2020年02月14日

【大浴場の浴室】
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  浴室入口
 二重のガラス戸を通って浴室に入ると
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  サウナ室
正面の奥にサウナ室の扉が見えるが当日は改修準備で使用停止との掲示があった。施錠の無い内部を覗くと木製ベンチを備えた普通の造りだが川側の外壁に窓が開口し外景を採り込んでいるのが構造的な特徴となっている。
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  大浴場の浴槽
浴室は入口から右奥に拡がり外壁のガラス窓側に二つの浴槽がありガラス越しの窓外には露天風呂の浴槽も見えている。
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  洗い場
 ガラス窓の対面となる脱衣室側の壁面は浴槽が続く奥の壁面まで総数20基の混合シャワー栓を備えた洗い場が並んでいる。混合栓の数は多いが故障中のものや何箇所かは家庭用のシャワー栓に置き換えられて湯水の吐出量が極端に少ないものも見受けられた。
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  円形浴槽
 内湯の浴場は手前に円形に成形された浴槽が置かれ窓ガラスには「ぬるめ」の青文字が掲示されている。
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  大浴槽
奥は中央に湯口の四角い構造物を配した長方形の大浴槽でガラス窓の掲示は赤文字で「あつめ」となっている。
この大浴槽と円形浴槽は一見各々が独立した浴槽に見えるが
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  越流路
仔細に見ると窓側の切り欠き部分から大浴槽の越流が円形槽への流入路があり加えて両者の浴槽底部が開口で繋がる構造となっている。従って現状の円形浴槽は大浴槽に付随する温めの湯と位置づけられるが嘗ては異なる機能を発揮していた様子が窺える。そのヒントは先に掲載したBF階の案内図に隠されている。
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  BF階案内図
 内湯の部分に描かれた円形の浴槽には「泡風呂」の文字を黒塗りで抹消した痕跡が見えている。即ち円形の浴槽は嘗て泡風呂の機能を備えていたと思われるが何らかの理由でその機能が除かれて現在は「ぬるめ」の浴槽に甘んじているのではないだろうか。
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  大浴槽の湯口
 大浴槽に満たされる湯は中央の湯口から注がれ
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  大浴槽の底面
タイル張りの底面が見通せる程度の透明度を備えているがその底面には円形の排湯口らしき設備が幾つも見えている。
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  耐熱塩ビ配管
また浴槽最奥の窓側で露天風呂への出入口の脇の位置には茶色の細い耐熱塩ビ管が浴槽内部に引き込まれておりその端部に手を添えるとここからも湯が注入されている。
 内湯の円形槽には独自の湯口が存在せず大浴槽とは底部と表面の越流路で繋がっているので温泉の給湯に関しては一体構造で大浴槽には二つの異なる給湯口と底面排湯口の存在から循環ろ過装置の稼働が窺える。
後に紹介する泉質表示には源泉掛流しと循環の併用と明記されているのでこの判断に間違いはない。
それでは二つある湯口のどちらが源泉の掛け流し口かと新たな疑問が生じるが目立たない存在の耐熱塩ビ配管の方ではないだろうか。判断理由は次の露天風呂の項に譲る。

【露天風呂】
 露天風呂は内湯浴室窓側の浴槽の縁沿いに最も奥まで進んだ外壁のガラス戸が出入口である。
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  露天風呂全景
出入口の扉から外に出ると岩風呂の露天浴槽に迎えられる。浴槽の一部は建物の軒先の保護範囲にあるがベランダ風の腰高壁で仕切られた川側は直接降雨降雪に晒される空間となっている。壁上の装飾高欄の変形が景色的には残念な存在に見える。庇の奥に見える白壁の部分は改修準備で使用中止中の窓付きサウナ室である。
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 露天浴槽
露天の浴槽に目立った湯口は認めないが
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  塩ビ管の湯口
出入口からガラス窓の外壁を這う耐熱塩ビ管が石組の隙間に沈んでおり湯が注がれている。
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  塩ビ配管
この配管を辿ると先に紹介した内湯大浴槽の塩ビ管給湯口の配管から分岐しており内湯と露天の両者へ共通の配湯システムとなっている。
従って源泉は塩ビ配管から給湯されているのではないだろうかと思う。さもなければ露天浴槽は専ら循環ろ過湯で満たされ源泉の恩恵に恵まれない残念な浴槽となってしまう。
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  露天風呂の外景
 露天風呂の外壁越しには松川が流れる広い河原の上流架かるこけし橋が見えている。

【泉質】
 脱衣室内に掲げられた温泉泉質の表示を見ると
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  源泉名
左上の源泉名は「遠刈田7号泉」で
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  泉質表示
泉質はナトリウム·カルシウム-硫酸塩·塩化物泉 低張性中性高温泉に小さな文字で旧泉質名の含塩化土類-芒硝泉が併記されている。
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  施設名
右上の施設名は「遠刈田ホテルさんさ亭」と旧施設の名称を留めている。
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  温泉の利用形態
更に下段に記載された利用形態の項目を見ると温度管理の為に高温時の加水と低温時の加熱に掛け流しと循環を併用し衛生管理上塩素系薬剤の使用が明記されている。
 源泉の給湯量を大幅に超過する大容量の浴槽では温泉湯を有効活用する為に循環再利用が行われているが衛生管理の観点から湯中の微細物を除去する濾過と滅菌作用を有する塩素剤の添加が必須となるので循環濾過と塩素剤使用は一体化したシステムとして運用されている。源泉の湧出量に依るので大量の湧出に恵まれる温泉の少なからぬ例外はあるが大規模な温泉浴槽では先ず循環濾過の稼働を疑って良いであろう。浴室内で塩素臭(プールのカルキ臭と同じ)を感じる場合は塩素剤滅菌が行われていると思って間違いはない。

Part.6はさんさ亭の食事



(00:00)

2020年02月07日

【さんさ亭の温泉浴場】
 前にも記した通り温泉浴場は本館上棟のBF階に配置されている。
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  BF大浴場の配置
男女別の大浴場はそれぞれ川側に露天風呂を備えている。BFの図面で見る男女の脱衣室や内湯部分の配置は線対象となっているが露天風呂の部分は浴槽の形等に差異が認められる。
 大浴場は深夜も利用可能で温泉好きには嬉しい措置だが翌朝9:30からは清掃時間に設定されているので朝食後の入浴は早めに切り上げる必要がある。また火曜日に限って清掃時間は9:00からとなっている。宿泊客が少ないであろう月曜日の翌朝に週一回の時間をかけた清掃を設定しているのであろう。
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  BFのエレベータ
 BF階に連絡する本館上棟のエレベーターで降りた
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  BFのエレベーターホール
ホール空間は右手が庭園の景観を望む全面ガラス張りで
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  給水サービス
隅のカウンターには湯上りの水分補給の為の冷水が用意されている。
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  浴場への通路
壁面の案内にある矢印に従って180°向きを変えガラス窓に沿って進むと
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  庭園の池
ガラス越しに池に泳ぐ鯉の姿が見え
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  大浴場の入口
暖簾を提げた大浴場の入口に行き当たる。
 男湯は「喜楽々(きらら)の湯」、女湯は「浮楽々(うらら)の湯」と館内案内に紹介されているが浴場入口は鶯色の暖簾に殿方と柿色暖簾のご婦人と小さな文字で識別されているがより目立つ行燈型の電照看板が男女の別を明示している。
肉眼では目立つ電照看板だが写真撮影では輝度が高過ぎて白飛びしてしまうのはいつものことである。

【男湯の内部】
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  男湯入口
 鶯色の暖簾を潜ると右手は
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  上がり框
館内履きのスリッパを脱ぐ板張りの上がり框があり履物収納棚の上には施錠できる貴重品用のロッカーが設置されているがスチールの塊は周囲の造りとは調和せず場違いな印象を受ける。

【脱衣室】
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  脱衣室
 上がり框から90度左に向きを変えた正面は木製のベンチを備えた脱衣室内の休憩所の設えで右手奥に脱衣棚が見えている。
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  浴室入口
正面左の奥は浴室に繋がるガラス戸の出入口があり
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  洗面台
その手前に仕切られた空間は洗面所の充てられおり湯水栓を備えた6基の洗面台が並んでいる。
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  休憩所と脱衣棚
休憩所から見える右奥の脱衣所は
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  脱衣棚
3段の棚木製に籐製の脱衣籠を配した開放型となっている。
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  脱衣籠
籠の総数は数えていないが80程であろう。

Part.5は浴室の内部



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2020年01月31日

【さんさ亭の宿泊プラン】
 今回大手予約サイトで確保したのは休前日が絶対お得と謳うウィークエンドスペシャルプランである。このプランはさんさ亭本館中の部屋の2食付単価が¥9504(税サービス料込)とされ紅葉前の閑散期ではあるが9月の連休中に一万円を切る設定は確かにお得と感じる。
更に今回は予約サイトに貯まったポイントの割引措置も活用したが詳細は後のチェックアウトの項で。

【チェックイン】
 フロントのチェックイン手続きで夕食の希望時間を問われ19:00を選択した。
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  食事の案内
この宿では客室迄係員に誘導される方式でその途中に食事会場や温泉浴場の位置が案内され部屋の鍵と食事案内に朝食券が渡される。
朝食はバイキングとのことで人数分の食事券がある。

【本館の4F】
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  本館中の4F
 通された客室は本館中の最上階4Fの412室であった。
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  本館中のエレベーター
部屋の目の前の山側には本館中のエレベーターが設置されているがこれは1Fのフロントロビー階と4Fの連絡に限られBFの温泉浴場に降りることはできない。
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  本館4Fの配置
先にも掲載した配置図に依ると4Fには川側に410~416の6室(414は欠番)の客室があり416室は広い空間を占めている様に見えるがその他の5室は面積的に類似の構造と思われる。
 因みに本館中から本館上へ連絡する通路の山側に417と418の小さな部屋が控えているがこれは客室には狭過ぎるので添乗員か或いは従業員用の設えではないだろうか。
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  山側の小部屋
本館上への連絡通路の山側左手壁面の奥に並んで見える2枚のドアがこの小部屋の入口である。
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  通路の川側
小部屋の入口近くに設けられた川側の窓外景色は明らかに2棟の建物を連結する通路部分であることを物語っている。画面の右側が本館中、左が本館上の建物である。
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  本館上のエレベーター
既に小部屋のの手前から見えていたが連絡通路を進むと本館上のエレベーターホールに行き当たる。このエレベーターは近接する階段と共にBFに移動できる限られた手段となっている。
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  本館上の廊下
エレベーターホール右手の奥は下流側に本館上の廊下が伸び右の川側に420~428の8室(824は欠番)の客室が並んでいる。

【本館 中の客室】
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  客室内
 本館中412室の客室は踏込みの先に畳敷きの通路が川側に大窓を開けた和室に導いている。
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  洗面室
通路の右は寝具を収める押入れで左側の引き戸の奥は
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  洗面台
2基の洗面台を備える広めの洗面室でその奥のサッシ戸の先は
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  バスルーム
バスルームとなっている。
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  トイレ
洗面台の背面のトイレの装備は暖房便座のみで最近では主流のシャワー洗浄機能の備えがないのはちょっと残念である。
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  客室
 畳の通路から部屋に入ると奥の窓側は障子の仕切りを挟んだ広縁の設えで
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  広縁の窓外
窓外には松川の景観が控えている。
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  松川の景観
この窓から松川の上流方向に目を向けると遠刈田温泉街を象徴するこけし橋の景色があるが何よりも橋の下流にコンクリートで何段にも固めた大規模な砂防施設の存在に強烈な印象を受ける。
 因みにここからは見えないがこけし橋の上流側にも同じ目的の土石流緩和施設が築かれており蔵王山塊から急傾斜を下る濁川と澄川の2筋が遠刈田温泉地区で合した松川の水流を抑制している。
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  松川
また画面左奥の対岸に茂る緑の中には「バーデン家壮鳳」の建物が見え隠れしている。
この412屋から望んだ時間と伴に変貌するこけし橋の景色は後に別項で紹介する。
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  広縁左側
 広縁部分左壁面の棚にはグラスケースと飲料の料金表が並んでおり棚下は冷蔵庫が配置されている。
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  広縁右壁面
広縁の右側壁面は姿見が設置され予備の座椅子や座布団が控えている。
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  室内
 広縁を除いた畳敷き部分の室内は二間半四方の12.5畳余裕十分の広さである。
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  床の間
 広縁に向かって右手の壁面は手前の入口側に腰高のクローゼットが嵌め込まれ板敷きの床面は荷物置き場となっている。広縁側の奥は広い間口の床の間に充てられているが不安定な位置に懸かる額装が唯一の装飾の殺風景な空間となっている。
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  床の間の額
額は地元遠刈田系こけしの伝統的な彩色模様を墨書の濃淡で現したもので作者の刻印も認められる。
因みに遠刈田のこけしは細身で寸胴な胴体が外見上の大きな特徴で頭部の髪形や目鼻立ちを象る黒色に加えて胴体に描く何段もの菊花模様の緑や赤色の色彩が鮮やかである。
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  クローゼット
クローゼットの両引き襖戸の中には
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  乱れ箱
浴衣や丹前を収めた乱れ箱にタオル類と歯ブラシも用意されている。浴衣は各種のサイズが用意され有り難い。画面ではフェイスタオルの下の黄色がバスタオルで右の紫色は濡れタオルを持ち運ぶポリ袋である
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  左壁面
 床の間に対峙する左側は何の設えもない単純な壁面で
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  テレビ台
 振り返った入口側壁面の右隅にはテレビの収納空間があり
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  テレビ台周り
棚の上下に金庫や館内電話等が集中配置されている。
 一通りの室内観察を終えて座卓に落ち着き
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  茶菓子
お茶と茶菓子を戴く。

【こけし橋の景色】
 ここで時間と伴に変貌するこけし橋の景色を紹介したい。
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  16:00頃
当日は台風の影響が残る気象状況で入室直後は明るさがありながら時々小雨が混じり視界が利かない曇り空であった。橋の袂の両側に橋名の由来である4基のこけしのモニュメントが見えている。
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  18:00頃
18:00頃になると空の明るさは残っているが橋にはナトリウム灯の照明が点灯する。橋上には明かりが五つ見えている。照明灯は計6基設置されており左から二番目と三番目の間に照明灯がもう1基ある筈だが故障している様子。
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  19:00頃
更に1時間経つと外景は闇に閉ざされオレンジの明かりが一際輝きを増し橋脚や川面の陰影が立体感を映し出している。
松川に架かるこけし橋は遠刈田温泉街を代表する建造物である。
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  翌朝9:30露天風呂から
こちらは翌朝のチェックアウト前にB1地階の露天風呂の外景に視座を変えたこけし橋。赤い塗装の橋桁はどこにでもある景色だが両側の袂に抱える4基のこけしモニュメントが遠刈田温泉街にあるこの橋の矜持である。

Part.4はさんさ亭の温泉浴場



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2020年01月24日

【さんさ亭の館内】
 既に紹介した通りさんさ亭の外観は上流側からげんぶ館、本館中、本館上の3棟が連なる比較的単純な造りに見えるがそれは客室が集まる2F以上の階層でフロントやロビーを始め種々の共有施設が配置された1Fはなかなか複雑な形となっている。
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  館内配置図
 客室に用意された館内配置図には1FとBF階の平面図が描かれている。
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  立面図
2F以上は立面図の表示でげんぶ館は1F~3Fの全館と本館中2Fの小宴会場を除き中と上の本館では各階が客室とされているが平面図は掲載されていない。

