【店内】
店内も2年前と全く変わらぬ配置で二重扉の玄関奥の会計カウンターから左手奥に伸びる客席は厨房側に並ぶカウンター席と通路を隔てた駐車場側の窓側にテーブル席が連なっている。
【品書き】
僅かな時間待ちで案内されたテーブル席に用意された品書は以前と同様で変則的な縦長両面カラー印刷のラミネート加工を冊子に綴じ束ねたものでラミネートの剛直性故に卓上で平面に開き置くことができない厄介な代物である。
先ずは見易い1枚もののラミネートは入替が前提の季節の品と思われるがもりそばと各種の重物やまぐろ丼との多彩なセットが控えている。それらの中でもそばとうな重のセットは¥2200(税込以下同様)と以前の十割そば会では見掛けなかった高額設定で高級志向への転換を感じるが一方でもりそばとまぐろたたき丼¥930と馴染みやすい安価な品揃えもある。
いよいよ見辛いラミネート冊子を開くと最初の見開きは先程と同様のもりそばと各種の重もののセット品が前面に押し出されている。
この画面は片手で見開きの頁を抑えながらもう片方でカメラのシャッターを押す離れ業の賜物である。
次の見開きはつけそばの品々でとりなんつけそば¥690とお子様つけそば¥390の設定もあり各種のトッピングを網羅した全部入りつけそば¥1000も用意されている。画面右下に見えるトッピングはピントが合わず不鮮明だが次の冷そばや温そばにも共通の品揃えである。
個人的に本命である冷そばの頁には基本的なもりそば¥550とざるそば¥630の他にかき揚げそば¥730、野菜天そば¥790、天ぷらそば¥830、海老天そばと海鮮天そばが共に¥1000となっている。
他に各々¥110で提供される生たまご、半熟たまご、自家製味玉、とろろ、大根おろし、辛子味噌、に刻み海苔、千切りねぎ等10種のトッピングは以前には見掛けなかった品々である。
温そばではかけそば¥550とかき揚げ温そば¥730、野菜天温そば¥790、天ぷら温そば¥830、海老天そばと海鮮天そば¥1000は対応する冷そばと同額に設定されており温そば独自の品となるとりなん温そば¥690、山菜そば¥700、会津にしんそば¥930が加わる。お子様そば¥390は以前からあった品でチャーシュー入りの温そばに味玉とおにぎり風ミニ肉飯のプレート、オレンジジュースに加えて店内に設置されているカプセルトイ(所謂ガチャガチャ)に使えるメダルが付くセットメニューである。今回は確認していないが以前の店内はガチャガチャが男の子用と女の子用の2台に分かれており幼年児の細かい嗜好を捉える配慮(深謀遠慮)が感じられる。幼児から小学生低学年の子供達を抱える家族連れを取り込む戦略商品であろう。
家族連れは週末の昼食需要での来店が狙いと思われる一方でぐい呑みセット¥1000や利き酒セット¥1450は平日の夕刻時間帯に帰宅途中の通勤者の立ち寄り需要を意識した品揃えかと思う。
右ページのお持ち帰り丼は先に紹介した通りテイクアウトコーナーが準備中であったが店内に入れば発注できるのであろうか。
【大盛りの料金】
以前の十割そば会はそばの大盛り無料が魅力であったが品書にその記述はなく厨房側の壁面に掲示された「そば多めは+¥50」、「大盛り1.5倍は+¥100」の大型木札に依って無料の大盛りサービスの廃止を知ることになった。
最近はあらゆる物価の高騰が続いており十割そば会もこの高波に抗えないと納得する以外の選択肢は残念乍ら見当たらない。
【野菜天そば】
十割そば会の店で最近選ぶ品は野菜天そばかかき揚げそばが定番となっており
今回も野菜天そばを+¥50のそば多めで発注した。
暫くして運ばれたそばは以前と変わらぬ盛付けに見えたが
一応以前に撮影したものと見較べると天ぷらの長皿とそばを盛る丸皿の色がダーク系となりそばの水切り役である竹製の簀子は黒色のプラスチックが採用されていた。つゆ猪口と薬味の小皿は以前と変わらぬデザインに見える。
野菜天ぷらも見慣れた盛付けで輪切りの大振りな薩摩芋を土台に茄子と蓮根、オクラの4種が立体的に配置されている。
以前の写真ではオクラの位置はピーマンが占めていたが季節や材料仕入れの都合による差異であり盛付けは以前の手法が引き継がれている。
以前にも述べているが十割そば会では練り上げた生地を加圧押出し機の射出口から細く成型した麺を茹で釜に直接投入する製麺法を採用している。
因みに近年は提供するそばの品質が飛躍的に向上している立食そば店でもこの方式を採用しする店が少なからず存在する。
十割そば会のそばは色白な仕上がりで一見では更科系に見えるが仔細に観察すると蕎麦の実の外皮に由来する黒いホシが散在しており挽ぐるみ系のそば粉を使っている様に見える。
又そばの太さは細麺が多い中で一部に幅広麺の混在を認める。この点に就いても以前から指摘しているが製麺機射出口の網目(ストレーナ)形状で麺の弾力性即ち口当たりに微妙な変化を与える工夫であろう。
割箸の先端部と比較した麺は大部分は2~3mm程の細麺だが太いものは4~5mmに見える。
但し太い麺もその断面は長方形で短辺は2~3mmのきしめん風な幅広麺ではあるが太麺に独特の噛み砕いて食する程の違和感はなく柔軟な麺の喉越しが楽しめる。
十割そば会の店のそば湯は予め卓上の保温ポットで配置されておりセルフで利用する。そば猪口に残ったつゆに美味いそばでは出番がなかった刻み葱を投入しそば湯で調製したスープを味わいいつも通りのそば食を終えた。
【オープン記念のサービス券】
会計カウンターで料金を精算するとオープン記念の割引券が提供された。以前から度々この種のサービスは実施されており従来は宮城県内4店舗(泉中央、富谷、南吉成、大野田)の共通券であったが今回は泉本店(泉中央本店から改称したらしい)限定となっている。有効期限は一箇月程に設定されている。
【終章】
1年越しで復活した十割そば会泉中央の店は「昭和のそば処武蔵亭泉本店」と看板を架け換えたが十割そば会のロゴマークは健在で基本的な品揃えやオペレーションも以前の店と変っておらず十割そば会のチェーン店であることは間違いない。
但し4月末の時点で十割そば会のHPに泉中央店の開店情報はなく宮城県内の店舗情報には富谷本店、大野田店、仙台吉成店の3店舗が掲載されている。
泉本店では無料のそば大盛りサービスが廃止され価格も以前より値上げの方向で設定されている様だがそれでも尚もりそばとかけそばがワンコイン+税、天ぷら付きのそばも税込みで¥1000以内と庶民に優しい価格設定が有難い店である。
完
(00:00)
2023年05月26日
【序章】
「たまき庵」は筆者が仙台に移住した40年程も前の当時には数少ないそばの専門店として高名な存在であった。秋保温泉街より更に名取川の上流に掛る名瀑秋保大滝の観光地に1973年から店を構える老舗であり折に触れて幾度となく通った経験がある。
秋保大滝周辺には他にも営業するそば店があったが現在秋保神社の裏手に位置する「悠全」以外は閉店状態であるのに加えて2014年に廃業し今は影も形も無くなってしまった温泉宿「ばんじ山荘」の日帰り入浴の体験と共に過去の記憶となってしまった。
2015年になり高齢となった店主の子息が引き継ぎ店名を「穣庵(じょうあん)」と改めて代替わりを果たした経緯も既報であるが
数年前(日付の正確な記憶がない)に穣庵から店主が変わり店名も再度変更されたとの噂を耳にしていた。新たな店名は「二代目たまき庵」とのことで由緒あるたまき庵の屋号が復活した様である。
ここ数年は感染症の自主規制の意識から秋保温泉街より奥地となる県道r62二口街道(秋保街道とも)方面への足も遠のいていたが「たまき庵」の近況が気になり2023年4月初旬仙台では例年より早めに訪れた桜の季節に秋保大滝へ向かうこととした。
【秋保大滝への道程】
10:00を大きく過ぎた時間に自宅を出て平日の仙台市内を南下し秋保温泉街から名取川沿いの二口街道を遡る道程で12:30頃に秋保大滝に到着した。
平日故か或いは未だに続く感染症対策の自主規制の影響であろうか定かではないが二口街道では並走する他車の存在はほぼ見当たらず久し振りに快適なオートクルージングを堪能しながら目的の地に達することができた。
【二代目たまき庵の店構え】
久し振りに対面した店舗は
以前から変わらぬ山荘風の風貌を備える総2階の建物で2F部分は県道に面してベランダ風の大窓の設えがあり嘗て二口渓谷や山形県境の山々に挑む訪問者の宿泊機能を備えていたのではないかとも見える構造である。
こちらは既報のたまき庵の時代に撮影した店舗だが独特な山小屋風の建物とその周囲のプレハブ小屋の配置も寸分狂いがなく少なくとも30年以上も前から変わらぬ姿を維持している。敢えて相違を指摘するなら現在は玄関脇のプレハブに掲げられていたカレーうどんの黄色い看板が撤去されており県道側に突き出た昔ながらのH型煙突が2本から1本に減ったことであろうか。
建物の脇にある専用駐車場から店に向かうと二代目たまき庵の招き看板に迎えられる。
招きを廻り込むと天然木に刻まれた店名看板を従え白布を裂いた暖簾を提げる玄関に迎えられる。
嘗ての玄関は銀色アルミサッシの記憶があるが今はご覧の通り格子戸様で落ち着いた色合いの引き戸に変っておりリニューアルの様子が窺える。
【二代目たまき庵の店内】
入店した店内は偶々客の姿がない貸切状態であったがそば食を終える頃には相次ぐ2組の入店があり平日でも一定客の支持があることが窺える。
店内の客席配置は基本的に初代の頃から変わらず県道に面する入口側のフロアの中央には天然木の長い一枚天板で設えたテーブルが鎮座している。天井吊りのエアコン室内機も昔の写真と変わらぬ位置を占めている。
客席奥の山側にある畳敷きの小上りは
こちらも天然木を加工した三つの座卓が30年以上も前の昔から変わらぬ配置である。このうち両端部の座卓は嘗て利用した時の鮮明な記憶が今も想起できる。
