2023年11月17日
【朝食のバイキング】
7:00開始の朝食は前夜と同じ食堂で供されるが夕食とは異なりバイキング方式となっっている。
食堂に入ると昨夜にはなかった料理テーブルが配置され種々の料理が並べられている。
入口側からはドレッシングを添えた千切りキャベツの生野菜とポテトサラダにウインナソーセージ、薄切りハム続いて
ヒジキの煮物、小松菜のお浸し、モズク酢に沢庵漬、梅干、焼海苔等朝食に不可欠な品々に続いて
卵焼と納豆に
根菜の煮物と焼鮭も控えており
薬味と醤油タレが用意された湯豆腐の先は
保温ジャーのご飯と味噌汁のコーナーが配置されている。
ご飯コーナーと少し離れた窓側にはコーヒーやお茶に牛乳、オレンジジュースに冷水を取揃えた飲料コーナーも用意されている。
【取分けた料理】
卓上に並ぶ料理の中から取敢えず取り皿にピックアップしたのがこれ。
メインの仕切皿は沢庵と山菜煮物に千切りキャベツとポテトサラダも盛り合せて焼鮭と卵焼、ウインナ、ハムの蛋白質類も取揃えた。今回に限らないがバイキングで取分けるだし巻き系の卵焼は他の品よりも多めで卵焼大好き人間が証明されている。
その他小食では定番の納豆、焼海苔に湯豆腐とモズク酢も確保した。
これらにご飯と味噌汁が加わり朝食が完成する。
食後は飲料コーナーの牛乳とお茶を戴き朝食を終えた。
【チェックアウト迄】
朝食後一旦雲海荘の部屋に戻ったが10:00のチェックアウト迄はかなりの時間があるので昨夜に次いで大露天風呂に向かい一時を過ごした。既に紹介した大露天風呂の写真の大部分はこの時に撮影したものである。
朝8:00~9:00が清掃時間とされる大浴場だが当日は8:30過ぎに清掃中の看板が外されいたのでこちらもチェックアウト前の入浴が可能であった。但し清掃終了時間は作業の状況次第と思われるので9:00迄利用できない可能性もあると思う。
個人的な都合に限ればチェックアウト30分前に10分程度の入浴も可能な身軽な行動が可能である。
【チェックアウト】
大露天風呂から戻っても1時間以上の余裕があったので暫くのんびり過ごし10:00のチェックアウトより10分程前には身支度を調えてフロントに向かった。
今回は常用する大手予約サイト経由ではなく須川高原温泉の公式サイトから手配した父の日プランで6月18日前後2週間にHPからの直接予約限定の企画である。このプランではお父さん(家族グループで年長の男性と理解すれば良いのだろうか)に限り宿泊料金が\2.200値引きされ夕食の項で述べた飲料サービスの特典も加わり大変おである。
これらの恩典に依り宿泊料金の精算は以下の通りとなった。
宿泊単価(2食税込) @15,730×2名=\31,460
お父さん割引(1名) ー\2,200
入湯税 @150×2名=\300
冷酒 関山 \680 お父さんサービスで \0
-------------------------
宿泊料合計 \29,560
格安な温泉宿を標榜する本ブログの趣旨に照らすと割高に見えるが冷酒\680のサービスを勘案すると2名分の実質的な負担額は\28,880で1名の単価は\14,440となる。この額も決して安価さを誇れるものではないが時には県境の高地で豊富な湧出量を誇る出色の掛け流し温泉を体験するのも一興ではないだろうか。
【県境の景色】
チェックアウト後は往路を戻り帰宅するつもりであったがちょっとだけ秋田県に踏み込んで須川湖の湖畔に立ち寄ってみた。
標高1,110m程の岩手、秋田県境から秋田県側に少し下った須川湖畔の駐車場には須川地区の案内図が設置され野鳥の紹介もあるが掲載されている地図は秋田県の領域に限られ県境を跨ぐ須川高原温泉や栗駒山荘は枠外の存在となっている。
しかしこの位置から東の方向には須川高原温泉の赤い屋根を被った建物郡と黒い側壁を纏う栗駒山荘の建物の重層的な景観がある。
赤屋根と黒壁重なりの間に県境線が設けられている。
赤い屋根の右手には栗駒山の遠景がある筈だがこの時は秋田側から吹き上がる湿潤な風で形成される雲に閉ざされていた。
【終章】
岩手県一関市厳美町に属する須川高原温泉は栗駒山北麓で
秋田県との県境となる標高1,120mの高地に位置し冬期は7m余りの雪に閉ざされる秘境の温泉宿であるが
毎分6,000リットルの膨大な湧出量を誇る温泉は秀逸であり一度の経験をお薦めしたい。
高地ではあるが国道沿線の立地で冬期閉鎖の期間以外はマイカーでの訪問も容易である。但しR342の真湯ゲートより先は冬期には通行止めとなる本格的な山岳路で急斜面や急カーブが連続する狭路を進むことになるので難路の運転に自信のない方はJR一ノ関駅から発着する須川高原行きの路線バスの利用も検討に値するかと思う。
完
(00:00)
2023年11月10日
【食事の会場】
須川高原温泉では宿泊者の食事は基本的に売店食堂棟内の食堂で供される。但し先に見た栗駒の間等での宴会需要は別扱いになるのであろう。
食堂は宿泊者に朝夕の食事を提供するだけでなく昼間は日帰り客や登山客の外来者の供食需要も担っている。
旅館部と掲示されている18:00~の夕食と翌朝7:00~の朝食時間帯は館内からの入場に限定されているが昼の部(11:30~14:00)は国道に面する外部出入口が開放されて外来者の利用も可能である。
【食堂の内部】
夕食の時刻に食堂へ向かうと
通路とのガラス隔壁には目隠しのカーテンが引かれ
入口のドアのみが解放されている。
室内の壁や天井は白基調の明るい造りでウォールナット調の意匠を凝らしたテーブルと椅子が落着いた雰囲気を醸し出している。
こちらは入口側からの撮影で右奥に見える窓は国道側の外壁に開口している。
また左の壁面開口部の奥にも食堂の空間が続いている。
【夕食】
部屋毎に指定された卓上には既にいくつかの料理が並んでおり
着席すると直ちに陶板焼のコンロが点火されて
飲料の有無を問われる。数ある品々から選ぶのははいつと変わらぬ冷酒で今回は辛口の関山¥680を所望した。
宿にも依るが300ml小瓶の冷酒は\800前後が相場で高級とされる宿程\1,000超の高値を設定する傾向がある。標高1,200程の県境の僻地で相場を下回る良心的な値付けは大変有難い。高地とは言っても7mの積雪に閉ざされる冬期以外は岩手、秋田両県側から国道が通じており物流が保証されていることが好条件となっているのであろうか。
但しこの冷酒は先の宿泊プランの項で触れた様に父の日プランの特典で\780以下の飲料を1本サービスという特典で振る舞われたものである。
卓上に献立の品書は用意なく料理の説明もなかったので正確性に欠ける恐れもあるがコンロに点火されている陶板焼の蓋を開けてみると
キャベツや玉葱等野菜類の上に牛ロース肉が鎮座している。
焼き上がったロース肉は
小皿で用意される浸けダレの風味を加えて戴く。
先付と思われる長皿には3種の盛付けがあり
左端はワラビorゼンマイに見えるおひたしに紅葉皿は若布と夏野菜の和え物で
右端は田楽風に成形した抹茶風味の胡麻豆腐である。
陶板焼の手前に並ぶ小鉢は
油揚げ巻きのテリーヌと花麩の焚き物、ツルムラサキのお浸しに
赤紫蘇風味の芋茎漬け、蕗の煮物と数々の山の幸が並ぶ。
少し遅れて川魚の塩焼きと
山菜の天ぷらが相次いで運ばれる。
川魚は鮎、岩魚、山女魚、ニジマス等が知られているがその辺りの知識に乏しく魚種の判断がつかない。姿形から岩魚であろうかとは思うのだが。
緑色に覆われた天ぷらは名も知らない山菜類の中に辛うじて茄子と茗荷の存在が確認できた。茄子の下敷きになっている大きな緑の葉っぱはその形状に気が惹かれたが忙しく立ち働く従業員を呼び止めて尋ねる行為は気が引けて疑問が残された。献立の品書き添付がないのが残念である。
とは言え川魚も山菜天ぷらも美味しく戴いた。
これだけの料理を収めた胃袋はギブアップ状態でご飯と汁物はパスして甘味のデザートを味わい夕食を終えた。
山野菜が主体で牛肉と川魚が加わる料理は山上の宿らしい構成で一泊を過ごすには十分に満足できるものであった。
敢えて記すなら、須川高原温泉にマグロやハマチの刺身は要らないよね。ということ。
Part.11は須川高原温泉の朝食からチェックアウト
(00:00)
2023年11月03日
【大露天風呂】
脱衣室から露天の浴場に出ると
先ずは大日岩の直下に設えられ盛大に湯気を上げる白濁湯に満たされた大きな浴槽に目を奪われる。
こちらはほぼ同じ視座からの夜間風景で大日岩廻りのライトアップが施されているが明らかに光量不足のスローシャッターで手振れを免れることはできない。
かと言って高速シャッターが可能なストロボフラッシュ撮影では想定通り浴槽から湧き上がる大量の湯気粒子が反射膜となり砂嵐の画面となってしまう。
脱衣室側の手前には僅かな簀の子敷きの左手部分に3組の湯水栓を配した洗い場がある以外全ては露天浴槽の空間となっている。
浴槽の左側は直接登山道に面する都合で目隠しの柵が配置されているが画面左上に写る雲海荘端部の限られた客室からは浴槽の一部が見える状態。ま、山峡で露天の男湯だし多少のことは良しとするか。
男女湯を分ける浴槽右側の隔壁奥には大日岩の裏側から配給される給湯ホースが延びており
竹筒の湯口から源泉が給湯されている。
湯口の対角となる洗い場側の片隅には湯面を維持する排湯の仕掛けが確認できる。
これは湯口から越流口が置かれた方向の光景で脱衣室の建物と登山道との視線を遮る板塀の奥に売店食堂棟の末端部も見えている。この景色から浴槽の大きさを実感できるかと思う。
眼前に聳える岩峰を眺めながら源泉掛流しの大規模な浴槽に浸かっていると満たされた一時を感じる。
【須川高原温泉の泉質】
既に述べた通り須川高原温泉の各浴場に配湯される温泉は全て同一の源泉から供給されているが一応各浴場施設の泉質表示を確認する。
通常はA3版程度の紙に印刷し額縁に入れて掲げられることが多い泉質表示だがこの宿ではプラスチック板に印字した大型の看板が掲出されている。
額入りの小さな文字はガラスの厚みがオートフォーカス(自動焦点)機能に干渉するので常用する小型カメラでは撮影に難渋するがこれだけ大きな掲示は簡易に鮮明な画像を得られる有難い存在である。
この画面は大浴場の表示だが
中浴場に向かう通路や
大露天風呂の受付付近にも同じ大型掲示が設置されている。
この3枚の掲示は見た目の形状が同じで且つ同一源泉の先入観も作用して記載内容も同一と勝手に思い込んでいたが子細に視ると大浴場の表示に限って泉質やラドン含有量と成分含有量の数値をテープ貼付で修正されている。
修正部分を下段まで辿ると分析日付が平成27年7月とされており中浴場と大露天風呂の平成17年8月の掲示から10年後の更新情報と理解できる。本来ならば大浴場だけでなく全ての浴場の掲示を更新する必要がある筈だが手が廻っていないのだろうか。
以下は形成27年の更新情報を基本に泉質を紹介する。
源泉名: 須川温泉(霊泉の湯)
泉質: 酸性・含硫黄・鉄(Ⅱ,Ⅲ)-ナトリウム-塩化物、硫酸塩泉 (低張性酸性高温泉)
泉温: 50.5℃ (気温19℃)
ph: 2.2
は確かに強酸性の高温泉であり湧出量の表示はないが既に述べた通り毎分6,000リットルの莫大な湯量を誇っている。
源泉名の須川温泉には括弧付きで霊泉の湯の付記がある。霊泉の湯は先に見た通り中浴場の別称でもあり嘗ては源泉=霊泉の湯=中浴場であった歴史が感じられる。
泉質は10年前(平成17年)の表示はで強酸性含硫黄泉とされている。
主要な含有成分は陽イオンでは1kg中にナトリウムイオン(Na+)186mg、カルシウムイオン(Ca++)133mgにカリウムイオン(K+)58mgが続く。
陰イオンの塩素イオン(Cl-)735mg,硫酸イオン(SO4--)422mg、硫酸水素イオン(HSO4-)89mgとメタケイ酸(H2SiO3)236mgに溶存ガス成分の二酸化炭素(CO2)692mg、硫化水素(H2S)9.4mgの含有も大きな特徴となっている。
また10年前の成分量は数値が異なっているが主な成分の順位に大きな相違は認めない。
湧出する源泉は透明とのことだが浴槽に注がれて空気に触れると白濁湯となるのは多分に硫黄成分に依るものであろう。
Part.10は須川高原温泉の食事
(00:00)
2023年10月27日
【大露天風呂の位置と外観】
既に述べたが大露天風呂は玄関ホール棟から屋根続きの売店食堂棟や大浴場棟、雲海荘を始めとする客室棟の建物群とは栗駒山の登山道で隔てられた秋田県境側に独立した施設である。
従って大露天風呂へ向かうには夜間でも一旦玄関から屋外に出て売店食堂棟即ち峠道の国道に沿う経路を歩くことになる。
正面奥に見える「ゆ」の暖簾を掲げる小振りな建物とその左に盛大に吐き出す湯煙が大露天風呂の施設である。
大露天風呂の手前を横切る登山道の入口脇には源泉の集湯から溢れた温泉が小川を呈して流れ下り天然の足湯を形成している。この足湯は無料開放されているが画面の湯気に見える通りかなり熱めの流れである。
足湯の小川と大露天風呂の前に立ちはだかる奇岩は「大日岩」と命名されており大露天風呂が「大日湯」と称される所以である。又「大日岩」の由来は重厚な存在感の岩峰を大日如来に擬えたものかと推察する。
足湯の流れにの中に配置された岩は腰掛け適した平面的な形状で自然の景観が配慮されている。
因みに須川高原温泉の源泉はこの画面左端で登山道を登った山側に位置しており赤い鳥居が何よりの目印である。登山道沿いに這う多条の黒い耐熱ホースは各浴場施設へ給湯するパイプラインである。