【1Fの構造】
 1Fにはフロントとロビーや売店、ラウンジにコンベンションホール、大宴会場、中宴会場の施設が集中している。
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  1F上流側平面図
この図は上流側のげんぶ館と本館中の部分で右端は本館上に連続している。
図面左側のげんぶ館は立面図には客室のみと表示されているが平面図ではクラブや会議室らしい空間の部分は明らかにげんぶ館の領域である。
右側の本館中は川側に置かれたラウンジと売店に通路を挟んだエレベータ迄が上階に伸びる客室棟の部分で玄関からフロントロビーにコンベンションホールを含む部分は別棟の拡張付加構造である。
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  フロントロビー棟
 本館上の4Fの窓越しに見下すフロントロビーの建物は切妻屋根を載せた2層構造で右下の庭園に開口する大窓の意匠が大きな特徴的な存在である。
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  庭園に下りる階段
窓外には庭園に下りる緑色の手摺りが特徴的な階段の設えも見えている。
更に屋根続きで連絡する奥の別棟の1Fはコンベンションホールの位置である。この棟は立面図の案内に客室のみの本館中2Fで唯一の例外に見えた小宴会場の施設と思われる。
 これらの建物に敢えて呼称を付けるならフロント部分はフロントロビー棟、2Fに小宴会場を戴せるコンベンションホール部分はコンベンション棟とすべきであろうか。
 これだけでも1Fは結構複雑な構造となっているが更に本館上の領域にも拡張構造がある。
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  1F下流側平面図
画面の左端は本館中のフロントロビーへ繋がっているが
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  本館上へ下る段差
連結部分の床面は6段程の高低差がある。本館上と称する建物だが川沿い傾斜地下流側に立地する故の事情と思われる。
本館上の1Fは基本的に宴会場が配置されBF~6Fを結ぶエレベーターが垂直移動の有力な手段となっているが大宴会場「蔵王」は本館上の建物より山側に大きく逸脱している。
大宴会場と宴会場に接する川側で説明のない空白部分は厨房であろうか。
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  大宴会場棟
この逸脱部を本館の上階から眺めると本館の外部に拡張された平屋の建物が確認できる。これは大宴会場棟とでもすべきであろうか。こちらもテラスから庭園に下りる階段の緑の手摺りが見えている。
 以上を総合すると1Fの構造は基本となる3棟(げんぶ館、本館中、本館上)の客室棟にフロントロビー棟とコンベンション棟、大宴会場棟が加わる大規模な施設で本館から張出したフロントロビー棟と大宴会場棟が庭園を囲む形となっている。


【BFの構造】
 館内配置図には地下階の平面図も掲載されている。
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  BFの浴場
この図から本館上の建物に限られたBF階の公共部分は全て男女別の大浴場となっていることが見て取れる。
右半分の川下側で説明がない空白部は何らかの管理施設の空間でありその位置から浴場への温泉給湯の関連設備が配置されているのではないだろうか。
詳細は後に述べるがさんさ亭の温泉は循環方式を併用しているのでこれらの設備機器を設置する場所の確保は必須である。
但しこのBF階は先に触れた様に実質的には地上階でもあるので資材搬入口の役割もある筈で一部は上階の厨房に連続的な機能を担っているのかも知れない。

【上層階の構造】
 館内配置図に2F~6F各階図面の掲載はなく客室階の配置の詳細は不明である。
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  本館4Fの配置
しかし客室ドアの内側に掲出された避難経路図から本館4Fの概要の把握が可能である。
先に紹介した1Fとの位置関係はフロントの裏側にある本館中のエレベーターと宴会場の入口に構える本館上のエレベーターを照らし合わせれば良い。
この図からもフロントとロビーや大宴会場は1Fや2Fに限定された別棟と理解できる。
本館の中と上の建物自体は松川の川側に客室を配し山側に通路とエレベーターを置く極めて分かり易い構造である。
2Fと3Fではこの図の左端に3階建てのげんぶ館の配置も描かれているのであろう。

Part.3は宿泊プランと客室



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2020年01月17日

【序章】
 2019年の夏は猛暑日が続く一方で列島各地で頻繁に豪雨や台風に見舞われ公共交通網にも大きな被害が生じた季節であった。
東北地方の仙台では9月に入ると暑さが一段落し紅葉の時季はまだまだ先だが夏場は旅に出ず家に籠っていたこともあって旅心をそそられ同行者との日程を調整した結果連休中の割安宿泊プランの温泉宿を見つけた。予約した宿は蔵王町遠刈田温泉の「旬樹庵さんさ亭」である。

【遠刈田温泉のさんさ亭】
 さんさ亭は遠刈田温泉街の中心部で松川に架かるこけし橋下流の川沿いに立地している。
遠刈田温泉さんさ亭位置図
ここは20数年以上前に一度宿泊した経験があり当時は新館の増築が竣工した直後であったと記憶している。以前の屋号は「遠刈田ホテルさんさ亭」であったがいつの間にか表題の「旬樹庵さんさ亭」に変わっていた。本文中では簡易に「さんさ亭」と表記する。
 近年は冬のスキーシーズンに遠刈田温泉地域の温泉付きペンションや民宿を利用しており既にコットンくらぶ湯宿飛鳥にペンションどんぐりは2回(1報2報)に渡って宿泊記を紹介しているが本格的な温泉宿は久し振りの訪問となった。

【旬樹庵とは】
 屋号に旬樹庵を冠する理由はネット情報で簡単に判明した。
旬樹庵は公式HPに依ると東京都港区芝に本社を置き旅館施設の経営に参画し再生を支援するブランド名で現在国内15館のグループ(執筆時点)とされている。

【宿泊施設のグループ化】
 この種の温泉旅館等の経営集団としては大江戸温泉物語グループ(全国34施設)や伊東園グループ(全国49施設)が高名な存在で東北地域では太平洋岸の宮城県女川から山形県鶴岡市の日本海側に跨る5施設を王将街道と自称する王将グループ、山形県内で蔵王温泉を中心に13施設を擁する高見屋グループも良く知られている。
因みに高見屋グループの一員となった「名湯舎創」の宿泊体験は既報の通りである。

【さんさ亭の外観と構造】
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  さんさ亭外観
 さんさ亭は松川左岸にあり山側の広い駐車場から見ると
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  げんぶ館
上流側に黄色い外壁を纏う3層構造のげんぶ館の建物の下流側に
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  本館中と上
大きな玄関ホールが張出している4層の本館中(なか)とその奥に7層(B1~6F)の本館上(うえ)の白壁の2棟が連なっている。
げんぶ館に本館中と本館上の3棟の館内は各階が連結されていて自由に往来できるが各々建設時期は異なる。げんぶ館は旧館の位置付けの古めの建物で本館上が3棟の中では最新と思われ宿泊プランにもそれなりの料金差が認められる。
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  川側の外観
3棟の建物が並ぶ松川の対岸にこれを望むビューポイントは見当たらず写真の撮影は叶わなかったが部屋に配置された館内案内に建築パースと思われる想像図が含まれていた。
これを見ると3棟の構造や位置関係が明瞭で下流側の下り傾斜に建つ本館上はBF1~6Fとされているが実質的にBF1は地上階である。
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  玄関前の大屋根
 駐車場から玄関に進むと玄関の手前に車の乗り入れも可能な独立した大屋根が雨除けの機能を備えている
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  玄関
大屋根を潜り抜けた先が本館中の建物に繋がる玄関部分で入口のガラス戸が奥に見える懐深い造りとなっている。入口扉の内部は右手90度の位置にもう1枚のガラス戸が控える二重戸構造。

【玄関の内側】
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  フロント
 玄関の二重扉を潜って入場すると正面のフロントカウンターに迎えられる。
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  フロントロビー
フロントの左手はロビーの空間で全面ガラス張りの外壁面は外光を採り入れると共に外部に設えらた庭園の景観も提供している。
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  レストラン入口
ロビーの左手でフロント背面の位置にはコンベンションホールが控えておりその入口の装飾にはダイニングレストラン青麻(あおそ)の文字がある。
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  売店
ロビーの右奥には売店も見えている。

Part.2はさんさ亭の館内



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2020年01月10日

【朝食会場】
 朝食はバイキング方式で会場は前回で紹介した2F大宴会場のおはら亭である。
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  館内図2F
2Fの案内図を見るとエレベーターの周囲には中規模の宴会場が配置されている。下流側へ向かう通路を進むとフロント棟の下層部分で大浴場の上階がおはら亭とされ2Fは全て宴会場の空間となっている。
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  おはら亭入口
朝食会場の案内板が置かれたおはら亭は一段高い板床の奥に畳敷きの通路が見えておりここで館内履きのスリッパを脱ぐ。ここにも大浴場と同じ紫外線滅菌灯を備えたスリッパ棚の設置が徹底されている。但しスリッパ専用の仕様で高さ制限があり自前の靴を履いてきたであろう客は収納が叶わず脱ぎ捨て放置されている。
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  会場受付
 畳の通路を奥へ進むと屈曲した先で湯川の眺望がある窓側の途中で係員が立つ受付が置かれここで食事案内を提示して入場する。
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  会場の配置
受付の直前に料理の配置を示す会場内の案内があるが文字が小さく足を止めて確認する客は僅かに過ぎなかった。写真にはコーナー名を大き目の文字で追記している。
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  トレーコーナー
 受付の直後にはトレーと箸や取り皿のコーナーがありここで基本的な食器を揃える。
この画面は入口方向に振り返って撮影。
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  ドリンクコーナー
トレーコーナーの先にはドリンクコーナーが並んでおり野菜ジュースのサーバーや
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  牛乳
朝に飲みたい牛乳に
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  お茶とコーヒー
お茶屋コーヒーが用意されている。
 トレーを手にドリンクコーナーを横目に見て取り敢えず着席可能な空席を探す。
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  朝食会場
畳敷きの会場内はテーブル席となっており先に見た会場内の案内通り周囲の壁面に料理が並んでいる。奥にある緞帳を下した舞台の配置は宴会場に必須の設えである。この緞帳の手前がご飯と汁物やお餅のコーナーとなっている。
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  窓側の席
宴会場と障子仕切りのある窓側の通路部分にもテーブルの配置があり窓外に渓流を眺める展望席となっている。
 会場内の料理配置は右奥に置かれた下膳台左隣りの朝ご飯定番メニューのコーナーから反時計回りに紹介すると
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  朝ご飯定番メニュー
定番メニューは海苔、納豆、ふりかけ類に加えて
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  焼売
蒸し鍋の焼売に
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  下し大根
下し大根やしらす干し、
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  卵焼き
ボトル入りの漬物類、イカの塩辛、卵焼き等が並ぶ。
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  野菜コーナー
左隣りの野菜コーナーには生野菜や
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  野菜料理
加熱した野菜料理が大皿盛りで控えている
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  料理人のお惣菜
更に左に進むと瀧の湯料理人のお惣菜のコーナーに移り保温トレイに収めたウインナや
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  ベーコン
ベーコンに
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  焼鮭
鮭の焼物
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  目玉焼き
目玉焼きは朝食には欠かせない定番中の定番料理が並んでいる。
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  蒸し野菜
小篭に分けた夏野菜の蒸物が目新しい存在に感じる。
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  デザート類
次は果物3種(パイナップル、オレンジ、キウイ)と自家製ヨーグルトのデザートがあり
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  サラダ類
その先は生野菜を始めとするサラダ類が配置されている。

【取り分けた朝食】
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  取り分けた朝食
 いろいろ沢山の料理から選んでこの朝食を完成し牛乳も取り揃えた。
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  9分割の取り皿
バイキングで屡々登場する9分割の取り皿は少量多種の取り分けには丸皿を幾つか並べるよりは省スペースだが個々の区画が小さく多めの取り分けには不向きと感じる。とにかくこの小区画に朝食では定番の目玉焼きやウインナ、焼き鮭、卵焼き、ミニハンバーグの蛋白質類に加えてポテトサラダ、胡瓜漬け、煮物と茄子炒め野菜類を載せてみた。
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 朝食料理
自家製ヨーグルトと生野菜は別の小鉢に取り小篭の蒸し野菜は籠の儘でカップ納豆と味付け海苔を添えた構成となった。
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  ご飯と味噌汁
これらの料理をご飯と味噌汁で戴いたが
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  小鉢ラーメン
ご飯のお代わりに換えてご飯汁物コーナーで供されていたラーメンに手を伸ばし朝ラーを試みた。見掛けの通り小鉢の中の麺は少量で相対的にメンマやナルトの存在が大きく見える。醤油ベースのスープはあっさり系で朝食の席でも抵抗なく食することができるので違和感はない。トッピングの小さなシジミ貝の装飾的な配いは小鉢の中の微笑ましい存在と感じる。
温泉宿の朝食を朝ラーで締め括り食事を終えた。

【チェックアウト】
 朝食終了後は9:30で終了する大浴場の伏見の湯に浸かって最後の入浴とした。先にも触れたがチェックアウトの10:00迄は幻の湯が男性浴場となるがこちらは昨夜貸切で月見の入浴を楽しんでいたので足を向けずに部屋で寛ぎチェックアウトを迎えた。
 今回の宿泊プランは単価¥8640(8%消費税込)に入湯税\150が加わり2名で\17580となる。更に夕食時の冷酒「庄助の酒」\1300(8%消費税込)を加算した\18880を清算した。
閑散期6月の平日日程ではあったが冷酒込で宿泊単価が¥9000に収まるプランは有難い。
 荷物を携えて玄関に出ると宿のマイクロバスが待機しており昨日の駐車場迄送られて帰途に就いた。

【終章】
 「庄助の宿 瀧の湯」は東山温泉街の入口である湯川の下流に位置する老舗で所謂ハイクラスに分類される温泉旅館であるが閑散期の6月に設定されていた訳ありプランは低料金で部屋こそ宿にお任せだが貸切温泉利用が1回無料に夕食の1品料理サービス等の特典が加わり大変好ましいものであった。
今後もこの様なプランの設定があるのか注目したい。



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2020年01月01日


迎春2020_04画像

 昨年は10月に消費税が8%から10%に増税されこれに注目している最中に総理大臣が主催する「桜を見る会」の疑惑が明らかとなりました。各界の功労者を労う筈の場に数千人規模の政治家推薦があり安倍晋三総理の地元では後援会が推薦名簿の書類をコピー可能としてばら撒き希望すれば誰でも参加できる実態が明らかとなり一流ホテルで例年開催されていた前夜祭の立食会費が相場とはかけ離れた僅か五千円であったことや私人である首相夫人関係者の招待も報道されました。更に桜を見る会の招待状が違法なマルチ商法の集客に悪用されたり反社会集団の人物が参加していたこと等々が芋蔓式に発覚しています。会の招待者を取り纏めた内閣府の対応は名簿を廃棄したとして事実解明に真摯に向き合うことなく不都合な事実から国民の目を反らす姿勢を貫いていますが公の文書は将来の歴史検証に不可欠の貴重な資産です。国政の中枢を司る内閣府の無責任な態度に激しい憤りを感じます。
 防衛日誌の隠蔽、森加計疑惑の文書改竄、繰り返される政治資金疑惑を抱える大臣の説明無き雲隠れ辞任等々に続く桜を見る会の疑惑は民主主義の原則に従って平等且つ透明であるべき国政運営を冒涜すると共に有能な官吏を子供騙しの言い訳に奔走させる傾国の行為と断ぜざるを得ません。