今回は単独行動で小上りの座卓席を占拠する行為は憚れたのでフロアの長テーブルの一角に席を求めた。
この位置から玄関方向を見ると入店直後の動線上で客席の視界を遮る目隠し板が依然とは異なり目新しい存在で店内客のプライベートに配慮した空間造りが感じられる。
既に3年以上も前から新型コロナ感染症対策として飲食を提供する店にはアクリル板の設置が常識とされていたがこの店では長テーブルの仕切りに竹編み細工が採用されて和風の独特な雰囲気を醸している。更に卓上の用意は箸箱に収まる割箸と爪楊枝に七味の小鉢と最低限度に絞られている。
小上りに背を向けて長テーブルの席に着いた右側に置かれた厨房配置も変わりはないが新たに客席と仕切る組子細工の目隠しが設置されて厨房内の様子を窺うことは困難となった。但し厨房内には店主と思われる男性ともう一人女性が作業する気配が感じ取られ接客を担当する女性との三人体制で営業されていた。
【代替わりによる客席の変遷】
先に客席配置は基本的に初代の頃から変わらないと書いたが過去の撮影した写真を見直すとフロアテーブルの配置に相違を認めた。
初代のたまき庵は現在の二代目たまき庵とほぼ同じで長テーブルは小上り側に配置されているが
穣庵の時代は画面の通り長テーブルがフロアの中央に移動されていたのである。
現在は先に紹介した通り小上り側に再配置されており今回はこのテーブル席に着いた次第。
【品書き】
接客担当者の声に迎えられて席に着くとカードケースと透明ファイルに収められた2葉の品書きが供されて壁面の掲示にもお勧めの品がある旨が伝えられた。
先ずは品書の吟味から
冷そばは
ざるそば¥880(税込以下同じ)
辛味大根ざる¥1100
天婦羅ざるそば¥1870
十割田舎そば¥1045
辛味大根田舎ざる¥1265
天婦羅田舎ざるそば¥1980
粗挽きそば¥990
舞茸天婦羅ざるそば¥1925
の品揃えで基本的には二八であろうざるそば(税別¥800)と十割田舎そば(税別¥950)、粗挽きそば(税別¥900)の3種で構成され辛味大根を加えると各々+¥200(税別)、天婦羅ではざるが+¥900、田舎は+¥850の差額が設定されている。粗挽きそばに辛味大根や天婦羅の記載はないが相談すれば相応する差額で受けて貰えるのではないだろうか。
末尾にある通りそばの大盛りは+¥440(税込)である。
温そばは4品に絞られて分り易く
かけそば¥935(税込以下同じ)
かけ田舎そば¥41100
豚南蛮そば¥1375
天婦羅そば¥1925
となっているが税抜ベースで比較するとかけそば¥850とかけ田舎そば¥1000は対応する冷そばよりも¥50増の設定となっている。一般的に基本的な冷そばであるもりそば(ざるそばやせいろそばの呼称も)と温そばのかけそばは同一料金に設定している店が圧倒的多数を占めているのだが二代目たまき庵が温そばを僅かではあるが増額している訳は茹でた後に冷水で締めた麺を暖かいかけつゆに馴染ませる為に再び容器の丼と共に熱い湯で温め直す加工賃であろう。
一品料理では
蕎麦がき¥1300の提供が玄蕎麦から保有管理するそば専門店の証である。
他に
あなご天婦羅¥1200
天婦羅盛合せ¥1500
ニシンの山椒漬け¥450
もそばのお伴で
味噌こんにゃく¥350
ジェラート(ずんだorそば)各¥200
はそば食後のデザートである。
先にお勧めと案内された壁面には
えび·あなご·まいたけ天ざる¥2200
しいたけ·まいたけ天ぷら¥880
の他に日本酒の取り揃えが掲示されていた。
【天婦羅ざるそば】
品書きの冷そばの品々と壁面掲示のえび·あなご·まいたけ天ざるを睨めっこしながら暫し迷った末に発注したのは堅実に天婦羅ざるそば。
厨房から聞こえる作業音から接客係に引き継がれた雰囲気を感じた直後に注文の品が卓上に届けられた。
竹編み笊に盛られたそばとてんぷらに加えてつゆ猪口と徳利入りのつゆに刻み葱と山葵の薬味はそばのお伴の定番だが
更に大根や細切りの人参に切昆布風味を加えた漬物の小皿と青菜のお浸しに刻み油揚げを添えた小鉢料理が脇を固める。
天ぷらは大振りの海老に牛蒡、茄子、薩摩芋、蕗の薹の山野菜が加わり食べ応えがある。
ささがき状の薄切り牛蒡をかき揚げの食材に加える調理法は一般的だが仙台近辺では棒状の牛蒡単独の天ぷらは遭遇する機会に恵まれず珍しい存在である。
そばの表面は白味が強い薄い褐色で微細なホシが多数認められ丸抜き製粉の蕎麦粉かと思う。太さに多少のばらつきを感じるのは手打ち麺の特徴だが
竹箸で掬ったそばは概ね2~3mm程の中細麺で柔軟な腰と口当たりの滑らかさを備えており食し易い二八系であろう。
今回は注文しなかった十割田舎そばや粗挽きそばは挽きぐるみ製粉で黒味が強く太切り仕上げのそばではなかろうかと思うが未確認である。ざるそばと十割田舎そばの盛合せの品があれば迷わず発注した筈だが先の品書きで紹介した通りその様な品揃えは設定されていないのが残念である。
徳利で供されるそばつゆは江戸そば風な濃い目の仕立てで好ましいが量は少な目で食後のそば湯の調整に若干の不安を感じる。又天ぷらに専用のつゆが添付されず卓上に塩の用意も無いので必然的に天つゆ兼用となってしまうがそもそもそばつゆと天つゆは濃度や風味が全く異なる故に好ましからぬ設定でそばも天ぷらも上質なだけに極めて残念である。
【そば湯】
そば食の終盤を見計らって運ばれたそば湯は
円筒形の漆器で供される。
桶蓋を開けた中は粘り気を感じる白濁した湯で満たされておりそばを茹でた通常の釜湯とは異なるそば粉の意図的な添加が窺える。
猪口に残ったつゆは僅かであったが濃厚なそば湯で割り刻み葱の風味を加えたそば風味の飲み物を調整することができた。そば湯で締め括るそば食はいつもと変わらぬ定型の作業である。
【終章】
40年程も前に仙台に移住した当時は幾度も通ったたまき庵であったが穣庵となった2015年以降は何故か足が遠退いていた。
今回は久し振りに秋保大滝の観光地を訪れ以前から変わらぬ風貌の建物を維持する二代目たまき庵の手打ちそばを食することができた。
秋保大滝の観光地に老舗のそば店「たまき庵」が二代目、三代目と続くことを願い本稿を終える。
完
(00:00)
2023年05月19日
【序章】
宮城県の北部から岩手県の温泉地に向かう道程で最近は頻繁に下道の国道R4を走行しているが大崎市を抜けて栗原市に入り東北道築館ICを通過した先の築館市街地入る手前で交差点の右脇に大きな行燈看板を掲げるそば店が毎回気になる存在であった。
但しこの地は仙台市北部地域から向かう場合に昼食時間よりも早い時間帯に達する通過点となることが多く常に訪問の機会を窺っていた店であった。
築館付近のR4を走行すれば誰でも一度はその視野に捉えている筈の大型そば店の屋号は「みやぎ冨美野」である。
今回は岩手県側から帰路の途中で偶々時間帯が昼食時となって訪問の機会に恵まれた「冨美野」の訪問記である。
【冨美野の位置と外観】
仙台市や大崎市側からR4を北上し築館ICを過ぎた先の信号交差点で右奥に位置する冨美野の店舗建物を視認することができる。
しかしドライブ中の撮影は慎まれるのでこの景色はGoogleストリートビュー画面の引用である。
この画面から理解できると思うが北向き(画面奥方向)に進行している場合冨美野の駐車場へ進入するには幹線国道の右折レーンを含む対向二車線分を横切る高いハードルに阻まれる。
しかし直前の信号で変則的な四叉路をr36に右折すれば簡単な左折のみで冨美野の敷地に乗り入れることが可能であるが敷地内の道幅は狭小なので運転は慎重に。
今回はR4を南下する道程であったので国道から左折するだけで駐車場に入ることができた。
国道に接する駐車場は10数台が収容可能で
国道から見えていた行燈風の看板は遠目で眺めていた印象より大規模な造りで瓦屋根風の雨除けの下は時計台の姿をした洒落た設えである。但し隣に設置された白色LEDの電光看板とは不釣り合いだが。
駐車場に面する店舗北側の壁面に掲げられている
ご覧の大型看板には手打ちそばの究極を求める手打ちそば職人の意気込みが語られ下段には蕎麦の実の石臼挽きから水廻し、練り(捏ね)、延ばし(打ち)、切り、茹でに至る手打ちそばの各工程が写真で紹介されている。
【冨美野の店内】
この看板の右脇が玄関で二重のガラス扉を通って入店すると左手はガラス窓で仕切られた麺打ち場とその奥に厨房が配置されている。逆の右側は奥迄続く広いフロアの客席である、
昼食時間帯ではあったものの遅めの訪問となり客席には余裕があったので最奥のテーブル席に着いた。この位置から眺める玄関方向の景色が上の画面である。建物の柱や梁を含めてテーブルや椅子等も黒色で統一されてやや暗めの雰囲気であるが何よりも光沢を放つ木目調の床板が印象的である。
着席した卓上には割箸やお手拭き、紙ナプキン、爪楊枝にグラストレイが用意されており窓際にはスタッフ不足故のセルフサービスが案内されている。但し案内に記されている品書きは卓上に見当たらず客席係から提供された。
【品書き】
A3版程のカラー印刷紙面をラミネート加工し更に綴じて製本した品書(十割そば会でもこの類)は頁を平面的に開くことが極めて困難で写真撮影に難渋する対象だがここにも手打ちのそばとうどんの製麺工程が写真と伴に紹介されているので何とか撮影してみた。うどんの工程写真の右端が反射光で見えていないがこれが限界。
この店は手打ちうどんも提供している。
先ず冷たいそばを見るとざるそば¥660(10%消費税込価格以下同様)と1.5倍量300gの大ざるそば¥880に加えてのりざるそば¥770の存在から「のり」の文字を冠しないざるそばは海苔のトッピングがないと理解できる。
その他におろしそば¥800、とろろそば¥880は一般的概念の範囲だが共に¥1320の毘沙門そばと恵比寿そば、三味神楽そば¥1650に至っては冨美野独自に命名した世界でその内容把握には品名の下に括弧書きの小さな文字を読み取る時間を要する。