上の画面と同じ位置から右に視線を移すと大露天風呂の施設とその奥に県境を示す標識を掲げたR342の道形を望むこともできる。右端の建物は売店食堂棟端部の厨房部分である。
登山道に面して青い暖簾を掲げる部分が大露天風呂の入口となっている。
こちらは夜間に撮影した入口の様子であるが
同じ位置で安易にストロボを焚くと周囲に立ち籠めている湯気の水滴に閃光が反射して幻想的な光景に変貌する。
さて大露天風呂の建物に入ると右側に有人の受付があり宿泊者はフリーパスで通過できるが日帰り入浴客は反対側の券売機での入浴券購入(大人\700,こども\350)が促される。
浴衣着の宿泊者は外来者との識別が容易だが浴衣を纏わない平服の宿泊者は入浴料金を請求される恐れを感じるが客室に用意されている
橙色のタオルを携行していれば宿泊者と認められるのかと思う。
そう、この宿ではフェイスタオル、バスタオル共に橙色で浴衣と同じで持帰りができない備品扱いである。バスタオルを持帰る積りは全くないが宿のロゴが染め付けられたフェイスタオルは折に触れて思い起す旅の記念品である。名入りのタオルの大概は薄っぺらい安価なものだが温泉宿の記憶を蘇らせるには十分な品でさる。
【余談: 橙色のレンタルタオル】
以前の記事でも何度か触れているが今までの経験で都市ホテルや極一部の例外を除き温泉宿で持帰り不可のタオル類は大概橙色(オレンジ色)が採用されている。オレンジ色とする理由は不明だが察するに目立つ色味は盗用を防止する効果があるのだろうか。
最近は見掛けなくなったが10数年前の百均ショップではバスタオルを税込\100で購入することができた。これはサイズこそバスタオルだが薄手のタオル生地は吸水性に疑問を感じる代物であったがパステル調のグリーン、ピンク、ブルーから選択できる色味にオレンジ色もあり何故か偶々このオレンジを選んで購入していた。その後温泉宿等の備付けタオルの主流がオレンジとなっていることを認識して我が家のオレンジバスタオルは出番を失ってしまった。色だけでなく使い心地の吸水性不足が主要な要因ではあるが。
温泉宿に備品の位置付けで持帰り禁止のタオルがバスタオルに限らずフェイスタオルの領域にまで浸透し始めていることは大いに残念である。何故なら宿名が入ったタオルは宿泊の記念品であるから。
【大露天風呂の脱衣室等】
受付の先は廊下が延びており
男女別の下足棚の奥に女湯の入口暖簾が見えている。休憩用の長椅子の手前は男湯の脱衣室である。大型の下足棚と鍵付きロッカーは日帰りの外来者を意識した配置かと思う。
脱衣室内の壁面は中浴場と同じく板張り仕様で右壁面に2基の洗面台と
トイレが並び浴場への出入口の脇の窓に用意された菅笠は雨や雪除けの露天風呂らしい用意である。
2基に見えた洗面台の片方は故障中で使用不能で壁面には節水が表示されているが何よりも湯水混合栓の金属部分の黒変に目を引かれる。
温泉は豊富だが真水は不足気味という特殊な環境がここにも垣間見える。
左側の壁面は4段の棚に収まる脱衣篭が並び中央には木製の長椅子が配置されている。
Part.9は大露天風呂の浴場と須川高原温泉の泉質
(00:00)
2023年10月20日
【大浴場の露天風呂】
既に触れたが大浴場の奥には露天風呂の設えがある。
露天風呂ではあるが周囲と天井は目隠しの板戸や葦簀で囲われており開放感に乏しいが
降雨時には葦簀張りの天井から容赦なく雨の雫が滴り落ちるので露天の施設であることを実感する。
簀の子敷きの内湯と異なり平石を張った床面には休憩用に小振りの長椅子が配置され縁に木材を配した方形の浴槽は
内湯の出入口側が斜めに絞り込まれた変則的な位置に縁を切欠いた越流口が設けられている。
画面では解り難いが越流口の対角となる奥の外壁側に突出したパイプから源泉が直接注がれている。
【大浴場清掃中の表示】
翌朝8:00を過ぎると脱衣室の入口には
清掃中の看板が掲出される。
看板曰く清掃中は屋外の大露天風呂か須川荘2Fの中浴場を利用下さいと。
但し清掃の必要度に応じて所要時間も変動するらしく9:00前に看板は撤去され入浴可能となっていた。
【中浴場霊泉の湯】
中浴場「霊泉の湯」は須川荘と来光別館の間にあるので雲海荘の客室からは一旦1Fに降りて大浴場棟から売店食堂棟に向かい
玄関ホール棟内のフロント奥にある階段で
2Fに上がる。
階段上の左側は宴会場の設えに見える栗駒の間の大広間が控えており
右手は奥に伸びる廊下の両側に400番台を付与された客室の空間で中浴場は画面右端の案内表示にある通り背後に一旦向きを変えて
須川荘に連絡する渡り廊下を進むこと
須川荘の館内に突き当る。ここには進路案内があり
右方向は須川荘の客室に左は中浴場「霊泉の湯」と来迎別館への進路が示されているが手前向きの矢印でこれまで辿ってきた経路を逆戻りするフロント方向の案内も怠りがない。
中浴場に進むには左に折れるがちょっと寄り道で須川荘を除くと基本館内図にある通り中廊下の左右に600番台の客室の並びが確認できる。
踵を返して中浴場方向へ向かうと右手に分かれる奥の段差の先に中浴場の案内が見えているが
直進方向に来光別館の看板を認め再度探検の寄り道へ。
廊下の右手前には自炊用の調理設備があり廊下の奥には山側に続く階段も見えている。この先は昔の館内図で見た従業員宿舎の領域であろうか。
中浴場への分岐の戻り2段の階段を上がると
温泉の成分を表示する大きな看板に迎えられる。
男湯の暖簾を潜った脱衣室は周囲が板壁で浴室の隔壁となる右側に脱衣棚がありその手前が浴室の入口となっている。
左奥がL字に折れ曲った位置に2基の洗面台が配されている。湯水栓独立型の混合蛇口は施設の説明にあった通り温泉成分の影響で金属ベース部が黒く変色している。洗面台の正面壁にはサッシ窓の開口する都合で鏡は左側面の高い位置に貼付けられている他ドライヤーの用意もある。
脱衣室から覗いた浴室は手前の簀の子敷きの床の奥全てが浴槽となっており竹筒の湯口から注がれた湯は手前の縁から簀の子床に越流する方式となっている。
中浴場を称する浴室ながら狭小感が否めない空間である。浴槽だけなら満員電車よろしく7~8名を詰め込むことは可能であろうが脱衣室との動線渋滞が容易に想像できる構造である。
なおこの浴槽は大浴場より高温の設定で45℃程とか。これは来光別館に近いこともあり多分に湯治客を意識した設定ではないだろうかと思う。
実際に入浴して確認すべきではあったが撮影中に入浴客が訪れたので湯温の高い設定に関して僅かな言葉を交わし早々に退散することとした。ま、源泉は他の浴場と同じだし、と言訳しておこう。
Part.8は大露天風呂
(00:00)
2023年10月13日
【須川高原温泉の浴場施設】
既に3種の館内図を紹介しているので温泉浴場の位置は確認できていると思うが現状を表している基本館内図と
その裏面の利用案内に掲載されている各施設の概要は以下の通りである。
① 大浴場「須川の湯」 …… 売店食堂棟の山側に連なる大浴場棟内の浴場は「須川の湯」と称しており男女別に大きな内湯浴槽と洗い場を備える内湯に小振りな露天風呂が併設されている。基本的に深夜の利用も可能で翌朝8:00からは清掃時間となっているが終了次第再開する様で9:00前には清掃中の札が外されて暖簾が懸かっていたのでチェックアウト直前の時間帯も含めて実質23時間の入浴が可能な有難い運営である。
② 中浴場「霊泉の湯」 …… 「霊泉の湯」を称する中浴場は玄関ホール棟内で階段を上った2Fで連絡する須川荘の廊下を辿る。須川荘と来光別館の間に位置する小規模な浴室であるが45℃の高温温泉を謳い昔ながらの湯治宿の雰囲気を残している。また大浴場の清掃時を補完する役も担っており9:30~翌朝9:00迄利用できる。
③ 大露天風呂「大日湯」 …… 登山道入口脇の別棟で6:00~21:00迄利用可能。宿泊客は一旦玄関から屋外に出て国道に沿う売店食堂棟の外壁を進んで辿り着く。
④ 蒸し風呂「おいらん風呂」 …… 大露天風呂③の別棟前から登山道を15分程登った途中にある蒸し風呂は6:00~16:00頃迄利用できるが別途売店でゴザセットを購入する必要がある。
登山道15分の行程は①~③の源泉を通り過ぎた山上側にある筈で詳細は不明だがゴザが必要という事から温泉蒸気を引き込んだ山小屋の小部屋に座ってか或いは寝転んで温まる和風サウナ的な施設であろうか。利用時間が限られ移動時間に往復30分を要する事から今回は未体験である。
①~④の温泉施設は日帰り客も受容れており①②④は売店で③は別棟大露天風呂の入口で手続きをするらしい。
①~③の各浴槽に配湯される源泉は施設建物群から少し登山道を上った溶岩丘にあり毎分6,000リットルの莫大な湧出量故に登山道脇にも溢れ出て川を成し天然の足湯が形成されている。
因みに以前に掲載した福島市野地温泉ホテルの記事で箱根大涌谷の温泉を供給する箱根温泉供給会社は毎分2,800リットルを造成していると記したがこちらはその倍量以上の温泉が自然湧出しているのである。従って全ての浴槽は循環濾過等の余分な動力を必要としない源泉掛け流しである。
以上が基本館内図に掲載されている温泉施設だが第二の館内図には栗駒山登山口脇に位置する③の大露天風呂と近い位置に別棟で貸切風呂「紅葉荘」が描かれている。但し国道に接する登山口周辺には大露天風呂以外にそれらしき建物は見当たらず既に廃止解体されたものと思われる。
【栗駒山荘の浴場利用】
更に須川高原温泉の宿泊者は県境を越え徒歩5分の至近にある栗駒山荘の温泉施設も利用可能であるがフロントに申し出る必要がある。恐らく無料入浴券が交付されるシステムであろうが栗駒山荘の浴場は6:00~9:00と10:00~21:00の主に昼間の設定で夕刻から翌朝の時間帯がメインとなる宿泊者の利用は難しく断念するに至った。
県境を跨いだ栗駒山荘とは既に紹介したWi-Fi環境やFAX回線のこともあり何かと連携関係が窺えるので栗駒山荘側でも「須川高原温泉利用の場合はフロントへ」的な対応があるのかも知れない。
【大浴場須川の湯】
大浴場「須川の湯」は既に館内図で紹介した通り玄関ホール棟に接する売店食堂棟から雲海荘の客室に連絡する中継機能を担うエレベーター設備を備える大浴場棟内で面積の大部分を占める主要な温泉浴場である。
雲海荘の客室からは展望所の連絡通路に戻りエレベーター(又は階段)で1Fに降りると
目の前に拡がるホール空間の奥に掲げられた朱と紺の暖簾が
男女別大浴場の入口である。
【脱衣室】
暖簾を潜った先は
脱衣室の空間で右側の手前に鍵付きロッカーがあり
その奥は籐籠を収めた2段構造の脱衣棚が左右両壁面に配置されている。中央に見える木製長椅子と籐製スツールは湯上がりの休憩の便で
左手前の細長い空間には3基の洗面台が並んでいる。
丸形の埋込みボウルは若干古い形状だがレバーを上げて通水し左右に回して湯水の混合比率を調整する湯水混合栓は震災による家屋倒壊に伴う被災漏水の経験から変更された最新方式である。
1120m程の高地に立地する宿の湯水混合栓は想定外の設備であったが洗面台の脇には真水の不足で節水を促す掲示に説得力を感じた。
温泉水は豊富だが飲料水の調達は苦労が伴う様である。
脱衣室から振り返る上り框に下がるスクリーンはホール側からの視線を遮る為の設置かと思う。
脱衣室の奥に見えるガラス引き戸が浴室の入口である。
【大浴場】
脱衣室からは二重のガラス引き戸を通って浴室に入るが
その間にあるトイレは珍しい構造である。
換気用の高い天井を備える大浴場棟ではあるが浴室内には湯気が立ち籠めて見通しが悪く写真撮影には最悪の状態である。
女湯との隔壁となる右手は手前から奥まで10基のシャワー栓が並ぶ洗い場となっている。床面は水捌けを配慮した木製の簀の子が敷き詰められている。
外壁に高窓が開口する左手は奥まで細長い大浴槽が延びている。
この画像は早朝の撮影で偶々巡回中の従業員が親切に手前の窓を開放して換気に協力して戴いたが鰻の寝床状に奥行きがある膨大な容量の湯気に抗うことはできなかった。
この浴室は外観で見た通り高屋根の頭頂に換気塔を載せる典型的な湯小屋造りの構造だが換気口は狭小で機能は不十分と思われる。
浴槽手前の脱衣室側にはシャワーブースが配置されているが大量の湯気に妨害でされた結果上の画像となった。
こちらは湯気を逃れた浴室奥の露天風呂から見た浴室内の様子で
外壁側の大きな浴槽と
湯水混合のシャワー栓が並ぶ光景を何とか捉えることができた。
露天風呂に接する大浴槽奥には外壁側に源泉を給湯する湯口と洗い場側に浴槽底面の排水口に突き立てた竹筒の高さで湯面を調整する排湯口が設置されている。この手の排湯手段は極めて簡易な方式であるが筒を抜いてしまうと浴槽の湯が全て排出されてしまう危険を伴うので興味本位で手を触れることは絶対に許されない設備である。
この様な排湯方式は何度か経験しているが今でも北海道のドライブ旅で宿泊した積丹半島から南下した島牧村のモッタ海岸温泉旅館で日本海の眺望に恵まれた露天風呂が記憶に残っている。
Part.7 は大浴場の露天風呂と中浴場
(00:00)
2023年10月06日
【第二の館内図】
客室内に常備されている館内の案内や宿泊約款のバインダーを繰ると先に紹介した表題が「申し訳ございません」と記された館内設備に関する説明文に加えて後に紹介する浴場案内や須川高原温泉旅館館内図の表記がある館内図を認めた。
この館内図(以下第二の館内図とする)には先程フロントで受領した館内図(以下基本館内図とする)と見較べると