【写真撮影の経緯】
 今年の賀状は昨春に撮りためた東北地方の桜風景を主題にしましたが奇しくも年末に明らかとなった総理大臣主催の桜を見る会の疑惑が生じ妙な桜被りとなってしまいました。
 風景の桜は掲載したものより多くを準備していたのですが桜の疑惑は推敲を重ねても譲れない文書量があり葉書面積の制約から写真の一部を割愛せざるを得なくなりました。更にもう一つ用意してた東北大震災の遺構風景も没となってしまいました。
 本サイトでは賀状に掲載できなかったこれらの写真も含めて撮影の経緯を紹介します。

【掲載写真と断念した写真】
 今年のトップは宮城県刈田郡蔵王町の田園風景の中で早春の蔵王連山を捉えた景色です。
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  ①早春の蔵王連山
 田植えを待つ里の道端には春の花が開いていますが背景を成す蔵王山塊は冠雪が陽光に輝き壮大な姿を見せています。
この景色は東北道村田ICから蔵王町の中心部方向に僅かな距離を進んだ位置で望むことができます。

 ②~⑦は桜の風景です。
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  ②小岩井の一本桜
 先ずは岩手県雫石町で明治時代から開拓で歴史を重ねた広大な小岩井農場の丘陵地の一角に見事な枝を広げた桜です。
桜の木は自生する山桜以外は古くから川筋や街並に並木として植樹されるのが一般的ですがここは一本桜と称されている通り唯一の独立樹が均整がとれた美しい姿が圧倒的な存在感を示しています。
天候に恵まれれば独立樹の右手奥に壮大な岩手山の南斜面が見える筈ですが撮影時は雲が架かりその姿を画角に収めることはできませんでした。
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  《追加》一本桜と岩手山
追加で掲載する写真は雲の切れ目から辛うじて見えた岩手山の存在を捉えたもので傾斜面から隠れた存在が容易に想像できるでしょう。岩手山の山容がもう少し明瞭であったら迷わずこの風景を採用した筈ですが雲が切れることはありませんでした。
因みに一本桜の丘陵は外来者立ち入り禁止の牧場私有地となっており臨時駐車場が設置された道路脇からこの景色を鑑賞することになります。

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  ③釜房ダムの桜(ダム堤)
 名取川上流の釜房(かまふさ)ダムは南部の川崎町にあり北部の大倉ダム、七北田(ななきた)ダムと共に仙台市と周辺地域の水瓶の役を担っています。このダム湖の周囲は春を迎えると桜が咲き誇ります。③はダム堤を望む展望地からの景観です。
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  ④釜房ダムの桜(湖を渡る国道橋)
④は湖を渡る国道R286の上路トラス橋を背景にした湖畔の桜です。
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  《追加》ダム湖畔の桜
④の対岸位置には高台に置かれた管理事務所下の湖畔に整備された遊歩道に沿って桜並木が続いています。
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  ⑤川渡の桜と菜の花畑
 ⑤の撮影地は宮城県北部を流れる江合川に沿う大崎市鳴子温泉川渡(かわたび)地区の河川敷を埋める菜の花の後ろに控える桜です。
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  《追加》川渡大橋と江合川の河原
毎年春になると江合川を跨いで川渡温泉街に向かう川渡大橋付近の河原には一面菜の花の景観があります。

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  ⑥岩出山蛭沢川の桜並木
 大崎市の岩出山地区は仙台藩主伊達政宗の嘗ての居城地で現在も秋になると毎年政宗公まつりが盛大に催されています。
仙台市から北へ向かうと岩出山の入口で蛭沢(ひるさわ)川の桜並木に迎えられます。幹が太い古木と細身の新木が並ぶ土手には歩道も整備され手厚い管理が窺えます。
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  ⑦岩出山の内川と城山の桜
岩出山の中心部には伊達政宗が整備した灌漑用水路の内川の流れが街並みに風情を添えています。背景の高台は伊達政宗の居城であった城山で今も桜の名所です。

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  《追加》松川堤の桜
 次は掲載を断念した宮城県刈田郡蔵王町の松川に咲く桜です。松川は蔵王山塊の宮城県側の2本の谷筋を下る濁川と澄川が遠刈田温泉街に達する直前に合流した河川で平野部に至って阿武隈川に合し太平洋に注ぎます。対岸の川堤に沿う桜並木の奥には松川を渡るこけし橋と温泉街の施設も遠望できます。
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  《追加》松川の桜
振り返って見る此方の岸辺には蔵王の山容を背景に川面に枝を広げる桜並木が清流と青空に映えています。

【東北大震災の遺構風景】
 桜に続く副題として東北大震災9年後の遺構風景を温めていたのですが先に述べた都合で残念ながら没となりました。賀状に掲載できなかった風景の幾つかを紹介します。

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  《追加》南三陸町防災庁舎
 太平洋に面する南三陸町志津川地区の防災庁舎は震災当日鉄骨3階造の屋上迄浸水し高台への避難を呼びかけ続けた多くの職員が殉職しました。この庁舎は保存か解体か議論が分かれ一旦は町の方針で解体することになりましたがその後管理が県に移行されて現地での保存が決まりました。
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  《追加》防災庁舎保存地
保存地の周囲は土地の嵩上げ工事が進んでおり被災当時の高さに建つ鉄骨構造は1F部分の視認が困難な程に埋没して見えます。

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  《追加》釣石神社
 北上川が太平洋に注ぐ石巻市の河口左岸にある釣石(つりいし)神社は崖の中腹に見える今にも落ちそうな大岩が過去の地震に耐えて宮城県内では受験の神様として広く認識されています。今回の東北大震災でもこの釣石は落下せず昨年の受験シーズンには多数の合格祈願絵馬が奉納されていました。
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  《追加》本殿
釣石神社の本殿は釣石の脇の崖を上った丘の上にありますが
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  《追加》津波浸水位
斜面を上る石段の途中には津波の浸水位を示す表示が災害の状況を訴えています。
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  《追加》参道石段と津波浸水位
この浸水位を遠望すると釣石には達していませんが石段から9~10m程の高さに及んでいたことが判ります。9mは一般住宅で3階の屋根に達する高さで先に述べた南三陸町防災庁舎にも符合する驚異的な浸水高です。階段下の社務所は震災後に再建されたものです。

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  《追加》大川小学校の遺構
 釣石神社の対岸となる北上川河口の右岸には多くの小学生と教職員が犠牲となった石巻市立大川小学校の遺構が当時の面影を残しています。
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  《追加》校舎
校庭を囲む様に意匠を凝らした二階建ての校舎や
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  《追加》円形教室
低学年用に用意されたと思われる円形の教室を含めて外壁の全てが失われて室内が露天に晒されています。
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  《追加》体育館
更に驚くのは校舎の二階から体育館に繋がる高架通路が
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  《追加》倒壊した高架通路
橋脚の根元からへし折られて倒壊している姿です。強固な筈の鉄筋コンクリート橋脚が押し寄せる海水の圧力に屈した証しです。

 東北大震災から9年程経過しましたが津波に被災した太平洋沿岸の各地は今もなお復興の途上にあります。



(00:00)

2019年12月27日

【食事会場】
 夕朝食の会場はチェックイン時に指定した時間を記載した書面で案内される。
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  食事処の案内
夕食の会場は3Fの開花亭、翌朝の会場は2Fおはら亭となっている。

【夕食】
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  館内図3F
 前にも紹介した通り開花亭がある3Fの上流側は9室程の客室があるがそれ以外はダイニング会場に充てられている。館内図を見ると大きな空間を占める開花亭の下流側にも小規模な会場が用意されている。
 定刻にエレベーターで3Fに下りると
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  開花亭入口
右手に白暖簾を提げた隠れ家ダイニング開花亭の入口が控えている。
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  開花亭平面図
暖簾の奥に置かれた案内図を見ると山側はオープンキッチンを挟んだ上流側に個室が並び川側の窓際にはビューラウンジと称するカウンター席が配置されている。
慌てて撮った写真のピンボケはご容赦戴きたい。
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  川側のカウンター席
 フロア係に部屋番号を告げると一組の先客が居たカウンター席に案内された。
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  テーブル席
川に面するカウンター席の背後にはテーブル席も配置されこちらは3名以上のグループ客に対応している様子が窺える。
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  夕食膳
奥行きがあるカウンターテーブル上には既に会席膳の料理の一部が並べられ
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  品書き
料理長の記名がある水無月献立の品書が添付されていた。
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  冷酒
先ずは冷酒を手配した。選んだ銘柄はチェックイン時の利き酒コーナーで同行者お勧めの庄助の酒。これは瀧の湯ぼ独自ブランドらしい。
 それぞれの料理は以下に品書の順で紹介する。
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  先附
先附の小鉢は糸削り節と生姜風味の茄子の煮浸しである。
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  お造り
向附はお造り皿で鮪と鯉の昆布〆の刺身にプラカップで隔離した湯葉刺しの3点盛り。
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  鶏さっぱり鍋の材料
鶏さっぱり鍋と称する鍋物は鶏肉に榎茸と白菜等の野菜を昆布の出汁に投入し
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  鶏の鍋
固形燃料コンロの火力で炊く。
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  鍋の炊き上がり
炊き上がった具材は昆布と鶏肉の旨味をポン酢味で戴く。文字通りさっぱり風味の鍋である。
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  焼物
鍋物の隣に控える蓋付の鉄板は粕漬豚肉の焼物で肉の下にはエリンギや南瓜にパプリカ等の野菜が隠れている。食材の下に見えるクッキングシートは最近良く見掛ける鉄板の焦げ付き防止策である。
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  焼き上がり
豚肉の周囲が白く変色すると下の野菜は蒸し焼きが完了するので野菜と肉をひっくり返して肉にも十分に火通しをすれば焼きあがりとなる。
因みに野菜類を肉で覆って蒸し上げた後に天地を返して肉を焼く方式は野菜を十分に加熱すると共に肉の焦げ付きも極力抑えられるのでジンギスカン等では常套の手段である。
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  蒸物
蒸物は標準的な茶碗蒸しで
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  茶碗蒸し
小海老にシメジやエノキ茸が加わり定番の銀杏が風味を添えている。
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  握り3種
鍋や鉄板の料理が食べ頃になると3貫の握りが供された。これは宿泊プランに付随する特典とのことで品書には記載のない品である。3貫はいずれもネタが肉で会津地方産の銘柄のある鶏に豚と牛と説明されたがメモを取らずに翌朝には失念してしまった。
品書にある凌ぎの椀蕎麦は食事の途中に供されるがこれは普通のかけそばで撮影を怠っていた。
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  吸い物と漬物
食事は会津米こしひかりのご飯に香の物即ち漬物の小皿と止椀の吸い物(鱧のつみれ、じゅんさい等)の3品セットとなっているが肉ネタの握りや凌ぎのそばを収めて満腹となったのでご飯は遠慮して夕食を終え水菓子の存在を忘れて会場を離れた。

Part.9は朝食からチェックアウト迄



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2019年12月20日

【貸切風呂と予約】
 既にチェックインの項で触れたが今回のプランには館内に数ある貸切り温泉を無料で一回利用できる特典が含まれていた。
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  貸切風呂の案内
チェックイン時に6箇所の写真が提示され一つを選択することになるが初訪故に事情が解らず幾つか簡単な質問の末露天風呂の「幻の湯」を指定すると
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  貸切風呂予約票
利用時間は22:00~22:50に指定され貸切風呂の予約票が手渡された。

【貸切風呂の種類】
 先に掲載した貸切風呂の案内写真は客室にも用意されているが不鮮明で分かり難い。
6箇所の貸切風呂の概要や利用料金を纏めると以下のようになる。

① 「星空の湯」 7F 露天洗い場なし \3780
② 「月美の湯」 7F 露天洗い場なし \3780
③ 「十六夜(いざよい)の湯」 1F 半露天洗い場なし \3240
④ 「庄助の湯」 1F 半露天洗い場なし \3240
⑤ 「幻(まぼろし)の湯」 1F 露天洗い場なし \3240
⑥ 「天寧(てんねい)温泉」 1F 内湯洗い場あり \3240

 ①~⑥は便宜上案内写真の掲載順に附番したもので利用料は一回50分と設定された単位時間毎の課金であるが今回の無料利用は先に述べた通り宿泊プランの特典である。
①と②の利用料は他より\500高額な設定となっている。これは最上階7Fの屋上露天風呂故で「星」や「月」を採り込んだ呼称からも天空を意識した浴場と理解できる。チェックイン時にここまでの理解があればこちらのいずれかを選択していたかも知れないが滞在時には未知の空間であった。
③~⑥は大浴場と同一階の1Fにある。③④は川側が開放されているが屋根付きの建物内にある為半露天と表現した。この基準に従えば先に紹介した二つの大浴場「庄助風呂」と「伏見の湯」の露天風呂の部分も半露天構造である。

【幻の湯】
 予約時間22:00の少し前にフロントに出向いて幻の湯の鍵を受け取り1Fに下りる。
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  幻の湯入口(翌朝)
入口はかわかぜテラスの外側で足湯の空間の下流側に紫の暖簾が目印である。上の写真は翌朝の撮影(以降翌朝の注釈を付けたものも同じ)だが
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  幻の湯の暖簾
貸切時の夜間には利用者の室名と時間を明記した表示が為される。
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  浴槽(翌朝)
黒い板扉の先は奥に細長い石張りの浴槽に目を引かれる。
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  湯口(翌朝)
入口脇の浴槽手前には大浴場に類似した木製湯口から湯が注がれているが
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  気になる浴槽の奥
奥側には雨除けの葦簀が掛けられており浴槽の奥は木柵で仕切られた怪しげな空間がある。
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  給湯配管
簡単な覆いの中を覗くと耐熱パイプの配管が隠れていた。この類は大概浴槽の底部から採り込んだ湯を循環ろ過してこっそり浴槽内に戻す仕組みでこの程度の浴槽にも循環装置の稼働が疑われる。
なお葦簀を掛けた位置の山側壁面には装飾的に菅笠も用意されており小雪が舞う時期になれば雪除けの有難い装備となる筈である。
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  脱衣室
入口扉右手の山側には同じ黒色の扉を備えた脱衣室があり
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  脱衣棚
脱衣棚の配置に加えて
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  トルマリン風呂
トルマリン風呂が配置されている。
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  トルマリン石
これはトルマリン石を高温に加熱して遠赤外線の温熱効果とマイナスイオンの発生を利用する乾式浴のサウナと思われるが利用時には稼働していなかった。
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  トルマリン風呂の説明
壁面に掲出された説明に依ると日本三大鉱物産地の一つである福島県石川町産のトルマリンを使用しているとのこと。
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  対岸の能舞台
 露天の浴槽に浸かると湯川対岸の高い位置で明るく浮かび上がった能舞台の「花心殿」が際立つ存在で
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  月空
その上空には絶妙な位置で輝く満月が見事な景観を創出していた。
夜間22:00からの露天風呂は暗い時間帯で外景に懸念を感じていたが「幻の湯」では月光の巡り合わせにも恵まれて50分間の貸切露天風呂の風情を堪能することができた。

【その他の貸切風呂】
 翌朝のチェックアウト時間帯になると1Fに配置された貸切風呂は清掃が始まり浴場が開放状態となっていた「十六夜の湯」と「庄助の湯」にちょっよだけ立ち入らせて貰い浴場の様子を撮影することができた。
この二つは上流側の「幻の湯」と下流に控える二つの大浴場「伏見の湯」と「庄助風呂」の間に置かれ湯川の景観がある半露天の構造である。
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  十六夜の湯
 「十六夜の湯」は陶製に見える直径が1m超の円形浴槽2基にそれぞれの湯口から湯が注がれている。
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  庄助の湯
 もう一つの「庄助風呂」は鉄製大釜2基の浴槽に湯が注がれている。
いずれの浴場も僅かな時間に見た印象だが家族風呂としての利用には十分な設えで意匠を凝らした陶器や鉄釜製浴槽の給湯方式は掛け流しと思われる。