毘沙門そばは海老天2尾が付く200g普通盛の天そばで恵比寿そばは地鶏と海老天でそばは300gの大盛りということらしい。
暖かいそばは海老天2尾付きの天ぷらそば¥1320の他に軍鶏そば¥950、なめこそば¥880、しいたけそば¥770等が続く。
個人的には興味が薄いのだがそばと同じく手打のうどんもなべ焼きうどんに天ぷらが加わる冷ぶっかけうどん、いか天ぷらうどんが各々¥770にカレーうどん、カレー天ぷらうどんと多彩な品揃えがある。
手打のそばとうどんを売り物にする店ではあるがご飯もののうな重¥1210やカツ丼¥950、天丼¥1100等の丼類に天ぷら定食¥1650の用意もあり多彩さを誇っている。
こちらは釜飯。基本となる五目海鮮、軍鶏、豚角煮の三種の釜飯が吸物とのセットで¥990、そば又はうどんのセット及び吸物に茶碗蒸しのセットがいずれも¥1210、そば又はうどんと茶碗蒸しセットの釜飯定食が¥1540。その他にも各種のそば(又はうどん)との組合せで多様な選択肢が用意されている。
更にランチ限定で供される天ざるそば(うどんも可)とミニサイズのかつ丼、イカ天丼、豚すき丼、カレー丼の何れかを組合せて¥1100(コーヒー付きは+¥220)の品の用意もある。
基本的な品は手打ちのそばとうどん、白米ご飯に釜飯で構成されておりこれらに天ぷら類、大根おろし、とろろ、軍鶏、豚カツ、うなぎ、カレー、茶碗蒸し等を組み合わせることで和食系ファミリーレストラン級の多種多彩な料理を提供している。
【手打そば】
品書きは多彩だが訪問の目的は手打そばなので選択肢は必然的に冷たいそばに絞られる。
天ぷら付きのそばは普通盛200gで海老天2尾付きの毘沙門そばか大盛り300g3段重ねの恵比寿そばの二種で何れを選ぶか迷った末に毘沙門そばを発注した。
暫くして運ばれた普通盛のそばは丸形の蒸籠盛りだが実は二段重ねとなっており
各々の蒸籠に100gのそばが盛られているということらしい。従って先程迷っていた大盛りの恵比寿そばの3段重ねは100g×3段となるのであろう。
因みに同行者が選んだ普通盛のざるそばがこれ。そばは簀の子敷きの皿盛りでそばつゆは小型の徳利で供されそば猪口は一般的な縦長形状のもの。
一方天ぷら付きの毘沙門そばは広口で大型の徳利のつゆとそば猪口とは言い難い広口の小鉢が供される。ざるそばより大型の徳利はつゆも多めと思われる。猪口代わりの小鉢は天ぷらをつゆに浸す機能を考慮したものであろうが戴けない手法である。
【余談: つゆ猪口の形状】
そもそもそばつゆと天ぷら用のつゆは塩味の濃度が大きく異なるのでそばつゆと天ぷらのつけ汁は各々別仕立てとしつゆの容器もそば猪口は一定の深さがあり濃いつゆに浸す麺の深さを好みで調整できる必要がある。天ぷらは薄口のつゆを均一に浸せる広口の浅皿が好ましい。
従って広口小鉢のつゆ容器は天ぷらにはそこそこの役を果たすがそばを浸す猪口としては浅底で機能不全を指摘せざるを得ない。
天ぷらを伴うそばではそば用のつゆ猪口と天ぷら用のつゆ皿両者の提供が何よりのもてなしと思う。
【毘沙門そば】
毘沙門そばは品書きの通り2尾の海老に鶏と野菜の天ぷらが供される。
蒸篭盛りの手打ちそばはホシが見えず白味が強い麺で丸抜きで一番粉を主体とする製麺かと思う。
割箸で掬ったそばは3~5㎜程にばらつきのある太めの仕上げで浅底のつゆ鉢に浸す作業には往生したが
濃い目のつゆと太めの麺の相性は良く山葵の風味も加えて
手切りのそばを味わった。
食事の終盤を見計らって角型の湯桶で運ばれたそば湯は
白濁濃度が高い釜湯風で
広口小鉢の残りつゆに刻み葱の風味を加えて味わい初訪の冨美野でそば食を終えた。
このそば湯を深さのある猪口で戴けたらとの思いも捨てきれなかった。
【終章】
冨美野は数十年前から国道脇で見掛けて興味を持ち続けたそば店でやっと訪問を果たすことができた。
店の規模は見掛けより大きく2階には宴会場もある様子。多彩な品揃えで万人向けのレストラン機能を備えているがその原点は手打のそばとうどんを提供する手打そばの店である。
完
(00:00)
2023年05月12日
【Core i7のPCでChatGPTを利用】
先の試用経験からより高性能なPCの必要を感じたので後日Core i7 2.2GHzのCPUに8GB RAM実装機での利用を試みた。但しこのマシンもWindows7からメーカー(F社)が推奨しないWin10へ載せ替え細かな不具合を手練手管を駆使して飼い慣らしている最中でルーティン作業は任せらられない老兵だが今回の様なトライアルには適した存在で文字の欠落や通信エラーの支障なしにChatGPTと対話することができた。
以下にその経緯を紹介する。
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【質問1】
日本国内で栽培されている蕎麦の品種は
【回答1】
日本国内で栽培されている蕎麦には、いくつかの品種があります。代表的な品種には以下のようなものがあります。
ひえもん:日本で最も栽培されている品種で、風味がよく、ツヤがあることが特徴です。
やぶ蕎麦:荒地でも育ちやすいため、自然栽培に向いている品種です。香りが強く、やや渋みがあります。
ほうき蕎麦:その名の通り、葉が細長く、まるでほうきのような形をしていることが特徴です。花が美しいため観賞用としても栽培されています。
えんがわ蕎麦:病気に強く、収量も多いため、栽培がしやすい品種です。蕎麦茶にも適しています。
ながの赤そば:信州地方で栽培されている品種で、蕎麦本来の風味が豊かであることが特徴です。
これらの品種は、地域や栽培方法によって異なる場合があります。
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ほう、前回とは全く異なる回答だが「ひえもん」なんていままで聞いたこともないし「やぶ蕎麦」ってそば屋の屋号では?「ほうき蕎麦」と「えんがわ蕎麦」も意味不明。「ながの赤そば」はもしかしてルビーレッドのことかな?赤蕎麦は花が赤い(一般的には白い花がつく)品種で近年あちこちで栽培されている様で以前に秋田県角館でのそば屋が初見であったがその後は山形県大石田町の新そばまつりの会場でも赤花蕎麦の鉢植えを見ている。
質問を続ける
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【質問2】
他には
【回答2】
他にも、日本国内で栽培されている蕎麦の品種としては以下のようなものがあります。
きたはるか:北海道で栽培されている品種で、病害虫に強く、冷涼な気候に適しています。
ふが丸:北陸地方で栽培されている品種で、大粒で風味がよいことが特徴です。
いのちはるか:長野県で栽培されている品種で、やや甘みがあり、蕎麦湯の色が濃いことが特徴です。
あかたま:岩手県で栽培されている品種で、赤茶色の実が特徴的です。
たかもとそば:兵庫県で栽培されている品種で、風味が豊かであることが特徴です。
これらの品種は、それぞれの地域や栽培者の好みによって、栽培されることがあります。また、品種改良によって新しい品種が開発されることもあります。
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「きたはるか」はそれらしく聞こえるが「ふが丸」とか「いのちはるか」と命名する蕎麦の品種があるのだろうか多いに疑問があるので質問を続ける。
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【質問3】
長野県で栽培されている品種は
【回答3】
長野県で栽培されている蕎麦の主要な品種は「ひえもん」と「いのちはるか」です。特に「いのちはるか」は、長野県の蕎麦生産の約8割を占めると言われています。この品種は、風味がよく、やや甘みがあることが特徴で、蕎麦湯の色が濃いのも特徴の一つです。また、「ひえもん」も栽培されており、香りがよくツヤがあることが特徴です。これらの品種は、長野県を代表する蕎麦の品種として知られています。
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長野県の主要品種は「ひえもん」と「いのちはるか」ですか!
でも「ひえもん」はGoogle検索で何もヒットしないんですけどね。
「いのちはるか」は長野県蕎麦生産の8割ですか?
長野県木曽郡大滝村が公開している情報で長野県でそば栽培面積の8割を占める人気品種は「蕎麦信濃1号」だそうですよ。やれやれ!何と言えば良いのか、、、。
質問を山形県に変えてみると
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【質問4】
山形県で栽培されているのは
【回答4】
山形県は蕎麦の産地として有名で、いくつかの蕎麦の品種が栽培されています。代表的な品種としては以下のようなものがあります。
つuya姫:山形県で最も栽培されている品種で、粒が大きく、芯が太く、風味が豊かなことが特徴です。
ほたか:蕎麦の実が大粒で、香りがよく、色合いが綺麗なことが特徴です。
みはらし:冷涼な気候に適しており、粒が細長く、風味がよいことが特徴です。
いのちはるか:前述の通り、長野県でも栽培されている品種で、山形県でも一部栽培されています。
はだか蕎麦:花が白いため、名前が「はだか」と呼ばれるようになった品種で、風味がよく、シンプルな味わいが特徴です。
これらの品種は、地域や栽培者によって異なる場合がありますが、山形県の蕎麦産地においては、主にこれらの品種が栽培されています。
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ちょっと! 「つuya姫」って文字化けしてるけど「つや姫」なら蕎麦ではなくて山形県産のブランド米ではありませんか?