以下の相違が確認できる。
① 雲海荘の山側に雲海荘別館がある
② 須川荘と来光別館の間に来光館がある
【雲海荘の別館】
先ず雲海荘別館の部分に就いて。
第二の館内図では雲海荘内の2Fと3Fを結ぶ階段途中の踊り場から平面で連絡する様に描かれているが
実際は山側に向かう階段を上る構造で到達した別館1Fの床面は別館ではない雲海荘3Fとほぼ同じレベルにある。
画面手前のポリバケツは階段部分の雨漏り対策らしく現役で稼働する客室とは一線を画した雰囲気を纏っている。
別館に入って振り向くと防火扉の仕切りの先に踊り場に下る階段構造が見える。
別館1Fの短い中廊下の左奥には別館2Fに上がる階段がある。
第二の館内図に依ると1Fに4室、2Fに7室が配置されているが100番台が割り当てられた部屋番号の明確な規則性は感じられない。
更に中廊下の先は続きがありそうに描かれており画像でも扉の存在が確認できる。
早々に別館の探検を切り上げて踊り場で上り階段が二方向に分れる珍しい構造の分岐点に戻ると別館ではない雲海荘の2Fと3Fの床面を一望できる。この画面は踊り場より少し高い別館側の階段上からの視野である。
雲海荘の本館部分は基本館内図と同じ2F3Fとされているがこの本館3Fとほぼ同じ高さにあり本館2Fからは1層分の階段を上がった別館が1Fとされるのは極めて不自然である。
【来光館の本館】
基本館内図の中で既に自炊客向けと述べた部分は来光別館とされているがこれに対応する本館は見当たらず不自然さを感じていたのだが第二の館内図には須川荘と北側に位置する来光別館の間に描かれている来光館が腑に落ちる存在である。この来光館は自炊部の表示が確認できる。
2層構造の須川荘に隣合う来光館も1Fと2Fに700番台の部屋が並んでいるが現状に即した基本館内図では須川荘2F客室が600番台に3F客室は700番台の付番となっており嘗て700番台であった筈の来光館1Fと2Fの本館客室は抹殺されてしまっており800番台の来光別館に痕跡を残すのみとなっている。また第二の館内図で2階建ての来光館と須川荘は共に1F2F、平屋の来光別館は1Fと表示されており須川荘は2F3F、来光別館は2Fとする現状を表す基本館内図とは相違している。
【須川高原温泉施設の変遷】
ここまで現状を示している基本館内図と少し前の状況であろう第二の館内図を見較べてきたが国道や駐車場に面する玄関ホール棟から館内の各棟を移動した経験から特に垂直方向の階層表示に関しては基本館内図の表示が感覚的に馴染み易い。
第二の館内図は現存する雲海荘別館の様子を伝えてはいるが既に客室としての利用は終了した模様で記憶の領域に入りつつある過去の存在かと思う。
【更に以前の館内図】
過去のついでにもっと昔の館内図も紹介しておく。
こちらは「むかしなつかし須川高原温泉の案内図」の説明で玄関ホール棟のロビーに掲出されている昔の館内図である。
今まで見てきた基本館内図や第二の館内図は一般的な地図と同じく北方向が上となっているがこちらの図(以降昔の館内図とする)は反時計回りに90度回転し左が北方向で描かれている。
昔の年代に関する説明は見当たらず何時頃のものかは不明であるが余り昔ではないと思われる第二の館内図と大きな相違点と基本館内図では大幅に省略されている建物の用途が想像できる記載があるので確認する。
【温水プール】
先ず宿の顔である玄関ホール棟と南に連接する売店食堂棟は
現在と変わらぬ建物形状が確認できるが大浴場棟がある売店食堂棟の山側奥の位置には屋外の中庭に温水大プール、小プールの配置が大な相違点となっている。肝心の大浴場は現在より雲海荘に近い登山道脇に描かれており売店食堂棟の厨房側から山側(東方向)に進む廊下で連絡されている。この廊下を更に進むと階段を上って左に折れて廊下が雲海荘の客室への経路となっている。この廊下は先端部で右に折れた直後の階段を上って雲海荘の2Fに至る構造から当時は売店食堂棟から浴場の1Fと雲海荘2Fを連絡する廊下は中二階のの高さにあったと推察でき現在はエレベーターで雲海荘3Fに直登できる環境とは全く異なっていたと思われる。
雲海荘の部分を見ると第二の館内図で確認した2層構造の別館の更に奥の山側に繋がる建物が描かれており従業員宿舎と記載されている。この図でも雲海荘3Fから連絡する別館の部分は1Fと2Fの表記でこれに繋がる従業員宿舎も1F2Fとなっている。
須川荘より北側(画面では左側)は第二の館内図にもあった自炊部の来光館1F2Fが描かれている。また左端部の来光館別館部分の2Fに描かれた12室程の部屋が従業員宿舎とされている他に来光館1Fから須川荘に連絡する通路の奥(画面右側)で雲海荘に並行する2層の建物部分も従業員宿舎と記載されている。図面ではこの2層構造と雲海荘は距離を置いた別棟で描かれているが現状は雲海荘への経路で紹介した通り外観は棟続きとなっている。雲海荘3Fからこの棟続きへの連絡口は見当らなかったが2Fは確認していないので何がしかの設備があるのかも知れないが須川荘側からの廊下が主要な連絡路ではないかと思われる。
ここ迄基本館内図、第二の館内図、昔の館内図と3種の館内図を紹介した。
最も古い昔の館内図は現在の大浴場棟の位置に屋外温水プール施設の配置と自炊部の来光館の存在が特徴であるが比較的新しいと思われる雲海荘の建物も存在している。
第二の館内図では温泉プールに代わる大浴場棟が出現し雲海荘に連絡するエレベーターも整備されて館内施設の配置と動線が大きく変更されている。
今のところエレベーターの設置時期は特定できていないが巻揚げ機等動力設備の新規導入時には自家発電能力の増強も必須であったと思われる。
それにしても標高1,127mの県境山岳地に都会のビルと見紛う程最新装備のエレベーターは半年の稼働で冬季は積雪に覆われて休止する存在である。
Part.6は須川高原温泉の浴場施設
(00:00)
2023年09月29日
【雲海荘3Fの客室】
エレベーターの上下移動を含む入組んだ連絡通路を通って辿り着いた客室のドアを開けると
踏込みの板張り上がり框の奥に畳敷きの和室が見えている。
踏込みの左手は
ユニット式の洗面台が設置されており
隣合う引き戸の奥はトイレが配置されている。
このトイレでは暖房便座を備るが洗浄機能はなく残念ながら暖房便座の為の電源も用意されていない。従って暖房が機能しない暖房便座である。
基本的に10畳の和室で奥の外壁に開口する窓は引違いの障子で目隠しされている。
障子を開けると上下2段に仕切られた透明ガラス窓で上段部のみが引違い戸で外気に接することが可能な構造となっている。
透明ガラス戸と障子の間にはブラインドが設置されておりカーテン替りの遮光機能を担っている様だが断熱機能に関してはカーテンに劣るのではないだろうかと思う。
窓側に定番の広縁はないが
天上部分は下がり天井の細工が施されている。
左側の壁面は窓側に床柱を立つ床の間の設えが10畳プラスαの空間となっており小さな吊り棚の上下にはテレビと金庫に加えて湯沸しポットが配置されている
床柱の手前は腰高の位置にクローゼットが置かれ木格子を嵌めた下段は集中管理方式と思われる暖房機が収められている。
クローゼット内の乱れ箱に丹前の用意はあるが
浴衣と帯にタオル類は嫌でも視線に入る座椅子上に置かれている。オレンジ色のファイスタオルは嫌な予感があるがそれは後程。
クローゼットから更に入口側には床の間の板床の延長に見える小さな空間があり余り見掛けない木製のタオル掛けが鎮座している。
室内を一通り観察して入口の踏込に振り向くと右壁面側の手前に一間幅(約180cmの押入れが寝具類の収納場所である。
再度天井を見上げると室内照明灯は木組み格子を嵌めた天井埋込構造で窓側の下がり天井と共に手の込んだ造りとなっている。
10畳の中央に配置された座卓上には茶道具を収めた茶櫃と茶菓子の用意があり
床の間に控えている湯沸しポットでお茶を淹れて茶菓子を戴く。
画面の左端写る宿オリジナルのドリップコーヒーバッグは部屋に用意されたものではなくチェックイン時に父の日プランに含まれるくじ引きで得た品であるが室内に茶道具の茶碗以外カップやグラスの用意がないので持ち帰りとなった。
ここまで客室内の様子を紹介してきたが何か不足を感じなかっただろうか。既に伏線を敷いているのでお気付きの方も少なくないと思うが、冷蔵庫がない!のである。エアコンがない!も正解。
自家発電が頼りの高原温泉で大電力を消費するコンプレッサー系の機器を客室毎に数十台の単位で設置することが困難であることは容易に想像できる。
電気ヒーターで湯沸しするポットの配置さえ電力を要しない魔法瓶型の真空断熱容器で事足りるのでなないかと思う程である。
Part.5は須川高原温泉の施設変遷
(00:00)
2023年09月22日
【雲海荘の客室へ】
チェックインで指定された客室は雲海荘の3Fであった。
既に館内図を見ているのでフロントからの経路は明らかであるが
玄関ホール棟のロビー空間から一旦売店食堂棟の領域に移動し
右手に売店を見ながら
案内矢印に従って左に折れ
山側に繋がる通路を奥に進むと
大浴場棟のロビーに至るが進路の正面は行き止まりで
右手は瓦葺の庇の下に男女別の暖簾を掲げる大浴場の入口があり
左手は雲海荘の2Fと3Fに連絡するエレベーターと階段室が配置されている。
先にも触れたが館内唯一のエレベーターはデジタル表示で籠の内部もステンレス壁と床面のカーペットが真新しい最新の設備で近年の設備更新が窺われる。但しこの動力は先に見た通り施設独自の自家発電で賄われているのである。
このエレベーターで3Fに上がると右手に階段室が接しており
正面に伸びる広めの通路はソファーや椅子が配置され小振りなロビーの設えとなっている。
僅かな距離を進むと左にL字に折れて雲海荘に向かうが通路の両側は透明ガラスの腰高窓が設置され高い位置から周囲の景色を望む展望所を兼ねている。ソファー類の配置はこの展望の便を図るものであろう。
連絡通路右手の窓からは進路の先となる2層構造の雲海荘が見える。
進路左手の窓からは左端のエレベーター塔を含む連絡通路の奥に須川荘の2階建ても視界に入る。画面右端に写る2層の建物は雲海荘の北側に続く部分であるが館内図には案内がなく休止状態の施設かと思われる。
エレベーターに近い位置に戻ってこの部分を見ると雲海荘とは屋根の高さが異なる別棟が繋がっているがその接続部は外壁の顕著なひび割れがあり赤色の屋根にも部分的に補修した痕跡が確認できる。
屈曲点の窓外には棟上に換気用の小屋根を設けた大浴場棟の屋根を見下すことも出来る。右端には売店食堂棟屋根末端部の厨房部分も見えている。
先の画面は秋田県側から吹き上げる雲海に包まれて景色が霞んでいたがこちらは雲が切れたタイミングでほぼ同じ位置からの展望で中央に聳える岩峰は「大日岩」と呼ばれている須川高原独特の景観である。
連絡通路3F左右の窓外風景を観ながら更に進むと大きな熊の縫ぐるみが出迎える雲海荘の入口に達し宿泊者以外立入禁止の表示がある。ということは日帰りの入浴客も3Fの展望通路の景観が開放されているのである。白い引き戸の奥が雲海荘の領域である。
縫ぐるみが座る脇の棚にはS,L,LLサイズの浴衣が用意されている。チェックイン時に説明があったが客室内に用意れた浴衣は標準的なMサイズに限定されているので異なるサイズが必要な場合はここで選んでくださいというシステムである。
雲海荘内は右手の奥に延びる廊下の左右に客室が並んでおり奥の突当りには非常口も見えているが連絡通路の窓から確認した北側に棟続きの建物がある筈の左手は普通の壁で閉塞されており連絡通路やドアの類は見当たらない。
廊下の左手前に見える手摺りは2Fに降りる雲海荘内の階段であるが途中の踊り場に見える怪しげな分岐階段は後に紹介する。
廊下を進む途中の壁面に設置されている館内電話はチェックインで案内された通りで客室内には配置されておらず設備機器の負担軽減努力の一環であろう。雲海荘3Fではこの1基が唯一の配置で2F部分も類似の配置かと思う。
館内電話の近くにはWi-Fiルーターも設置されている。
Wi-Fiの環境に就いてもフロントで予め説明を受けていたが回線容量が貧弱で客室内での利用は困難とのことで
「この付近でご利用いただけます」の注意書き通り客室内のスマホではルーターのSSIDは認識できるが接続作業はほぼ失敗に終わり廊下に出て正に「この付近」に至ると何とか接続が確立する状況であった。従って折角持ち込んだPCは一度も開かずに持帰ることとなった。
【余談: 通信回線の謎】
チェックアウト時にWi-Fi環境に関して確認すると、国立公園内の工事には制約がありWi-Fi回線は県境を越えた隣の栗駒山荘から引き込んでおり回線容量は限られているのだとか。詳しい事情は判らないが高速な光ケーブルの引き込み工事ができないということなのだろうか?でも宿の固定電話である0191-23局は岩手県一関市の回線の筈だがと思い見直すとFAX番号は0182-55で始まっておりこれは秋田県の横手市や東成瀬村等に割り当てられている局番である。従って須川高原温泉の固定電話は岩手県側の回線だがFAX回線は秋田県側に繋がっているという極めて珍しい事態が明らかとなる。この様な状況となった理由は1,100mを超える県境の高地故か、環境保護が優先される国立公園故かは定かでない。東北電力の電力線の敷設もない孤高の地で電話回線だけ繋がっているのも不思議な話ではある。電波による無線通信機器を採用しているのであろうか?