【源泉の泉質:大浴場の表示】
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  温泉成分
 二つの大浴場に掲げられた温泉成分表示は同一のもので分析日付は平成21年(2009年)9月25日となっている。
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  施設名と分析表
右上端の利用施設名は庄助の宿瀧の湯と記されおり浴室毎或いは浴槽毎の識別は為されていない。この事から瀧の湯の浴場は全て同一の温泉が満たされていると考えられる。
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  源泉名と泉質等
 上端の左側には源泉名や泉質等が記載されている。
先ず源泉名は会津東山温泉(源泉名 組合混合泉)とややこしい表現となっているが察するに東山温泉地域に湧く幾つかの源泉を組合が一括管理して混湯し加入施設に配湯しているという事なのだろう。
泉質のナトリウム·カルシウム·硫酸塩·塩化物泉(旧泉質名 含塩化土類·芒硝泉)から主要な成分は陽イオンのナトリウム(Na+)とカルシウム(Ca++)に硫酸イオン(SO4--)と塩素イオン(Cl-)と理解できる。実際右側に掲載された分析値でもこれらの4成分が突出した値を示している。
泉温45.2℃は既述の様子から混合泉の供給元施設内での測定であろうか。供給元が45℃ならば配湯の距離次第だが使用位置では40℃以下となる可能性もある。
更に湧出量 318.6リットル毎分(動力揚湯)は温泉街の10軒の施設に均等配分するなら1軒当たり毎分32リットルで5軒への配湯でも64リットルに過ぎない。
給湯量に就いては比較対象で頻繁に言及しているが家庭用で大人が足を伸ばせる程度の浴槽容量が凡そ200リットルで毎分30リットル程の給湯ならば浴槽を満たすにも7分程を要し10分前後で満水となる家庭用の給湯機と大差のない能力である。
従って大浴場を始めとする多彩な浴槽を維持する施設への給湯量が100リットルに及ばない条件では循環濾過システムが必須と思われ先の源泉温度からして循環湯のみならず配湯された源泉にも加温が欠かせないのではないだろうか。更に言うなら加温後の過熱解消の目的に絡ませた加水装置で温泉湯量の水増しをしていないだろうかとの疑念も湧く。
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  分析書別表
成分表示とは別に入浴に関する注意事項等を記した分析書別表の掲示があり
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  別表下部
その下端に張り付けられたシールテープで「源泉かけ流し循環加温」と「浴槽塩素殺菌」が表示されている。如何にも後付けの措置に見えるがやはり循環装置が稼働していた。加水の表示はないが循環加温の前に源泉掛流しを匂わせる表示は戴けない。既に考察しているが源泉を注ぐ浴槽から循環ろ過装置に抜き出した湯を再度給湯するなら浴槽から流し出していないので純粋な掛け流しには該当しない筈で体裁を繕った詐欺的な表示ではないだろうかと思う。厳密に表現するなら「循環ろ過併用一部源泉掛け」とするのが適当ではないだろうか。
循環装置には衛生管理上塩素系薬剤の滅菌装置の付帯設置が義務付られているのは言うまでもない。

【源泉の泉質:幻の湯の表示】
 貸切温泉で利用した「幻の湯」の脱衣室には大浴場とは異なる形式の温泉分析書が掲出されていた。
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  幻の湯の分析書
この掲示はA4版の印刷物をラミネート加工した手造り感に満ちた作品だが平成21年5月の分析日付や泉温、湧出量に加えて主要成分の含有量の数値等は大浴場の掲示と同一であり必要事項を抜き出したダイジェスト版と思われる。しかし大浴場の掲示にはない温泉分析の申請者や源泉の湧出地が記載されている。
この情報では申請者が会津東山温泉利用者協同組合代表理事とされていることで源泉が組合に依る管理が明確である。
源泉名は会津東山温泉(源泉名 組合混合泉)で大浴場の掲示と変わりはないが湧出地には「管理組合2号泉」と「伏見ヶ滝泉」と所在地が異なる二箇所が記載されており大浴場には無かった混合泉の由来を窺うことができる。但し管理組合2号泉を名乗るには1号泉の存在が大前提となるがその記載はない。1号泉は嘗ては健在であったが枯渇してしまったのか或いは伏見ヶ滝泉の方が古い存在でこちらが1号泉の位置付けなのだろうか。
 いずれにしても会津地方で歴史を重ねた由緒ある東山温泉はその源泉の組合混合泉に纏わる謎が残る。

Part8は瀧の湯の食事



(00:00)

2019年12月13日

【大浴場伏見の湯】
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  1F浴場部分
 翌朝に5:30から利用できる1Fの大浴場に向かうと
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  暖簾
エレベーターを降りた左手で迎える男女の暖簾が前日とは左右逆に懸けられていた。
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  大浴場の分岐点
左手のかわかぜテラスを過ぎた先にある二つの大浴場の分岐位置の表示も入替えで男湯は左手の伏見の湯に誘導される。
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  スリッパ棚
 紺色の暖簾を潜った目先の位置に紫外線滅菌灯を内蔵するスリッパ棚が配置されているので番号クリップを挟んで棚に預け脱衣室に入る。

【伏見の湯の脱衣室】

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  脱衣棚
 ロッカー式で鍵付きの棚は庄助風呂と変わらぬ構造だが鍵を腕に装着するリストバンドのオレンジ色が異なり浴場の相違を視覚に訴えている。
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  パウダーコーナー
脱衣室脇のパウダーコーナーや
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  洗面台
浴室手前の洗面台も庄助風呂に類似の設えとなっている。
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  浴場案内
浴室に入る扉の前には浴場案内の掲示があり大浴場の伏見の湯、庄助ひのき風呂、庄助桶風呂に露天風呂の瀧美の湯が紹介されている。

【伏見の湯の浴室】
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  浴室内
 脱衣室から2段の段差を下って入った浴室は
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  浴室上流側
川側に開口する大窓に沿って大きな浴槽があり
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  大浴槽の湯口
上流側に見える隔壁前の幅広な木製湯口から給湯されている。これが伏見の湯の大浴槽で一部掛け流しの循環濾過浴槽である。
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  洗い場
隔壁の奥は洗い場の空間でシャワー栓毎に隔壁を設けた構造は庄助風呂と同様の仕様となっている。
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  桶風呂
洗い場に向かう右手の窓側は伏見の湯の大浴槽が続いているが左手の壁側には三つ並んだ四角形の木桶各々に壁面から突出する湯口から温泉が注がれている。これが庄助桶風呂でヒバ材を使用した各辺が1m程の立方体は定員1名に限定される狭小な浴槽で各浴槽毎に壁面の湯口から供給される湯をオーバーフローで排湯している、一見掛け流しに見える造りだが浴場案内に依ると大浴槽と同じく一部掛け流し循環濾過方式である。
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  伏見の湯とひのき風呂
川側の大窓に沿って設えられた大浴槽の窓外は幾つかの小滝を奔流する湯川の景観が拡がる。
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  ひのき風呂
大浴槽の下流側に配置された小さ目の庄助ひのき風呂の浴槽は庄助ひば風呂に類似した造りで源泉掛流し一部加温する場合があると紹介されている。
【露天風呂】
 ひのき風呂から外壁格子の隙間から垣間見えているが浴室の下流側に露天風呂の開放空間が用意されている。
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  露天風呂の浴槽
瀧美の湯と名付けられた露天風呂は浴槽底面に段の段差を設けた造りでこれまた庄助風呂の古の湯の露天浴槽と変わらぬ意匠である。
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  湯川の奔流
開放空間の彩りはダイナミックに流れ下るな渓流の景観である。
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  露天風呂
一方の山側には目を転じると隔壁の奥に
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  露天風呂の洗い場
露天専用の洗い場がありシャワー栓に鏡を配置する構造も庄助風呂同様珍しい設えとなっている。
 伏見の湯は早朝とチェックアウト直前の明るい時間帯で入浴客が途絶えた機会の撮影が可能となったので窓外風景を紹介することができた。

【水鉄砲】
 ここまで一切言及しなかったが庄助風呂と伏見の湯双方の浴室内の大浴槽にはプラスティック製玩具のカラフルな水鉄砲が用意されている。
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  水鉄砲
何か場違いの装備に見えるがこの意図はガラス窓越しの視界確保に利用できると説明されている。
即ち浴室内の高湿度で曇る室内側のガラスに浴槽の湯を浴びせて多数の細かい水滴に依る光の屈折で妨げられる視界を均質な水膜に変えて外景を確保する簡易な手段である。
曇ったガラスを手で拭ったり手に掬った水や湯を掛けて窓外の景色を確保する行為は誰彼に関わらず浴室に限らず冬季に暖房が利いた室内や電車やバスの車内で日常普段に無意識で行う行為であるがこれを水鉄砲の威力で積極的に誘う発想が面白い。

Part7は多彩な貸切風呂



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2019年12月06日

【大浴場庄助風呂の浴室内】
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  浴室入口
 石張床の洗面台の左手続く二重ガラス戸の先は湯川に面する外壁に大きく開口する窓側に拡がる浴槽が透けている。
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  浴場案内
二重戸の内部には浴場案内の掲示があり庄助風呂の浴室内に置かれた大浴槽の庄助風呂に庄助ひば風呂、庄助酒風呂、露天風呂の古の湯の4種の浴槽の特徴が紹介されている。
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  浴室内
二重のガラス戸を通って入った浴室の正面は外壁全体に嵌め込まれた大きなガラス窓に沿って設えられた大浴槽の庄助風呂で
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  奥に続く浴槽
右奥方向へ続いている。ガラス窓の外は言うまでもなく湯川の景観があり右奥の方向へ流れ下っている。この浴槽は浴場案内で循環ろ過に源泉を足し湯する方式と説明されており基本的には一部掛け流しの循環浴槽と理解できる。
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  右手の洗い場
浴槽に沿って奥まで伸びる通路の右側に仕切り壁で隔てられた一段低い位置が洗い場である。8基並んだシャワー栓はそれぞれ隔壁を設けてブース化された最新の設備となっている。この隔壁は隣のシャワーの飛沫を浴びる不快感から解放される有難い装備である。
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  内湯の浴槽から下流の方向
上流端の浴槽内から下流側を見ると木造りの湯口の先にもう一つ小振りの浴槽を認める。これが庄助ひば風呂で青森ヒバ造りの木製浴槽である。
また通路の奥にある格子戸は更に川下側に置かれたの露天風呂古の湯と庄助酒風呂への出入口である。
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  小浴槽と眺望エリア
庄助風呂の大浴槽には底面に金属グレーチングの排水口を認め浴場案内にある通り循環装置の存在が窺えるが下流側の庄助ひば風呂にはこの様な設備が見られず源泉の掛け流しと思われる。
 この宿の温泉表示では源泉名の表示が会津東山温泉(源泉名 組合混合泉)となっており東山温泉組合が共有(あるいは共同管理)しているらしい。従って多数の浴室に供給される源泉は同一と判断されるので泉質等の情報は最後に一括して紹介する。
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  大浴槽と眺望エリア
 庄助風呂の大浴槽は画面中央に見える太い柱を廻り込んだ処にもガラス窓を張出す形で続いている。この部分が先に浴室入口の注意書きで見た伏見が滝の眺望エリアで女性はバスタオルの着用が許さる所以の設えである。
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  伏見が滝
この眺望エリアから夜間でもライトアップされていた伏見が滝の撮影を試みたが絶対的な光量不足のスローシャッターで滝の流れはピンボケ風の仕上がりで妥協せざるを得なかった。
 ここまでに紹介した庄助風呂の浴室内写真は全て人気が途絶えた夜間の撮影に限られたので肝心の窓外風景を伝えられないのが残念だが多くの入浴客が寛ぐ浴場へ無節操にカメラを持ち込むことは慎まなければならないと自主的な規制を課しているのでご理解いただければ幸いである。

【露天風呂】
 浴室の下流側に見えていた格子戸の外は古の湯と称する露天風呂の領域となっている。
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  露天浴槽
露天風呂と称しているが建物延長の屋根下で川側の外壁を排した開放空間に方形の浴槽が置かれている。
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  湯口と底面段差
板張りの縁を備えた浴槽には内湯と同じ木造りの湯口から温泉が注がれているが槽内は石張りの底面がは三段の階段形状で川側が最も深い造りとなっている。
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  奥の階段
更にこの露天浴槽の奥の下流側は6~7段の階段がありその上にも何かの設備を認める。
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  鉄釜風呂
その正体は浴場案内にあった庄助酒風呂で大径の鉄釜に温泉を注ぐ釜風呂で地元花春酒造の麹釜を譲り受けて浴槽に設えたと説明されている。
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  釜風呂の洗い場
同じ高さに隣合って小規模の洗い場が配置されている。多くの露天風呂では洗い場の設備は省略されており特に内湯に接する露天では内湯の洗い場に依存する様な構造を採っているが内湯に接しながら内湯と同様に鏡と湯水混合シャワー栓を備えてシャンプー類まで備えるのは体験上極めて珍しい。
 釜風呂は大釜とはいえ1名限定の小さな浴槽だが貸切り状態の深夜には下段の古の湯の浴槽の浅い部分を寝湯代わりに両方を何度か往復して露天風呂の雰囲気を満喫した。

Part.6は伏見の湯



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2019年11月29日

【瀧の湯の温泉】
 瀧の湯の温泉には二箇所の大浴場と六箇所の貸切風呂の浴場が用意されている。
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  1F案内図
これらの浴室は基本的に1Fに集中しており例外的に貸切風呂の内の二つが7Fの最上階に配置されている。

【大浴場】
 大浴場はそれぞれ「伏見の湯」と「庄助風呂」とされ24:30~5:30の深夜時間帯は利用できず毎朝5:30に男女を入替える方式を採用しているが9:30で終了してしまう。
これ以降チェックアウト迄は代替措置として本来貸切風呂の「幻の湯」が男性用に「天寧(てんねい)の湯」が女性用に開放される。チェックアウトは10:30迄とされ10:00過ぎには多数の客が出立するので9:30の大浴場終了は特に支障を感じないが連泊客の朝風呂の便宜を意識した措置であろうか。

【1F浴場へのアプローチ】
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  1F浴場部分
 エレベーターで最下層の1Fに降り立つと正面にフロア案内の掲出があり左手の大浴場を案内している。
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  浴場入口
左奥に懸かる男女の色違い暖簾が浴場への進路を示しているがその手前に石をくり抜いた小さな槽が展示されている。
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  小原庄助さん愛用の石風呂
小原庄助さん愛用の石風呂とする説明文では明治40年頃迄自宅で使用していたもので会津民族館寄贈と記されている。
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  庄助の宿の由来
更に石風呂槽の上部には庄助の宿の由来が掲示されている。
要約すると、
 ◦小原庄助は保科正之が最上から会津へ移封に従った郷頭
 ◦豪快な人柄で自由洒脱な言動が可能な立場であった
 ◦歌(会津磐梯山の俗謡)にある様な遊情な人柄ではなかった
 ◦庄助は当時(江戸末期から維新の動乱期)随一の温泉であった瀧の湯を愛顧していた
ということである。
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  暖簾
色々な謂れや由来を見ながら暖簾を潜った先は
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  かわかぜテラス
川面に開けた窓際に「かわかぜテラス」の空間があり
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  かわかぜ足湯
窓外には足湯の設えがある。
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  足湯の風景
足湯から望む湯川は目の前に小爆の景観に恵まれ「かわかぜ」の呼称は谷筋の流れと共に吹き下る涼風を意識した命名かと思われる。