「ほたか」とか「みはらし」とか意味不明で「はだか蕎麦」に至っては荒唐無稽。赤い花を咲かせる「ルビーレッド」等一部の品種を除き日本の在来品種は一般に白い花が定番でそれを「はだか蕎麦」とは誰が名付けたのだろうか?出典の根拠を知りたいがChatGPTはAI独自の判断ということか基礎となる情報の出典を明らかにしていない。
山形県産の蕎麦は県南中心の「でわかおり」と県北の「最上早生」に大市田町の「来迎寺在来」が三大品種ですよ。
もう少し我慢して次の質問。
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【質問5】
北海道の品種は
【回答5】
北海道は、日本国内で最も蕎麦の生産量が多い地域の一つであり、いくつかの蕎麦の品種が栽培されています。代表的な品種としては以下のようなものがあります。
きたはるか:北海道で最も栽培されている品種で、風味がよく、粒が大きく、芯が太く、病害虫に強いことが特徴です。
むらさき:蕎麦の実が大粒で、芯が太く、風味がよいことが特徴です。
ほくと:北海道で開発された品種で、芯が太く、風味が豊かなことが特徴です。
あずま姫:粒が細かく、風味がやわらかいことが特徴です。
おおむね:北海道で古くから栽培されている品種で、風味がやわらかく、コシがあり、香りがよいことが特徴です。
これらの品種は、地域や栽培者によって異なる場合がありますが、北海道の蕎麦産地においては、主にこれらの品種が栽培されています。
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先ず指摘しておきたいが北海道は「最も蕎麦の生産量が多い地域の一つで」はなく断トツで2020年の国内生産量は43%を占めており2位の長野(8.8%)に続く栃木(6.4%)茨城(6.2%)山形(4.9%)の4県を圧倒的に凌駕しているのが現実である。
更に私の知る範囲で「きたはるか」という品種名は初めて聞くもので少なくとも北海道で最も栽培されている品種とは思えない。
「きたはるか」をネット検索すると道北美深町のJA北はるかのサイトで主要農畜産物を紹介する頁の蕎麦の項目に「JA北はるかでは寒暖差の激しい気候を生かして良質な蕎麦を生産しております。品種はキタワセソバ・キタミツキの2品種を中心に作付けしております。」との記述に遭遇した。
北海道で栽培される主要な蕎麦品種が「牡丹」と「キタワセソバ」であることは周知の事実でありJA北はるかが発信する情報もこれに整合する記述となっている。
従ってChatGPTが「きたはるか」は北海道で最も栽培されている品種との主張は明らかな誤りである。
察するに誤認の原因はJA北はるかの名称を蕎麦の品種と取り違えたことにあるのではなかいだろうか。
因みにJA北はるか管内の音威子府(おといねっぷ)地区は挽ぐるみの黒いそば切りに仕立てた音威子府そばが高名であるがこれは蕎麦の品種ではなくその地域に特徴的な製麺方法(そばの打ち方)やその地域で供されるそばの呼称である。
他にも一度も聞いたことがない「むらさき」とか「おおむね」とか何れの特徴も大粒で芯が太く風味豊かとか、、、もう沢山!
こんなに出鱈目な情報をAIはどこから学んできたのか疑問が湧き回答文にも先ずは眉に唾を付けて眺める必要を感じる。
蕎麦の品種に関するネット上の情報は必ずしも豊富とは言えず検索に苦労することもあるが有用なものは学術論文や統計調査形式のPDF文書で公開されていることが多い。
ChatGPTは公開されているPDF文書に記述されている内容まで基礎知識として採り込んでいるのか疑問を感じる。
インターネット上に集積された膨大な情報に基づきAIを駆使して短時間で必要な情報を抽出して組み立てる仕組みは最先端の技術ではあるが基礎となる情報の蓄積が貧弱であれば出力結果も自ずと粗末なものに帰結せざるを得ないと思う。
今回試した日本国内で栽培されている蕎麦の品種調査の様な課題はネット上の情報が量と質の両面で充実度が不足しており信頼に足る結果が得られなかったのかも知れない。
【終章】
AIはIT分野の最先端技術ではあるが今回体験したChatGPTの出力結果には多くの誤情報が含まれており鵜呑みにすると誤認や誤解を増幅する危険な要因を孕んでいると感じた。
個人的なレベルで手軽に一定の纏まった情報が得られる手段ではあるが客観性を担保する検証作業が不可欠である。
完
(00:00)
2023年05月05日
【序章】
最近はテレビの情報番組やニュースでもAIを駆使してOpenAI社が提供するチャットGPTの話題が頻繁に採り上げるようになってきている。
ChatGPTは指定された課題(質問)に関係するインターネット上の膨大な情報から学習した必要な事項を短時間に回答する対話型の情報提供AIシステムであるが情報の誤りや著作権侵害の恐れ等負の側面も指摘されておりイタリアやドイツでは使用を認めない措置も検討されている。
今回はChatGPTで蕎麦の知識を試した体験談である。
【ChatGPTの利用登録】
ブラウザでChatGPTを検索するとOpenAI社のChatGPT画面に誘導されChatGPTを試すをクリックすると初回はIDとなるメールアドレスと本人確認の携帯電話番号の入力を求められる。程なく指定した携帯のショートメールにChatGPT利用登録に必要な確認番号が届く。これをPC(試していないがネットに繋がるタブレットやスマホでも)のブラウザの登録画面に入力するとログイン用のパスワードと名前や生年月日の個人情報を設定してログインが可能となる。表示されたChatGPT画面下段のメッセージ送信欄に質問や照会内容を書き込み送信すると僅かな時間で回答文が表示される。
【ChatGPTの体験】
先ずは蕎麦の情報収集の目的でメッセージ欄に「日本国内で栽培されている蕎麦の品種をリストアップして」と入力しChatGPTとやり取りした経緯を以下に紹介する。
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【質問1】
日本国内で栽培されている蕎麦の品種をリストアップして
【ChatGPT:回答1】
日本国内で栽培されている蕎麦の品種は多岐にわたりますが、以下に一般的な蕎麦の品種をリストアップします。
ほうとうそば - 山形県などで栽培されている品種で、太くて丸い実が特徴的です。
えん麦(えんばく) - 北海道などで栽培されている品種で、長くて滑らかな実が特徴的であり、風味が豊かです。
二ツ井(二つい) - 新潟県などで栽培されている品種で、細くて長い実が特徴的であり、風味が強いです。
千曲川(ちくまがわ) - 長野県などで栽培されている品種で、太くて長い実が特徴的であり、風味が豊かです。
鳥取そば - 鳥取県などでされている品種で、小さな実が特徴的であり、風味が繊細です。
福井そば - 福井県などで栽培されている品種で、実が細かく長く、色味が濃い特徴的な蕎麦です。
さがぴー - 佐賀県などで栽培されている品種で、細くて丸い実が特徴的で、風味がまろやかです。
以上は一部ですが一般的な蕎麦の品種、地域によって異なるな蕎麦の品種が栽培されています。また、品種によって実の形や風味、香りなどが異なるため、それぞれの品種に特徴的な味わいを楽しむことができます。
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山形県の三大蕎麦品種とされているでわかおりや最上早生に大石田町ローカルの来迎寺在来も出るかな?北海道の牡丹、北早生も知られているし茨城の常陸秋そばも当然回答に含まれるだろうが青森の階上早生は知っているかな?そば県長野の品種は何種類あるんだろうか?等と期待しての質問であったがこの回答には余りの無知度合いに驚愕した。
少なからぬ疑義や明らかな間違いを感じる中で最大の問題と感じたえん麦について以下の様に追加の質問を試みた。
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【質問2】
えん麦は蕎麦ですか
【ChatGPT:回答2】
えん麦(えんばく)は蕎麦の一種ではありません。えん麦は大麦(バリィ)の一種であり、蕎麦とは異なる穀物です。
蕎麦は主に日本料理で使用される穀物であり、日本国内で栽培されていますが、えん麦は主にや食品原料として利用されています。をまいて秋に収穫されますが、えん麦は大麦に似た形を持ち、年間を通して栽培されます。
以上を踏まえ、えん麦は蕎麦ではなく、別の穀物であることに訂正させていただきます。
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「えん麦は蕎麦の一種ではありません」って当たり前でしょ。だったら何で蕎麦の栽培品種にリストアップしたの?