【客室迄あと少し】
閑話休題。
Wi-Fiルーターから雲海荘の廊下を更に進むと目的の客室に辿り着く。
先程から見えていた通り廊下の突当りはアルミサッシ戸の非常口があり外部の鉄製階段を降りて雲海荘2Fの地盤に脱出できる構造となっている。
Part.4は雲海荘3Fの客室
(00:00)
2023年09月15日
【チェックイン】
玄関で履物を預けて上ったカーペット敷きのフロアは
ロビー空間で
玄関脇にフロントカウンターが配置されておりチェックインの手続を行う。フロントの隅には日本秘湯を守る会の見慣れた提灯が提っている。
以前この提灯を見たのは峩々温泉(ががおんせん;宮城県川崎町)であったろうか。
【宿泊プラン】
従来から多用している大手の予約サイトに須川高原温泉は登録がなく施設独自の公式サイトで宿泊を手配することになった。
6月ならではの設定であろう父の日プランを見つけて予約を確定した。このプランは和室10畳トイレ付に2食付の単価が¥15,730(税込)+入湯税¥150の設定で2名では3万円超となり本ブログの基本理念である格安温泉宿には疑義が生じる価格帯ではあるが唯一の救いはお父さん本人(=筆者)は¥2,200割引料金が適用されるサービスである。
更に予約時やチェックイン時には認識していなかったが夕食時には¥780以内の飲料が一品無料の特典もあり温泉宿で何時も発注する300mlの冷酒をサービスで嗜むことができた。
【須川高原温泉の館内】
既にPart.1のGoogle空撮像で建物群の全容をご覧戴いているが須川高原温泉の施設は平屋と二階建てを取り交ぜた大小多数の建物の集合体である。
これはチェックイン時に受領した館内の案内図で複雑な構造が容易に想像できるがこの図はあく迄も宿泊者が立入可能な範囲限定でを示したものである。図面右側の山側には更に建物の続きがあるがそれは後に述べることとし取り敢えずはこの案内図の範囲で施設の概要を紹介する。
既に見た国道に面する2棟が南北方向に連接する建物は
① 玄関ホール棟 …… 国道の北側に沿う2層の建物で玄関ホールとフロント、事務所の他に数室の部屋があり1Fはすすき、もみじ等宴会部屋風の名称があり2F部分は400番台の部屋番号が与えられている
② 売店食堂棟(南側の平屋) …… 玄関ホールに接する側は広めの売店でその奥の食堂には大規模な厨房が構えており宿泊客の夕朝食の他に登山客や日帰り温泉客の昼食需要も賄っている。
③ 大浴場棟 …… 「須川の湯」と称する大浴場は売店食堂棟から奥の山側に位置する平屋の1棟が男女別に内湯と露天風呂を備える温泉施設に充てられている。
④ 雲海荘 …… 大浴場棟から更に奥の山側に建つ2層構造の客室棟で①~③より一段高い傾斜地にある為1Fは存在せず大浴場棟内のエレベーター(又は階段)で2Fか3Fに上り連絡通路を経由して到達する。尚エレベーターは館内唯一ここだけの設備である。雲海荘内は2Fの客室に200番台、3Fは300番台の部屋番号が付番されており動線上にエレベーターが配置されていることを含めてメインで稼働している客室棟と思われる。
⑤ 須川荘 …… こちらは玄関ホール棟内の階段を2Fに上り渡り廊下で連絡する山側の2層構造物で2F部分は600番台、3F部分の客室は700番台となっているがこちらの垂直移動は全て階段昇降が必須である。
尚須川荘内は北側に「霊泉の湯」を称する男女別の中浴場が配置されている。
⑥ 来光別館 …… 須川荘の中浴場から更に奥に続く廊下の先に800番台の部屋が並んでいるがここには炊事場室があり湯治宿として自炊客を受容れる施設と思われる。中浴場に足を向けたついでに来光別館内の廊下も覗いてみたが宿泊客の気配を感じたので炊事室の光景を目にしただけで早々に退散した。
⑦ 大露天風呂(別棟) …… ①~⑥は全て廊下や屋根付きの連絡通路で繋がっているが大露天風呂は独立した別棟である。玄関ホール棟から一旦屋外に出て国道に沿って連なる売店食堂棟に沿って秋田県境の南方向に進むと栗駒山の登山口の先に建つ小さな建物と目隠しの板塀に囲まれて盛んに湯気をあげている施設が大露天風呂の「大日湯」である。
【須川高原温泉の特徴】
須川高原温泉は標高1,100mを超える山岳地の国有林内に立地しており積雪期に入る10月下旬頃から翌年5月上旬頃迄は休館を余儀なくされる施設である。従って施設の維持にも色々な制約があるとの説明書が客室に配置されている。
その表題は 申し訳ございません である。
この施設の特徴が絶妙な文書で表現されているので以下に全文を引用する。
この度は 当須川高原温泉にご宿泊頂きましてありがとうございます。
当温泉は標高1,126mに位置し、冬期間は7mもの雪に閉ざされ、3月下旬雪に埋もれた屋根発見に始まり、約1か月かけ雪を溶かして建物等の被害をようやく確認でき、次いで、修復作業がスタートし、やっと5月はじめに各風呂お湯張りへと続き、10月末頃までの半年営業が始まるという厳しい自然環境の中にあります。
自然によるハンデはさらに、開業後も皆様にご不自由やご迷惑をおかけする原因にもなり、本当に心苦しい限りでございますが、せめて説明だけでもと思います。
まず、「電力」の問題でございますが、当館使用電力はすべて重油を原料とした自家発電によるものですので、必要最低限の家電を賄うことしかできません。
次に、「水」の問題でございますが、当館水源は遥か数キロ栗駒山上方に位置し、水質管理された水を長いパイプでつなぎ繋ぎながら届く、限られた水量で賄っておりますために、常時節水にご協力いただいている状況でございます。
さらに、「家電製品」の問題でございますが、当地は温泉成分が酸性·硫黄·硫酸塩·塩化物泉(硫化水素型)と、いわゆる硫黄成分で周辺空気が覆われていますことから金属腐食が著しく、浴場·トイレ·お部屋の水道蛇口等金属部分が黒く変色しているのも"汚れ"ではなく硫黄成分によるものでございますし、テレビ·電球·冷暖房機器はじめ、業務用機材等々あらゆる電化製品に不具合が発生しやすく、耐久年数もほとんどが3年以内と極端に短い上に、当館に登って来て頂ける電気屋さんもまったくありませんことから、時に故障·修理に即応できない場合も発生いたします。
このような条件が重なりまして、最新式のトイレの設置等お客様のご要望に、すぐにはお応えできない現状にあり、大変申し訳なく存じます。
また、携帯電話の電波状況やWi-Fiにつきましては、国定公園内立地上の諸問題から、現状では不便をおかけいたしております。
長く状況を説明させていただきましたが、どうか、私ども須川高原温泉の置かれております環境と現状に、ご理解とご協力を頂戴いただきますれば幸いに存じます。
そのような、誠に当館の一方的なお願いの中ではなはだ恐縮ではございますが、温泉だけは全国屈指の温泉·良泉として知られてございますので、どうぞゆっくりと心身共に癒していただけますれば、重ねて幸いに存じます。
令和元年 須川高原温泉株式会社
先ず驚くのは冬季休業中の積雪が7mにもなること。これは3階建ての屋根をも覆う高さであり「3月下旬雪に埋もれた屋根発見に始まり」の表現に実感が込められている。3月初旬は国道ではあるが真湯の冬季閉鎖ゲートの先の除雪は着手前かと思われる。この様な時季に1,126mの県境峠へ如何なる手段で到達するのであろうか。
次に述べられている電力に関する「当館使用電力はすべて重油を原料とした自家発電によるものですので、必要最低限の家電を賄うことしかできません。」の説明も予想外であった。先に触れた通り館内には1基のみではあるがエレベーターが設置されておりその動力源は巻揚げモーターを駆動する電力である。更に複雑な構造の広い館内には膨大な数の照明設備に加えて客室内にはテレビと湯沸しポットの配置があることから発電設備は相当に大規模なものであろうが館内図を見る範囲でその配置を窺うことはできない。
施設周辺に充満する硫黄成分が多い雰囲気で金属腐食が激しく電化製品が短寿命であることも温泉地や海岸沿いで塩害が激しい地域では度々耳にする話ではある。一般的に家電製品の寿命は10年程に設定されている様で製造から10年を超えた製品は不具合が生じてもメーカー側に設定されている補修部品の保有期限超過を理由に修理不能とされ同等製品の新規購入を促されることが多いが耐久年数が僅か3年とは衝撃である。
Wi-Fi環境に関しては「携帯電話の電波状況やWi-Fiにつきましては、国定公園内立地上の諸問題から、現状では不便をおかけいたしております。」と立地上の諸問題と簡単に片付けられているがフロントに問うとアンテナ設置等独自通信施設の整備に制約がありネット回線は県境を挟んだ栗駒山荘の施設から引き込んでいる都合で回線容量が細く客室からの接続は困難であるとのことであった。
末尾に記載された「温泉だけは全国屈指の温泉·良泉として知られてございますので、どうぞゆっくりと心身共に癒していただけますれば」の文言が須川高原温泉最大の魅力である。
Part.3は雲海荘の客室への経路
(00:00)
2023年09月08日
【序章】
6月は仙台でも梅雨の予兆を感じる時季であるが偶々同行者との調整がついて平日の温泉宿泊旅に出掛けることになった。
今回目指す宿は「須川高原温泉」で所在地は「岩手県一関市厳美町字祭畤山(げんびちょうまつるべやま)」となっているが更に続く地名の「国有林46林班卜」は明らかに国有地内に立地する施設である。
祭畤(まつるべ)という地名は一度聞いただけで記憶に残る特徴的な名称で本ブログの記事には頻繁に登場している岩手県南西部山岳地帯を横断するR342沿線で秋田県境に至る広い領域を包括している。
【須川高原温泉への経路】
須川高原温泉は栗駒山北麓となる標高1,127mの岩手秋田の両県境に接する位置にある。
先ずは栗駒山周辺の広域図をご覧戴くが1,626mの山頂は岩手と宮城の県境にあり須川高原温泉は山頂から北に外れた岩手、秋田の県境に位置しており3県の境界が複雑に交わる山岳地である。
ここへ向かう経路は基本的に岩手県南部の中心都市である一関市から秋田県東鳴瀬村方向に横断する国道R342を辿ることになり仙台市方面からはR4を北上し一関市街の北部で左に分岐するR342に進む定番の道筋で厳美渓の景勝地を経由して山王山温泉瑞泉郷に至る経路は既に紹介している通りである。
瑞泉郷から更にR342を西進して2008年6月の岩手宮城内陸地震で落橋した祭畤大橋の震災跡を通過し右手に見える祭畤温泉の宿泊施設の先は真湯の温泉施設が日帰り客を迎えているが震災直後は営業不能な状態であった。
真湯の直線路の先にある冬季閉鎖のゲートの先は一挙に九十九折れの急坂で高度を稼ぐ山岳路に変貌する。ゲート前左手の広場は降雪時のタイヤ交換の備えと思われ公衆トイレの用意もあり冬季閉鎖の期間はこの広場が国道の折り返し地点となる。
真湯ゲートの標高は340mであるが目的地の秋田県境付近は1,110m超にあり770m余りの標高差を克服することになるので以後の道筋は国土地理院の地形図を交え3区間に分割して紹介する。
山岳路の最初の区間は5段の九十九折れを重ねて標高差120mを一気に駆け上がると一瞬右手に開けた磐井川谷筋の景観が現れるがその先は支流の一ツ石沢に沿って南西に進み標高500m程で沢を渡った後に550mの等高線迄上った道筋は一旦右に大きくカーブして西に向きを変える。
この変曲点には「須川岳秘水ぶなの恵み」の水場を備える小規模な駐車場があり一時の休憩空間を提供しているが軽トラに載せた多数のポリタンクに水を汲む飲食関係のプロと思しき人の姿も見受けられる。
水場を過ぎた国道は一ツ石沢から離れて右に左に大きく進路を変えながら磐井川本流を目指すが暫くは左右を1,000mから800m程のピーク群に挟まれ650mから750mの高度を進む。
標高750mを超えた山岳路は支流のヒバ沢を渡り800mに達した後にやや高度を下げて磐井川の本谷を渡って対岸の山肌に挑む。対岸に聳える900mのピークを回り込む為に進路は一旦北に向くがその後は概ね南南西に向かう屈曲路で高度を上げ1,000mを突破する。
1,000mを超えた道筋はカーブが緩やかになり須川高原温泉の案内が現れれば僅かな距離で県境の地に達する。
R342の道筋を縦に断ち切る県境は標高1,110mを超えた地にあるR342の最高地点で