【川面を吹き上がるしゃぼん玉】
 ここまで一切触れなかったが4Fのラウンジや5F最奥客室の外景にも川筋を絶え間なく上流側に流れ飛ぶしゃぼん玉が視認でき朝食会場の窓側に席を定めた多くの客からも「何処から飛んでくるの?」と関心が集まっていた。
この源は4F玄関先に設置された自動しゃぼん玉発生装置であることをチェックアウトの直前に確認した。
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  しゃぼん玉自動発生器
 無人でしゃぼん玉を自動的に発生して吹き飛ばす装置は70年近い人生で初めて遭遇した。この写真では順光で分かり難い小粒のしゃぼん玉を吐出する箱の背面に送風ファンの部品が見えるのみだが川側の前面の覗くと自動装置の仕組みが明らかになる。
即ち箱の底部にはしゃぼん液を蓄える槽がありこの槽を潜りながら動力回転軸に固定された直径20㎜程の多数の輪がしゃぼん液を纏って槽から上がると送風ファンが吹き飛ばしてしゃぼん玉を吹き出す装置である。
 川下側の玄関から吹き出すしゃぼん玉は冷水の湯川に伴って川面を下る冷風に押し上げられる上層で下流の暖気が狭い谷筋の上流へ吹き上がる自然現象を巧みに利用した手法と思われる。
 風は移動する大気の流れで地表で暖められた空気は軽く上昇し上空の冷たい空気は相対的に大きな比重で下降し天地方向で温冷空気が衝突することで大気が騒乱状態となり雷雲や竜巻が発生して雹や豪雨に見舞われるのは自然の摂理である。

【浴場関連のサービス】
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  湯上りサービス
 テラスを左に見て川下側へ通路の奥に進むと一段低い位置に湯上りサービスのコーナーに迎えられる。
ここには一般的な麦茶のサービスに加えて15:00~19:00の間は宿泊者限定と表示されたサーバーからプレミアムモルツのビールとソフトクリームが無料で提供されている。
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  大浴場入口の分岐
湯上りサービスのコーナーから更に奥に進むと左手に貸切風呂の区画が並んだ先の正面に大浴場が現れる。正面の大きな案内板にある通りここで「庄助風呂」と「伏見の湯」への進路が左右に分かれる。
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  シャンプーバー
この畳敷きの分岐部に上がる直前の左手にはシャンプーバーなるコーナーが設置されており色とりどりな12種のボトルが並んでいる。使い方の掲示を見ると女性限定のサービスで好みのものを小さなカップに取り分けて浴場に持ち込む様に案内されている。
男性の私は無縁の存在だが髪のケアに気を遣う女性には嬉しいサービスなのだろう。

【大浴場庄助風呂へ】
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  庄助風呂
 二つの浴場の分岐点で館内履きのスリッパを脱いで畳に上がり
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  庄助風呂
男湯と表示された右手の青い暖簾を潜る。
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  滅菌ラック
暖簾の奥に脱いだスリッパの収納棚があるのはどの宿でも普通の備えで番号札付きのクリップで纏めて個人管理する手法も多くの施設で採用されてきているがこの棚には滅菌用の紫外線ランプが装備され樹脂製の透明カーテンが有害波長の外部漏出をカバーしている。
この様な滅菌ラックは近年医療機関で見掛けることがあるが温泉宿では初めて経験した。

【余談:スリッパの管理】
 温泉宿のスリッパと言えば嘗ては大浴場や宴会場で脱いだり履いたりする度に十羽一絡げに纏めて管理され直前に誰が履いていたか前歴不詳のものを履かざるを得なかった。館内履きのスリッパは裸足に着用する機会が多く極度の潔癖症ならずとも他人の水虫菌を貰ったりしないだろうかと懸念する向きは少なくなかったであろう。
しかし最近この様に多くの客が頻繁に脱着を繰り返す場所では番号付きのクリップで自分の履いてきたスリッパを一対に纏めて個別の番号で個人管理できる方式の採用が増えている。番号札を括り付けたクリップを必要数用意すれば良い簡便な方式ではあるがスリッパの前歴が気になる向きには嬉しい手段で私もあれば必ず利用している。又細かいことを気にしない場合は番号クリップに拘らず従来通り脱ぎ捨てておき適当なものを履いて帰れば良い方式が併存できる気軽さもあり普及が進んでいると思われる。
 しかし実際に経験したのだが番号クリップを付けスリッパ棚の覚えやすい位置に収納しておいたにも拘らず戻ってくると跡形もなくなっている悲劇が待ち構えていた。
クリップを付けない人物がわざわざクリップ付きのスリッパを履いて帰る確率は低いと思う。折角付けたクリップなのだからその番号と収納した棚の位置をしっかり記憶して間違いを起こさぬよう個人レベルの管理徹底お願いしたいと思った出来事であった。

【庄助風呂の続き】
 閑話休題
滅菌ラックにスリッパを預けて向かう先には分岐点から続く畳敷きの長い通路が続いている。
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  畳敷きの長い通路
この通路の左手には湯川の流れがある筈だが採光窓は皆無で右の壁面に意匠を凝らした人工照明の飾り窓で単調な通行の無聊を補っている。
先に掲載した1Fの案内図を見ればこの部分は先程左に分かれた「伏見の湯」の浴場部分を山側の地下で迂回する通路であると判明する。
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  通路末端
長い通路の末端で畳敷きの床は左に折れて板床に変わる。
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  脱衣棚
板床の左は施錠できる扉付きの脱衣棚が並び
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  洗面化粧台
右側には個別に縦長の鏡を配した意匠の洗面台と化粧台の空間が用意されている。
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  脱衣場
左側に脱衣棚が並ぶ板床の脱衣場を奥に進むと化粧室の先の右壁面手にも脱衣棚が用意されている。棚扉の鍵は緑色のゴム製リストバンドが装備されており施錠後は腕に巻いて浴室に持ち込める仕様である。従ってリストバンドの有無で棚の使用状況が遠目にも確認できる。
板床の先は2段の下り段差が控えており石張りの床はベビーベッドと洗面台の空間で
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  浴室入口
左手は二重ガラス戸を介して浴室に連絡している。
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  浴室眺望エリアの注意書き
このガラス戸の脇に興味深い注意書きが置かれている。曰く(浴室窓外湯川の)伏見が滝の風景堪能の為に浴場(浴槽)の一部が滝側に張出す眺望エリアを設けているが(外部から見える可能性があるので)バスタオルを着用するか眺望エリアでの入浴はご遠慮ください、と。
ほう!通常の温泉宿ではテレビ等の映像取材や混浴温泉の一部で女性客に湯浴み衣を貸し出す場合があるがこの様な例外を除けば浴槽にタオル類の持ち込みは一般的に禁止されている。この宿では女性限定ながらバスタオルの着用入浴が容認されているのが珍しくで上に述べた例外に該当する対応と思われる。

Part.5は庄助風呂の浴室



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2019年11月22日

【宿泊プラン】
 紹介が後回しになってしまったが今回予約した宿泊プランは「初夏の直前割、日にち限定、訳あり手狭な6畳(部屋要望不可)、無料特典付き」という何とも複雑な内容で1泊2食の料金@8640×2名=\17280(税サービス料込、入湯税@150別途)はハイクラスとされる瀧の湯ではオフシーズン故の格安設定である。宿が指定する手狭な6畳で客の要望は受けない点が訳ありの理由らしいが二人で6畳ならば許容範囲と即断して予約の手続きを済ませた。
 従って狭い部屋を大前提に訪れたのだが実際に通された部屋には驚くべき展開が待ち受けていた。

【訳ありの客室】
 4Fラウンジのチェックイン手続きで客室は501号が指定された。
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  館内図5F
既に館内の全体図で見た通り5Fと6Fは全て湯川の景観がある客室となっている。
ラウンジ奥のエレベーターで5Fに上がると501号室はエレベーターホールから最も遠い上流側の奥であった。
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  5F廊下
これはエレベーターホールから5室程進んだ位置から見た奥の景色で突当りの非常ドアが遠い。先にも述べたが正に鰻の寝床の光景である。
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  5F廊下
更に廊下を進んで3連接建物の最奥に入ると市道に面する左側の壁面と右手の客室入口構造の雰囲気が変わり
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  2室の入口
非常口の外光を頼りに辿り着いた最奥には501と502両室の扉が僅かな空間に直角で隣合っている。
先に紹介した5Fの平面図では両室共廊下に並行する位置に出入口がある様な描写となっておりこの様な入組んだ位置関係は省略されている。
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  客室
 扉を開くと靴箱を備えた土間の奥は右側に折れる構造でその左右にも扉が配置されているが取り敢えず正面の引き戸を開けてみると
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  客室
一画面には収まり切れない広い和室が待ち構えていた。入室する迄は予約プランの通り6畳和室と信じていたので想定外の光景に部屋を間違えたのかと思ったが館内の案内書や食事会場案内にも501室が明記されており何よりも手交された部屋の鍵で解錠したうえで入室しているので間違いではないらしい。しかも部屋に関しては客の要望に応じないとう訳ありプランで6畳間への変更を申し出ることも憚られたので素直に宿が指定したこの部屋を利用することにした。
 改めて室内を見渡すと12.5畳に床の間を設えた空間で入口側の壁面には市松模様の襖戸で仕切られたクローゼットと押入れを従えている。

【踏込み部分の設備】
 12.5畳の和室に入る手前の踏込み板床の左右には各々扉で仕切られた設備がある。
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  トイレ
右手の扉を開けると粗目の白壁に暗色の腰板を配した落ち着いた内装に洗浄機能を備えた最新型のトイレが設置されている。
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  洗面所
左側の引き戸を開けると突き当りに陶製のボウルに注ぐ首の長い蛇口を備えた今風デザインの洗面台が見え
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  浴室
左のガラス戸の奥は檜と思われる木製の浴槽にシャワー栓を備えた専用の浴室となっている。
一般的に客室に付随する浴室ではユニットバスを見掛けることが多いが小さな造りにも関わらず木造りの浴槽の設えに高級を志向する宿の器量を感じる。
但し各個室へ温泉給湯の保証は無いのでこの浴室は利用せず何度も1Fの温泉浴場へ足を運んだ。
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  ミニキッチン?
洗面浴室より部屋側の狭い空間には冷蔵庫や湯沸しポットにパックの飲料類とグラス類を収めたケースが用意されておりミニキッチンと呼びたい備えだが給排水の設備を欠いている。給水やグラス類の軽い洗い物は隣の洗面室を利用すれば良いとの判断かと思われる。

【室内の設備】
 踏込み部分の設備を確認して室内に戻ると正面の奥に開口する腰高窓の外に湯川渓谷の景観が広がっている。
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  外壁窓側
 窓の左端には1/4畳程の僅かな空間に書院風の小机の設えがあり館内電話が配置されている。
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  左側壁面
この小机に繋がる左側の壁面は床の間とテレビ台が並び
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  床の間
横長の床の間には茶櫃や灰皿、館内案内、ティッシュ等が配置されている。
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  お香
これらの中にラベンダーの香りと注釈を付したお香も用意されている。
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  ソファー
 床の間に相対する右側は畳の上にソファーが置かれた独特な空間となっている。
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  クローゼット
 入口側壁面のクローゼットを覗くとハンガー掛った丹前に浴衣と帯やタオル類を収めた乱れ箱が見える。
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  乱れ箱
浴衣は大、中のサイズが用意されており小と特大も調達できるきめ細かなサービスが有難い。

【蒸籠で蒸す温泉饅頭】
 広い部屋の中央に配置された座卓上には見慣れぬものが鎮座している。
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  蒸籠饅頭
これは固形燃料コンロに載る角形の蒸籠で木蓋の上には「温めてからお召し上がりください」と案内がある。
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  黒糖まんじゅう
蓋を外すと黒糖まんじゅうと記されたご当地温泉饅頭が収められており点火用のライターも添えられているので
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  加熱中
早速燃料に点火して暫し待つと
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  蒸し上り
出来立てほやほやの温かい温泉饅頭が蒸し上がった。
通常供される茶菓子は冷たい物に限られるがこの様なおもてなしがあるのだと認識を新たにした。

【秘密のおまけ】
 座卓上にはもう一つささやかな贈り物が用意されていた。
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  起き上がり小法師
それは会津地方の民芸品である小さな起き上がり小法師(こぼし)。赤べこは会津を代表する民芸品として良く知られた存在で土産品の代表格でもあるが小振りの起き上がり小法師はより手頃な存在である。名前の通り倒しても倒しても何度も起き上がる低重心の構造が七転び八起きを体現する縁起物とされている。
赤青二色の小法師セットにはささやかな贈り物ですと題する文書が添えられている。曰く大手の予約サイトからの予約ということで宿から特別の贈り物を用意したと。但しその後で贈り物の件は予約サイトのクチコミに書き込まないでくださいとも。
良く考えるとこの贈り物の件は予約サイトの宿泊条件には含まれず宿側の任意の好意に過ぎないので何時廃止しても予約客が宿側に不満をぶつける筋合いはない筈である。従って私的な本ブログでは取り上げたが流石に予約サイトのクチコミへの投稿は回避した。
ただ暫く時間を経た現在では大手の予約サイトから多数集客して同じ行為を継続すればいずれこの様な秘密のサービスを得意げにクチコミに漏らす輩が出現することを期待した話題作りではなかろうかとも思う。

Part.4は瀧の湯の多彩な温泉



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2019年11月15日

【瀧の湯の館内】
 市道に直結した玄関とその奥にフロントロビーやラウンジが配置される階層は4Fとされている。
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  館内全体図
館内の全階層を集約した案内図を見ると宿の外観でも見えていた湯川と市道に挟まれた細長い敷地に同じく細長い建物が鰻の寝床状に展開されている。
 地上階の4Fに注目すると下流端のフロント部分はその奥で直線的に続く建物群から川の流れに沿って緩い角度を付けている。これは谷筋の狭い地形故の建築制約であろう。
 1F~7F全館の平面図を見較べると3Fと4Fの面積が最大で2Fから1Fに下ると上流側が削られている。逆に5F~7Fの階層は上流側の直線部分に限られており4Fフロントロビー部分の上層に構造物は見当たらない。
 館内の各階層を大まかに見ると川面に近い1Fは大浴場と足湯に各種の貸切り風呂の浴場が配置されている。
 2Fと3Fは朝食バイキングを兼ねる大宴会場やダイニングの供食施設に充てられており3Fの奥(上流)側には9室程の客室も設定されている。
 4Fはフロントの他にこの宿を特徴づける多くの施設があるので後に詳述する。
 上流側に遍在する5Fと6Fは全体が客室に充てられており狭い面積に限られた7Fは特別室と貸切り展望風呂の特別な空間とされている。
上流側に遍在する5F~7Fの直線部分は外壁の輪郭に認める細かい凹凸から3棟の建物が一体的に連結した構造と思われる。
従って瀧の湯の建物はフロント等が配置された下流側の1棟と上流側で客室主体の3棟が直線的に連なる合計4棟で構成されている。