【ChatGPT出力の品質】
AI自体が誤りを認める仕組みはそれなりに評価できるが依頼者の私が追加で質問したえん麦はそばに非ずの認識がなければ誤った知識を鵜呑みにしてしまう危険な事実誤認の恐れを感じる。
回答1には他にも山形県で「ほうとうそば」の品種が栽培されていると訳の分からない記述がある。そもそもほうとうは武田信玄の時代から引き継がれてきた山梨県の郷土料理で幅広の小麦麺を南瓜や季節の野菜で煮込んだ鍋焼き仕上げの麺料理の筈。最近は一部でそばぼうとうと称してそば粉を加えた麺を使用する向きもあるようだが少なくとも「ほうとうそば」と名付けられた蕎麦の品種が国内に存在するとは思えない。
更に「鳥取そば」、「福井そば」等大雑把に地名を冠した品種や北海道に次ぐ産地である長野県の蕎麦品種が千曲川というのも腑に落ちない。
但し使用したPC(CPUがデュルコアCeleron 1.60GHzで実装RAM4GBにWindows 10 Homeを無理矢理載せ変えた貧弱なマシン)の処理能力不足故か掲載文にある文字の欠落に加えて通信エラーも生じたので細かい突込みで質問を継続することは諦め早々にチャットを切上げて試用を終えた。
Part.2はより高機能PCでの再調査
(00:00)
2023年04月29日
4月21日に掲載した「以前に掲載したそば店の近況 Part.1」の記事中「地水庵」の近況に新たな事実を確認しました。
従ってこの項に加筆を行い「閉店確認」を「当分営業自粛」と訂正することとなりましたので既に閲覧された方は訂正後の最新情報をご確認下さい。
従ってこの項に加筆を行い「閉店確認」を「当分営業自粛」と訂正することとなりましたので既に閲覧された方は訂正後の最新情報をご確認下さい。
(12:00)
2023年04月28日
【そばの里がんこ 2017.9.1掲載】(宮城県遠田郡七ヶ宿町)
宮城県南部の七ヶ宿町には5軒のそば店から成るそば街道があることは以前から紹介してきたがその中で「そばの里がんこは」国道から外れた山里で案内の幟もあったりなかったりで到達が難しく更に店には電話がない(今どき店主は携帯電話の持合せはあるのだろうが公表されていない)ので連絡がとれとれない。おまけに積雪期は店に至る細道の除雪が為されず冬眠してしまう訪問困難店である。
但し店の周囲の蕎麦畑で収穫した手打ち十割そばの仕上がりは抜群で個人的な格付けでは常に上位グループに君臨している。更に相当数の固定客に恵まれている様子で週末には開店時から客が集まり始め昼過ぎには入店待ちの行列ができることも珍しくない。駐車場には宮城県のみならず隣県の山形ナンバーの車も頻繁に見掛けている。
本ブログで「がんこ」の最新記事は2017年9月となっているがその後も折に触れて訪問を続けている。最近は新型コロナ感染症の流行りで控え気味であったが昨年10月に数年振りの訪店となった。
店の佇まいは以前の記事と変わらないが
周囲の丘陵地に拡がる蕎麦畑には電気柵が設置され
長閑な田園景色に緊迫さが加えられていた。
この変化の原因は野生の猿の群れの出没である。
画面は客席の窓越しに蕎麦畑の奥の樹木上で餌を漁る光景を30倍望遠の威力を得て捉えたものである。
以前は里山の集落に寄り付くことのなかった猿や猪、鹿、熊などの野生動物が最近は全国各地で集落まで降りて民家周辺で餌を求める現象が常態化しており七ヶ宿でもこの事例を目撃するに至った。
店内で供される唯一の十割田舎そばは20年以上も前の初訪時から変わらぬ板盛りで口当たりが良い柔軟で瑞々しい手打麺が健在で小鉢のじゃが芋煮も長年親しんだ風味が嬉しい。更に普通盛¥1000の価格も何年も前から据え置かれている。
【山のそば屋須川 2017.1.6掲載】(岩手県一関市厳美町)
山のそば屋須川は岩手県一関市の中心部から秋田県境の須川高原に向かう国道R324の沿線にある。厳美渓の観光地を過ぎ先に連載した温泉宿の瑞泉郷や骨寺村荘園遺跡に達する手前で右手に見えてくる店は
切妻の屋根に大書きされたそば·うどんの文字が特徴的で分かり易い。隣接するジェラート店は多くの客を集める人気店で須川と併せて訪問客が絶えない地で未舗装ながら広い駐車空間が用意されている。
前回の訪問から7年程足が遠のいていたが2022年6月に再訪の機会を得た。
店内は以前と変わらぬ配置の広いフロアのテーブル席と
余裕のある小上りに迎えられる。
客席から見上げる屋根裏は太い梁の小屋組みが剥き出しの意匠で山小屋風の雰囲気が漂う清潔な空間である。
品書きを見ると基本的にそばとうどんが同額で韃靼そばは若干高めの設定となっていることに変わりはないが流石に価格は改定されている。
暖かいかけと冷たいざるのそばかうどんが¥750(税込以下同様)、きのこ、山菜は¥850で天ざる、天ぷらは¥950となっているがこれでも十分に安価な設定である。
因みに以前の記事に記載しているが2016年9月の訪問時にはざる、かけ¥570(税別以下同様)、きのこ、山菜¥700、天ざる、天ぷらが¥780であった。
今回注文した天ざるは以前と変わらず海老天が加わる野菜天にそばは刻み海苔のトッピングが施されていた。そうだ!失念していたが須川の天ざるそばはせいろ盛りだがもりそばではなく海苔が載る本当のざるそばだった。
そばの品質は申し分なく二八と思われる柔軟な腰を備えた細切り麺を美味しく戴いた。
【余談: もりそば、ざるそばと刻み海苔】
以前にもどこかの記事で述べた筈だがもりそばとせいろそば、ざるそばの3品の定義はそば店毎に異なる。
大まかな共通認識としていずれも冷たいそばの範疇ではあるがもりそばとせいろそばには海苔のトッピングがなく一段高級な位置付けのざるそばには添付されると思いたい。しかしざるそばと称しても海苔が付かず笊の容器にそばを盛るもりそばの扱いとしている店が少なからず存在する。そばの品質に拘りのある店程この傾向があるので大いに厄介な問題である。
簡単な見分け方は品書にもりそば(又はせいろそば)とざるそばの区別がありざるそばが若干高額設定であるかでこれに該当する店では海苔の有り無しの識別が明確である。更に冷たい天ぷらそばの品に天もり(又は天せいろ)と天ざるの識別があればより確度が高まる。
但しもりそば(又はせいろそば)とざるそばが併記されずざるそばと天ざるの品揃えの場合は海苔が添付されない笊盛りそばの可能性が高い。
食する側は蕎麦の繊細な香りがより強い刻み海苔の香りに押されてしまいそば本来の楽しみに懸念を感じるが故に多くの場面で海苔のトッピングを遠慮することになるがそばの品質に期待できない様な状況では敢えて海苔が放つ磯の香をそばに加える手段もある。
筆者が自宅で乾麺のそばを茹でる時には笊盛りのそばに海苔を散らしそばつゆには初めから多めの刻み葱を投入して海苔や葱の風味で麺の喉越しを楽しんでいる。
【秋保草庵 2014.10.11秋保のそば店で掲載】(宮城県仙台市太白区秋保)…2023年4月閉店したらしい様子を確認
秋保(あきう)草庵はその店名の通り秋保温泉街から更に県道r62(二口街道)を二口渓谷方向に進んだ秋保大滝地区に店を構えていた。店の徒歩圏内には秋保大滝や植物園に加えてレストハウスや老舗のそば店「たまき庵」も立地して一大観光地を形成している。
たまき庵の近況に就いては別稿を予定しているが
ご近所同士の草庵は2023年4月上旬の訪問でご覧の通りの姿であった。
駐車場から店の建物に続く誘導路両側の草地は枯れた雑草と新たに芽吹いたらしい緑が入り交じり手入れが為されていない様子。
草庵の玄関
保温と調湿を兼ねて厚く外廻りを塗り固めた漆喰壁の建物は玄関前にも雑草が残りに多くの人が集う躍動感が全く感じられない。店主が体調不良で長期に休業する様な場合なら普通は「都合により当面休業します」とかの告知が為されるものだが玄関周りにこの種の掲示が見当たらない。
この様な状況から少なくとも2022年の秋口以前に営業を終了したのではないかと推察される。
また店内の客席には複雑で手の込んだ大型の組子細工が飾られていたが今もあの建物内に眠っているのであろうか。可能であればもう一度組子の妙技を鑑賞して見たいと思う。
秋保草庵の閉店時期が気になったのでGoogle Mapのストリートビューで過去の沿道風景を遡ると
2016年10月の画面では県道から敷地内へ誘導する未舗装の小道の左脇に行燈型の看板が設置されていたが
2020年4月では見当たらず看板があった場所は緑色のシートで覆われていた。この様な状況から2016年秋迄は営業していたが2020年の春は閉店状態でこの3年半の何れかの時期に閉店したものと思われる。
【終章】
今回は過去に掲載したそば専門店の近況を紹介した。
以前から記事で紹介した店の閉店情報を聞いたり実際に現地で目撃したこともあり過去の掲載記事に関して現況を付加する必要を感じていたことから起稿したものである。
その結果少なからぬ店の閉店を確認することとなり一抹の寂寥を感じるが一方で未だに「元気で営業中」(このフレーズ居酒屋とかの看板で良く見掛けるなぁ)で堅実に集客している店もある。
栄華盛衰は世の慣わしと嘗て平家物語で学んだ記憶が甦るが好みの店には末永く繁盛して欲しいとの想いを強くして本稿を終える。
完
(00:00)
2023年04月21日
【序章】
2021年9月以降そば店をそっちのけにして温泉宿ばかりを掲載してきたがそば店にも以前に紹介した記事からの変遷も見られるので今回は確認できている範囲の情報をお知らせしたい。
【十割そば会 泉中央本店 2017.09.22掲載】(宮城県仙台市泉区泉中央)…2022年初頭に営業終了
先ずは仙台市北部ターミナルの地下鉄泉中央駅から徒歩圏内に店を構えていた十割そば会泉中央本店から。
十割そば会は福島県を発祥とし十割そばを低価格で提供するチェーン店で福島県内に6店舗、岩手県に1店舗、新潟県に2店舗、宮城県内は4店舗を展開していたが
2021年の年末近くに泉中央本店の閉店が告知され2022年頭に営業を終了してしまった。