その先は秋田県雄勝郡東成瀬村(おがちぐんひがしなるせむら)の領域となり東成瀬村の中心地や隣接する湯沢市方向の低地に向かう下り道となるが県境のすぐ先には秋田県側の温泉宿である「栗駒山荘」の施設も見えている。
県境の手前で国道左側に並ぶ建物群が今回目的地の「須川高原温泉」である。ここから秋田県側の「栗駒山荘」迄は徒歩で僅か5分の至近距離にある。
県道に沿って建ち並ぶ建物群前の駐車空間は僅かな台数分に限られているが国道を挟んだ向い側に広大な駐車場が用意されており隣接する須川ビジターセンターやキャンプ場にも栗駒山の登山客の需要を意識したであろう駐車場が設置されている。但し温泉側の駐車場からも温泉客とは明らかに異なり登山装備を整えた入山者の姿を頻繁に目撃した。栗駒山に登頂を果たした帰途の疲れを癒す為に温泉に浸かり宿泊する客もあるので駐車場の厳密な区別は難しいのかも知れないしそもそもこの地は先に所在地名で見た通り国有地となっているので全ては国民共有の財産と考えるのが妥当なのであろう。
駐車場の中央を南北方向の縦に分割する県境線がこの地の特別な立地を物語っている。
尚この地には一ノ関駅前を発着点とする岩手県交通の路線バスが午前便と午後便の2往復運行されているので狭い屈曲路で急斜面も出現する山岳道路のドライブに不安を感じる場合はこちらの利用を検討しても良いかと思う。
因みに翌日の帰途にはセンターラインがない狭路部でこの路線バスと行違い交換することになった。こちらは下り道でマナーとして進路を譲る側にあったがバックギアを装備しない2輪車が後続しており進路変更の後退距離も限られる状況下で中型の路線バスは山側の好位置に停止して進路を譲ってくれた。日常普段に狭路で路線バスの定時運行を維持するドライバーの技量は尊敬に値するもので嘗て肘折温泉街(山形県大蔵村)旧郵便局前の屈曲路で遭遇した路線バスとの交換体験を久し振りに想い起すきっかけとなった。
【須川高原温泉の建物群】
栗駒山北麓の傾斜地に位置する須川高原温泉施設の外観は峠道の国道に張り付いた様に見えるがその実態は先に掲載した空撮画像に見える通り東側に上り傾斜となる山肌に沿って多数の建物群が繋がる集合体である。
一般車の駐車場は既に述べた通り国道を挟んだ向い側にあるが一旦エントランスの狭い空間に車を乗入れて玄関前の案内員に予約の旨を伝え手荷物を降ろした後に駐車場に移動する。車を停めた後は横断歩道も信号もない国道を徒歩で横断して館内に入り玄関ロビー脇のフロントでチェックインを行う。
2F構造の玄関棟の右手に続く平屋の建物は売店や食堂の入口が国道側に開口しており昼間は日帰りの訪問者にも食事や土産物購入等の便宜が図られておりテラス部分には休憩用の長椅子の配置は登山者やハイキング客を意識した構えに見える。
売店や食堂は宿泊客との共有の空間となっており館内側からの利用も可能であることは言う迄もない。
Part.2は須川高原温泉の館内構造
(00:00)
2023年09月01日
【石渕広場】
胆沢ダム管理支所脇に開口する国道R397の焼石東トンネルに突入し
尿前渓谷の深い谷を跨ぐ尿前渓谷橋を渡り直線的な石渕トンネルを潜り抜けた先の左手に石渕広場への案内看板がありこれに従って細い連絡路に左折すると僅かな距離で石渕広場に達する。
石渕広場は僅かな台数分の駐車空間がある他は湖岸のフェンスと数枚の案内看板が立つのみで眼前には奥州湖の景観が拡がる。画面は胆沢ダム堤体方向を望んでいる。
周辺施設案内図は広場の現在地が表記されており基本的にこれまで紹介してきた地図と変わりはない。但しこの図は左下端に表記がある通り一般的な地図と異なって南北方向が上下逆向きに描かれているのでご注意戴きたい。広場の位置から奥州湖を望む視線を優先するならこの描き方が現実に即しているとの判断が働いたものかと思う。
別の案内板には石渕ダムから胆沢ダムへとの表題があり胆沢ダム建設中の空撮画像と石渕、胆沢両ダムの比較データが紹介されている。
空撮画像は2008年12月撮影の表示で胆沢ダムは基礎工事から堤体を立ち上げ始めた頃に見える。案内板の画像を切取って無理矢理拡大した画像故に不鮮明で申し訳ないがこの時期は新ダムに湛水を始めるより遥か前の状態であり上流に現在地を示す赤いピンが立つ石渕ダムとダム湖に加えて左岸の山並を縫う様に延びる旧国道の道形も読み取ることができる。
実はこの旧国道部分を嘗て走行した経験があり当時の石渕ダムを撮影した記憶もあったので過去のデータを発掘すると2009年11月の記録が確認できたので後に紹介する。
空撮画像の右下端には緩やかな曲線で上流に進む付替え国道が堤体脇でトンネルに吸込まれる道筋も写っている。
建設中の新ダム堤体から1.8Km上流に位置する石渕ダムに至る谷筋の地形は現在全て奥州湖の湖底を形成している。
同じ案内板には石渕ダムと胆沢ダムの規模が比較されている。胆沢ダムの概要は既にダムカードで紹介したがダム形式は胆沢ダム(以下新ダム)の中央コア型ロックフィルダムに対して石渕ダム(以下旧ダム)は表面遮水壁形ロックフィルダムと異なっている。簡単に言えば旧ダムの表面遮水壁はロックフィル構築物の表面を遮水目的のコンクリート壁等で覆うもので堤体コア(中心)部に遮水壁を設けダム表面は文字通り岩石を緻密に積み重ねたロックフィルの構造体が露出している違いがある。比較表を以下に転記しておく。
胆沢ダム(新) 石渕ダム(旧)
ダム形式 中央コア型 表面遮水型
ロックフィル ロックフィル
堤頂標高(m) 364.0 323.0m
堤 高 (m) 127.0 53.0m
堤頂長 (m) 723.0 345.0m
堤体積 (m3) 1350万 44.25万
湛水面積(km2) 4.4 1.1
総貯水量(m3) 14300万 1615万
比較表の数値から先ず窺えるのは41mの堤体標高差は単純計算をすれば新ダムの満水時の旧ダムは新ダム湖面より40m程沈んでいると考えられるが堤頂を満たす程の湛水はダム決壊に至る危機的な状態であり通常はより安全な湛水位で管理されている筈である。旧ダム堤体は新ダム湖の変動する水位に依存するが湖面より数十メートル下に沈んでいることは間違いない。
広場の上流側には旧ダム堤体の位置を示すと思われる黄色の標識が対岸に向けてV字型に設置されている。この様に大型の黄色い板をV字型に組んで湖岸に設置する例は以前に錦秋湖の湖尻付近でも見た経験があり湖底に沈んでいる堰や堤体の存在を示すもので湖上の水運の便に対する警戒標識であろうと推察している。通常この種の標識は堤体に沿って対岸にも設置されている筈だが今回目視の範囲での確認はできなかった。しかし石渕広場を名乗る限り新ダムで形成された奥州湖の水面下にある石渕ダムの堤体位置を示していることは間いはないと思われる。
【新ダムの湖底に沈む旧ダム】
胆沢と石渕の新旧ダム比較で堤高と堤頂長のは何れも新ダムが2倍でダム堤体の体積は3倍、湛水面積即ちダム湖の広さ(表面積)は4倍となっており総貯水量に至っては8.8倍の規模で建設されることとなった。これは当時の水利やエネルギー需要の増加に応えるものであったと事業主体の国土交通省東北地方整備局が説明している。
【2009年11月当時の石渕ダム】
過去の情報を発掘すると嘗て石渕ダムを訪れた訪れた時期は2009年11月であった。案内板にあった空撮写真は2008年12月とあるので以下に紹介する画像はそれよりも11箇月程後の光景である。
下流側に建設中の胆沢ダムから胆沢川の左岸に沿う当時の国道R397を遡ると6基のコンクリート水門とその上部に跨る細長い屋根付きの特徴的な建物に達する。これが石渕ダムで画面では左端の国道脇には写真と共に石渕ダムを示す案内看板が設置されておりその先は湖岸に小規模な駐車場と簡易的なトイレの用意もある休憩施設となっていた。更にここには展望塔の高い視座が提供されていたのでこの角度からの画像を撮影することができた。
水門から右に視線を移すと対岸迄ダム堤体が続きその奥のに立つ湖中の搭は下流へ送水する取水か水位管理の施設であろうか。水門脇の駐車場から水門上部を横断しダム堤頂に繋がる通路はこの施設にも連絡している。
石渕ダムの堤体は水門部分と同様コンクリート堤に見えるが表面遮水型のロックフィルダムであり堤体表面をコンクリートで覆い遮水処理を施したものであろう。
石渕ダムから当時の国道をもう少し遡ると眼前に高い橋脚を連ねて空中に浮かぶ様に見える付替えの新国道が現れるが胆沢ダムが完成すればあの高架道が新ダムの湖岸に沿う国道となり現在地は湖底に沈む筈である。
その高架道を潜った先はにカーブして高い位置に上る国道の延長と思われるが
その路上には重機が作業中の通行止めで進行できない袋小路で元来た道に引き返すこととなった。
工事中のダム周辺では進捗状況に従って水路や道路の付替えが必要で特に道路の変更は頻繁に行われる必要な道筋には必ず代替道路が整備される筈である。頭上に見上げる高架の新国道は既に供用されて橋上を走る車の姿も確認できるので更に上流に進む為にはこの付け替え新道に戻らねばならない。
高架下の行止りでUターンし再び石渕ダムの湖岸に戻ると屈曲した道筋の先に先程上って撮影した2層の展望塔(画面中央)の他に堤体手前の湖面に第二の取水搭らしき構造物が確認できる。
更にダム堤体に近付くと先程は見逃していた通行止めのゲートとロックシェッドに気が付いた。このゲートは開放されていたが冬季の県境越えを規制するものと思われるが既に付替え新道が完成しておりこちらの旧道は関連する工事で袋小路状態となっているのですでにその役は解かれている。
道路面上の視点から望む石渕ダムは水門上の特徴的な建物以外湖面の景観はない。
【2009年11月建設中の胆沢ダム】
更に下ると眼前に建設中の胆沢ダム大堤体が現れる。
堤高から進捗状況が9割程に見える堤体上には何台もの重機が稼働しており手前の低地にはセメントサイロと思しき多数の円筒サイロを従えた大型コンクリート工場も確認できる。
小規模な砂防ダムを除き山奥に建設する大型ダムの建設現場では大量の生コンを必要とするので現地に需要に応える規模でコンクリート工場を設置することは普通に行われておりセメント材料の石灰石や骨材となる山砂利は近隣の山地から調達されることが多くこれらの材料を蓄える設備がセメントサイロである。
コンクリート工場に近付くと道端には多数の工事関連看板に囲まれて国道標識と国道の進路を示す青看がありセンターラインもない狭路ではあるがR397の現役国道と主張している。但しこの地は何れ湖底に沈む運命にある。
胆沢ダムの完成時には撤去される筈の大規模なコンクリート工場の脇を通り抜けると進路は旧道を外れて上り傾斜の取付け道となり堤高に近い高さまで駆け上り付替えの新国道にT字路で合流する。
新国道には工事中の堤体脇に一般者の立ち入りができる仮設の見学所の設置があり9割程に積上げたロックフィルの堤体上には
岩石を運ぶ大型のダンプカーとパワーショベルの重機が堤体構築の作業を行っていた。
堤体の下流側を見るとダンプカーの通路となる作業道路も確認できる。
見学所の手前には胆沢ダム独特の構造である地山設置型円形多段式ゲートの上部構造が形成されている。
この位置関係から2009年当時の仮設見学所は現在胆沢ダム管理支所の敷地内で駐車場に相当する位置と思われる。
【湖底の遺跡】
以上が胆沢ダム建設中の2009年11月に訪れた石渕ダム周辺の様子である。
現在これらの全ては奥州湖の湖底遺跡であり石淵広場の黄色の標識が辛うじて石渕ダムの存在を伝えている。
胆沢ダムと奥州湖の追加記事 完
(00:00)
2023年08月25日
【胆沢ダムの奥州湖へ】
焼石クアパークひめかゆからの帰途は往路のR397を引き返さず胆沢川上流の胆沢ダムに向う道筋を進んだ。
既述の通りひめかゆの施設は胆沢ダムの下流域に立地しており旧国道と思われる市道を数分遡るとダム堤の直下に至る直進路は閉鎖されており左手に分岐する通行可能な上り道がダム湖の眺望台に繋がっている。
【奥州湖眺望台】