【4Fフロント床】
 4Fはフロントとラウンジの配置に加えて後に紹介する各種のサービスコーナーが配置された瀧の湯の顔であり主要な管理機能も集約されている。
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  4F館内図
上に掲げた4F床単独の平面図は掲示位置の配慮からか前項で掲載した館内全体図とは上下が逆転しているのでご留意戴きたい。即ち全体図では左側が湯川の上流方向であったが4Fフロア案内では右側が上流に変わっている。以降に掲載する各階層の単独平面図も同様の方向となっている。
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  ラウンジ
 この案内図に依ると先にチェックインを行ったラウンジは「ビューラウンジ小手毬」の名が与えられガラス張りの外壁から湯川渓谷の景観を採り込んでおり対岸の傾斜地に設えられた能舞台「花心殿」が一際目を引く存在であるがチェックイン時間帯の写真では西日除けのブラインドが下ろされて対岸の景観が遮断されている。
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  下層階から見上げる舞台
夕暮れ前の明るい時間帯に湯川岸辺の下層階の浴室から能舞台を見上げることもできる。
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  対岸の花心殿
夜間になるとラウンジの大窓から湯川を隔てて対峙する「花心殿」の舞台がライトアップされて幻想的な景観を醸しているが視界の範囲に対岸に渡る道程は見当たらず緑一色の斜面の一角に拓かれた人造構築物は突如出現した空中舞台の様相を感じる。
この光景は数十年も昔鳥取県三朝町の旅で訪れた三仏寺投入堂(さんぶつじなげいれどう)の記憶が甦る契機となった。
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  売店
 川側のラウンジと通路を挟んだ市道側は「セレクトショップ花かすみ」の売店が設置されている。
売店からフロント寄りの片隅はインターネット情報サービスのコーナーで林檎の印の機材が2台無料開放されている。但し館内はWi-Fi環境が整備されているのでスマホやタブレット、パソコン等Wi-Fi接続可能な自前の機材を持参すればここのお世話になる必要はないだろう。
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  色浴衣コーナー
 インターネットコーナーから通路の角度が変わるフロント寄りには女性客専用で好みの色浴衣と帯を選択できるコーナーも用意されている。女性客に人気となり最近は多くの宿がサービスを始めた色浴衣は無料で提供されている。
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  エレベーター(2F)
 ラウンジから上流側となる奥の位置には2基のエレベーターが稼働しておりこれが館内で唯一動力で垂直移動が可能な設備で4Fから上層の5F、6Fの客室や1F~3Fの温泉浴場や食事会場に上下する主要な動線を担っている。
人力で昇降する階段はエレベータから少し奥と上流側の最奥の2箇所に置かれて垂直移動を補完しているが何れも2Fか3F以上の階層間移動に限定されており1Fの浴場へは連絡しない複雑な造りとなっている。
階段の主要な役割は非常時の避難路なので地上階の4Fに通じていれば良いとの判断なのだろう。
 エレベータから更に奥の4F上流側は中小の宴会場が配置された空間である。

Part.3は客室の様子



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2019年11月08日

【序章】
 5月のゴールデンウイークが一段落した翌月は梅雨の季節で雨がちな天候の為か観光旅行には魅力が乏しいオフシーズンとなる。
この時季は温泉宿の集客力も手薄となるので種々の特典や通常期より安価なプランが設定されることも少なくない。
 今回はこの閑散期限定の格安な宿泊プランを提供する会津若松市の「東山温泉 庄助の宿 瀧の湯」の宿泊記である。
「瀧の湯」は会津若松の奥座敷と言われる東山温泉の中でも老舗の温泉旅館であるが日にち限定直前割の訳ありプランを見つけた。

【東山温泉への道筋】
 福島県を代表する観光地の猪苗代湖は湖面の標高が510m程で西岸部は会津若松市の領域でる。しかしこの西岸から標高220mの会津盆地へ向かう道筋は単純な下り傾斜とはならず猪苗代湖と西側の会津盆地との間には背あぶり高原の山地が立ちはだかっている。
猪苗代から東山温泉へMapion
この山地は南へ向かう程に700~800mに及ぶ高地となるのでR49の国道や磐越道と磐越西線の鉄路は比較的穏やかな北側の低山地に大きく迂回する経路を辿って若松の中心部を目指す経路を採っている。この迂回カーブ手前の郷ノ原交差点から交差する屈曲の多い県道r64へショートカットして再度国道に復帰する。
 会津盆地の北端から平地に至る国道は右カーブを描いて西に進路を変え会津坂下から新潟県を目指すが西へ向きを変える変曲点付近で南に分岐するr64を進んで若松市の中心部へ向かう。片側2車線に中央分離帯を備えた地方道を暫く進むと東山温泉へ左折を促す青看板が現れるのでこれに従って県道r325に折れて南東方向に向かうと片側1車線の道は唐突に片側2車線に幅員が広がる。左手に会津武家屋敷の施設が現れる。武家屋敷を過ぎた先に信号機が設置されておりその先は進路が左右2本に分かれる音叉型の変則的な道形となる。右に進むと湯川沿いを遡る谷沿いの道で左は山側を進んで高度を上げるが両者は上流に至って1本に収斂し温泉街の周回路となっている。従って武家屋敷の先にある信号機が実質的に温泉街の入口である。

【東山温泉】
 東山温泉は会津地方の中心都市である会津若松市の文字通り東部山間地域で湯川(ゆがわ)の谷筋に沿う山峡の地にある。
東山温泉街Mapion天平年間に行基の開湯と伝えられる古い歴史を刻んできた温泉街は江戸時代になると会津藩の湯治場とされ会津若松の奥座敷の地位を築きあげた。東山温泉観光協会公式サイトに依ると現在は毎分1500リットルを湧出する源泉に17軒の宿(協会加入施設)が軒を連ねる一大温泉街である。
因みに温泉街流域の湯川には多くの滝が掛り渓相に趣きを添えている。これらの滝には雨降り滝、原滝、向滝、伏見ヶ滝等の固有名を与えられたものがあり温泉宿にも「滝」や「瀧」を冠する屋号が認められる。

【湯川と阿賀川(大川)】
 湯川は福島県内にあって1000m級の峰が聳える南隣の岩瀬郡天栄村(いわせぐんてんえいむら)に接する安藤峠付近の北麓に源流を発している。一旦東山ダムに貯水された湯川は東山温泉街を北流して会津盆地の平地に下り湯川放水路から阿賀川(別名大川)に注ぐ。放水路の手前には旧湯川の流れも残されておりこちらは溷川(せせなぎがわ)に吸収され最終的には北に接する喜多方市内で阿賀川に合する。
 福島県内を北流する阿賀川(大川)は群馬県境山間部の南会津町から北へ下る多くの沢を集めた荒海川(あらかいがわ)を源流とし会津若松市南部の山間域に設置された大川ダムから芦ノ牧温泉街経て会津盆地に下り喜多方市内で只見川とも合流して県境から新潟県へ入ると阿賀野川と呼称が変わり新潟市に至って日本海に注ぐ一級河川の大河である。
 一級河川はその支流域も含めて一義的に国土管理されているので阿賀野川の支流であり東山温泉街に掛る多くの小爆を下る湯川も一級河川である。

【庄助の宿 瀧の湯の位置】
 庄助の宿 瀧の湯は東山温泉街の入口側の湯川沿いに位置している。
先に紹介した温泉街の入口と見做される信号機がある音叉型分岐点から右側に分かれる谷沿いの道を1分程進むと右手の湯川沿いに置かれた手狭な駐車場に到着する。
駐車場の上流側には大規模瀧の湯の建物が見えているが駐車できる空間は5~6台程に限られており車を乗り入れると送迎車の誘導で離れた駐車場への移動が促される。
この玄関先で荷物や同行者を降し送迎車に従うと下流川の離れた位置にある広い駐車場に駐車した後に送迎車に乗車して元の位置に戻り手ぶらで入館する。

【チェックインの手続き】
 先に玄関先で預けた荷物は同行者が案内されれていたフロントロビー奥のラウンジに運び込まれておりここで菓子付き抹茶の接待を受けながらチェックインの手続きが行われる。
このラウンジにはチェックイン時間帯に限定して日本酒の試飲コーナーが置かれ4種の地元の酒を味わうことができる。
同行者は駐車場往復の待ち時間を活用して4種全ての試飲を果たしたそうだが駐車場から戻った私は菓子と抹茶の接待を受けながら夕食、朝食時間や貸切風呂の種類と利用時間の指定等結構複雑なチェックインの手続きに集中しなければならず日本酒は2種を慌ただしく試飲するに留まった。
この様な慌ただしさ故にチェックイン時のラウンジの雰囲気や抹茶の接待、日本酒の試飲コーナーなどの撮影機会を逃してしまい残念ながら紹介できる写真は皆無となってしまった。

【庄助の宿 瀧の湯と民謡】
 瀧の湯の屋号に取り込まている庄助は広く知られた民謡の「会津磐梯山」に登場する小原庄助さんに因んだものと思われその中で囃子言葉に「朝寝朝酒朝湯が大好きでそれで身上潰した」と謳われている。しかしこの楽曲は昭和9年に販売された俗謡風のレコード曲が発端で旧来から会津甚句等と呼ばれて会津地方に伝えれられてきた歌詞とは大きく異なっていたので当時地元では身上を潰したという否定的な歌詞に非難が集中したそうである。
本来に近い曲は歌詞が162番まであり「正調会津磐梯山」として俗謡とは明確に区別されているとか。
俗謡の「会津磐梯山」でモデルとなった小原庄助という人物には諸説があるらしい。一説としてWikipediaには会津方で戊辰戦争に参戦し慶応4年(1868年10月20日)に戦死したた小原庄助という人物の過去帳が会津若松市の秀安寺に残されているが俗謡に謳われる様な人物か否かは定かでないとの記述がある。

【瀧の湯の外観】
 噺が前後してしまうが瀧の湯の施設は湯川と湯川の流れに沿う狭い市道に挟まれた細長い敷地に立地している。
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  玄関
最下流の狭い駐車場から上流側に向かって玄関の設えがありその奥に鉄筋造りの建物が連なっている。
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  湯川沿いの建物
玄関の脇から湯川の谷筋を覗くと谷底ぎりぎりまで埋め尽くす鉄筋造りの多層の建物が上流方向に連なっている。

Part.2は館内の構造



(00:00)

2019年11月01日

【序章】
 皆さんは蕎麦が二期作の作物であることをご存じだろうか。
新そばと言えば秋そばが良く知られているが今回の話題は蔵王町遠刈田温泉街の小さなそば店「十割手打ち蕎麦匠庵(しょうあん)」の訪問で出会った夏新そばである。

【匠庵の位置】
 「匠庵」は良質なそばを提供する店として少し前にも紹介している。
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  匠庵の案内図
店舗は遠刈田温泉街の中心地で足湯も備える神の湯から県道r12の信号を渡れば徒歩30秒以内の極至近に位置している。

【店内の様子】
 店内は以前から変わらない配置で
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  カウンターとフロア席
厨房側のカウンター2席に2脚のフロアテーブル席があり
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  座敷
奥には座卓を置き個室風に隔離された小上りが用意されている。

【品書】
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  品書き
 卓上に配置された品書は前回2019年4月の訪問時と変わりなく常備の品はもりそばと天ぷら付きもりそばの2品と潔い構成である。
その他のぶっかけそばとえび天付きぶっかけそばは夏季限定でかけそば等の温そば3種は冬季専用とされている。

【夏新そば】
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  夏新そばの掲示
 一方店内には目新しいものもあった。
「『夏新そば』提供開始しました。」の掲示である。
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  説明文
この掲示には夏新そばの説明が記されているがそば打ちイラストの背景と干渉して大変読み辛い。説明文には冗長な表現もあるので要約すると通常新そばは夏に播種(ばんしゅ)し秋口に収穫するものを指すが蔵王山麓では最近5月に播種し8月に収穫する夏そばが話題となり匠庵でも夏新そばの提供を始めたとのことである。

【夏そばと秋そば】
 確かに新そばと言えば一般的に秋口に収穫する秋蕎麦の印象が強く収穫を終えた10月下旬から11月になると各地で新そば祭りが催されるが本来蕎麦は二期作が可能な作物である。東北地方での夏そばは4月下旬~5月中旬に播種し7月~8月上旬に収穫する。秋そばの播種期は7月下旬~8月上旬で9月下旬~11月初旬が収穫期となる。
春播きの夏そばは成長が遅めで時間をかけて結実する品種が一方夏播き秋そばは成長が早く短期間で結実する品種が適するそうで収量の確保にはそれぞれに適した品種の選択が必須であるらしい。
蕎麦は雑交配が強い作物で地域毎に品種が異なる多数の所謂地粉の存在が知られており山形県大石田町の「来迎寺在来」はその代表格である。全国的に名の通った品種も多々あるが「最上早生」や「階上早生」、「キタワセ」等ワセを名乗る夏そばや「常陸秋そば」の秋そばはその品種名から自明である。
 店内の掲示にもう一つ以前との相違を見つけた。
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  北海道産牡丹そば(2019年1月)
この店では地元産に加えて北海道産のそばを通常料金+\100で提供している。以前は牡丹であったが
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  北海道産キタワセそば
今回は同じ料金設定で品種がキタワセに変わっていた。先に見た通りキタワセは夏そば系の品種と思われるので季節に依存した変更であろうか。

【もりそば】
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  もりそば
 注文したもりそばは皿盛りで刻み葱と山葵の薬味皿に胡瓜漬けと冷奴の小皿が付く。
夏新そばの説明に品種の情報は含まれていなかったが以前の訪問でこの店の玄蕎麦は地元産の階上早生であることを確認している。
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  十割手打ちそば
何よりも透明感を備えた細麺には
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  ホシ
蕎麦の実の外皮に由来する黒い細かなホシが多数鏤められておりこの外見だけでもそばを打つ技量の高さを窺うことができる。
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  極細麺
箸で掬った麺の太さは2mmに満たない見た通りの極細仕上げながら千切れない腰の強さを備えており口当たりが良く啜り上げて食し風味と喉越しを楽しむことができる。
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  山葵と
秋そば程の強い香りは感じなかったが上質なそばを啜り後半には山葵を添えて独特の刺激から発する仄かな甘みを加えて夏新そばを味わった。

【そば湯】
 食後に残ったつゆに
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  そば湯
そば湯を注いで
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  そばスープ
刻み葱を浮かた飲み物に仕立てていつもの通りそば食の余韻に浸る一時を過ごして匠庵の訪問を締め括った。

【終章】
 蔵王町では匠庵に限らず「賛久庵」や「峠」等そばを扱う数件の店でも夏新そばをアピールしている。一般論では秋そばよりは風味が薄いとの評価もあるので秋そばの時季にはどの様なそばが提供されるのか興味津々である。

【追記】
 本文中で匠庵の品揃えに変わりはないと記したが本稿の執筆後に以前の画像と見比べる過程で小さな変更を発見してしまった。
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  金額変更
些細なことに過ぎないが品書で夏季限定品のえび天付ぶっかけそばの価格が\1100から\1200に変更された手書きの痕跡を認めたのである。
 価格の設定や変更は店舗の判断の範疇にあり客側が異議を唱える筋合いはないが利用者への参考情報として可能な範囲で言及している。但し客側にも価格設定が安いか高いか等の感想を述べる余地はあると思う。
 本文の写真で紹介した品書の価格は消費税8%時点の税込み表示であり10%に増税された10月以降は改定されるのが自然な成り行きかと思う。




(00:00)

2019年10月25日

【序章】
 宮城県加美町の中新田地区でR457とR347の2本の国道に程近い住宅街に店を構える「手打そば竜聖」に久し振りに訪問する機会を得た。
手打そば竜聖位置図Google