現在宮城県では十割そば会 富谷本店(富谷市大清水)と
十割そば会 仙台吉成店(仙台市青葉区吉成台)、十割そば会 大野田店(仙台市太白区大野田)の残り3店舗が営業を続けている。大野田店は未訪だが自動車以外の交通の便には恵まれていない富谷本店と仙台吉成店では現在も多くの来店客を集めており昼には入店待ちが常態化している。
蕎麦生地を細い製麺口から茹で釜に押し出す機械製麺ではあるが
手頃な価格で
大盛り無料の十割そばに加わる丼系の品揃えが家族連れの庶民に優しい設定である。
嘗ての泉中央本店は泉中央駅から徒歩6分程と最も交通の便に恵まれており週末の昼には20~30分程の入店待ちが発生する繁盛店で経営面でも安定感があったので閉店の経緯は謎である。因みに泉中央本店の建物はその後看板を架け替えて鶏中華を供する店に変貌していた。
しかし最近(2023年4月初頭)になって店の前を通りかかると鶏中華に変わり嘗て見ていた緑基調の看板にかけ替えられて十割そば会武蔵亭の文字を認めるに至った。これは泉中央の地に十割そば会の店が復活する兆しと思えるが今のところ公式HPに開店予告は確認できていない。恐らく4月中か遅くとも5月になれば富谷本店や仙台吉成店と変わらぬ安価な十割そばを楽しむことができそうである。
【地水庵 2015.03.12掲載】(岩手県平泉町)…2023年4月に新型コロナ感染症の為当分営業の自粛を確認
地水庵は世界遺産平泉の中心部に位置し店内で玄蕎麦を挽く本格的な手打ちそばを提供する店で二度の訪問を経験した。嘗ては子供の入店を受け容れず高屋根の客室に大型スピーカーからジャズを流す大人の空間を演出する店内であったがいつの間にか中尊寺へ向かう県道に掲げられていた案内看板が見当たらず昨年3月になって過去の記憶から脇道に入ると線路際の高台に建つ建物は以前の儘だが客を招く案内や暖簾の類は皆無で閉店を確認するに至った。
夫婦経営の個人店はそば屋に限らず後継ぎがなければいずれは高齢化で閉店を余儀なくされることになる。地水庵の閉店もこの様な経緯を辿ったのであろうか。
しかしこの原稿をアップした直後に平泉を通る機会に恵まれたので念の為にと地水庵前の細道に向かうと玄関前に置かれた掲示を発見した。路上に車を停めて掲示を確認すると「コロナの為に当分自粛します」と。この告知から閉店してはおらず営業自粛中であることが確認できたが偶々の悪天候で写真撮影を怠り早々に車に戻ってしまった。掲示されていた短文の告知では感染症が蔓延する社会情勢への対応としての営業自粛か或いは店主やその近親者が実際に罹患した結果の自粛かを汲み取ることは困難だが恐らくは前者であろう。
しかしこの原稿をアップした直後に平泉を通る機会に恵まれたので念の為にと地水庵前の細道に向かうと玄関前に置かれた掲示を発見した。路上に車を停めて掲示を確認すると「コロナの為に当分自粛します」と。この告知から閉店してはおらず営業自粛中であることが確認できたが偶々の悪天候で写真撮影を怠り早々に車に戻ってしまった。掲示されていた短文の告知では感染症が蔓延する社会情勢への対応としての営業自粛か或いは店主やその近親者が実際に罹患した結果の自粛かを汲み取ることは困難だが恐らくは前者であろう。
更に一旦閉店を確認するに至った昨年(2022年)3月の時点にこの自粛を告げる掲示は確認しておらず掲示された紙面も経年劣化が感じられず新しめに見えたので最近数か月程で掲出されたものではないだろうか。又自粛期間の当分も何時頃を見通したものかは不明である。
【津久毛庵 2014.08.20掲載】(宮城県金成町津久毛)…2022年2月に閉店を確認
宮城県北部に位置する金成町は岩手県に接する立地で国道R4号を北上し岩手県の温泉宿に向かう経路上にある。
国道に接するイオンタウン金成の西部にある津久毛(つくも)地区は北側に丘陵地を背負い南に広がる田畑の平地を擁する典型的な田園風景が拡がる地域でありこの地で営業するそば店「津久毛庵」の存在を知り初めて訪れたのは2013年の夏あった。
県道沿いに建つ古い民家の店内は開放された縁側のガラス戸や障子から冷房のない二間続きの和室の客席に扇風機が運ぶ外気が心地良く蒸籠2枚が時間差で供される手打そばの量に圧倒された。
翌年1月の再訪時の客室は障子と襖で仕切られ灯油ストーブの暖房に迎えられたのだが3度目の訪問では道路脇にあった筈の店を見つけることができずその後も金成を通る際に何度か国道から県道に逸れて探索を試みたが最終的に閉店を確認するに至った。
金成町の中でも基幹交通網の国道R4号から外れた集落での店舗運営は厳しかったのであろうか。
【鵙目そば 2014.09.26 R457そば街道の終盤に掲載】(宮城県大崎市岩出山)…閉店時期不明だが2015年に現地確認
鵙目(もずめ)そばは嘗て大崎市岩出山に立地する大規模施設のな「あ、ら、伊達な道の駅」内の一角を占める手打そばの供食店舗であった。かれこれ10年以上も前に撤退したが正確な閉店時期は確認できていない。
因みに鵙目は道の駅より南部山里の集落名でこの地区の婦人会のメンバーが交代で鵙目産の蕎麦を手打そばで供していたと聞いている。
【手打そば竜聖 2019.10.25掲載】(宮城県加美郡加美町)…2023年4月に店舗電話の停止を確認
竜聖は仙台市から北部の大崎市西部の鳴子温泉地区を結ぶ国道R457の中継地点となる加美町中新田の町域で手打ちそばの店を構えていたが2019年10月の記事でも述べた通り亭主が引退の意志を表明していた。
最近は大手の飲食店紹介サイトでも店舗の運営状況未確認で掲載保留中となっている。確認の意図もあり予約訪問の電話を掛けたが既に店の電話は停止されているとのことであった。
この様な事情から竜聖で客を迎えていた老夫婦は店を閉めて引退したのであろうと思われる。
最近少なくなってしまったが中新田を訪れる機会があれば現地での状況を確認したい。
Part.2へ続く
(00:00)
2023年04月14日
【序章】
瑞泉郷のPart.1では軽く流してしまったが瑞泉郷が立地する一関市厳美町の中央地域はは「骨寺村荘園(ほねでらむらしょうえん)遺跡」の領域でもある。
従ってこの説明を省いて頬かむりを決め込んでしまうのは忍び難く追補編の起稿を思い立つに至った。
【一関市厳美町の概要】
厳美町は磐井川が西部山岳地から東の北上川流域の平坦地に流れ下る地にありこの谷筋に拓かれた国道R342に沿う以下の三つの地域で構成される。
① 東部下流地域 … 磐井川の下流域は奇岩が連なる厳美渓の観光地で温泉旅館や空飛ぶ団子として知られる郭公だんごの飲食店等も立地している。
② 中央地域 … 磐井川中流域は現在本寺(ほんでら)地区とされており正に今回紹介する骨寺村荘園遺跡の地である。
③ 西部上流山岳地域 … 矢櫃ダムより上流は祭畤(まつるべ)や真湯(しんゆ)の温泉が湧く地から本格的な山岳地帯となり最終的に秋田県境に接する須川高原温泉迄登り詰める。
【骨寺村荘園とは】
厳美町の中央部分を占める本寺地区は奥州藤原氏が栄えた時代は骨寺村とされ中尊寺の経蔵が所領する荘園であった。
ご存知の通り中尊寺の境内には本堂の他に弁慶堂、地蔵堂、薬師堂、不動堂、大日堂、阿弥陀堂や最奥に位置する金色堂等多数の堂塔が立ち並んでいる。その中の一施設に過ぎない経蔵が経済基盤である専用の荘園を領有していたとは驚きである。
ご存知の通り中尊寺の境内には本堂の他に弁慶堂、地蔵堂、薬師堂、不動堂、大日堂、阿弥陀堂や最奥に位置する金色堂等多数の堂塔が立ち並んでいる。その中の一施設に過ぎない経蔵が経済基盤である専用の荘園を領有していたとは驚きである。
現在の経蔵は平屋の簡素な堂宇であるが創建時の2階瓦葺は建武4年(1337年)の火災で上層部を焼失したそうである。経蔵の名前の通り嘗てここには国宝に指定されている「紺紙金字一切経」(紺色の紙に文字を金泥で認(したた)めた豪華な経文)が収められていたと聞くと奥州藤原文化の栄華に現実感が湧く。
R342に沿う磐井川沿いの小さな盆地にある本寺地区は
● 骨寺村散策マップ
今も不整形の田畑にいぐね(屋敷林)で守られた家屋が散在し要所に鎌倉時代からの神社に祠や岩屋の遺跡が点在する農村の原風景が残された地域である。
● 骨寺村散策マップ
今も不整形の田畑にいぐね(屋敷林)で守られた家屋が散在し要所に鎌倉時代からの神社に祠や岩屋の遺跡が点在する農村の原風景が残された地域である。
更に中尊寺には骨寺村を描いた絵図が現存しており中世奥州の村落の様子を伝える貴重な歴史資料となっている。この陸奥国骨寺村絵図は
①骨寺村差図…簡略絵図
②骨寺村在家絵図…詳細絵図
の2幅が残されており骨寺村の領域を特定する根拠ともなっている。
因みに現在の地名である「本寺(ほんでら)」は想像された方も多いと思うが「骨寺(ほねでら)」からの転訛であるらしい。
【骨寺村荘園遺跡】
訪問時に入手した観光案内のパンフレット等では
骨寺村荘園遺跡とされる施設には諸説がある様だが2005年(H17年)3月国の史跡に指定され保護対象となった山王窟(さんのうのいわや)、不動窟(ふどうのいわや)、白山社(はくさんしゃ)、駒形根神社(こまがたねじんじゃ)、伝ミタケ堂跡(でんみたけどうあと)、若神子社(わかみこしゃ)、慈恵塚(じえづか)、慈恵大師堂(じえたいしどう)、梅木田遺跡(うめきだいせき)、遠西遺跡(とおにしいせき)、要害館跡(ようがいだてあと)の11件が荘園遺跡の構成要素とするのが妥当かと思われる。
【世界遺産への登録】
中尊寺や毛越寺を含む五つの構成資産は2011年(H23年)6月に「平泉-仏国土(浄土)を表す建築·庭園及び考古学的遺跡群-」として世界遺産に登録されたが中尊寺の荘園であった骨寺村荘園遺跡を含む四つの資産は登録リストから除外されてしまった。「平泉の文化遺産」の拡張登録を推進する活動により2012年(H24年)に柳之御所遺跡·達谷窟(平泉町)、白鳥舘遺跡·長者ヶ原廃寺跡(奥州市)と共に再び暫定リストに記載され現在に至っている。
【骨寺村荘園遺跡の案内施設】