眺望台に向かう道は標高270mに位置するダム堤の下端部から堤高127mを遥かに凌駕する標高490mの眺望台迄僅かな直線距離で標高差220mを一気に駆け上る急傾斜路で途中に発電所やダム施設に通じる筈の脇道は全て関係者以外通行止めとなっており等高線に沿って屈曲しながら高度を稼ぐ難路をひたすら昇り詰めて高台の駐車場に到達する。堤体下から眺望台駐車場迄の道筋は舗装が行届いており10分弱の所要時間でミニアドベンチャードライブが体験できるが登坂能力に不安がある車両での訪問や急傾斜急カーブのハンドル捌きに自信がないドライバーにはお勧めできない観光道路ではある。
行止りの広場に車を停めるとその眼下にはご覧の光景が拡がっている。枯れたススキの植生が手前の視野を狭めているが100m程下にはロックフィル構造の長大なダム堤体とその奥にアーチ橋を架けてダム上に昇る国道R397の道形が印象に残る。
左手の上流側に視線を移すと複雑に入組んだ地形に湛水した奥州湖の青色と対を成す白銀の連峰は奥羽山脈から東に伸びる標高1547mの焼石岳とその右に連なる1300m級の天竺山、経塚山の山塊であり更に連峰の裏側(北側)は嘗て秘湯の温泉地と紹介した夏油温泉や夏油高原スキー場の地となっている。
画面右寄りに湖面が大きく切り込んでいる部分は支流の尿前川が胆沢川に合流する尿前渓谷で湖岸路のR397は尿前渓谷橋でこの谷を克服している。
この区間の国道はトンネルと橋の連続構造で湖岸の交通路を確保しており画面の左寄りにも道路橋の存在が視認できる。
高台から奥州湖の眺望を堪能して車に戻る前に眺望台に設置された案内図が目に止まり念の為に撮影した。ダム周辺の施設が要領良く纏められているので既に掲載した地図と重複するが紹介しておく。
【ダム堤下の光景】
眺望台から先程昇ってきた道の急坂を引き返し堤防下に戻る所要時間は5分程であったろうか。
ここからはダム堤上に至る国道に合流する為にダム堤下で胆沢川の左岸に渡る必要がある。この渡河地点に架かる望み大橋は近年の構築物の特徴を有しておりダム建設に併せて整備されたものと思われる。
この橋上からはロックフィルのダム堤体の威容と
ダム直下の胆沢川を望むことができる。
この時季は奥羽山脈からの雪解け水でダム湖は満水に近いと思われるが放流水量は少なく広い河川敷が確認できた。
徒河を終えるとダム下の比較的平坦な道筋は俄かに変貌し崖上の高い位置を通る国道に向けて右直角のカーブで向きを変え標高差50m程の急斜面に挑む。
7枚前の国土地理院胆沢ダム周辺図を見直して戴ければ眺望台からダム下に戻り国道に至る道筋の理解が容易かと思う。
【胆沢ダム】
傾斜路の頂点はT字路を左折してダム方向に向かう国道に合流すし胆沢トンネルを抜け次の 尿前? トンネル抗門直前の左手に資料館を併設する胆沢ダム管理支所の建物があり
その脇の駐車場に車を乗り入れるとダム堤体と
ダム湖の存在が身近に感じられる。
但し管理支所側から見るダムはロックフィル堤体の手前にコンクリートで固めた落水路が鎮座している。この水路を上流に辿るとダム湖の越流壁と思われるコンクリート堰の奥でより低い位置にある放流口の水流が落水の源となっている。この構造は胆沢川の流れを維持する放流の手法かと思う。
この水路を白波を立てて下る水流は先の望み大橋からも望める胆沢ダム独特の景観である。
【ダムカード】
管理支所1Fの資料館入口にはダムカードを配布している旨の案内を見つけ早速入手に向かう。
館内にある受付窓口の管理人に申し出ると胆沢ダムのカードに加えて
ダム直下に置かれた胆沢第三発電所のカードも手交された。第三発電所の名称から分かる通り現在胆沢川に設置されている水力発電所は第一から第四迄が稼働している。
発電所カードの裏面に記載されたデータ下段の特徴を見ると電源開発株式会社(Jパワー)の胆沢第一発電所と岩手県企業局の共同事業で建設されたもので水路や施設建物は両者で共同管理している全国でも珍しい発電所とか。即ち第一発電所と第三発電所は運営管理組織が異なるものの同じ水路と建物を共同管理する施設である。更に前半に胆沢ダムの河川維持流量を利用すると記載されていることから先に見た白波を立てる落水路の位置エネルギーを活用する発電所と理解できる。
因みに胆沢第二発電所と第四発電所は第三発電所より下流側にあり何れも岩手県企業局が運営管理を管轄している。
ダムカードの裏面には胆沢ダムの諸元が記載されている。事業者の国土交通省は国の直轄事業で建設されており形式の中央コア型ロックフィルダムは遮水性土を芯として岩や土を積上げ(ロックフィル)て貯水圧を受け留める方式でコンクリート製の堤体を建設する重力式やアーチ式ダムとは堤体の材料が異なっている。
2002年に本体の事に着手し2013年に完成したダムの堤高は127mで堤頂の長さは723mに及ぶ超大規模の建造物で貯水総量は1億4300万立方メートルとか。1立方メートルは一辺1mの立方体の容積で水の重さでは1トン(=1000kg)であり円筒形のドラム缶1本の容量は通常200リットルで水を満たせば200kg+ドラム缶の重さとなるが億単位の容積は想像を超える莫大な数値である。因みに近年大きな面積や容積の比較対象として汎用されている東京ドームは面積が46775平方メートル、容積は124万立方メートルとか。従って奥州湖の貯水総量は東京ドーム115杯分と表すことができる。
ダムの水位を調製するゲートは
① ローラーゲート 2門
② ジェットフローゲート 1門
③ 地山設置型円形多段式ゲート 1門
と3種類の水門が設置されているが③の地山設置型円形多段式ゲートは傾斜角55°の水路に6段の扉体が貯水位に応じて伸縮する国内最大級の構造物とか。これがダムの遠景でも視認できた落水路の実態である。
更にランダム情報の欄には昭和28年に完成した石渕ダムの能力不足で胆沢ダムが新たに建設されたと説明されている。
現在この石渕ダムは胆沢ダムの湛水で形成された奥州湖の湖底に沈んでいる。
【石渕ダム】
石渕ダムは資料館内にも展示があり
戦後復興を目指し北上川水系に計画された五大ダムの一つとして当初は重力式コンクリートダムとして胆沢川に計画された多目的ダムでであった。しかし資材不足を補う新技術の開発に依り国内初のロックフィルダムとなっとのだとか。
資料館には胆沢ダムのジオラマ(立体模型)の展示もありダム左岸で河川流を維持する地山設置型円形多段式ゲートが忠実に造形されており下流部の望み大橋から
奥州湖の湖尻迄ダムとダム湖の全貌を容易に把握することができる。更に湖底に沈んでいる石渕ダムの位置も表示されているので見学は早々に切り上げて石渕ダムに近い石渕広場に向かうこととした。
Part.11は石渕広場と在りし日の石渕ダム
(00:00)
2023年08月18日
【ひめかゆの朝食会場】
翌朝は玄関脇の食堂が7:00~9:00の時間帯に朝食会場に指定されている。
宿泊棟の客室からは石渕の湯のロビー空間を横目に見て
正面に見える案内矢印に従って宴会場内の通路を抜けフロントロビーの片隅を通り抜ける遠路の館内移動でグルメハウスの食堂に向かう。
これはチェックイン時に荷物を携えて歩いた経路の折り返しで数時間後のチェックアウトでもう一度同じ経路を辿ることになるのだが
食堂入口の上部にはひめかゆおいしい広場の内照式看板に加えてガラス戸にも食堂 Dining Romの案内も掲示されている。
【食堂の内部】
食堂の内部は
浴場の規模から想像した程の広さはなく中央のテーブルにバイキングの料理が並びカウンターで仕切られた奥は厨房の空間に充てられている。
客席側は部屋毎に指定されたテーブルで食事を摂る方式となっている。卓上に予め料理が用意されているハーフバイキングを除きフルバイキングの会場では空席を自由に選択できる方式が主流であるがここでは何故か指定席となっており6組程の宿泊客が確認できた。
【バイキングの料理】
以下にバイキングで供された料理を紹介するが
先ずは生野菜類から。
左端奥のロースハムの手前は千切りキャベツで隣のレタス、ミニトマトの生野菜に
湯通ししたブロッコリーが並ぶ。
次は朝食定番の厚焼玉子、しそ巻、
沢庵の皿の先に小振りに切り分けた鯖と鮭の焼魚と鶏の唐揚げが続き
きんぴら牛蒡と小粒の硬い梅干し、漬物に小鉢に分けられたたらこ、カップ納豆に加えて
山芋のとろろと
きのこ汁も用意されている。
因みにこのきのこ汁は決して朝食に不可欠の味噌汁ではない。その訳は後程。
きのこ汁の脇には大型のジャーで保温されるご飯のコーナーとなっており料理テーブルの裏側へ回り込むとトースターを備えるパンコーナーに
クロワッサンとバターやジャムのスプレッド類が供されている。
パンコーナーの隣は何と!保温皿に入ったカレーと根菜類の和風煮物。最近朝食でもレギュラーとなったカレーはスープ類と同様に蓋付保温容器で供されるのが一般的だがここでは開放的な平皿である。お玉は用意されているが掬い辛くはないのだろうかと思いちょっと心配。
隣に並ぶ本皿はベーコンとウィンナソーセージで
その先は和食に不可欠の肉じゃがが供され
その隣は温泉卵とヨーグルトが並ぶ。取り分け用の小鉢を備えたヨーグルトには産地名と思われる岩手県北部の山間地である岩泉の表記があり県内産を主張している様に見える。
料理テーブルを一周して戻った生野菜のサラダコーナーの裏側はパイナップルと柑橘類のフルーツが供されている。
料理を供するテーブルとは離れた厨房との隔壁面には
冷水やお茶を供する給湯器を備える飲料コーナーがあり
コーヒーマシンの他に
牛乳と2種のジュースも用意されている。
【取り分けた料理】
色々ある中で取分けた料理とご飯。
先にも述べたが白米に必須と思われたきのこ汁を持参して席に着いた直後に厨房から有無を言わさず供された味噌汁は想定外でダブル汁物の仕様となってしまった。ま、味噌汁と醤油汁の違いはあるんだけど…。
仕切りがついた皿に取り分けたのはしそ巻きと一切れの沢庵に白米ご飯に濃い目の味付けでアクセントを加えるきんぴら牛蒡は欠かせない。他に厚焼玉子、鯖と鮭の焼魚2種、ウインナに煮物は人参、筍、がんも、玉蒟蒻、椎茸を一つづつ。
納豆とたらこの小鉢も加えて生野菜のサラダはキャベツとレタスに彩りのミニトマト添えに胡麻ドレッシングの風味で戴く。
強制配布の味噌汁と被ってしまった汁物のきのこ汁は舞茸や平茸に長葱を加えた具材を醤油味の薄味に仕立てたもので濃い目の所謂田舎風とされるきのこ汁とは一線を画している。
これらの料理をお伴に白米ご飯を戴いた。
食後にはデザートのフルーツを取り分けグラス一杯の牛乳も飲み朝食を終えた。
【チェックアウト迄】
朝食を済ませた8:00過ぎは一息休憩した後にチェックアウトに向けて荷物の取り纏めや身繕いに充てる時間帯であるが温泉浴場が開いていれば個人的には人気が途絶えて貸切状態で施設を独占できる絶好の入浴機会である。
今回も部屋に戻って寛いだ後に石渕の湯に向い無人状態の番所の湯の露天風呂で暫し締め括りの入浴を楽しんだが屋内の浴場に戻ると泉宿の朝にしては違和感を禁じ得ない両手で数える程の日帰り客の喧騒が飛交う光景が展開されており早々に脱衣棚に預けていた浴衣を纏って退散した。
10:00前から訪れる日帰り入浴客は地元民と思われる年配層が主体で地元に根付いた温泉施設と思われる。
【チェックアウト】
チェックアウトで清算した宿泊費用は2食付のスタンダードプランの基本料金¥11,400に入湯税¥150を加えた¥11,550であるが全国旅行支援で¥2,280の割引が適用された結果¥9,270であった。
これとは別に先にも述べた額面¥2,000のいわて応援の電子クーポンを活用し夕食時の冷酒代¥1,200に加えて残額は売店で土産物を購入して帰途に就いた。
【終章】
焼石クアパークひめかゆは多くの地元民が訪れる温泉施設であるが設立当初は胆沢町営のリゾート指向でプール施設を併設する日帰り入浴施設であったと推察できる。平成の市町合併の過程で町営施設は民営化される過程で宴会場や宿泊棟の拡張が為されたのではないだろうか。現在維持されている温泉浴場は日帰り客で賑わっているがプール施設は永らく休止されている様子である。嘗ては家族連れのリゾート需要を指向した施設と思われるが少子化が進む社会情勢から何れは廃止の予兆を感じる。
2本の源泉井戸を有する施設は今後も温泉宿としての営業を続けて欲しいと思う。
焼石クアパークひめかゆの部 完
焼石クアパークひめかゆの部 完
Part.10は胆沢ダムと奥州湖に関する追加記事
(00:00)
2023年08月11日