この店は2014年9月に掲載した「宮城県央北部R457そば街道」の記事中で多数の蕎麦店と共に紹介しておりR457を通行する際の昼食処として度々利用していたが2019年の春は予定していた大崎市のそば店の休業に遭遇した末に久し振りの訪問となった。

【店舗外観】
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  店舗と駐車場
 店主の軽自動車が停まる店舗前駐車場の雰囲気は見慣た光景だが竜聖の屋号を掲げる青色の電照看板の上部が欠損している。
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  電照看板(2009年12月撮影)
嘗てはこの部分に同じ青地で手打そばの文字看板が嵌め込まれていたのは以前の写真で確認できる。

【店内】
 店内の様子は相変わらずで玄関を入った先の左手に拡がる土間には大きなテーブルが置かれ右側の仕切りは畳敷きの座敷席である。客席の奥は厨房の空間に充てられており座敷に近い位置にはそば打ち室が配置されている。更に言えば座敷と通路を挟んだ打ち場の右奥には小さな和室の設えもあり混雑時にはこの部屋に案内された経験もあり店内の様子の大部分は記憶の範囲にある。

【品書】
 空席があった座敷に席を定めて座卓上に用意された品書に目を通す。
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  品書
従来と変わらぬ写真入りの分かり易い構成だがカラー写真の色褪せ具合から長年使い込まれた年季を感じる。
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  以前の品書(2009年12月撮影)
因みに嘗ての品書の写真は色彩が鮮明であった。
ご飯ものや飲料に×印が付けられているのは以前と異なっているが温と冷の天ぷらそばとかもせいろ\1000にもりそば\700、ざるそば\500は少なくとも10年前と変わらぬ価格のままで提供されている。
 竜聖の品揃えは以前にも言及しているがもりそばとざるそばにこの店独自の特徴がある。
そば店の品揃えの一般的な概念ではもりそばよりも刻み海苔が添付されることが多いざるそばは僅かではあるが高額に設定されている。
しかし竜聖ではざるそばが低額でもりそばとは\200の価格差を設けている。その訳は品書の写真で見る通り漬物皿を添えただけのざるそばに対してもりそばではざるに加えて3種の小鉢料理が供される故の価格差である。ざる、もりと天ぷらそばのいずれも刻み海苔の添付は無い。

【もりそば】
 ¥1000の天ぷらそばは手頃な設定だがこの店の天ぷらは端部が焦げ気味で揚げ過ぎ感が強くあまりお勧めできない。従ってこの店では3種の小鉢料理が添付される¥700のもりそばを注文することが多く今回も迷うことなくもりを発注した。
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  もりそば
暫くして運ばれたもりそばはいつも通りの蒸籠盛りで徳利のつゆに薬味の小皿が添えられる。
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  薬味
薬味は刻み葱ともみじ下しで胡瓜の浅漬けが加わる。
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  漬物とお浸し
3種の小鉢料理は季節の素材が主体で今回は青菜のお浸しに
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  小鉢料理
木耳と南瓜の煮物であった。木耳の煮物は訪問する度毎に欠かさず供されてる竜聖の定番料理である。
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  手打ちそば
手打ちのそばは白味を帯びた表面に疎らなホシが見えているが内部に透き通る様な透明感はない。
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  中細麺
割箸で掬い上げると3~4mm程の中細麺で食し易いしなやかな腰を備えている。

【店主の雑談 閉店?】
 そば食中に土間のテーブル席に着いた常連客と厨房作業が一段落した亭主夫妻の雑談が漏れ聞こえてきた。
亭主が述べるには「歳も歳だしそろそろ店を閉じて引退しようと考えている」と。常連客が留意の発言をすると奥様は「まだ決めた事ではないし勝手なことを言ってるのよ」と応じていた。
老夫婦で切り盛りする店に後継ぎの姿は確認できないので今後の竜聖はどうなるのだろうかと思いながらそば食を終えた。
 因みに亭主は嘗て役場勤務の公務員であったらしいが一念発起して同じ加美町内小野田の薬莱山に店を構える「宗右衛門」でそば打ちを修行した後に現在の中新田で竜聖の店を開いたと聞き及んでいる。

【そば湯】
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  そば湯
 食後の楽しみは何時もの通り
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  そば湯を注ぐ
つゆの残りにそば湯を加えて
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  そば湯割り
そばつゆのそば湯割りの飲料を調製してそばの香りを満喫した。

【終章】
 加美町中新田のそば専門店「竜聖」は国道に近い立地で10年程前から通り縋りで気軽に立ち寄ることができる店であった。
老夫婦が営む店は2019年の春迄従来と変わらず営業を続けていたが今後の動向が気掛かりである。




(00:00)

2019年10月18日

【序章】
 そば店巡りをしていると訪問したそば店が臨時休業という不運に見舞われ途方に暮れることは幾度となく経験している。
今回は福島県の猪苗代町でこの様な事態に直面した後にR49の沿線で遭遇したそば店「三四郎」の飛び込み訪問記である。

【そば店の休業日】
 遠方にあるそば店を初めて訪問する際は事前にネット情報等を一通り調査する。特に営業時間帯と休業日の確認は不可欠であるが不定休の店と臨時休業の店頭表示が最も厄介で事前の予測は不可能である。
不定休は休業が無いコンビニ同様で通年無休の印象を受けるが文字通り定休日を定めず休業日は店の判断次第と受け取ることもできる。特に個人経営が多い小規模なそば店では亭主や家族の体調不良や高齢化に依る従業者不足等諸般の事情で臨時休業の確率が増大する。
また週末限定で開く店が少なからず存在すると共に東北地方の山間部では積雪期に長期休業する店もあるが事前調査で大まかな状況把握は可能である。それでも営業中を確認して訪問すると臨時休業とか貸切り営業で入店が叶わなかった不幸な経験もある。
しかし何より最大の難関は亭主の都合次第の気まぐれ営業で事前の予測が出来ない儘に現地に赴き暖簾の有無を見届けなければならない店である。

【気まぐれ営業の店】
 元号が令和に変わって間もない6月中旬に猪苗代町内で目指したそば店はまさしく気まぐれ開店の店で
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  本日休業
複雑な経路を辿った先の店頭には暖簾が無く本日休業の立札が今日は営業しないぞと店主の強い意志表明があり初めての訪問は叶わなかった。
 猪苗代町内には猪苗代そば街道が組織されており既に掲載した「まるひ」の記事でも触れている通り本稿の執筆時点では17店舗の加盟が確認されている。従ってその加盟店のいずれかに向かう選択もできたが進路の都合で猪苗代湖畔の国道R49から郡山方面の店を探すことにした。

【手打そば三四郎の店】

猪苗代町三四郎の位置地理院地図
 猪苗代湖北岸道路のR49を郡山方向の東へ進んでいると上戸(じょうこ)トンネルを潜り抜けた上戸浜で手打ちそばうどんの大きな看板を掲げる店に遭遇する僥倖に恵まれた。
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  三四郎店舗外観
 国道脇の駐車場に車を滑り込ませると切妻屋根の店舗建物の前面に手打ちそばうどんの大看板がありその軒下の玄関に「三四郎」の屋号看板が見えている。
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  国道R49と駐車場
駐車場から今来た国道を振り返ると猪苗代湖の湖面に落ち込む緑の山裾の下端にトンネルの東口が見えている。手前の青看は猪苗代5kmと会津若松30kmの表示に加えて終点となる日本海側の新潟140kmの案内が幹線国道の風格を示している。
駐車場の入口で背を向けて立つ青看の表示は確認しなかったが東方向の郡山市から国道の起点で太平洋岸都市であるいわき市を案内しているのであろう。
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  玄関
 車を降りて向かった玄関には筆太の黒文字で「三四郎」と染めた白暖簾が鮮やかである。更に玄関脇には「手打生そば・うどん処三四郎」と記された行灯風の自照看板も控えているが木製の屋号看板に暖簾と行灯看板の何れも微妙に書体が異なっており統一性に欠けている。

【三四郎の屋号の疑問】
 実は文字書体に限らずこの店の正式な屋号も不明である。本稿の表題に採用した「そば天国三四郎」は猪苗代町の観光案内の記載を採用したもので既に見た店頭や駐車場に設置された大看板には「手打ちそばうどん三四郎」と記されている。
また店内に配置された名刺の屋号は「蕎麦天国三四郎」と印刷されているのでどれが正式な屋号なのだろうかと戸惑ってしまう。
因みにネットを検索すると大方のサイトで「三四郎」の単純な呼称を表題としているが例えばこのサイトに掲載されている写真は恐らく以前の姿であろうが切妻屋根に載る大看板の文字は今より控えめで「手打生そばうどん」と表記にも僅かな相違を認める。
先に紹介した玄関脇の行燈看板は「手打生そば・うどん処三四郎」の表記で現存されていることから最近になって大看板を改装して生そばの「生」を取り除いたのではないだろうか。
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  大看板の下地
改装されたであろう大文字部分の下地の色違いがこの推論の査証である。
これらの状況を考慮すれば「手打そば三四郎」とするのが傍目には適正かと思うが店内に置かれた「蕎麦天国三四郎」の名刺からは異なる指向の可能性もあり難解である。
従って以降は単純に「三四郎」の呼称で統一する。

【三四郎の店内】
 白暖簾を潜って入店すると右手はカウンターの奥に厨房があり
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  テーブル席
左側は奥まで続く土間にテーブル席が配置されている。
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  座敷席
右側に置かれたカウンターの奥は隠れ部屋の雰囲気を感じる畳敷きの座敷の設えがあり空席があったこの空間に招き入れられた。
座敷に陣取る客は高齢の夫婦連れやグループで地元の常連客が集う店の色濃い雰囲気を感じる。

【品書】
 席に着いたが座卓上に品書は見当たらず客室の壁面に貼り出されている。
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  品書
 冒頭にある天ざるそばと天ぷらそば¥1365やににしん天ざるとにしん天ぷら(そば)\945は各々同程度の種を使う冷そばと温そばが同じ価格の設定と理解できる。
 けんちんそば(冬だけ)、とろろそば、なめこそば各\945やとりそば、高遠そば各\840は冬季限定の注釈があるけんちんそばは温そばであろうがその他の品は温、冷どちらのそばか判然としない。いずれにも対応できそうに思えるが確認はしていない。
 ざるそば、かけそば、もりそば、そばがきの4品は\735と均一料金で刻み海苔の有無で区分されるざるともりが同額の設定が面白い。又そばがきの品揃えはそば専門店としての風格を感じる。
 この品書を見る限り表の大看板にあった手打ちそばうどんのうどんが欠落している。個人的にうどんの興味は薄いので支障は感じないがそばの部分をうどんに読み替えた注文が可能なのであろう。

【注文】
 お茶と先付の皿が運ばれた時点でもりそばの注文を通す。
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  先付皿
一般的に漬物が多数を占める先付の料理だがこの店では蕗の煮物が供された。
この蕗を摘まみながら改めて卓上周辺を観察すると
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  卓上備品
座卓上には灰皿と七味の小瓶のみが配置されており店内は自由に喫煙できる様子である。
都市部の店舗では今や全面禁煙や煙禁分離が常識となっているが都会を離れると旧来の喫煙環境が色濃く残されている様に感じる。

【先付皿:考】
 そば店で供される先付の皿は稲作が困難な地方の町村や山間地域で遠来の珍客を歓迎する歴史を重ねたおもてなしの文化で大都会のそば店では寡聞の慣わしである。
更に言えば遠来の客に手打ちでそばを振舞うこと自体が文字通りおふるまいとされる最大級の歓待行為でありそばが打ち上がる待ち時間とそば食の口直しを兼ねて常備保存食の漬物類が供されてきたのであろう。地方都市から山里の店になる程多くの漬物類が供される所以かと思う。

【もりそば】
 蕗の煮物を摘まんでいるともりそばが運ばれる。
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  もりそば
 角型蒸籠に盛られたそばはつゆ猪口と薬味の小皿が添得られている。薬味は刻み葱とわさびの2種で標準的なもの。
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  手打ちそば
そばは白味が強い更科系の風貌で
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  十割そば
ズームアップすると透明感のあるそばは切り幅に若干のばらつきを認める平打ちの細麺に仕上げられており蕎麦の外皮に由来するホシの黒点が疎らに見えている。
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  細打ちそば
割箸に載せた2mm幅程の細麺は箸に掬っても千切れないしなやかな腰を備えて口当たりも優れた上質なそばで辛味と甘みを併せ持つ濃厚なつゆとの相性も心地良い。
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  更科そば
食べ進めて残り僅かとなっても透明感を保った白色のそばは簀の子の上に切れ端の断片が認められず千切れ難い腰の強さを証明している。
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  わさびと
そば食の後半には細打ち麺にわさびの風味も載せて十割そばの旨味を感じる幸せな一時を過ごした。

【山菜天ぷらのサービス】
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  山菜天ぷら
 そば食中に注文していない山菜の天ぷらが供された。サービスでと告げられて〇〇の天ぷらですと説明を受けたが初めて聞く名前は脳裏の記憶領域に痕跡を留めていないのが残念である。笹の葉に似た十数センチ程の緑葉は見た目よりも肉厚で弾力を感じる食感は食べ応えと旨味を備えた逸品であった。
店内の雰囲気から明らかに新参者と識別できる外来者に供された最大級のサービスと感じ店側の心配りを有難く頂戴した。

【そば湯】
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  そば湯桶
 そば湯は丸形の湯桶で運ばれる。
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  そば湯
桶の中を覗くと底部に白濁した蕎麦粉成分の沈殿がある普通の釜湯に見える。
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そば割り
このそば湯をつゆ猪口に注ぎいつもの通りそば湯の飲み物を調製してそば食を終えた。

【終章】
 想定外で偶々遭遇した店であったが手打の十割そばはしなやかな腰を備えた色白な更科系の細打ち仕上げで口当たり優れた上質なそばを提供している。
 会計時に確認するとこの店のそばは毎日女将が手打ちしているとのことであった。
 個人的な評価ではあるが猪苗代町の三四郎は十割手打ちそばを供する優良店に加えたい。




(00:00)

2019年10月11日

【序章】
 2018年以降は専ら宮城県内から山形県や岩手県の北方向に足を向けていたが2019年6月に至り久し振りに福島県を訪れる機会を得た。
 十割手打ちそばを推奨できる福島県内の店として以前から福島市飯坂の「どうらく」と耶麻郡猪苗代町(やそぐんいなわしろまち)の「まるひ」を掲載してきたが今回は2017年の夏以降2年振りに伺った猪苗代町樋ノ口(ひのくち)地区で営業する「手打そば処まるひ」の訪問記である。

【店舗外観】
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  まるひ外観
 正面からは白い外壁に片流れに見える屋根が特徴的な店舗の外観は以前から変わらぬ姿で
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  玄関とテラス
玄関に懸かる白暖簾と猪苗代そば街道加盟店の掲示も健在であった。
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  テラス席
店舗の前面に接して仮設の屋根を載せる土間に配置されたテーブルも見慣れた和風テラス席の光景である。天候に恵まれれば室内の座敷に上がらずこのテラスでそばを楽しむのも一興である。

【品揃え】
 まるひのそばは十割手打ちで天ぷら付きもりそばと天ぷら付きとろろそばの2品に限定されている。いずれも冷たいもりそばに山野菜の天ぷらが添えられるてとろろの有無を択一するシンプルな品揃えだがそばの大盛りを選ぶ余地は残されている。但し普通盛でも蒸篭に盛られるそばの量はそこそこあるので余程の空腹時又は大食いの嗜好がなければ敢えて大盛りを指定する必要は感じない。