本寺地区には国道R342沿線に荘園遺跡を案内する次の2施設が設置されている。
①骨寺村荘園交流館《若神子亭(わかみこてい)》…46台を収容する駐車場を擁し供食と産直販売機能に遺跡の展示館を備える総合施設、火曜日休館
②骨寺村荘園休憩所《小曲田家(こまがたや)》…P34台、古民家を改修し喫茶可能の無料休憩施設、シャワー施設(1回¥100)の備えが珍しい、冬季(12月末~2月末)と水曜日(祝日の場合は翌日)休館
観光案内の施設ではないが道の駅厳美渓に隣接する一関市博物館(一般入館料¥300)には骨寺村荘園遺跡に関する資料の展示もあるとのこと。
【終章】
骨寺村荘園遺跡が拡がる一関市厳美町本寺地区は平泉町からも市町を跨ぐ県道r31で結ばれる至近の位置関係にある。
荘園遺跡の散策マップには40分(2Km)~60分(3Km)のお勧めコースが案内されている。
可能であれば平泉の中尊寺や毛越寺の世界遺産を巡り平泉の温泉宿か一関市の瑞泉郷等に一泊した後に骨寺村荘園遺跡の散策コースで日本古来の里山の景観に親しむことをお勧めしたい。
完
(00:00)
2023年04月07日
【朝食バイキングの食事コーナー】
会場中央の料理テーブルから先に紹介した飲料類を提供する壁側のテーブルに戻るとご飯や汁物に食事系の料理コーナーが展開している。
白米のご飯は大容量の保温ジャーで供されているが隣の炊飯器はご飯切れを防止する予備機能を担っているのだろうか。
味噌汁には若布と刻み葱の追加具材が控えている。
これに加えて芋の子汁の用意もあり説明書きにある通り近隣の前沢牛(奥州市前沢地区産)を入れる独自なものとか。
【余談: 芋煮の文化】
東北地方独特の文化である芋煮は基本的に山野や田畑の秋の収穫に感謝する風習であり芋煮会と称して主に屋外で大鍋に野菜類に茸や肉も加えて焚き大勢で戴く収穫祭の位置付けである。
芋煮の名前にある通り鍋の主役はしっとりした柔らかさが特徴の里芋である。芋煮は芋煮鍋や芋煮汁の筈だが一般的に芋煮会そのものや鍋料理の双方を芋煮と呼ぶことが多く瑞泉郷に限らず料理名には芋の子汁を称する地域もある。
鍋に使用する食材は各県各地域毎に独自で多彩に構成されている。典型的には山形県は牛肉を加えた醤油味に対し宮城県は豚肉の味噌味とされているが地域毎に牛肉+味噌味や豚肉+醤油味等の組合せもあるのが芋煮の特徴にもなっている。
瑞泉郷の芋の子汁は前沢牛肉と醤油味の山形風である。
【食事コーナーの続き】
閑話休題、朝食バイキングの食事コーナーに戻ると
芋煮汁の隣には保温ジャーでお粥も供されているがここにも白米と同じく控えの炊飯器が配置されている。
次は朝食に欠かせない品で小さなカップ入の納豆、小鉢に収まる温泉卵は殻を捨てるボウルと味付のたれの用意もある。焼海苔は見慣れた八切りサイズのパック。宿名を印刷した特注のパックで提供する施設も少なくないがここ瑞泉郷では市販品が採用されている。
大鉢で供されるとろろ汁は小鉢に取り分ける。
隣に並ぶ朱色の蓋付椀の中身は
瑞泉郷の名物料理を謳う生姜餅である。
【余談: 一関市の餅文化】
一関市は古くから餅文化が発達した地域で汁餅(雑煮)、餡餅に限らず胡麻、胡桃、納豆、大根下し、ずんだ等々多彩な味付の餅料理が知られている。生姜餅もこの様な餅文化の一翼を担っているのであろう。
因みに先に紹介したR342に沿う道の駅厳美渓のレストランでは多種類の餅を一度に味わえる餅膳料理が一押しメニューとなっている。
【取り分けた料理】
多様な料理に目移りしながら欲望に任せて取り分け
朝食膳とした。
先ずは朝食定番の納豆と海苔に普段から欠かさず採っている生野菜はフレンチドレッシング添えで。
トレーに載せた野菜ボウルの右側区画は茄子と肉団子のオイスターソース炒めとメンチカツにポテトサラダ。
手前の段は中華の八宝菜、一口大の焼売とカラスガレイの西京焼き、きんぴらに一切れづつのウインナとハムは味見程度に。
温泉卵と果物小鉢の居場所は納豆や海苔と同じくトレーの外。
これらの料理にご飯と味噌汁で朝食を戴く。
食後のデザートはパイナップルとヨーグルトのブルーベリーソース掛けに仕立てたが
実はデザートの前に前沢牛の芋の子汁にも目移りして箸を進めて満腹状態となったので気にはなっていた名物の生姜餅を味わう余裕がない儘で朝食を終えた。
朝食会場から廊下に出ると窓際に部屋に持ち帰りできると案内された
コーヒーの提供コーナーが設けられていたが随分前からコーヒーを受け付けない体質となっているのでここはパスして部屋に戻った。
【チェックアウト迄】
部屋で暫しの休憩の後はチェックアウト直前迄可能な範囲で名残の温泉浴を楽しむのはいつも通りの過ごし方である。
瑞泉郷は先に紹介した通り9:30迄入浴可能なのでご婦人用浴場の内湯や
露天岩風呂は堪能できたが
前夜に経験した桶風呂や
檜風呂がある殿方用浴場に立ち入れないのはちょっと残念に思う。
何時ものことだがチェックアウト時間が迫った9:00過ぎの浴場に人影は皆無で完全な貸切状態での入浴であった。
【チェックアウト】
最終的な入浴を済ませたた後はチェックアウトに備えて素早く身支度を整え忘れ物の有無を確認し手荷物を携えてフロントに向かい清算した宿泊費用は以下の通り。
① 2食付宿泊費 @11,000×2名=¥22,000(税込)
② 入湯税 @150×2名=¥300
③ 夕食時の冷酒(瑞泉郷300ml) ¥1,100(税込)
①~③合計 ¥23,400
これに
④ 予約サイトポイント ¥2,000
⑤ 岩手応援割(1名分) ¥5,000
④⑤の割引を利用して2名宿泊の最終的な支払額は ¥16,400 となった。
更に先に紹介した¥2000分のいわて応援クーポンを既に受領しているので実質的な負担額は¥14,400である。
岩手県内でのみ有効ないわて応援クーポンは帰途の沿道で土産物の購入や昼食に活用し今回の旅を終えた。
【終章】
以前からR342を通行する度に目撃していた沿線の温泉施設は嘗て矢櫃温泉瑞泉閣を名乗っていたが現在は山王山温泉瑞泉郷と改称されている。
磐井川の河岸段丘上で回遊式庭園を伴う広い敷地を擁する施設は数十年程の時を経ている筈だが手入れが行き届いており特に温泉棟の浴場施設は最近に大規模改修が為された様子が窺える。露天風呂に設えられた様々な浴槽は一度の経験をお勧めしたい。
完
(00:00)
2023年03月31日
【朝食】
翌朝の食事も昨夜と同じ白山亭2Fの宴会場で供される。
朝の宴会場は庭園(川)側に開口するガラス窓から陽光が射し
畳敷きの会場内も明るい雰囲気が満ちている。
朝食の料理は完全セルフサービスのバイキング方式である。
昨夜は奥迄進むことができた廊下は手前で仕切られて料理を取り分けるトレーや箸を供給するテーブルが設置されている。仕切格子の奥に見え隠れしている窓に正対するカウンター席も利用可能である。
視線を左の窓外に向けるとガラス戸越しに池を周遊する庭園の設えが一望できる。
【バイキングの料理】
会場内の配置は昨夜と同じだがバイキングで提供する料理はより広いテーブルに多数の品が並べられているので順次紹介する。
先ず宴会場奥壁側のテーブルに配置されている飲料コーナーはコーヒーとほうじ茶の暖かい飲み物に
冷たい飲み物の牛乳、オレンジジュース、野菜ジュースに冷水が供されている。
隣のパンコーナーはクロワッサンにスプレッドが2種。赤い包装は恐らく苺ジャムで白い容器はマーガリンかバターと思われるが興味が薄く未確認の儘次へ。
隣はヨーグルトにはブルーベリーとキウイのソースが用意され果物はパイナップル。
宴会場中央のテーブルには廊下側が生野菜のコーナーで
千切りキャベツを加えたレタスには人参ドレッシングの用意があり
別ボウルで紫キャベツの千切りも供されている。
レタスの隣はミニトマトと三色ビーンズ、ロマネスコとカリフラワーの混ぜ物に定番のポテトサラダが並ぶ。ロマネスコは最近スーパーの店頭で見掛けるがブロッコリーよりも先端が尖った厳つい形状が特徴である。
画面の奥に見える竹籠は湯葉とこんにゃくで酢味噌が添えられ左隣りの菜の花お浸しと共に和の食材である。
ポテサラと隣合う銀皿には小振りのメンチカツが盛られ次の保温トレーには黄金もち豚の生姜焼が供されている。
次の保温トレーの右側は一関ミートのハム(手前)とはウインナソーセージ(奥)。
左はカラスガレイの西京焼きが並ぶ。
画面の右手前は茄子と肉団子のオイスターソース炒めでその奥は和料理の筑前煮。
左はピリ辛と記載がある八宝菜。
隣で蒸し鍋に保温された蒸籠の中は焼売で辛子のチューブの用意もある。
更に左に進むとIHコンロで保温されるスクランブルエッグと鉄板に載る海鮮塩焼きそばが待ち受けている。海鮮材料の塩味とあっさり目の仕上げではあろうが個人的に朝食の焼きそばは遠慮したい。但し若年層には朝でも焼きそばやカレーの類は人気がありそうとは思う。
会場中央のテーブル末端部には釜揚げしらすや
蕗のとうの漬物とたくあんの漬物類にきんぴら牛蒡と和の食材コーナーとなっている。蕗のとうの漬物は始めて見て興味を持ったがいざ取り分けとなった時には失念しており味見は叶わなかった。
Part.14はバイキングの食事
(00:00)
2023年03月24日
【セルフコーナーの料理】
ハーフバイキングのセルフコーナーは品書きから読み取れる通りご飯や味噌汁、漬物等の食事系とケーキや果物等のデザート系が主体となっている。
セルフコーナーの品は会場中央に配置された長テーブル上に用意されており各自で自由に取り分ける。
一関産ひとめぼれのご飯は保温ジャーに収まっている。
汁物はしじみの味噌汁で煎餅汁に仕立てる南部せんべいの用意がある。
壺入りの梅干し、塩昆布、あられは茶漬け用の食材。
中華麺に和風の出汁を掛ける鶏そばは山形県が発祥の筈だが岩手県にもその影響が及んでいる様である。
みぶな漬、きゅうり漬は良くあるが左端の長芋の漬物が珍しい。
こちらはデザートのコーナーで一口大のケーキ、ごま団子に果物のマンゴーが供されている。