【ひめかゆの食事】
ひめかゆの宿泊客には宴会場の個室で夕食が供され翌朝はグルメハウスの食堂に用意されたバイキング型式の食事となる。
【夕食】
チェックイン時に選択した夕食時間に農村ふれあいセンターとされる宴会場に指定された個室に向かうと
既に和食膳の幾つかの料理が並べられていた。
中央に配置された小鉢の集まりは前菜の類で左奥の固形燃料で炊く小さな羽釜はご飯もの、右奥は鍋物であろう。
席に着いて先ず選んだ飲物は宮城県産でお馴染み一ノ蔵の冷酒である。
冷酒を待ち乍ら添付の献立(品書き)に目を通す。末尾に料理長の名前は見当たらないが宿泊当日の日付が記載されているのは目新しい。
今迄経験してきた多数の宿では月単位で料理を管理する都合か献立も〇年〇月と月迄の記載に留められており当日の日にちを記した献立は記憶に残る範囲で初めての遭遇である。
然し良く考えてみればPC等に料理名を登録しデータベース化しておけば日毎の献立を編集し印刷することは比較的容易な手法であろうし既にこの業界向けに献立作成アプリケーションが開発されているのかも知れない。
卓上中央に配置された小鉢類は献立の先頭にある五品の前菜と理解できる。
品書きの順番とは異なるが画面で分り易い月形の細長い鉢はふき節煮と細竹の南蛮焼きでその手前のもみじ葉を象った小鉢は宇類の黄味酢キャビア添えである。
その左奥は赤ごごみ胡麻和えと記されているが赤こごみではないのだろうか。赤こごみは良く知られている緑色のこごみよりコクのある風味が特徴であるらしい。
最奥の丸鉢は二段加工された縁の形状から蓋付小鉢に見えるが浅月(アサツキ)の辛子味噌酢、右隣りの梅花形の小鉢はあまどころのばっけ(フキノトウ)味噌和えである。あまどころ(甘野老)も初めて知るが春先に出る若芽が美味の山菜とか。
五品の前菜はいずれも山菜が主役で山峡の宿で迎える春を演出している。
造里と記された刺身は鮪と鰤に姫神サーモンの三種盛合せ。姫神サーモンは簡単に言えば岩手山の伏流水で養殖されるニジマスで養殖故に寄生虫の心配がないのだとか。
コンロに載る蓋付鍋は岩手清流ファームのロース陶板焼きとされている。献立の品書きだけでは何のロースだか不明だが
頃合を見て蓋を取ると豚のロース肉と判明する。産地の説明からこちらも岩手県産の食材で
付け合せのシメジや野菜と共に胡麻ポン酢味で戴く。
岩手県は一関市を中心に餅文化が普及している地域で少し離れた奥州市の胆沢地区でも郷土料理として餅が供される。その名はじゅうね餅。宮城県ではじゅうねん餅の呼称が一般的だが岩手ではじゅうね餅、青森に行くとじゅね餅と更に短縮されるらしい。じゅうねんとはエゴマの実ので要はえごまを摺り下ろした汁味の餅である。
献立の中央に記された餅料理は凌ぎの位置付けであろうか。凌ぎにしてはかなりの重量物と感じるのは筆者だけであろうか。
じゅうね餅に先立って運ばれた揚物は海老と筍、山菜のコゴミの天ぷらの篭盛りで添付の抹茶塩で戴く。
揚げ物の次に記載されている岩魚の塩焼きも揚物より前に運ばれていた。この岩魚も岩手県内の養殖場の産品と思われるがはじかみの他に若竹焼の添え物が季節感を演出しており厚い外皮を剝いた柔らかな芯をおいしく戴き
岩魚も頭からかぶり付き塩で固められた尾鰭以外を完食した。
焼物の次にある強肴(しいざかな)は通常メイン料理かそれに準ずるものであるが前沢牛炙りユッケ風一口寿司とされる品は文字通り一口サイズの海苔巻き寿司でこれこそ凌ぎに該当する一品で強肴の位置付けは無理があると感じる。実際に餅料理や揚物に先立ち焼物の次に供されることからも実質的に凌ぎの役割を果たしている。
通常献立の品書きは供される順に従って記され賞味する順序を示唆するものと思うが今回はこの常識が当てはまらない様である。但し本稿では従来と変わらず品書の順序通りに紹介しているので食事の流れが解り辛いかも知れないがご容赦の程。
この一口寿司は海苔でくるりと巻いて召上ってくださいとの案内に従って手巻き寿司よろしく巻物状に成形して戴いたが中々の美味であった。
食事は山菜釜飯と香の物とされている。釜飯は着席前から卓上に鎮座している。炊き上りには15分を要するとのことで席に着くと直ちに固形燃料に着火される。燃料が尽きる頃が丁度炊き上りということらしい。
羽釜から炊き込み飯を茶碗に取り分けて小皿の漬物と
頃合を見計らって運ばれた具沢山の山菜汁と共に戴く。
最後は苺プチサンドのデザートでひめかゆの宴を終える。
Part.9はひめかゆの朝食
(00:00)
2023年08月04日
【天沢の湯の浴室】
赤壁が独特のアーチを通って入った浴室は右側手前にサウナ室と冷水槽が並んでおり
その奥の壁面に7基と
左手前に3期のシャワー栓を備える洗い場となっている。
浴室内は換気能力が不足気味で右奥の画面は湯気でぼやけているが御容赦の程。
洗い場の湯水混合栓は壁面に外付けされた配管に接続されておりこの配管は浴室いる口を跨いで右奥の洗い場迄繋がっている。
浴室内の給湯配管は通常壁面内に設置されるものだが配管詰まりが生じやすい温泉施設では詰まりかけた旧来の配管を放棄して外付け配管を新設する例は今までに何度か経験している。天沢の湯でもこの様なリニューアル(改造工事)が実施されたと思われる。
左手前の洗い場の先は外壁窓に沿って奥の壁面まで続く大きな浴槽の設えがある。
この浴槽の洗い場側はS字型の曲線で仕切られ黒い縁石の左端部には切り欠きが見えるがこの部分からの越流は認めず縁石の曲線に沿う排水溝は専ら洗い場からの排水を担っていた。
天沢の湯の浴槽は左手奥のコーナー部に加えて浴槽中央に配置された島状の台座の二箇所の湯口から給湯されている。
先に述べた通り浴槽は循環装置に繋がっているのでどちらかが源泉口で他方は循環湯口と思われるが残念ながら特定することはできなかった。
天沢の湯は多数の日帰り客で賑わっており夜は21:00終了に翌朝は10:00開始で宿泊者の写真撮影が可能な時間も限られていた。従って極めて残念ではあるが僅かな画像の紹介に留まらざるを得ない。
【源泉の成分表】
先にも触れたがひめかゆは2本の源泉を有しており以下はその概要を泉質表示の掲示から抜粋したものである。
①天沢の湯
分析日: 令和2年11月
源泉名: 焼石岳温泉ヒメカ湯新源泉
泉質: ナトリウム-塩化物·炭酸水素塩泉(高張性中性高温泉)
泉温: 源泉: 70.2℃ 使用位置: 42℃
湧出量: 98リットル/分(掘削·動力揚湯)
pH値: 7.3
②石渕の湯·番所の湯
分析日: 平成29年1月
源泉名: 焼石岳温泉(ヒメカ湯)
泉質: 含硫黄-ナトリウム-塩化物泉(高張性中性高温泉)
泉温: 64.7℃
pH値: 7.0
先ず天沢の湯の表示はラミネート加工紙を壁面にピン止めした簡素なものだが石渕の湯では木枠の額縁に収めて掲出されている。
源泉の名称から
天沢の湯の「焼石岳温泉ヒメカ湯新源泉」は
石渕の湯の「焼石岳温泉(ヒメカ湯)」より新しい源泉と理解できる。新源泉は掘削した源泉井戸からの動力揚湯で汲み上げる毎分98リットルの湯量は常に比較対象としている一般家庭で200リットル程の浴槽を2分で満たす能力であるが石渕の湯の掲示にはこの項目が見当たらず湧出量や揚湯方法は不明である。
天沢の湯の温泉成分を見ると温泉1Kg中の陽イオンはナトリウムイオン(Na+)の6109㎎に続くカリウムイオン(K+)96.6㎎、カルシウムイオン(Ca++)44.2㎎が陰イオンでは炭酸水素イオン(HCO3-)6190㎎と塩素イオン(Cl-)6093㎎が主たる成分でナトリウム-塩化物·炭酸水素塩泉の泉質となっている。
一方石渕の湯の成分は陽イオンがナトリウムイオン(Na+)5893㎎、カリウムイオン(K+)64.7㎎、カルシウムイオン(Ca++)51.4㎎で陰イオンは塩素イオン(Cl-)7995㎎、炭酸水素イオン(HCO3-)2294㎎と天沢の湯の源泉と類似している。
遊離成分の硫化水素(H2S)3.7㎎の含有量が異なり含硫黄-ナトリウム-塩化物泉の泉質名の根拠となっている。
因みに天沢の湯に表示された硫化水素(H2S)0.1㎎以下は実質的に含有量ゼロに相当するが含硫黄泉とされる石渕の湯でも腐臭に類似する独特の硫黄臭を感じることはなかった。これは硫黄成分の含有量が少な目であることに加えて後述する温泉浴槽の循環濾過システムと加温や滅菌剤投入に伴う減衰効果に依るものではないだろうか。
両者の浴槽共入浴時にすべすべ感があるのは炭酸水素イオン量の多さ故であろう。
成分に影響を与える項目を見ると
天沢の湯では
【加水】源泉の温度が高いため加水しています
【加温】循環ろ過装置を使用し貯湯槽を有するため衛生管理の目的で……(以降に記載されているであろう加温云々?の文言はレジオネラ検査済証に隠されている)
【循環ろ過】衛生管理のため循環ろ過装置を使用しています
【消毒】衛生管理のため塩素系薬剤を使用しています
とあり
石渕の湯には
〇源泉の温度が高いので加水しています
〇入浴に適した温度に保つため加温減温しています
〇温泉資源の保護と衛生管理のため循環ろ過装置を使用しています
〇衛生管理のため塩素系薬剤を使用しています
と記載されている。
両者で表現は異なっているが何れも源泉掛流しではなく加水、加温、循環濾過に滅菌剤を添加する循環浴槽である。
【推察に基づく仮説: ひめかゆの入浴施設の変遷】
既に紹介してきた様に現在の奥州市成立以前の胆沢町政時代に国の振興補助策を活用して建設した町営のグルメ施設が原点と思われる。奥州市となった後の民営化で増築された様に見える複雑な館内構造に加えて天沢の湯の源泉が後に増築されたであろう石渕の湯より新しい事実が判明したことからひめかゆの入浴施設の変遷が朧げに視えてくる。飽くまでも推察に基づく仮設ではあるが。
町営施設の当時は先にも見た館内図②に示された「ゆうゆプラザひめかゆ」に「グルメハウス」の食堂部分を加えた施設であったと思われる。この時代は町民にリゾート気分の提供が主体で水着着用で楽しめる男女共用のプール施設とプール上りに体を温める天沢の湯の入浴施設に供食機能のグルメハウスが付帯する構成が想像される。
現在の天沢の湯が民営化後に増設されたと思われる宿泊棟側の石渕の湯よりも新しい源泉であることから当時の天沢の湯は沸かし湯の銭湯機能であった可能性が浮上する。
館内図②で「農村ふれあいセンター」と表記がある宴会場の部分は町営施設の時代にあったものか不明確だが建物の構造からはグルメハウスに近接した位置に後補されたものに見える。
その後奥州市へ合併の後に町営施設の存立基盤を失い民営施設に移行する過程か移行の後に宿泊棟に加えて温泉を掘り当てて石渕の湯が開湯しこれに対応する為に宴会宿泊専用玄関となるひめかゆほっと館を増設した経緯が想像できる。この時期に宴会場を増設した経緯も容易に想像できる。
更に石渕の湯の開湯後に新たな温泉井戸を掘削し天沢の湯に温泉が給湯されたのではないだろうか。先に見た天沢の湯の浴室壁面に外付けされた給湯配管が浴室施設の変遷を物語っている。
且つては地域町民のリゾート施設として設立されたであろうプール施設が休業中ではあるが日帰り温泉施設の天沢の湯は地域の温泉施設として千客万来の賑わいを見せている。
最後になったが天沢の湯の「天沢」はひめかゆが所在する奥州市胆沢若柳天沢52-7の字名に由来し石渕の湯は天沢より胆沢川の上流に嘗て存在した石渕ダムからやはり地名に因む命名であろう。後に触れる積りだが現在石渕ダムの遺構はより大規模な胆沢ダムの構築で出現した奥州湖の湖底に眠っている。
Part.8はひめかゆの食事
(00:00)
2023年07月28日
【①天沢の湯】
既に館内図で見た通り客室棟から向かう天沢の湯は日帰りセンター側にあり一旦フロントロビー迄戻る経路を辿ることになる。
ロビー手前のフロントカウンター側高からい天井のロビー空間を縦断した先の突当りで
進路が左側の上り階段と右手の下り階段に二分される。
階段を昇る2F部分は日帰り客用の休憩室だがこの画面は日帰り入浴終了後の撮影で閉鎖されていた。
階段を下った1Fが天沢の湯で
左手に男湯の青暖簾と
女湯の赤暖簾が男女別各々の浴場入口である。