【もりそば】
 訪問客が絶えない人気の店で客席担当者の案内に従って空いた席に着くと
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  山菜小鉢
直ちに山菜のワラビを載せた小鉢が供される。ワラビは一見漬物に見えるが口に運ぶとバジルの風味を纏った洋風味付けのお浸しである。2年前の訪問迄は山野菜の純和風漬物が供されていたいたので洋風味が珍しい山菜に対峙して何か判然とはしないが潮流の変化を感じる。
お茶は従来と変わりなく卓上に配置されている保温ポットから各自セルフサービスで湯飲み茶碗に注ぐ。
 もりそばとか天ぷらそばと注文すると天ぷら付きもりそばの普通盛の注文が通る。特に大盛りを指定しない限り普通盛の扱いである。
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  天ぷら付きもりそば
 珍しい味付けの山菜浸しを摘んでいるとやがて注文した天ぷら付きもりそばが供される。山野菜の天ぷら皿に薬味の刻み葱と山葵に別皿の下ろし大根の構成は従来通りだが
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  もりそば
丸形の蒸籠に盛られたそばは以前から何度も経験した細打ちとは印象が異なる太麺であった。
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  太麺
透明感に乏しい白色の麺の見た目は従来と同様だが箸で掴み上げると切り幅にばらつきがあり太いものは割り箸の先端径と変わらぬ5mm程で細くても4mm以上に見える。
実食すると太麺の剛直さを強く感じ口腔内で噛み砕いて食する田舎風のそばであった。柔軟な口当たりの食感に乏しい硬い太麺は千切れ易く嘗て評判であったまるひの美味いそばとは一線を画するものと感じる。

【2017年訪問時のそば】
 序章で触れた通り以前の訪問は2017年8月であった。
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  2017年のそば
この時は従前と変わらない仕上げで十割そばにも関わらず柔軟で強い腰を備え口触りも心地良いしなやかさを備えた3mm程の細麺であった。
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  2017年の麺
この上質なそばが評判の根源で猪苗代へ向かう機会がある毎に立ち寄っており2017年から遡る2015年にもまるひの記事を掲載しておりそのPart.2には2007年6月、2009年1月、2011年8月、2012年3月に撮影した手打ちそばの写真を掲載しているので興味があれば見比べて戴きたい。

【そば変貌の理由】
 2年前迄のまるひのそばと2019年6月時点のそばの仕上がりは既に述べた通り品質面で大きく異なっている。これは私一人の感覚だけでなく以前から幾度もまるひのそばを経験してきた同行者も同様の見解であった。
では何故そばの品質が劣る方向へ変貌したのであろうかとあたりまえの疑問が湧くがその理由は手打ちそばの打ち手が変わったからであろうとこれまたあたりまえの結論に至る。
 まるひの公式HPには「手打ちそばの技法は代々親から子へ、姑から嫁へと引き継がれてきた」もので「平成9年(1997年)11月蕎麦処まるひとして」開業したと紹介されており家業として家族主体で運営するそば店であることが窺える。従ってそばの打ち手が変わったとするならば家業が代替りしたか或いは打ち手が従業困難な何等かの事情で後継ぎ候補者等が臨時でそば打ちを務めているかの何れかであろう。
個人的な想像の範疇を脱しないが先付で供された山菜料理の変化からしても臨時の打ち手よりも代替わりの可能性を強く感じる。何れにしても十割そばを打つ職人技は今のところ先代の技量に及ばずそばの出来映えが後退した印象が拭えないのが残念である。

【終章】
 猪苗代町の「手打そば処まるひ」は以前から手打ち十割の美味いそばを提供する店で週末になるは県外ナンバーの車が訪れ入店待ちの客が溢れる人気の繁盛店である。
今回久し振りとなった訪問でそばの品質が以前とは異なると感じた。
 本稿の執筆終了後にネット上の口コミサイトを覗くと代替わり情報を確認した。口コミの記述を100%鵜呑みにすることは事実誤認の恐れを伴うが個人的な体験と符合することから信頼度は高そうである。
 「まるひ」の看板を背負う後継者にはそば打ちの技量向上に努めて先代に比肩する美味いそばの提供を期待したい。




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2019年10月04日

【序章】
 岩手県の県都盛岡市の北西に接する雫石町は岩手山南西麓の扇状地に展開しており古くから知られた開拓地小岩井農場の所在地でもある。
今回は小岩井農場にも程近い山麓地で上質な十割そばを提供する繁盛店の訪問記である。

【十割そばしんざんの所在地】
 盛岡市の西部で秋田県境にも接する雫石町の北部地域は岩手山の西麓域を占め北端が八幡平市との境界を成す山岳地帯に源流を発する葛根田川(かっこんだがわ)が形成した扇状地となっている。
雫石町扇状地俯瞰図Google
地勢の詳細は以前に掲載した網張温泉に譲るが北側の山地と岩手山の西麓に囲まれて南の雫石川流域に開けた傾斜地に数件のそば屋が営業していることを以前から確認していた。
その内で「十割そばしんざん」は小岩井農場の製乳工場や観光施設のまきば園にも程近い位置で営業する人気の高いそば店で5月の連休期間に機会を得て訪問した。

【しんざんの店へ】
 盛岡市の中心部から仙岩峠を越えて秋田県仙北市に向かう国道R46を西に進むと繋十文字の交差点で小岩井農場の案内がありこれに従って岩手山の山麓へ向かう県道r131に右折する。秋田新幹線が走るJR田沢湖線の鉄路を立体交差した先の県道は道なりでr219に変わり傾斜地の登り道の左右には小岩井農場の景観が広がる。
雫石町しんざん俯瞰図Googl
やがて右手に観光施設の小岩井農場まきば園が現れた先の丁字路で分岐路を左折した右手に乳業工場の施設が構えている。因みに丁字路を曲がらず直進する県道は岩手山麓高原の網張温泉に連絡している。
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  一本桜と岩手山
左折した町道には乳業工場と丘陵地に立つ小岩井農場の一本桜がありその先で右手に分岐する丁字路に折れた上り傾斜の道を進むと
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  駐車場看板
「十割そばしんざん」の看板が建つ駐車場に達する。

【店舗の外観】
 駐車場の看板の先に店舗建物が見えている。
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  店舗外観
2層構造の建物は茶系濃色の外装を纏う下層に上階白壁の対比は鮮烈な印象を感じる。更に窓サッシの白色仕様は複層ガラスを嵌める断熱構造の装備が窺え最近の建築物に見える。
 因みにデータ更新をしていない愛車のカーナビでは少し離れた位置に誘導されたがその地点には「十割そばしんざん」の店へ向かう案内看板が設置されていた。従って「十割そばしんざん」の店は近年に店舗を現在地に移転したと思われる。
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  店前の池
 店舗の南面には外光を採り入れる広い窓に加えてテント掛けのオープンテラスの設えもありその前面の庭には
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  鯉
色鮮やかな鯉が泳ぐ池が来客の目を楽しませている。
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  玄関
 玄関前に掲げられた白色暖簾には黒色に染めた十割そばしんざんの文字が鮮やかである。
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  予約表
11:00の開店時間に合わせて訪問したが暖簾を潜った店内は既に満席状態で開店前から訪問客が詰掛ける人気店と認識できる。
玄関内に置かれた予約表に人数と片仮名の名前を記入して空席の順番を待つ。
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  待合席の景色
待合客が少ない開店直後の時間帯故か店内の会計カウンター前に配置された待合席に座ることができた。
ここで品書が手渡されて事前の注文が促されるのは繁盛店が採用する時間短縮の典型的な手法である。
紺暖簾の目隠しの隙間から垣間見える厨房内には複数の女性が立ち働く姿が印象的で個人経営のそば店を越えた地域振興組合的な共同運営体の雰囲気を感じる。
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  雑誌の記事
待合席に配置された既刊の雑誌の付箋を捲るとしんざんを十割そばの店と紹介する記事が掲載されている。

【店内】
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  客席風景
 待合席から見える客室の手前は板床のテーブル席で欄間を設けた隔壁の奥は畳敷きの部屋となっている。
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  畳室
暫くして案内されたのは畳部屋奥のテーブル席で外景を採り込む南面の窓際は座卓が配置されている。視線の高低差で奥のテーブルから窓際に座る人影を意識させない視野が確保できる設えは室内から立体的な景観を提供する優れた手法と感じる。
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  欄間の組子細工
 板張り床の洋間と畳部屋の仕切り壁の下がり壁に開口する欄間は細かな模様を象った木組み細工が施されている。欄間の左右に置かれたミニかぼちゃや小鳥の装飾が愛嬌を添えている。
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  店内掲示
 テーブル上の壁面には「十割そば」とその「食材」と題する額が掲げられている。斜め方向の撮影を余儀なくされたので画面では読み難い文面を以下に転記する。
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  「十割そば」とその「食材」
 当店は、そば粉と水だけで作る「十割そば」をご提供しております。
 「つるつる」としたのど越しと、「シコシコ」とした歯ごたえ、風味と香りが強いのが特徴です。
 そばは毛細血管を強化し、脳出血や高血圧症の予防効果があるルチンなど、ミネラル類、ビタミン類、良質のたんぱく質が豊富で成人病の予防や美容に効果がある健康食品です。
短時間で茹で上げる当店の製法は、風味や香りだけでなくそばに含まれる優れた栄養素も逃しません。また、食材も当農園あるいは地元で採れたものを多く使用しております。
 安心食材で「十割そば」本物の味わいを存分にお召し上がり下さい。
              店主敬白
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と。十割そばへの並々ならぬ思い入れが感じられる

【品書】
 既に待合中に注文を通していたがテーブル上に配置されたバインダー型の品書を開いて再度品揃えを確認する。
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  セットメニュー
 初めのページはセット品が並び天ぷら単品、天丼、えび天丼、肉丼それぞれにかけそば、もりそば、ざるそばの何れかの組み合わせとなる。天ぷら、天丼、肉丼のセットはかけそば又はもりそばが\1100でざるそばを選ぶと\50が加算される分かり易い設定である。えび天丼との組み合わせは\1300(ざるそばは\1350)となる。
この価格体系から温そばのかけそばと冷そばのもりそばは同額で刻み海苔が載るざるそば価格差\50で明確に区別されている。
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  温そばと冷そば
 頁を繰ると左右に温そばと冷そばの品々が現れる。温のかけそばと冷のもりそばは共に\580で冷のざるそば\630(もりそば+\50)はセット品の頁で想像した通りの価格体系である。
少量設定のミニかけそばとミニもりそばが\400で用意されており大盛りは温冷共に\150増しとされている。
その他にきのこやとろろの食材を使う品もあるがゆばそばと冷しゆばそば(温冷共に\950)はこの店の特徴的な品揃えと思われる。
冷そばには二色もりそば\800があり予めこの品を注文していた。二色とはここまで見てきた普通のそばと韃靼(だったん)そばの2種盛りでこの店では普通のそばを更科そばと呼称しているが実物を見ると一番粉限定で純白の更科そばとは異なる印象を受けた。詳細は後の項で述べる。
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  韃靼そば等
 冷そばの裏頁は韃靼そばとサイドメニューの品が紹介され隣の頁は各種の飲料が並んでいる。
 韃靼蕎麦は一般的な蕎麦より血圧降下作用が大きいルチン成分が多く近年存在感を増している品種だが黄色を呈して苦味が多い特徴を有する。
韃靼そばの品揃えはもりそばとかけそばの\680にざるそばは\730の設定で普通のそばと\100の価格差が設けられているがここでもざるそばは¥50増しの原則が徹底されている。
 サイドメニューには共に\530のミニ天丼、ミニ肉丼にゆばの単品\320、サラダ\300、天ぷら盛り合わせ\700、えび天盛り合わせ\900等が紹介されている。

【卓上の装備】
 品書を元の位置に戻し改めて卓上の備品を確認すると
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  卓上の備品
横長のトレイに醤油差しと小瓶の塩に爪楊枝、七味の小鉢が並んでいる。

【二色もりそば】
 店内の様子を観察しているとやがて注文した二色もりそばが配膳される。
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  二色もりそば
 そばは角皿に敷かれた簀の子盛りでつゆ入りの猪口に薬味と漬物の小皿が添付され店名を記した箸袋に収まるリユース箸が付随する。
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  二種のそば
簀の子の左は更科と称する普通のそばで黄色味が強い右側が韃靼そばである。
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  小皿
 小皿の薬味は刻み葱と下し山葵に加えて赤く見えているのはかんずりのみぞれ和えかと思う。 かんずりは以前にも紹介しているが新潟県で寒の時季に路地で唐辛子を晒した産物である。かんずりの辛味を七味唐辛子と似た扱いで薬味に採用するそば店はこれ迄数店で経験しているが個人的には刺激が強く温そばであれば適合性はありそうだがもりそば系の冷たいそばでは繊細なそばの風味を霧消してしまうカレーそばと変わらぬ危険な存在と感じる。
手前は沢庵漬けの漬物皿である。
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  二色そば
 更科そばと韃靼そばの2種は見た目で色白の更科と黄色の韃靼と容易に識別できる。

【更科そば】
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  更科そば
 更科そばの白い麺を仔細に見ると蕎麦の実の外皮に由来する少なからぬ黒色のホシが鏤められている。更科そばは本来蕎麦の実の白色な中心部のみを挽いた純白な更科粉で打ったそばの呼称で黒色ホシの混入は考え難い。
このそばは大まかに外皮を除いた丸抜き製粉の一番粉のそばとするのが妥当ではないだろうか。
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  韃靼そば
黄色味を帯びた韃靼そばにもホシが見えるがその粒子は更科より遥かに細かい。
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  更科の麺
 更科そばは先端が細い塗り箸と同等の細打ち仕上げだが箸で掬い上げても千切れない柔軟な腰を備えており啜り上げた口当たりも好ましい上質な麺である。
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  山葵風味で
下し山葵を添えると仄かな甘みと爽やかな刺激が加わる。

【韃靼そば】
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  韃靼の麺
 箸に掛けた韃靼そばは更科より太目に見えるがそば生地の延し厚は更科と同程度で切断幅の寸法を2倍程にした平打ちの幅広麺である。韃靼そばは普通のそばより生地の結合力が劣るとされているので幅広の麺は強い腰を創出する技であろうか。
韃靼そばは独特の苦味を伴うが口当たりが良く食し易い仕上がりで更科そばと同様に上質と感じる。

【そばつゆ】
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  つゆ猪口
 猪口入りで供されたつゆは出汁の香りと辛味を併せ持つ江戸前風にきりっとした仕上げである。更科そばとの相性に優れており強い主張がある韃靼そばにも絡み合う存在感は大変好ましく感じた。

【そば湯】
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  そば湯桶
 そば湯は一般的な丸形の塗り桶でそば食中に運ばれる。
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  そば湯
桶の中を覗くと透明な湯の底部に白い沈殿層が見える。
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  そば湯の調製
二色のそばを食した締めは何時もと変わらぬ作法でつゆの残りにそば湯を注ぎ入れてそばつゆのスープを調製する。
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  そば湯スープ
そばに好適で存在感のあるつゆはそば湯の飲み物に仕立てても風味が良く美味であった。

【終章】
 岩手山麓小岩井農場にも程近い雫石町の山中で十割そばを商う「十割そばしんざん」は開店時間前から訪問客が引きも切らない人気店である。
十割そばながら柔軟な腰を備えた細打ち麺は口触りが心地良くこれに旨味を絡みつけるつゆの風味の絶妙な相互作用がこの店の魅力である。
初訪の店で美味いそばに出会った嬉しさは「匠庵」(宮城県刈田郡蔵王町)以来の僥倖であった。




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