ご飯類やデザートが並ぶ中でおすすめ揚げ物とされる鶏の磯部揚げはちょっと異色な存在だが一品を追加する軽食的な位置付けかと思う。
料理テーブルの端にはお茶や冷水の用意もある。
【取り分けた料理】
セルフコーナーから取り分けた品は
先ず鳥中華。麺好きには外せない一品である。これが夜食だったら更に嬉しいのだが罪悪感が付きまといそうである。就寝3時間前迄に食事を済ませるのが健康維持の秘訣なのだから。
珍しさで取分けた長芋の漬物は粘り気のある芋の食感が残り美味。箸が進んで撮影を怠り最後の一切れを何とか撮影した。右隣りはここぞとばかりに確保したマンゴー。
鳥中華を食した後は二口程のご飯にデザートを戴いて夕食を終えた。何故か漬物が増えているしケーキとごま団子のデザートにもマンゴーが再登場している。
Part.13は瑞泉郷の朝食
(00:00)
2023年03月17日
【個別の料理】
卓上に運ばれる個別の料理を品書の順に紹介すると
前菜の位置付けとなる小鉢はわかめ麺の帆立山葵ジュレと
ウドの醤油漬けの2種が供される。
わかめ麺はジュレの反射光で見辛いが麺状の細切りにした若布に刻んだ帆立を添える海の幸に山葵ジュレをかけた一品。ウドは云うまでもなく山の食材である。
もう一つの小鉢の甘露梅は箸休めとされており
甘く味付された大き目な丸ごと梅を崩しながら戴く。
献立に御造里と記載される刺身皿は鮪と牡丹海老に加えて白身の魚はハマチ(鰤)であろう。
供された儘では解り辛いので並べ替えたのがこの画面。
一関市山中の温泉でも一通りの海産物に恵まれるのは一重に発達した物流網のお陰ではあることは何度も述べてきたが一方地勢的に一関市は宮城県気仙沼市と比較的近距離にあり古くから交流が盛んでもあったと思われる。
鍋物はフカヒレ海鮮鍋とされており
鍋の脇に控える食材は一般的な豆腐やエノキ、小葱、マロニー等に加えてふかひれ、蛤、蟹爪、金目の切身、つみれと盛り沢山の海産物が用意されている。
これらの材料を順次鍋に投入し
火が通った頃を見計らって
小鉢に移して熱々の鍋を味わう。
ふかひれもしっかり戴いた。
鍋物に続く蒸し物で供されるのは
極普通の茶碗蒸しである。
個別料理の末尾に記される焼物は鮎の塩麴焼きではじかみだけが載る長皿に遅れて運ばれた鮎は厚手のラップに包まれた儘で供された。
包みを解くと竹串刺しの焼鮎が現れる。
これを頭からかぶり付き
美味しく戴いた。
Part.12はセルフコーナーの料理
(00:00)
2023年03月10日
【瑞泉郷の食事】
瑞泉郷の食事は基本的に白山亭2F宴会場での会場食である。但し山王亭の客室は庶民的なともえ亭とは異なり別格の高級感を感じるので部屋食があるのかも知れない。
4層構造の白山亭内は先にも館内図で見た通り
玄関脇に配置されている1基のエレベーターと階段室が垂直移動の手段となっているのでともえ亭の客室からは連絡通路経由でフロントロビー方向に戻ることになる。
エレベーターはフロントや売店のロビー空間から玄関外部に突出した様に配置されている。
この位置関係を外から見るとエレベーター部分の塔屋は玄関脇から4Fの屋根を突き抜けて聳えている。2棟に見える塔屋は玄関に近い左側がエレベーター塔で右の搭は鉄扉で隔てられた業務用の領域である。
一見ではこの塔屋部分は後付け構造にも見えるが建造当初から採り入れられた独特な意匠の可能性も否定できず真偽の程は不明である。
とにかく僅か1基のエレベーターは1F~4Fの往復に多くの時間を要する。従って食事の時間帯には利用者が増加して待ち時間が長くなるので2Fへの昇降は専ら階段を利用することになった。
こちらは既に紹介したフロントロビーの光景だが2Fの吹抜けから玄関の内部や売店の一部を見下ろすことができる。この画面で玄関扉の左奥にエレベーターと階段室が配置されている。
【食事会場】
2Fに上がった通路は庭園(川)側に限られておりこれを進むと館内履きを預ける履物棚の奥に廊下が伸びている。
廊下に沿う左手の窓側には庭園を見下すカウンター席が用意されており
右側に拡がる畳敷きの大広間瑞山が
夕食会場である。
【夕食の献立】
部屋番号を告げて案内されるテーブル席の卓上には既幾つかの料理と
献立の品書きが用意されている。
この献立の後半にはセルフコーナーが紹介されておりハーフバイキングの方式が採用されている。
【冷酒】
席に着いて先ずは飲料メニューから冷酒を注文した。
300mlの冷酒のラベルは宿名の瑞泉郷となっておりハウスブランドであるが
製造者は一関市内の両盤酒造(株)で製造所は西磐井郡平泉町と表示されている。
これを嗜みながら摘む料理は次回に。
Part.11は夕食の料理
(00:00)
2023年03月03日
【円形ボウル状の浴槽】
岩風呂より一段高い床面に埋め込まれた白色の円形浴槽は2基設置されている。
この床面は岩風呂に配置された大石を避ける形で設置されており明らかに後補の造作である。
直径が1.5m程に見える浴槽にはボウル状の球面形状の槽内には平坦部がなく不安定なため
木製の手摺りが入湯を補助している。槽の周りに貼り付けられた木板は腰掛けて足湯を楽しむ趣向であろうか。
木枠の縁には木造の湯口が独立して設けられ透明湯を注いでいる。
この円形浴槽に入ってみると白い表面はプラスチックの手触りでFRP(繊維強化プラスチック)の造形品かと思われる。何より球面の浴槽壁は滑り易く体の安定を保つことは容易ではない。
中心部の最低位置には湯抜き栓があり
円周部の高い位置に穿たれた小さな配湯口が一定の湯面を維持している。但し入湯時の急激な排湯には能力不足で板張りの縁からの越流もあるが嵩上げされた合成床材には隙間があるので床下の設備がこれに対応しているのであろう。
この浴槽は足湯としての用途以外は複数人の入浴に困難を感じる唯我独尊の設備である。
【瑞泉郷温泉の泉質】
殿方用、ご婦人用共に脱衣室内に泉質の額入り分析書が掲出されている。両者共記載内容は同一と判断されるがその書式は最近頻繁に見掛ける様になった分析書と
分析書別表の2葉に別れたもので
源泉名: 山王山温泉(山王の湯2号)
調査日: 令和2年7月29日
泉温: 61.0℃(気温23℃)
湧出量: 90リットル/min(掘削自噴)
pH値: 7.9
等が表記されているが肝心の泉質の記載が見当らない。
温泉成分の分析値を見ると陽イオンではナトリウムイオン(Na+)569㎎、カルシウムイオン(Ca2+)74㎎、マグネシウムイオン(Mg2+)12㎎が主要なもので陰イオンは塩化物イオン(Cl-)486㎎、硫酸イオン(SO42-)454㎎、炭酸水素イオン(HCO3-)353㎎で大多数を占めている。
この様な成分構成から泉質はナトリウム-塩化物·硫酸塩·炭酸塩 高温泉となりそうだが
隣の別表の泉質欄にはナトリウム-塩化物·硫酸塩 温泉と表示されている。
先に見た源泉61℃の泉温は明らかに高温泉に分類される筈だがこれに関する記載はない。
毎分90リットルの湧出量は従来から評価基準としている家庭用200リットル程度の浴槽を2分強で満たしてしまう圧倒的な給湯能力である。これに加えて括弧書きの掘削自噴は地下深い井戸からのポンプ汲み上げでなく自ら地上に湧出していることを現しており恵まれた温泉である。源泉名の括弧書きにある山王の湯2号の井戸名から古くは1号井に位置付けられる古い山王の湯の源泉が存在したであろうことも窺える。
温泉分析書とその別表には従来から見慣れた分析書に設けられていた浴槽の利用形態の項目が見当たらず加温や加水、循環装置設置等の情報が欠落しているが分析書とは別に源泉100%掛流し、加水、加温なしと記載した額が掲出されており源泉掛流しが強調されていた。
確かに高い源泉温度や湧出量の豊富さから加温の必要は無く多彩な浴槽への掛流しは十分に可能かと思う。
しかし殿方用の露天岩風呂で唯一石組みの正式な湯口とは別に
こっそり給湯している塩ビ管の謎が残る。
岩風呂より高い位置にある内湯浴槽湯尻の排湯を再利用している可能性が考えられるが真偽の程は不明である。
岩風呂より高い位置にある内湯浴槽湯尻の排湯を再利用している可能性が考えられるが真偽の程は不明である。
Part.10は瑞泉郷の食事
(00:00)
2023年02月24日
【ご婦人用浴場の露天風呂】
内湯の洗い場脇の扉から外に出ると
踏み石を並べた通路で小屋掛けされた左(隔壁)側の岩風呂に誘導される。
この浴槽に表示された美人の湯はご婦人用浴場を称するに相応しい呼称かと思うが今は男性が利用する時間帯である。
岩風呂に至って内湯側へ振り向くと数段の高低差を下った低い位置にあり
右手は合成材料の床板で嵩上げされた一段高い床面に
白色円形浴槽が二つ埋め込まれている。この浴槽にも木製看板の呼称が表示されていたが失念した。こちらは岩風呂とは異なり小屋掛けのない完全露天で隣の建物が気になるが外階段部分にも目隠しの覆いが施されておりこの宿の関連施設と思われる。
【岩風呂: 美人の湯】
これは高床側から望む岩風呂の光景で正面奥が殿方用浴場との板張り隔壁でその中央部に石組みの湯口も見えている。
右端は木製の手摺りと白いポールで二重にガードされた外景の展望所で
空に明るさが増すと蛇行して流れ寄せる磐井川の景観が現れる。因みにこの画面は早朝5:25頃に撮影したものである。
こちらは8時過ぎのズームアップで谷筋を削る蛇行流を視野に収めることができる。
隔壁を隔てた殿方用の露天風呂は残念ながら磐井川を捉えるこれ程の景観には恵まれていない。
石組みの湯口は隔壁の向う側の霊験の湯と類似の造りで
岩風呂浴槽に湯を注いでいるが
こちらも浴槽の内湯側湯面に半分隠れた
二箇所の埋込パイプが確認できた。
このパイプは霊験の湯とは異なり給湯は認めなかったが浴槽縁からの越流がないので湯面維持の排湯機能を担っていると思われる。
こちらは早暁の美人の湯に浸かって眺める露天風呂の光景で屋根の隙間に覗く空はまだ暗く内湯の照明が眩しい。
Part.9は露天風呂の続きと温泉の泉質
(00:00)