青暖簾を潜った先は僅かな踏込み空間の奥にお風呂入口とプール休業中と表示のある2枚の扉が控えている。扉の上部は隔壁をが省略された簡易的な仕様のパーティションに設置されていることを憶えていて欲しい。どうやらこの隔壁と2枚の扉は後付けで設置された様である。
休業中のプール施設は後廻しにしてお風呂入口の扉を開いた
内部は脱衣室の設えで
左側の壁面には4基の洗面台が配置されており
その奥はトイレ設備の駅面に館内電話や給水器、扇風機、体重計等が配置されている。
入口扉の右脇に並ぶ鍵付きの大型ロッカーは多分に日帰り客を意識した設備に見えるがロッカーの背後にはパーティションより更に簡易な隔壁が見えている。
ロッカーの奥側コーナー部は簡易な隔壁が途絶えた空間がありここを覗くと
建物本来と思われる隔壁に設置された両開き扉が現れる。この先は水着着用の掲示は新しめだが扉上部の表示は文字が消えかかった年代物で辛うじて「バーディゾーン入口」と読める。即ちこの奥が休業中のプール施設で画面の右方向は先にパスした
簡易扉のプール入口に繋がっている。
扉を押し開けてバーディゾーンを覗くと全ての照明が落とされた静寂な空間で外光が射す左手奥に導く通路には脚立が立掛けらた風景は長い期間に渡る休業状態が推察される。
ロッカーコーナーから左に伸びる壁面の中央に置かれた
浴室入口の赤壁は先に石渕の湯でも目にした共通の意匠で未使用の脱衣棚の籐籠が立て掛けられているのも同じ管理手法である。
Part.7は天沢の湯の浴室とひめかゆの温泉泉質
(00:00)
2023年07月21日
【露天風呂: 番所の湯】
内湯浴槽の左手に設置されている手摺りに沿って外壁方向に進んだ先に露天風呂に通じるガラス戸がある。上の画面はこの出入口から浴室内を振返った光景。
ガラス戸の外は露天風呂の空間で女性湯との隔壁を跨いで覆う小屋掛けの下に半円形の浴槽が控えている。
これは浴槽から石渕の湯の浴室方向の景色でそこそこの距離があり経路の途中に置かれた竹垣は両方の浴槽からの視線を遮る目隠しであろうか。
浴槽の最奥となる位置に
石積みの湯口があり2本の塩ビパイプが配置されている。
画面で左側の配管は湯面上に開口しており内湯の浴槽でも見たタオルを袋状に縫い合わせた様に見える簡易なフィルターが設置されている。もう一方の開口は湯面すれすれの浴槽内に配置されておりフィルターの装備はない。
この様な構造から簡易フィルターを被せた湯口は源泉の給湯口で湯面下は既に濾過済みの循環湯の給湯口と思われる。
仔細に見ると布製フィルターには黄色い付着物が確認できそれなりの効果があるのだろう。
但しこの循環浴槽で温泉湯を循環装置に吸い上げる吸湯口を見つけることはできなかった。給湯口と吸湯口は換水効率の観点から通常浴槽の反対側の配置が理想的ではあるが湯口の石積みに隠された底部にあるのかも知れない。
浴槽の全容を見ても判るが縁からの越流痕が見当たらないことから
浴槽内のどこかに循環装置に繋がる吸湯口は間違いなく存在する筈であるがその所在を確認することはできなかった。
露天の空間が外界に接する部分は新しめの竹垣で囲まれて宿泊棟等の隣接施設からの視線を遮断しており
好天に恵まれた青空と
小屋掛けを見上げながらの入浴となる。
【シャンプーバー】
本来なら浴場紹介に先立って触れるべきであったが失念していたので追記しておく。
宿泊棟に入った直後で先に紹介した浴衣コーナーよりも手前の廊下に宿泊者限定サービスとされるシャンプーバーが設置されている。バーと名乗ってはいるがシャンプーとリンス各々1種限定で脇に用意された小さなバスケットに入れて浴場迄持参し使用後はこの位置に戻す方式となっている。
嘗て東山温泉瀧の湯(2019.11.8)で経験したシャンプーバーは女性向けに多種の銘柄を取り揃えるバー形式に較べると華やかさには欠けるが何か宿泊者限定の特別感をくすぐられるサービスである。で、試しに石渕の湯初めての入浴で利用したがバスケットで携行する持ち帰りの荷物感に負担を感じた。云うまでもないが浴室の洗い場にはシャンプー、リンスとボディソープ類が標準装備で用意されている。
Part.5は日帰りセンター側にある天沢の湯
(00:00)
2023年07月14日
【ひめかゆの温泉施設】
ひめかゆの温泉施設は以下の二箇所に設置されており各々異なる2種の源泉が注がれている。
①天沢(あまざわ)の湯……「ゆうゆプラザひめかゆ」内の入浴施設で日帰り温泉施設の色彩が強くサウナを備える男女別の浴場に接して水着着用が前提の男女共用プール施設を併設しているが訪問時にプール施設部分は閉鎖されていた。浴場の利用時間は10:00(宿泊者は15:00)~21:00(サウナは20:00迄)
②石渕の湯·番所の湯……「ひめかゆほっと館」で宿泊棟に隣接する浴場で併設する露天風呂は番所の湯と称しているが源泉は同じ焼石岳温泉(ヒメカ湯)である。訪問時には閉鎖されていた宴会·宿泊専用入口のロビーが湯上り休憩所となっている。日帰り入浴は10:00~15:00、宿泊者は16:00~23:00と6:00~チェックアウト迄。日帰り入浴が15:00迄に制限されているのは宿泊客の利用を優先する措置と思われるが宿泊時の翌朝は9:00を過ぎると多数の日帰り客が入場してきたのは想定外であった。何か変則的な運営があったのだろうか。
【②石渕の湯と番所の湯】
二箇所の温泉浴場から初めに向かったのは客室に近く日帰り入浴が終了した時間帯でもあった石渕の湯。
石渕の湯の入口は館内図②で見た宴会·宿泊専用入口のロビー空間にあり男女別の暖簾が並んで懸けられている。
ロビーには浴室に背を向けて休憩用のソファーが配置されTVの用意もあるが広い空間を持て余している様に観える。TVの奥に見える階段からこのロビー部分は2層構造であるらしい。
画面右に写るガラス窓を介した中庭は
フロントから宴会場の廊下を進んで宿泊棟に向かう通路にも挟まれており
この通路側から中庭越しにロビーの建物を見上げると2階建ての推測が確定する。とにかく館内の構造は極めて複雑である。
【脱衣室】
休憩所に転用されているロビーから青暖簾を潜って入る男湯の浴場は
脱衣室の右手に脱衣棚が並び
未使用の脱衣籠は棚の中で斜めに立て掛けられて待機しているのは初めて見る独特の管理方法である。
脱衣棚の隔壁を介した中央部には籐製の縁台が配置されているが隔壁に掲出された告知を見ると5月8日(即ち連休明け)から日帰り入浴及び宴会客はゆうゆプラザ側の天沢の湯に限定され石渕の湯の利用は不可になるとのことである。
この文言通りならば石渕の湯と併設する露天風呂の番所の湯は宿泊者専用の温泉施設となる筈。
左側の壁面は4基の洗面台が並び
その奥で赤い壁に囲まれた二重のガラス戸が
浴室への入口となっている。
【内湯の浴室】
二重のガラス戸を通った先の浴室は
手前のタイル床の奥の浴室外壁側に浴槽の設えが見える。
この浴槽は外壁二面のガラス壁に接しており入口側はS字曲線の意匠が採り入れられている。
入口の左脇に配置された湯水栓付きの小さな水槽は掛け湯の提供であろうか。隣合うシャワーブースと共にちょっと疑問な設備と感じる。
浴室の右手は洗い場に充てられており7基のシャワー栓がL字型に並んでいるが
入口に近い2基に限って設置された隣との隔壁は珍しい。
明るい外景が望める時間帯は曲線を配する浴槽に趣きを感じる。
二面の外壁が交わるコーナー部にある湯口を覆う白い布は湯の華等の夾雑物を湯口で除去する簡易的なフィルター装置であろうか。以降もひめかゆの温泉浴槽では頻繁に見掛けている。
但しこの浴槽はコーナー部の湯口とは別に外壁側の浴槽壁面の開口からも
給湯されており源泉給湯に加えて循環濾過に依る温泉水再利用装置が稼働していると思われる。
1枚上の写真は夜間の撮影で循環装置の休止状態で配管内に溜った気泡が漏れ出ていると思われ翌朝に撮影した画面では給湯に伴う波紋が確認できる。
先に結論だけを述べておくがひめかゆの二箇所の温泉施設はいずれも加水、加温、殺菌剤投入を伴う循環装置が稼働する浴槽である。詳細は後の泉質の項に譲る。
Part.5は露天風呂の番所の湯
(00:00)
2023年07月07日
【ベッド付和洋室の客室】
ベッド付の客室は宿泊棟の奥に配置されているらしくフロントからはほぼとなる最長の経路で客室に辿り着いた。
ドアを開いた室内は白を基調とした明るい雰囲気で
踏込みとするには広めな手前の洋間には右手に洗面台とクローゼットが並び
洗面台の脇に置かれたグラスケースと電気ケトルの手前には
小型の冷蔵庫が配置されている。
洋間の左側はトイレの設えで
室内は広めの空間でリモコン操作が可能な洗浄便座の装備に加えて
手洗い用の湯水混合水栓を備えた流し台にペーパータオルの用意が有難い。
一般家庭では水洗タンクの給水に付随する手洗い機能が広く普及しているが宿泊施設や公共トイレでは何故か採用例が少なく室外での手洗いを余儀なくされ個室の出入時のドアの把手や施錠装置への接触が気になることがある。
ここでも水洗タンク上部の手洗い給水機能は省略されているが個室内で手洗いが完了するので気遣いが大きく緩和される。
手前の洋間から垣間見える奥の部屋は畳敷きの和室で
境目の洋間側にあるクローゼットは衣類ハンガーのみの用意。
和室の左手はツイン仕様のベッド上に用意された浴衣とタオル類のアメニティを収める館内移動用の手提げバッグが有難い。
【余談: 館内専用の手提げバッグ】
近年は少なからぬ温泉宿で入浴に必要なタオルやアメニティの類に加えて部屋の鍵も浴場への往復に携行する必要があり特に浴場から客室へ戻る道筋は洗面台で絞ったものの濡れた儘のフェイスタオルを片手に全身の水分を拭き取り湿り気の多いバスタオルは肩に掛けた移動を余儀なくされていたがこれらの品を一括して収納できるバッグや籠の提供は極めて有難いサービスである。特に個人的な取材の都合で常にスタンバイ状態のデジカメ携行が必須の身ではタオル類を放り込んで身軽になれる携行バッグは貴重な存在である。
但しこれらの大多数はバスタオルと同じ館内利用に限定されており持ち帰りの行為は厳に慎まれる明確なルール違反である。
【客室内の続き】
和室に配置された2台のベッド間には館内電話と電気スタンドを載せたナイトテーブルが配置されているがアナログの目覚し時計が一際目を引く存在である。
窓の右手に設置された灯油燃料と思われる暖房機は室温維持の為既に稼働中でその手前に小さな座卓と座椅子のセットが当面の居住空間となる。
同じ窓側の壁面にはエアコンの装備もあるが暖房機が稼働する時期に出番はなさそうである。
座卓から入口側洋間との境に置かれたテレビは座椅子やベッド上から見える角度に調整されている。
座卓には茶櫃と茶菓子の他に館内案内のバインダーとテレビのリモコンにカメムシ侵入注意のお知らせが並べられている。
茶櫃の中は茶道具と煎茶のティーバッグの用意があり
洗面台脇の電気ケトルで沸かした湯でお茶を淹れ温泉饅頭の甘味で血糖値を補給し温泉の入浴に備えた。
【第4弾岩手旅応援クーポンの利用手続き】
以前の岩手旅応援クーポンとは全く異なる第4弾の利用に戸惑い手続きを先延ばしにした事は既に述べたが部屋に落ち着き改めて利用手続きに取り掛かった。
先ずは電子クーポンの欄にあるiPhome用又はAndroid用のQRコードをスマホに読み取ってregion PAYのアプリをダウンロードする。インストールが完了したらregion PAYを起動し地域を追加にタッチして現れる地域一覧から「いわて応援クーポン」を選んで追加するとregion PAYの基本画面にいわて応援クーポンのボタンが追加されこのボタンを押すと支払いとチャージの二つのボタンが表示される。チャージボタンを押して紙クーポン欄のQRコードを読み込ませればクーポン金額の¥2000がチャージされ電子クーポンとなり以降は支払いボタンから利用できる。なお読み取った後の紙クーポンは利用済の紙切れとなることは言う迄もない。
ひめかゆの館内はWi-Fi環境が整っているので客室内でのネット接続に支障はなくアプリのダウンロードやチャージの操作も円滑であった。
因みにregion PAYでは岩手県の他に東京、大阪、神奈川、静岡、茨城、栃木、群馬、千葉、新潟、山梨、三重、滋賀、奈良、和歌山、島根、広島、山口、徳島、福岡、佐賀、長崎、熊本、宮崎、鹿児島、沖縄各都府県の追加が可能である。
Part.4はひめかゆの温泉施設
(00:00)